元勇者提督   作:無し

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手招き

宿毛湾泊地

軽巡洋艦 川内

 

川内「逃げられた…って、ホントに!?」

 

那珂「声が大きいよ…そもそも青葉さんの異変のこと知ってる人自体が少ないんだから…」

 

川内「そ、それで…どうなるの」

 

那珂「捜索隊は出さないって…」

 

川内「…どうなってるの?というか…あーもう、わけわかんなくなってきた」

 

那珂「…うん、何で探そうとしないんだろう」

 

川内「深海棲艦になったから…としか思えないけど…」

 

那珂「だよねー…」

 

川内「…見張りが甘かったのは私達の責任だし、それについては反省するとして…いったい何で逃げ出したりなんか…」

 

曙「何、青葉の話?」

 

那珂「うわぁっ!?」

 

川内「あ、曙…」

 

曙「そんな反応してなくて良いから、青葉の事何か知ってるの?」

 

那珂「…えっと」

 

川内「何の話なのかわからないけど」

 

曙「…アンタらがそういう態度取るなら、無理にでも口を割らせるわよ」

 

川内「だから、何の話」

 

曙「ここは他所より確かに所属数が多い、だけど30そこらの人数なのよ、1人でも見かけなければそりゃ不自然に感じるでしょ」

 

川内「だから?何で私達」

 

曙「廊下でこそこそしてんのが悪いのよ、そんなの疑われて当然でしょ?」

 

川内「…それで?」

 

曙「疑わしきは拷問せよ…って、嘘よ、何で武器構えてるのよ」

 

那珂「…やるんじゃないの?」

 

曙「冗談に決まってるでしょ、アンタらが言えないなら仕方ないし…無理に聞くのはやめとくわ」

 

川内「…そう」

 

朧「あ、曙…」

 

朧達が集まる

 

潮「提督も知らないって…」

 

曙「チッ…隠し事ばっかして…あのクソ提督」

 

漣「ぼのたんは最近特に口悪いですなー…」

 

朧「……」

 

川内(そう言えば漣だけ記憶が戻ってないんだっけ)

 

那珂「…しょっぱい」

 

朧「え?」

 

那珂「…涙の味…?」

 

曙「何言って…?」

 

川内「…何で、みんな泣いてるの…?」

 

呆然とした表情で曙達が涙を流す

 

朧「…な、何でいきなり涙が…」

 

潮「へ、変だよ…何も悲しくないのに…」

 

漣「……あれ…」

 

曙「……」

 

漣「…うおーーーっ!」

 

潮「な、何!?」

 

漣「サザミーは全て思い出した!そう!ここはニューネクストワールドっ!」

 

川内「き、記憶戻ったんだ…良かったね…涙出たのと関係あるのかな」

 

朧「…曙が…」

 

那珂「曙ちゃんが…?」

 

曙「あたしの方見ないでくれる…あたしじゃない方よ、多分死んだ」

 

川内「…し、死んだ!?」

 

潮「…そんな事ない、絶対死んでないよ!」

 

朧「うん、死んでない…曙、混乱させる様なこと言わないで」

 

曙「死んだと思ったから死んだって言ってんのよ」

 

漣「まーまーぼのたん、今日はワタクシの記憶が戻った事を祝おうぜ!」

 

曙「黙れピンク」

 

漣「んー、もう一声!」

 

曙「能無しピンク」

 

漣「よし!いいストレート!」

 

朧「…漣、曙、とりあえず提督に記憶が戻った事、伝えに行こう」

 

漣「っしゃー!」

 

曙「…ついでに刺してやろうかしら」

 

潮「だ、ダメだよ!」

 

川内「……」

 

那珂「なんて言うか…怖いね」

 

川内「うん、怖い…」

 

那珂「…何かの拍子に壊れちゃいそうで…見てて怖いよ」

 

川内「それもそうだけど…あの曙がやられるほどの相手って…」

 

那珂「キタカミさんとかじゃないの…?」

 

川内「…わからない、勝っても負けてもおかしくないから、わからない」

 

 

 

 

 

マンション

駆逐艦 綾波

 

綾波「…おええ…」

 

イムヤ「大丈夫?ここ暫く吐きっぱなしだけど…」

 

綾波「そ、それだけ…今が、幸せなんです…」

 

イムヤ(相変わらずよくわからない体質…)

 

綾波「…研究…す、進めないと…」

 

イムヤ「もう少しのんびりしても良いんじゃない?」

 

綾波「い、いいえ…いつここを出なきゃならないか、わかりませんから…す、少しでも早く完成させなきゃ…」

 

イムヤ「…何か手伝えない?」

 

綾波「お気持ちだけ…む、難しいことですから…」

 

イムヤ「そっか…私部屋にいるから、必要なら呼んでね」

 

