元勇者提督   作:無し

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指揮官

大湊警備府

駆逐艦 不知火

 

最近の私は、孤立している

 

暁さんも私を避け、響さんは敵意を剥き出しにしている

 

何故私がこんな事になっているのか…正直全くわからない…私は師匠と何が違うのか…まるで、わからない…

 

不知火(私は、ただ守ろうと…いや、師のようになりたいと…)

 

暁「不知火さん」

 

不知火「……これは、その…どうも」

 

暁「最近はごめんなさい、響が近づくな…って言うから」

 

不知火「…何故、そんな事を…?」

 

暁「不知火さん、やっぱり自覚なかったのね…あなたの指揮は危なっかしいのよ…」

 

不知火「…私が…?」

 

暁「ここ一週間の出撃、私たちの隊と不知火さんの隊で所属が別れたけど…私達は9回の出撃で3人、不知火さんの所は20回で10人沈んでるわ」

 

不知火「…回数が増えれば当然…」

 

暁「違うでしょ」

 

不知火「……」

 

暁「不知火さん、今この辺りにキタカミさんは居ない、不知火さんなら無傷で勝てるような敵ばかりじゃない?」

 

不知火「…ええ、ここしばらくの出撃でダメージは負っていません」

 

暁「…まだわからない?」

 

不知火「何を…?」

 

暁「私は言い切れるわ、不知火さんの隊で沈んだ子達は、きっと死ぬ必要はなかった、運が悪かったとか…そう言う理由じゃ無くて、作戦が悪くて沈んでるの」

 

不知火「何を根拠に…!」

 

暁「じゃあなんで不知火さんは無傷なの?不知火さん1人だけが無傷なんて普通はありえない、こういう事は言いたくないけど、最初は私は貴方が他の子を盾にしてるんだと思ったくらいだもの」

 

不知火「…そんな」

 

暁「この戦いは個じゃない、1人で戦うのは危険なのに1人で戦ってる、だから生きてる…でも、その危険のツケを払うのは他の子なの」

 

不知火「……そんな事…」

 

暁「私はキタカミさんとは長くないけど…貴方のやってることは自分の実力を磨く事、それも射撃の腕だけを磨く事だけだと思う」

 

不知火「…私にどうしろと」

 

暁「全部最後まで言わせるの?」

 

不知火「…わかってます、そう、ですね…私は兵としては悪くないのでしょうが…誰かの命を受け持つには相応しくない」

 

暁「そこまでいったつもりはなかったけど…」

 

不知火「…私は、貴方の指示に従おうと思います、私に指揮は向いてないでしょうから」

 

暁「…それでいいの?」

 

不知火「人には長所と短所があります、短所は無くすことができるし、逆に長所にする人もいる…でも私はそこまで器用じゃありません…この不知火は…ただ愚直に従うのがやっとですから」

 

暁「いつか、避けられない時が来るわよ」

 

不知火「それまではただ学ぶに徹します」

 

暁「…よーし、じゃあ今度は私が怒られる番ね、響に」

 

不知火「やっぱりお忍びできてましたか」

 

暁「不知火さんは今はみんなに嫌われてるから」

 

不知火「…ストレートですね」

 

暁「隠した方が良かった?」

 

不知火「……いいえ、明日の出撃までに…用意をしておきます」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地 食堂

戦艦 扶桑

 

長門「せっかくの祝い事だと言うのに、こんな姿で忝い」

 

扶桑「いえ、私なんかの復帰を祝ってくれるだけでも…」

 

金剛「謙遜はNoネー!とっておきの紅茶を淹れちゃいました!エクストラダージリンとシッキム、ニルギリのOriginal blendネー!」

 

天龍「かなり渋いですが、嫌な風味はないですね…むしろ香りは甘くて…」

 

金剛「厳選された茶葉のみの最高の仕上がりデース、ん〜」

 

長門「…ところで、今更かもしれないが何故このメンバーなんだ…?」

 

天龍「…戦艦繋がり…今は違いますが、私も普段は日向ですし…」

 

扶桑「そうなんですね、これからは同じ艦種の仲間としてよろしくお願いします」

 

天龍「もちろんです、ですが艤装の準備に暫くかかるので…その間は御三方にお任せするしかないのですが…」

 

長門「私もこれだがな」

 

長門が固定された両足と片手を持ち上げる

 

