元勇者提督   作:無し

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異常者

宿毛湾泊地 

駆逐艦 朧

 

朧「…えっ」

 

漠然と眺めたいたテレビに見知った顔が映る

 

朧「し、指名手配…って何、どういう…処理が追いつかない」

 

潮「…綾波ちゃんって特務部に行ったのに…なんで…」

 

朧「と、とにかく!私みんなに知らせてくる、何か知ってる人いるかも!」

 

潮「私も行くよ!」

 

 

 

医務室

 

朧「なんでみんなここに…って、こんなに怪我人いたっけ…」

 

夕張「えっと…いろいろあって…」

 

海斗「どうしたの、そんなに慌てて…」

 

朧「そうだ!綾波が指名手配されて…!何か知りませんか!?」

 

海斗「指名手配…」

 

夕張「な、なんで…?」

 

朧「深海棲艦と一緒に逃げ出したって…イムヤさんも一緒みたいで…」

 

夕張「イムヤさんを助けたって事…?」

 

朧「わからない…」

 

海斗「……」

 

朧「提督、何か…知ってたり…」

 

海斗「ごめん、わからないよ…」

 

朧「…そうですか…」

 

潮「その…何かわかったら伝えますので、逆に何かわかったら教えてください」

 

海斗「わかった」

 

 

 

 

朧「誰も何も知らない…か…」

 

潮「うん…でも、提督は何か様子おかしかったよね…」

 

朧「私も…ちょっと気になるかな」

 

敷波「居た!朧!」

 

朧「敷波…」

 

敷波「…ねぇ、朧、例の話ほんとなの」

 

朧「ニュースでやってたよ…さっきから映ってるテレビでチラチラやってたし…」

 

敷波「……」

 

朧「何が狙いでこんなことしたのかわからないけど…」

 

敷波「アタシがやる」

 

朧「え?」

 

敷波「…姉妹の事だから、アタシが捕まえる」

 

朧「ちょ、ちょっと待って、綾波はイムヤさんを連れて逃げてるだけで…」

 

敷波「でも、もう何度も許されない事をしてきた…今回連れ出したのだってどんな理由なのかわからない」

 

潮「…信じないの?」

 

敷波「綾姉ぇは…もうアタシが好きだった綾姉ぇじゃない…だからせめてアタシの手で捕まえる、わかるでしょ」

 

朧「待って、冷静になりなよ敷波…」

 

敷波「…それじゃ」

 

潮「ね、ねぇ、待ってって!」

 

朧「……何、なんで敷波もあんな風に…何かおかしい…よね?」

 

潮「うん…変だよね…」

 

秋雲「あ、いたいた」

 

朧「秋雲…どうしたの」

 

秋雲「佐世保組は引き上げるから挨拶を…って思ったんだけど、なんか暗いね…タイミング悪かったかなー…たはは」

 

朧「いや、ごめん…ちょっとね」

 

秋雲「…なんか力になれたりする?」

 

朧「大丈夫、多分…」

 

朧(…敷波の事は私がどうにかする…そう決めたんだ、だから私が止めないと)

 

潮「朧ちゃん、抱え込んじゃダメだよ…」

 

朧「わかってる…秋雲、潮、心配かけてごめん」

 

朧(とにかく…今は…少し落ち着こう)

 

 

 

 

演習場

軽巡洋艦 天龍

 

天龍「…よし、ありがとうございました」

 

龍田「こちらこそ〜、お手合わせありがとう?」

 

天龍「……やはりサーベルは癖がありますね、レンジも変わる…刀にしてもらう事にします」

 

龍田「そう…ところで、浮かない表情だけど〜…」

 

天龍「……それが…」

 

先の作戦の際、日向の艤装を使い捨てた事で妖精さんが非常に怒っており、戦闘に若干の支障を来す結果となった

 

天龍「…妖精さんは細かい艤装の操作を肩代わりしてくれます、私としては艦載機を扱うためにも仲直りしたいのですが…」

 

龍田「艦載機は基本的に妖精さん任せだものね〜…瑞鳳は違うみたいだけど」

 

天龍「私は日向を軽んじるつもりは全くありません…天龍も日向も、どちらも私です…ですがあの時のあの判断は必要だったと…」

 

龍田「それをもっと直接的に伝えてみたら〜?」

 

天龍「…同じ事…いや、それ以上に詳しく伝えたんです…戦艦として身を挺する必要性、あの時の私の行動の理由…」

 