綾波「……よ、ようやく、1人になれた…」

 

パソコンを操作する

 

綾波「…アクセスできた…特務部のネットワーク…こ、これを潰すことができれば…でも、どうすれば…」

 

文字列を眺める

 

綾波「……え、これって…AIDAじゃ、ない…?」

 

身体が自然と動く

AIDAが未知の領域だとすれば、これはヒトの領域

自然と手が届いてしまった

 

綾波「…これって……艦娘システムの、強化プログラム…?…違う、単純な強化じゃない…これは……」

 

 

 

 

 

 

綾波「…そう、なんだ…コレがあれば救える人はもっと増え…アハッ…アア…アハハッ…!」

 

頭を押さえてうずくまる

 

綾波「な、何、コレ…!アハハハハハハ!…キモチイイ…頭が焼け爛れるみたいで、空気に溶けるみたいで……ぁ…あが…こ、壊れる…?」

 

甘い罠

それに触れた途端何もかもが壊れていく

 

綾波(…お、落ち着いて…コレに惑わされちゃダメ…!)

 

徐々に何かに侵される感覚が全身を支配する

身体中が痺れ、高揚感に包まれる

 

綾波「………アハッ」

 

隠した曙の短剣を取り出す

 

綾波「…そうするしか、ないですよねぇ…敷波、お姉ちゃんは…此処ですよ」

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地 演習場

駆逐艦 島風

 

島風「でりゃあああ!」

 

日向「っ…く…!」

 

最高速度での突進、そしてその勢いのままの斬撃と周囲からの砲撃

時速200キロを超えるこの速度を捉えることなど普通なら無理なのに…

 

日向「…其処です!」

 

島風「ぁぐ…!…な、んで…なんで!こんなに速いのに…」

 

日向「動きが単調なんです…だから、キタカミさんにも…通用しなかった、ゴホッ……でも、演習じゃなければ私は初撃でやられていたと思います…」

 

島風(このままじゃダメ、私はもっと強くならなきゃ行けないのに…)

 

日向「…島風さんの旋回はすごく読みやすいんです、連装砲さんを軸に其処から勢いを殺さずUターン、とても速く、普通なら対処できませんが…くる場所さえ読めば攻撃を置ける」

 

島風「…置ける…」

 

日向「例えば…」

 

日向さんが刀を抜き、水平に構える

 

日向「わかりますか…これは島風さんの移動時の首の高さです…」

 

島風「…!」

 

日向「もし、私がこうしていたとしたら…」

 

島風(死んでた、そうだ、当然死んでた…!)

 

島風「…どうすれば良かった、ですか…」

 

日向「ゼロ距離での接近戦を仕掛けるなら其処までの速度は必要ないでしょう、速度を少し落として相手の目の前で急旋回したり、とにかく読まれない動きをしてみてはどうでしょうか」

 

島風「…速度を落として…」

 

日向「島風さんのスタイルは私の戦闘スタイルとは違いすぎるんです、なのでできる助言は望んでいる形とは少し違うと思いますけど…」

 

島風「……」

 

龍驤「お、おったおった」

 

日向「龍驤さん、どうかされましたか?」

 

龍驤「司令官がお呼びや、2人とも来てくれるか?」

 

島風「…提督が?」

 

日向「…今日は非番だったのですが…」

 

龍驤「そーなんか?訓練ばっかしとるからてっきり…」

 

日向「…その…悔しくて…」

 

島風「私も…」

 

 

 

 

執務室

 

海斗「わざわざ休みにごめんね」

 

日向「いえ…私達に御用命との事ですが…何でしょうか」

 

海斗「待って、他のメンバーもいま来るから」

 

島風「他のメンバー…って、海域攻略って事…?」

 

海斗「うん、台湾方面の作戦がひと段落ついたばかりだけど…もう一度出向くことになった」

 

島風(…出撃を重ねれば、もっと強くなれる…)

 

北上「…来たけどさ、あのさぁ、今日休みじゃなかったの?何でわざわざ呼び出し食らわなきゃ何ないわけ?」

 

日向(…すごく機嫌が悪いですね…)

 

海斗「ごめん、休みは別に用意するよ」

 

島風「…3人だけ?」

 

海斗「残りは佐世保のメンバーだよ」

 

日向「…それで、どう言う作戦でしょうか」

 

海斗「フィリピンから救援を求められてる、台湾の高雄とフィリピンのマニラ間の敵を倒してルートの安全を確保するのが目的だ」

 

日向「成る程」

 

海斗「それと…日本付近の深海棲艦は戦線を下げたみたいなんだ、前回の基地破壊のおかげでその海域も、台湾までのルートも深海棲艦は少ないらしいよ」

 

北上「じゃあ自分らでやれっての…」

 

島風「…それで…?」

 