金剛「ジャー、私達2人が頼りですネー」

 

扶桑「…頑張ります」

 

天龍「軽巡洋艦の層は…魔境ですので、お役に立てるか怪しいですが…天龍として御同行することがあれば微力でも」

 

長門「…魔境…川内型か」

 

金剛「大井と北上も中々強いデース」

 

天龍「…私自身の天龍としての練度はまだ高いとは言えません、日向の動きをすれば体が先走り、迂闊な動きも増える…かと言って天龍としての動きに固執しては…強みがない」

 

長門「強みが必要か…?」

 

天龍「…天龍としての動きの強みは癖がなく、必要な装備に換装することが容易でその場その場の役割を果たすことができる点……でしょう」

 

扶桑「日向さんとしての強みは…?」

 

天龍「戦艦としての高耐久、そして高火力…航空戦艦になる事ができれば一部艦載機の運用も可能です……妖精さんのご機嫌さえ戻れば…戻ればですけどね…」

 

長門(機嫌を損ねたのか…)

 

扶桑「…その両方の艤装を使えることが、貴方自身の強み…だと思うのだけれど…」

 

天龍「…私、自身の…?」

 

扶桑「先ほど言っていた、天龍としての強みにその場その場に合わせた装備の換装と言っていたけれど…それは艤装自体を換装する事とも言えると思うの」

 

天龍「…つまり…天龍として、日向としてではなく…私として…」

 

扶桑「戦艦と軽巡、両方の力を使えるなんてとっても素敵な事だと思うわ、それこそ周りに誇れるくらいの…だって誰も真似できないでしょう?」

 

天龍「…そう、かもしれません…」

 

扶桑「だから、自信を持って、みんなの前に立って良いと思うの」

 

天龍「…ありがとうございます、少しだけ自分が好きになれました」

 

青葉「あ、いた…扶桑さん」

 

扶桑「あら、私に用でしょうか…」

 

青葉「えと…はい、艤装を受け渡そうと思いまして…」

 

扶桑「…そう言えば、もらってませんでしたね」

 

長門「ははは、あのままだと金剛1人しか戦艦は戦えなかったわけか」

 

金剛(正直戦艦が居ても居なくてもバランスブレーカーの所為であんまり変わらないデース)

 

青葉「重すぎて運べないので…その…直接取りに来てもらっても良いですか…ごめんなさい」

 

扶桑「わかりました、みなさん、少し失礼します」

 

長門「ついでに試運転もしてくると良い」

 

天龍「ごゆっくり」

 

金剛「また新しいdrinkを用意しておきマース、扶桑はグリーンティーとコーヒーはどっちが好きデスカー?」

 

扶桑「…そうですね、やはり日本茶の方が…」

 

金剛「ジャあ、べにふうきというお茶を用意しマース、気にいると思うヨ?」

 

扶桑「楽しみにしてます」

 

 

 

 

 

 

研究所

 

扶桑「…ここは?」

 

青葉「…研究所、ですね…」

 

扶桑「研究所…?なんで…」

 

青葉「……すいません、両手をあげてください、ボディチェックをさせてもらいます…」

 

扶桑(…厳重すぎる…工廠じゃなく鎮守府の外で艤装を受け渡すと言うのも明らかにおかしい話なのに…一体…)

 

青葉「…盗聴器の類はなし…検査はどうしましょうか」

 

部屋の奥のモニターが明滅する

 

青葉「無しでいい…ですか…奥の部屋に」

 

扶桑(…私、どうなるのかしら…)

 

 

 

海斗「やあ、扶桑」

 

扶桑「提督…!ご無沙汰しております、扶桑、戻りました…」

 

海斗「おかえり…って言われるのは僕たちの方だったんだけどね…ごめん、ちょっと問題が起きてバタバタしてたから…こうやって君に会うのも遅れちゃって…」

 

扶桑「いえ…それより、ここは…」

 

海斗「まあ、詳しく話すと長くなるから…先に艤装を…春雨さん」

 

春雨「はいはい…ぬぐぅぅぅっ!…見てないで台車押すの手伝ってもらえませんかね…」

 

海斗「ごめん、すぐ行くよ」

 

艤装を乗せた台車を2人係で押してくる

 

春雨「はい、背負って背負って〜」

 

扶桑「はい…あれ…?」

 

扶桑(…軽く触れただけなのに…とてつもなく重く感じる…)

