元勇者提督 作:無し
宿毛湾博多
駆逐艦 朧
朧「まさか結局4時間もかかるとは思いませんでした…」
那珂「味方のはずなのに撃たれるし…受け渡し用のドローンが2回撃ち落とされるし…」
神通「結局手渡しになりましたし、大変でしたね」
朧「はい…でも、良い経験になりました、ありがとうございました」
那珂(まー、居候みたいな存在だし仕事しないとね)
神通(ちょうど戦闘データも取りたかったのでこちらも助かりましたが)
朧「…あれ?あそこにいるの…」
那珂「島風ちゃんと…春雨ちゃんに姉さん…って、なに?あれ」
朧「的当て…?演習の一環?」
島風の前に並んだ標的が一気に崩れ落ちる
神通(早い…それにあの動き…まさか)
那珂「暴走…!」
駆逐艦 島風
島風(5秒経過…まだ意識に影響はない…)
春雨「この運動性能…人の範疇超えてる!」
川内「これ…本当に大丈夫なんだよね!?」
二人の間をすり抜けながら攻撃を加える
一撃一撃を関節などの重要な場所に…
島風(見える、どこを攻撃すれば良いか…どの角度なら良いのか)
川内「跳んっ…!」
春雨「背後!」
島風(15秒…そろそろ、限界…!)
攻撃の寸前にスイッチを切る
川内(動きが鈍った!)
春雨(今!)
同時にカウンターを叩き込まれ、水面を無様に転がる
島風「いっ…たーい…」
川内「はぁ…はぁ……意識、あるんだ…」
春雨「殺されるかと…思った…!」
島風(…やっぱり、このスイッチを使うと私じゃない動きができる…私がしなきゃいけない動きをしてくれる…このスイッチがあれば、強くなれる…)
朧「島風」
島風「あ…朧」
朧「今のは…暴走してたの?」
島風「違うよ、私の意思でコントロールしてた…長い時間は無理だけど、少しの間なら私の意思で戦える…!」
朧「…でもそれって一歩間違えば…」
島風「あのレ級を倒すにはこれしかないんだよ」
朧「言いたい事はわかるけど…みんなで力を合わせれば…」
島風「みんながいるかわからない、もしかしたらみんなが怪我した後に合流することになるかもしれない…あのレ級は別格だよ…」
川内「…確かに、あの時大阪で会ったレ級は格が違う…台湾の時のレ級よりずっとヤバい、それはわかるけど…個人技でどうにかなる相手じゃない」
島風「どうにかして見せます!」
川内(…次あのレ級が出てきたら…出せる全部の手を出してどれだけ傷を負わせられるのか、神通達と一緒に戦えば勝ち目はあるのか…)
春雨(レ級の中にも上位個体がいる…ちゃんと理解しておかないと痛い目を見ることになりますね)
佐世保鎮守府
正規空母 瑞鶴
瑞鶴「こっちに攻めてきてる?」
度会「ああ、哨戒中の叢雲達が発見した、もうお前以外は全員防衛に向かわせている」
瑞鶴「うわー、すっかり寝過ごしてたから…」
度会「急いで向かってくれ、最悪陸上戦も想定される」
瑞鶴「はいはい、すぐ行きますよーっと」
度会「宿毛湾に救援の依頼を出したが到着は20分後だ、油断するな」
瑞鶴「…わかってるっての」
艤装を装着して即座に出撃する
瑞鶴(…5分で到着か、先に艦載機出して…いや、一気にやるか!)