龍田(…やだ、ちょっとめんどくさいかも…)

 

天龍「……今はとにかく明石さんに艤装を作り直してもらうのを待つばかりで…」

 

龍田「艤装が戻って来れば機嫌も治るんじゃないかしら〜」

 

天龍「そうでしょうか…」

 

龍田「新しいものはみんな好きだから〜、大丈夫だとおもうわよ?」

 

天龍「…そうですね、ありがとうございます」

 

龍田「それじゃ、しばらくさよならね〜」

 

天龍「ええ、また」

 

 

 

 

 

 

医務室

軽巡洋艦 夕張

 

夕張「…何これ、おもちゃ?」

 

明石「違うって!このトンカチと木板はさ、艤装の緊急修理用の道具なの、しかも妖精さん用!」

 

夕張「…はあ」

 

明石「日向さんが艤装壊したじゃない?それで持って帰ってこれなかった…でも、これがあればそんな事態も防げる!名付けて応急修理セット!」

 

夕張(…またバカみたいなものを…でも、本当なら使えるのかな)

 

明石「これさえ積んでおけば緊急時に艤装の手当てをしてくれるし、ほら、きっと無茶な戦いしても生存率が上がるはず!」

 

夕張「…とりあえずわかった、で、そっちは?」

 

夕張(見た目は高速修復剤のバケツよね…)

 

緑色の液体入りバケツを指す

 

明石「これはねぇ…なんて呼ぼうか、とりあえず簡単に言えば傷薬みたいな物なんだけど」

 

夕張「……」

 

明石「なんか怪我が治るの!」

 

夕張「…明石、手首落としていい?」

 

明石「いや、試すならほら、そこに怪我人たくさん居るじゃん、試させて!」

 

夕張「……だってさ、誰か試す人」

 

曙「…試すわ」

 

夕張「却下」

 

朝潮「はい」

 

夕張「認可」

 

曙「納得いかないんだけど…」

 

夕張「理由はわからないけど暴れた以上謹慎、提督も納得してるし…」

 

曙「……」

 

朝潮「それはどうやって使うんですか」

 

明石「傷口をつけたら治ったけど…とりあえず塗り込んでみようかな、傷見せてー」

 

朝潮が背中を肌蹴る

 

明石「うわっ…グロ…ごめん夕張変わって…」

 

夕張「…はいはい」

 

バケツを受け取り手で液体を掬う

 

夕張「…塗るね」

 

朝潮「っ!…痛ッ……つぅ…!」

 

塗り込んだ位置に新たな皮膚が生成される様に傷が塞がる

 

夕張「…本当に傷口は塞がってる…」

 

朝潮「で…ですが…痛みが…!くっ…!」

 

夕張「…痛みは消えない…待って、とりあえず痛み止め出すから」

 

朝潮「お願いします…!」

 

夕張「…高速修復剤…か」

 

明石「おっ、良い名前!名前はそれにしよう!」

 

夕張「腕出して」

 

朝潮「はい…」

 

朝潮に薬を打つ

 

夕張(…ほんとに、この世界がわからなくなってきた…あの世界の修復剤はデータの塊だった、私たちがAIだったから…リアライズしたデータだからできた技術なのに…)

 

頭を抱える

 

夕張「どうなってるんだろ…」

 

明石(よし!夕張ですらわかんないほどのすごい技術ができた!)

 

夕張「とりあえず、提督とか…報告義務あるとこには伝えといて」

 

明石「ええ…あの人苦手なんだよね…」

 

夕張「そう言うのいらないから、早くして」

 

 

 

 

 

埼玉 山間

駆逐艦 綾波

 

綾波「……」

 

イムヤ「…ねぇ、さっきから落ち着かない様子だけど…大丈夫?休まない?」

 

綾波「だ、ただっダメです…いっ…今ここで休むわけにはいきません…あと3キロ歩けば山を下る川が流れてます…それを降ったら…一息つけますから…」

 

私たちのバイクはもう2時間も前に燃料が切れた

そこからは休みなしに歩いてる…幸いな事に追っ手もない…今の所は

 

綾波(…私は、イムヤさんを連れ出した責任を取らなきゃいけない…絶対安全なところまで送り届けないと…)

 

イムヤ「…艤装、重いでしょ…機関とかその辺もそのブーツみたいな艤装に纏めてるんでしょ?」

 

綾波「…はい」

 

イムヤ「なんで艤装なんかつけたまま…」

 