 

青葉「し、司令官…やっぱりこれ…重すぎます…」

 

海斗「青葉、無理しなくていいからね」

 

いつの間にか青葉さんも艤装を身につけて…

でも、ものすごく重そう…

 

扶桑「…いつものように…」

 

主砲を持ち上げようとするも、持ち上がらない

 

扶桑「え…」

 

海斗「やっぱり、人の体じゃ無理なのかな…」

 

扶桑「どう言う事でしょうか…」

 

モニターが降りてくる

 

ヘルバ『どうやら、そのようね』

 

青葉「ヘルバさん…私はなんとか耐えます…でも他の子達には…」

 

ヘルバ『別にいじめようってわけじゃない、心配ないわ…それにしても困ったわね、規格はそのままに作ったとしても…あの性能に及ばないどころか使えない…』

 

海斗「仕方ないか…」

 

扶桑「…あの、どういう…」

 

海斗「…扶桑、この世界で暮らしてた記憶はある?この世界の艦娘については何かわかる?」

 

扶桑「…青葉さんから大抵は聞いています…AIDAの事も…」

 

海斗「…艦娘はAIDAの力で艤装を動かしているみたいなんだ、だからAIDAを一切含まない、純粋な鉄の塊を作った」

 

ヘルバ『当然だけど人間がそんな質量の物体を持ち上げるのは不可能、もし持ち上げられたとして一発撃てば…骨が砕けるでしょうね』

 

海斗「瑞鳳さんや川内さん達はどうやってるの?」

 

ヘルバ『…さあ、もはやあれは規格外としか言えないわね』

 

青葉「私、聞いてきたんですけど…鍛えてるからって…」

 

海斗「…そっか」

 

扶桑(提督の顔が一気に暗く…私も鍛えた方がいいのかしら…)

 

青葉「…どうしましょう…流石に訓練すらしていない艦娘なんて恰好の餌…特務部が食いつかないわけがないです…」

 

海斗「うん…別に今は作戦に連れて行く必要はない、せめて訓練に参加している姿を見せられるようにしないと」

 

ヘルバ『威力をかなり落とす前提なら…反動や重さを抑えたものは作ることができるわ』

 

海斗「見せかけでいいんだ、深海棲艦を倒せる必要はないから」

 

ヘルバ『なら2日で用意できるわ、それまで粘りなさい』

 

海斗「ありがとう、助かるよ」

 

ヘルバ『その代わり約束は果たしなさい』

 

青葉「そうですよ、ちゃんとした検査を受けてくれる約束…忘れてませんよね…?」

 

扶桑「提督、どこか悪いのですか?」

 

海斗「いや、そう言うわけじゃ…」

 

青葉「…お願いします」

 

海斗「わかったよ…次の休みに行ってくる」

 

青葉「明日!」

 

海斗「…わかった、降参するよ」

 

青葉「よし…」

 

扶桑(青葉さん、逞しくなってますね…)

 

海斗(でもこれで今戦えるメンバーは…うーん…)

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地 島風部屋

駆逐艦 島風

 

天津風「…ねぇ、島風?」

 

島風「…うん」

 

天津風「なんていうか、その…何かあった?…その、雰囲気が…怖いんだけど」

 

島風「……」

 

島風(負けた…勝たなきゃいけなかった時に、負けちゃった…私は…)

 

天津風「ねぇ、島風…悩みがあるなら相談してよ、自分1人で抱え込まないで…」

 

島風「ごめんね…こればっかりは誰かに相談しても解決しないことだから…」

 

島風(…もっと早くなればいいのかな…でも、これ以上早くなったら私の身体は多分耐えきれない…もっと強くなるには、どうしたらいいのかな…)

 

天津風「そ、そうだ!気分転換にゲームしましょ!私頑張ってレベル上げたのよ」

 

島風「…ごめん、今から私訓練してくるから…」

 

天津風「今から…?まだ明日まで休んでもいいって言われてたのに…」

 

島風「休んでる暇なんてないよ…だって、みんなの命がかかってた、あの時もし倒せてたら…あの時私が足止めできてたらイムヤさんが助けに行く必要なんてなかった…」

 

島風(もっと、強くならなきゃ…)

 

天津風(…私も、戦えるようにならないといけないのかな…ううん、戦わなきゃいけないんだ、みんなのために)

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