矢筒から矢を引き抜き引き絞る
瑞鶴「見ておいで!ついでに全滅させちゃえ」
艦載機を半分発艦する
瑞鶴(さて……お、居た、龍田達…)
瑞鶴「おーい、龍田ー」
龍田「あら〜、遅かったわね?」
瑞鶴「ごめんごめん、寝坊しちゃって…葛城、敵の進み具合は?」
葛城「3分で交戦範囲に入ります!」
瑞鶴「よし、私達はもう少し後退して防空に努めるわ、叢雲達はいつ合流予定?」
陽炎「十分後です、なので私たちが交戦して大体片付いた頃に」
瑞鶴「OK!よーし、やるわ…よ…?」
葛城「…航空戦始まりました!此方劣勢です!」
龍田「劣勢?」
葛城「急いで次を…」
瑞鶴「待って葛城、残りは?」
葛城「艦戦20と艦攻15です」
瑞鶴「…私も似たようなものね、艦戦で防空に専念、艦攻は温存して」
葛城「わかりました!」
龍田「見えたわねー」
葛城「瑞鶴先輩!」
瑞鶴「…待って、敵の編成がわかった、戦艦級5、重巡2、軽巡4、駆逐級20」
葛城「合計…30?待ってください、空母は?」
瑞鶴「…居ない、そうか、レ級、航空戦ができる戦艦…!叢雲達を大回りして撤退させて!」
龍田「大丈夫、瑞鳳ちゃんがついてるわ〜」
瑞鶴「瑞鳳…なら……とにかく時間を稼ぐのを優先して、レ級はまともにやりあう相手じゃない、良い!?」
龍田「了解…って言いたいけど…もうそこまで来てるのよね〜」
陽炎「敵砲撃きます!」
瑞鶴「回避行動!」
葛城「敵航空機、抜けて来ました!」
瑞鶴「艦戦全部出して!街に一つも入れないで!」
葛城「全機発艦!」
砲撃の音が響く
激しく音が響き続ける
瑞鶴(…あれ…?)
何かの音がする、周囲の音が消える
瑞鶴「な、何が…た、龍田!?陽炎も…なんで止まって…!」
龍田と陽炎がダラリと腕を垂らし、虚な目で海面を見つめて静止している
葛城「ず、瑞鶴先輩!敵が!」
レ級「キヒヒッ!」
瑞鶴(不味い、絶対不味い!陽炎と龍田に何が…)
ザワザワと音が響く
嫌な音が伝わってくる
瑞鶴(この音、AIDA…)
レ級「ガッ!?」
レ級の左胸に龍田の槍が突き刺さる
瑞鶴「な、投げた…?ちょっと龍田、さっきのは…」
龍田「……」
瑞鶴「…何、その目…」
葛城「目が燃えて…」
左目に青い炎を灯した龍田がレ級にゆっくりと近づく
レ級「ギ…シシッ…!」
龍田「……」
瑞鶴「ちょ…ちょっと龍田!」
暴力
抵抗する暇を与えずの殴る蹴る
しかしレ級にはあまり効いていない…
瑞鶴(そもそも龍田は加虐趣味だけどこんな戦い方したことない…)
レ級「オマエ…!」
レ級が起きあがろうとした瞬間に槍を引き抜き両脚を切り落とす
レ級「効クカ!」
即座に再生し、立ち上がり尻尾を伸ばす
龍田「……」
レ級の尻尾が落ちる
レ級「ガァァッ!!クソッ!ナンテ事シヤガ…」
レ級の首が斬り落とされる
瑞鶴(あのレ級をいとも簡単に…暴走状態ってそんなに能力が上がるって事…?)