綾波「ゆ、有事の戦闘手段…そして、必要な時に海や川、湖を渡るため…です」

 

イムヤ「はー…考えてるわね…ところで、バイク降りてから雰囲気違くない…?」

 

綾波「…ご、ごめんなさい…も、もう気を張る余力がなくて…」

 

イムヤ「……だったら休もう、今進んでも…」

 

綾波「ダメです!…私は、絶対に止まれないんです…」

 

イムヤ「なんでそんなに…」

 

綾波「…し、司令官のため…イムヤさんのため……な、なにより、わた、私は…し、敷波のお姉ちゃんですから…あの子が誇れる事を…」

 

イムヤ「…それだけ、なの…?」

 

綾波「…わ、私は、ご存知の通り…悪いことしかしてきませんでした…特務部に行って…そっ…そこでも…実験をしました…」

 

イムヤ「でも、それは必要なことだったんでしょ…?」

 

綾波「…私は…私は、スパイである事に気付かれないように…非情に…残酷に振る舞って…うぅ…おええっ…」

 

イムヤ「だ、大丈夫?一回歩くのやめようよ…」

 

綾波「大丈夫…吐きませんから……DNAを残すような真似はしません、から…」

 

イムヤ「そう言う事じゃなくて…ほら、休まないと倒れるわよ、まだ夏じゃないとはいえもう十分暑いし…熱中症や脱水症状になったら…」

 

綾波(…確かに、脱水症状は怖い…でも川まで行けば…いや、煮沸する手段がないからそのまま水を飲むのは危険…)

 

イムヤ「ね、ねぇ…話聞いてる?」

 

綾波「……あ、か、隠れて!」

 

今家を引き連れて茂みの中に入り、頭を伏せる

 

大量の足音がそばを通り抜ける

 

イムヤ(まさか特務部の連中…何でここに!)

 

綾波(…今見えた制服…警察だ、こんなに動きが早いなんて…それに警察がここまで来てるなら次は犬…もし犬が来たら…隠れられない)

 

綾波「…やり過ごせましたね……」

 

イムヤ「よかったぁ…」

 

綾波「た、多分、見つかったら躊躇いなく撃ってきます…警告とかなしに」

 

イムヤ「そっか…」

 

綾波「……やらないと」

 

イムヤ「え?」

 

綾波「…川に行くのは諦めます…車両は…ダメ、盗んだとしてもバレる…とにかく今を凌げるだけの…」

 

イムヤ「何するつもり…?」

 

綾波「…暗殺でしょうか」

 

イムヤ「警官を殺すつもり!?」

 

綾波「こ、声が大きいです…!」

 

イムヤ「冗談でしょ…とうとう本当の犯罪者になるのよ!?」

 

綾波「…大丈夫です、もう手遅れですから…」

 

イムヤ(全く大丈夫じゃない…)

 

綾波「……法律的にも、他に取れる手段がない場合の緊急避難として認めてくれるかも…」

 

イムヤ「私その法律知らないけど、多分絶対そんなの許すためのルールじゃない…」

 

綾波「準備を…」

 

 

 

 

綾波「…で、できました…」

 

イムヤ「な、何これ…」

 

綾波「蔓で作ったロープと…あとは草結び…小さい落とし穴…とにかく転びそうな環境に仕上げてみました…」

 

イムヤ「…意味あるの…?」

 

綾波「こけたらまず顎の下からロープをかけ、声を封じます…猿轡はあんまり意味がなくて、実は口を開かなくした方が有効なんです…口が開かないと大声が出せなくて…うめくことしかできません」

 

イムヤ「…それで…?」

 

綾波「両手を縛って…荷物を漁ります…この間、ニュースで見たんですけど…盗難防止として警察手帳に発信機を仕込んであるはずなので…あとは放置しておいても問題ないと思います…」

 

イムヤ「殺さないんだ…」

 

綾波「…誤解、させましたか…?」

 

イムヤ「いや、するでしょ普通…!」

 

綾波「私たちの目当ては…お金と、飲み物や食べ物です…命を奪ったところで意味なんかありませんから…」

 

イムヤ「…そうね、確かにそう」

 

1人分の足音、それに反応して身を隠す

 

イムヤ(来た…!)

 

綾波(1人ですか…2人までなら対処できると思いましたけど…幸いですね…)

 

ブチブチと何かがちぎれる音が鳴る

 

綾波(…待って、この足音…重いような……まさか!!)