海斗「その海域では敵空母と戦艦が確認されてる、十分すぎる注意をして作戦に臨んでほしい」

 

日向「…提督、せっかく私を選んでいただきましたが…天龍として出撃させてくれませんか」

 

海斗「構わないよ」

 

日向(天龍としての戦いを磨かないといけない、天龍として勝たなければならない相手がいる…)

 

島風「佐世保のメンバーは?」

 

海斗「航空巡洋艦として鈴谷さん、それから駆逐艦に陽炎さん、水上機母艦として秋津洲さん」

 

島風「アキツシマ?」

 

海斗「つい先日着任したらしいんだ、実技テストでも優秀だったから今回の作戦に参加させるように本部から通達もあったみたいで」

 

北上「つまりエリートって事ね…だる」

 

島風「…よし、頑張る…」

 

日向「無事に戻れる様に頑張りましょう」

 

海斗「…それと、島風」

 

島風「…?」

 

海斗「速さを活かした戦いがしたいんだよね」

 

島風「…そう、だけど…」

 

海斗「なら、今回旗艦は日向に任せるけど、先頭に立ってみない?」

 

島風「…先頭」

 

海斗「君の速度なら敵の攻撃はまず当たらない、最初に敵の陣形に入り込めば敵の動きを崩せるし、砲雷撃をしながら敵の注意を集めてくれればきっと敵の戦艦や空母を叩きやすくなる」

 

日向「…でも、それはリスクがあるのでは…」

 

島風「いや、やりたい…私やりたい!」

 

海斗「確かに1番危険な役目だけど、島風なら問題無いはずだよ」

 

日向「…確かに島風さんの強さは泊地の誰もがしるところですが…佐世保の方達とも足並みを揃えるべきだと思います」

 

海斗「それが…今回の作戦の細かな内容はこっちに任せられてるんだ、佐世保は今バタバタしてるからって」

 

島風「…何かあった…?」

 

海斗「…ちょっと言えないかな、もう少し細かい作戦については明日話そう、作戦が終わったら休暇も用意するよ」

 

北上「…チッ…」

 

日向(北上さん、先日とは随分雰囲気が…悪い意味で別人の様ですね)

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

駆逐艦 陽炎

 

度会「作戦の大雑把な内容が決まった、一応目を通しておけ」

 

資料を受け取り、眺める

何一つ頭に入ってこない、ただ文字を眺めても、気は紛れない

 

陽炎「……」

 

度会「…今日はもう良い、行ってこい」

 

陽炎「行っても虚しいだけ、それに今朝もう顔を見てきたの」

 

度会「…そうか」

 

陽炎「…何で、意識不明になんか…秋雲…!」

 

陽炎(私を焚き付けておいて…あの時、私を引き留めたくせに…なんでこんな…)

 

瑞鳳「陽炎」

 

陽炎「…瑞鳳さん」

 

度会「瑞鳳…それは、どうした?」

 

巨大な段ボール箱の乗った台車を押した瑞鳳さん…

 

瑞鳳「パソコン、とりあえず買えるやつを買ってきたの」

 

陽炎「…な、なんで…?」

 

瑞鳳「秋雲のこと、やれるだけはやりたいでしょ、人任せにしたく無い…違う?」

 

度会「…お前、まさか…」

 

瑞鳳「私もThe・World始める、今の陽炎が出撃したところで沈んで帰ってこないのがオチだし、秋雲の為にも…」

 

陽炎「…瑞鳳さんはキタカミさんを助けたいんじゃ…」

 

瑞鳳「今のキタカミさんには、私の声は届かないよ、それに…目の前の仲間を放っておいたりなんかしたらそれこそ…深海に落ちたのと何も変わらないよ」

 

度会「今のThe・Worldは危険だ」

 

瑞鳳「だから、2人でやる…1人より2人の方が安全だから」

 

陽炎「……司令、今だけ見逃して、お願い!」

 

度会「…すぐに解決するとも限らない」

 

瑞鳳「構わない、どのみち行動しなきゃ解決なんてしないから」

 

陽炎「司令…」

 

度会「……はぁ…瑞鳳、お前ゲームした事は?」

 

瑞鳳「…あんまりない」

 

度会「俺も、時間がある時は手を貸す」

 

陽炎「ホントに!?やった!」

 

瑞鳳「…まあ、まだ安心…か」

 

陽炎「…絶対助けるからね、秋雲」

 

 

 

 

宿毛湾泊地 執務室

提督 倉持海斗

 

海斗「コレで全部か…」

 

コピー機から書類を取り出し、読む

 

海斗(春雨さんが送り付けてきた書類…内容は綾波がやったとされてる事件の詳細内容…つまり、僕に綾波の潔白を証明しろ…という事…どうしたらいいんだろう)

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