葛城「ず、瑞鶴先輩!陽炎さんが…」
瑞鶴「陽炎…そうだ、陽炎どこ!?」
葛城「敵の陣形に突っ込みました…」
瑞鶴「なんて事してんの!あーもう!瑞鳳!瑞鳳聞こえる!?」
瑞鳳『何、こっち忙しい!』
瑞鶴「状況は!?」
瑞鳳『叢雲達に襲われてる!急に暴れ出して…あーもう!秋津洲先に逃げて!庇いきれない!』
瑞鶴(急に暴れ出した…って暴走状態って事よね…)
瑞鶴「た、多分だけど深海棲艦にぶつければ安全だと…」
瑞鳳『そうしたいけどできない!砲雷撃の精度が跳ね上がっててまともに逃げられないの!』
瑞鶴「瑞鳳も救援がいるか…!」
瑞鶴(どうする?瑞鳳を助けに行ったとして…どうやってみんなを正気に…いや、陽炎も見捨てるわけには…)
葛城「瑞鶴先輩、私陽炎さんを助けに行きます!ですから瑞鶴先輩は瑞鳳さんを!」
瑞鶴「葛城…アンタもうロクに艦載機いない上にまともな装備ないでしょ!?」
葛城「副砲が一つ、やれるだけの事はやりますから…!」
瑞鶴「…宿毛湾の艦隊がこっちに向かってる、上手く合流しなさいよ!」
葛城「はい!」
駆逐艦 朧
朧「神通さん、大丈夫ですか?」
神通「…何故私の心配を」
那珂「神通姉さんなんか眠そうだったから」
神通「目を細めてるのは遠見の為です…!」
朧「す、すいません…」
神通「しかし、人使いが荒いですね…次は佐世保の救援とは」
那珂「陸戦もできる子は限られてるしー、それに韓国に行ってたの知らなかったみたいだし!」
朧「そうですね…」
神通「…見えました、遠方に…深海棲艦の群れと…2人」
那珂「2人…?……血の味が凄いんだけど…」
朧「…ここまで血の匂いがしますね」
神通「…ええ…やや、鉄臭い…様な」
那珂「さっきから通信試してるけど全然応答しないよ…」
神通「…相当劣勢な様です」
神通さんが槍を持ち、腕に沿わせる
神通「……ここ、か…撃ちます」
神通さんが槍を投擲する
神通「よし…那珂ちゃん用意してください…30秒で最大射程に入りますよ」
那珂「雷撃から仕掛けるよ!」
神通「朧さんは私たちから決して離れない様に、足元の警戒を」
朧「はい!」
朧(いきなり海に引き摺り込まれさえしなければ…)
那珂「魚雷行ったよ!」
神通「良いルートです、速度を上げますよ」
那珂「神通姉さん、前に出て!」
神通「単縦陣を維持したまま…っ!真下に何か居た…!」
朧「爆雷投下します!」
爆雷をばら撒く
那珂「今の、潜水艦…じゃない?」
神通「わかりません、一瞬で注視する暇もなかった…」
朧「…那珂さん!居ます!」
那珂の足元から黒い触手が伸びてくる
那珂「うわ!こういう路線はNGだよ!」
朧(いつもみたいに腕が出てくるわけじゃない…これは…)
神通「輸送艦です!右前方に爆雷を!」
朧「はい!」
爆雷を投げ込む
神通「これはオマケです!」
水柱に巻き上げられる様にバラバラの黒いカケラが浮いてくる
朧「…輸送艦もこんな事を…?」
神通「…一切、油断できませんね」
朧(そう言えば秋月は捕虜だったっけ…こうやって連れ去られて…いや、記憶喪失の説明がつかない…)
那珂「ようやくまともに敵が見えて来た!単縦陣を維持したまま行くよ!」
朧「はい!」
神通「…戦艦レ級2対確認、その他駆逐級が12、軽巡級1のみです」
那珂「っと…!流れ弾来てる!」
神通「心配は要りませんよ、全て防ぎます」
朧(安心感凄いなぁ…でも)
飛んできた砲弾に狙いをつけ機銃で撃ち落とす
朧「…炸裂させるのに3発か…戦艦級の弾…」
神通「…貴方にもできるんですね」
朧「伊達に…あそこに居ませんから」
那珂「総じて化け物って訳だー…っと?今度は何?」
朧「…あそこ!航空機…!かなり低い位置に…!」
神通「二式大艇…今飛び降りたのは…瑞鳳さんか…」
那珂「えっ」
軽空母 瑞鳳
瑞鳳「これで四つ!」
駆逐級を掴んで投げ飛ばす
瑞鳳「陽炎!葛城!無事!?」
葛城「…あ……ず、瑞鳳さ…」
瑞鳳(大きい怪我は火傷と裂傷、それにこの小さい銃創は機銃…しかも艦載機用の特に小さいやつ…!艦載機も残ってないのにこんなとこまで来るから…)
瑞鳳「瑞鶴も今こっちに向かってる…少しだけ耐えて」
葛城「お、お願いします…」
瑞鳳(陽炎は…匂いが少し遠い…いや、血の匂いが濃すぎてそう感じてるだけ…急がないと……待って、別の血の匂いが近づいて…)
背後から飛んできた血塗れの槍をギリギリでかわす
瑞鳳「龍田…!叢雲達と同じ状態って訳だ…」
龍田「……」
瑞鳳(こっちに注意を向けて…深海棲艦にぶつけないと)
龍田が速力を上げて葛城に近づく
瑞鳳「マズ…!」
弓を取り出し矢を引き絞る
葛城「た、龍田さん…?」
龍田の腕が葛城に伸びる
瑞鳳(腕一本…射抜くしかない…!)