 

イムヤ(綾波…何?どうしたの?様子が…)

 

ズンと何かが倒れる音がする

 

イムヤ「やった…!」

 

綾波「待って、出ないで…!」

 

イムヤ「へ?」

 

熊「ボアアァァア!」

 

イムヤ「ク、クマ!?嘘でしょ!?」

 

イムヤが驚いて逃げ出す

 

綾波「待って!背中を見せたら…」

 

熊「ボアアァァァ!」

 

熊がイムヤを追いかけはじめる

 

綾波(マズイ、この騒ぎでバレないわけない…!)

 

イムヤと一緒に山を駆け降りる

 

イムヤ「どっどうする!?」

 

綾波「…ま、前!警察…!」

 

綾波(いや、この状況を利用すれば!)

 

こちらに気付いた警官が銃を向ける

 

イムヤ「う、撃たないで!」

 

綾波(大丈夫、まだ一般人との見分けがついてない!それに警察は4人だけ…!)

 

綾波「た、助けてください!」

 

熊が近くの木にぶつかる

 

イムヤ「ひぃぃぃっ!?」

 

綾波(熊に全員の意識が向いた…今!)

 

飛び上がり、こめかみを撃ち抜くように回し蹴りを放ち1人を仕留める

 

イムヤ「ひへっ!?」

 

綾波「…ごめんなさい、悪く思わないで」

 

腹部を貫くように蹴り、そのまま艤装のブーストで持ち上げる

 

綾波「ふっ…!」

 

回し蹴りの容量で持ち上げた警官を他2人に投げ飛ばす

 

綾波「制圧完了…あとは熊…」

 

熊「ガアアァッ!」

 

綾波「…ごめんなさい、貴方は多分…人を食べかねませんから…」

 

艤装でブーストした蹴りを頭に撃ち込む

 

イムヤ「あ、あたっ…頭潰れ…」

 

綾波「…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

 

縄で警察官を縛り上げる

 

イムヤ「…て、手伝う…」

 

綾波「おえっ…ごぽっ…おげっ…」

 

イムヤ「……一回吐いた方がいいんじゃ…」

 

綾波「だめ…今吐いたら脱水症状に…」

 

イムヤ「…あ、この人お茶持ってる…まだあいてないし、飲む?」

 

綾波「…お先にどうぞ」

 

イムヤ「…ぷはー…生き返る…はい」

 

お茶で上がってきた胃液を押し戻す

 

綾波「ごほっ…」

 

イムヤ「大丈夫…?」

 

綾波「…それより、お金です…お金があれば生存率も跳ね上がります…」

 

イムヤ「…あ、この人持ってる、小銭たくさん…」

 

綾波「こっちもありますね………小銭だけもらいましょう」

 

イムヤ「…そうね」

 

イムヤ(やっぱり、根は非情になれない優しい子…って感じなのね…)

 

綾波「…よし、後はこれ」

 

イムヤ「…拳銃も盗むの…?」

 

綾波「はい…これを盗めば、綾波達はより危険人物としてマークされます…」

 

イムヤ「そりゃ当然…」

 

綾波「そうすれば…対処にあたるのが艦娘になる可能性が高いんです…上手く行けば曙さんを誘き出せる」

 

イムヤ「…まって、あの曙と戦うつもり!?」

 

綾波「…戦いたいわけじゃなくて…うぁ…」

 

イムヤ「ちょっと…?いきなり俯いてどうしたの?」

 

手にベッタリと血がつく

 

イムヤ「そ、それ…どこ怪我して…」

 

綾波「……違う…違うんです…怪我じゃなくて…病気」

 

イムヤの方を見る

 

イムヤ「…目から、血が出て…」

 

綾波「AIDAは脳に腫瘍を作る…私はそのせいで…内出血を起こしてます…その血が目に流れるんです…」

 

イムヤ「そ、それって…AIDAに感染して…」

 

綾波「部長たちの目を逃れるために…じ、自分でAIDAをリプログラミングして感染しました…で、でも…私頭でっかちですから…変なとこに腫瘍が…あはは…」

 

イムヤ「笑い事じゃないでしょ!?それ治療しなくて大丈夫なの…!?」

 

綾波「…したほうが…良いと思います…でも、今はそれどころじゃないので…早く逃げないと、追手が来ますよ…」

 

イムヤ「……後でちゃんと話し合おう…」

 

綾波「はい…」

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