放った矢を容易く受け止められる
瑞鳳「なっ…」
龍田「……?」
掴んだ矢を投げ捨て、龍田がこちらを見る
瑞鳳「予定外だけど…そう、こっちを見て…こっちに…!」
龍田「……」
龍田の狙いがこちらに変わる
瑞鳳(良し、このまま…!)
深海棲艦の陣形に斬り込む
レ級「キシッ!」
瑞鳳「台湾で見た顔…潰させてもらうよ」
すれ違い様にレ級の尻尾を両手で掴み、引きずる
レ級「離セ!」
瑞鳳「はい、離した」
レ級を前方に投げ捨てる
神通「ナイスパスです」
那珂「せーの!」
レ級の尻尾が斬り落とされ、頭が潰される
瑞鳳「うわっ…何かかかったんだけど……来てくれて助かったよ、多分」
神通「そうですか」
那珂「状況は!?」
瑞鳳「要救助者は多分2、深海棲艦は見た通り!」
軽巡級を捕まえ矢を突き刺す
朧「あそこにいるのは…陽炎…?」
瑞鳳「陽炎?…居た!」
レ級と砲撃戦を繰り広げている陽炎
瑞鳳(…待って、無傷?レ級相手に…)
朧「助けに行かないと!」
神通(あの動き…島風さんに近い…?)
レ級の尻尾が陽炎を弾き飛ばす
しかし陽炎は崩れた体制のままレ級へ砲撃を続ける
朧「ここ…!」
朧の砲撃がレ級の尻尾に炸裂する
レ級「…キヒヒッ」
レ級がこちらを向く
神通「イラつくんですよ…貴方の笑い声」
レ級の尻尾を神通が切り落とす
瑞鳳「なんで尻尾あると再生するのかとか気になるけど…」
レ級の両肩を射抜く
神通「気にする必要はないと思います」
レ級の首が海面を転がる
神通「多対一に持ち込めば…なんとかなります」
瑞鳳(…深海棲艦の匂いもかなり少ない…陽炎達の制圧も急がないと…)
陽炎「……っ…」
陽炎が水面に膝をつく
瑞鳳「陽炎!」
陽炎「…な、にが…」
瑞鳳(意識が戻った…?)
陽炎「…瑞鳳さん…私、どうなって…」
瑞鳳「よかった…陽炎は元に…」
瑞鳳(いや、安易に元に戻ったとは…でも、とにかく残りの殲滅と救助活動が優先だし…)
瑞鳳「…そうだ、瑞鶴!聞こえてる!?そっちの状況は」
瑞鶴『うるさいから叫ばないで…叢雲も磯風も、みんな意識が戻って正常に会話できる様になってる…今二式大艇でそっちに向かってるから』
瑞鳳「…了解…葛城」
葛城『こちら葛城、龍田さんと合流しました…正気に戻ってる様です、どうぞ』
瑞鳳「了解…周囲の深海棲艦を全滅させてから帰投する」
神通「もう一仕事ですか」
瑞鳳「…任せて良いの?」
那珂「その為に来たしー…陽炎ちゃん、立てないみたいだし?」
陽炎は先程から立ち上がろうとするたびに体制を崩し、倒れるを繰り返している
瑞鳳(バランス感覚を失ってるのか、それとも…)
瑞鳳「陽炎、肩貸すから…」
陽炎「すいません…」
神通「あとは任せてください」
瑞鳳(…調べなきゃいけない事がまた増えた……それにしても、神通の動き…何か、おかしい気がする)
神通「残りは少ない駆逐級です、しかし油断せず」
朧「はい!」