元勇者提督   作:無し

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異端分子

佐世保鎮守府

軽巡洋艦 天龍

 

天龍「任務を果たせず申し訳ありません」

 

度会「いや…しかし早急に防衛体制を整える必要があるな…」

 

天龍「それにつきましては応援を要請してありますので」

 

度会「…助かる、それと龍田についてだが…」

 

天龍「許可は取ったと本人が…」

 

度会「出した覚えはないんだがな…まあ、いい…すまない、今は休んでくれ」

 

天龍「では、失礼します」

 

 

 

天龍(…深海棲艦の行動は読めない、こちらの行動が無駄になる事も少なくない…今回だって取り越し苦労になりかねない…)

 

龍田「あら〜、天龍ちゃんじゃない」

 

天龍「…龍田さん、もうお身体は良いんですか?」

 

龍田「大丈夫よ〜…それより、お話、しない?」

 

天龍(話…少し休みたかったのに…)

 

天龍「…まあ、手短になら構いませんが」

 

龍田「大丈夫、直ぐ終わるから〜」

 

 

 

 

天龍「…ここは」

 

龍田「倉庫、と言っても誰も使ってない所だけど〜、ほら、静かでしょ?」

 

天龍「誰かに聞かれたく無い話でしたか」

 

龍田「うーん…ちょっと違うかなぁ…」

 

龍田が槍を壁に立てかける

それに倣い、刀を床に置く

 

龍田「天龍ちゃんは…私の事どう思ってる?」

 

天龍(…なんと答えたものか、龍田さんにも精神面での疲弊もきっとあるはず、余計に気負わせるような言動は良く無い…しかし本音を言えば苦手な部分もある…)

 

龍田「何を考えることがあるのかしら…素直に言えば良いのよ、嫌いなら嫌いって…」

 

天龍「…嫌いと言うほどでは…」

 

龍田「ああ、そうなのね〜…やっぱりそう、わかってたけど、すごく悲しい…」

 

天龍(…待って、何かおかしい…)

 

竜田が近寄ってくる

 

龍田「天龍ちゃんは私が好きじゃ無い…」

 

足元の刀に視線を落とすものの顎を持ち上げられ無理やり視線を龍田に向けられる

 

龍田「なんで?」

 

天龍「…私は天龍であると同時に日向です、私は日向として生まれた、日向であることに強い執着がある…」

 

龍田「でも今は天龍ちゃんじゃない、なんでなの?私は天龍ちゃんの妹なのよ〜?」

 

龍田の手が顔を撫でる

そして、龍田の指が左目へと伸びる

 

天龍「離してください」

 

龍田の手をはたき、避けるように遠ざかる

 

龍田「…やっぱりね、私天龍ちゃんにその目が有るのは不思議なの…なんで眼帯をしてないの?」

 

天龍「つける理由がないだけです、規定の制服を着用してない方もいますし」

 

龍田「…そう、じゃあ理由があれば眼帯をしてくれるのね?」

 

龍田がいつの間にか私の刀を手に取り、スラリと音を立てて抜く

投げ捨てられた鞘が廃材にぶつかって大きな音が響く

 

天龍「…貴方、何を考えて…」

 

龍田「眼帯をするならその目は見えなくて良いわね〜」

 

目だけを狙った突きを此方に向けて放ってくる

 

天龍(正気じゃ無い!やはりあのレ級に何か…)

 

後方に下がりながら攻撃を避ける

 

龍田「どうして逃げるの?ほら、痛いのは直ぐ終わるから…逃げないでよ、ねぇ」

 

天龍(…この倉庫と建物の距離的に誰かが気づいてくれるのは…望み薄か、それにこの突き、油断すれば死にかねない…)

 

龍田「ねぇ、今誰のこと考えてるの?」

 

天龍「…私が今考えてるのは、どうすれば貴方からその刀を取り上げられるのか…それだけです」

 

天龍(どうする、今は目に固執してるけど…)

 

龍田「あんまり動くと上手くいかないわね…ちょっと痛い思いをしてもらうわよ〜」

 

天龍(…廃材を拾って武器に…いや、それは無理か…拾う間に斬りかかられたら対処のしようがない…そうなれば…)

 

壁に立てかけられた龍田の槍をチラリと見る

 

龍田「ねぇ、どうしてその目は私の方を向いてないの?」

 

天龍「貴方が私の妹でありたいと願うのでしたら…まず姉に刃を向ける事は間違いです」

 

龍田「間違い…?私は、間違ってなんかない…!」

 

天龍(これは…ッ!)

 

先程までとは違う太刀筋

身を退かねば致命傷になり得る軌道…

 

天龍(…説得が通じる相手じゃない…いや、分かりきっていた事…ここまで来た以上、向こうも引き下がりはしないか)

 

龍田「ようやくわかった…貴方は偽物なのね…天龍ちゃんじゃない…でも、心を入れ替えて天龍ちゃんのマネをしてるなら本当の天龍ちゃんに会えるまでは可愛がってあげる…!」

 

天龍「お断りします、私は人形じゃない…」

 

天龍(しかし、このままでは追い詰められて殺される…脇を抜けるにも隙がない…となれば、正面から行くしかない…刀を振りかぶった瞬間に腕を獲る…!)

 

龍田「あら?やる気なの?本当に?」

 

龍田がコツコツと挑発するように足音を鳴らしながら近づいてくる

 

天龍(…間合いまで後4歩…3歩…踏み込んだ!?)

 

龍田が床を蹴り、刀を突き出す

 

天龍(不味い!反応が…)

 

脇腹に焼けるような痛みが走る

 

天龍「ああ…っ…!」

 

龍田「ねぇ、私を見てよ、天龍ちゃん」

 

血と肉を擦るような音を鳴らしながら刀が抜かれる

 

天龍「う……ああ…!」

 

膝をつき、そして両手を突く

熱いものが流れ落ちる感覚、そして急激な眩暈

 

龍田「なんでまだ私を見てくれないの?」

 

龍田に手を蹴られ、地面を転がる

 

龍田「私を見て、ほら…天龍ちゃん」

 

天龍(…地面に横たわったのは…不味い…立ち上がろうとしたらどうなるのか…)

 

龍田が刀に滴る血を指で拭い、口に含む

 

龍田「…天龍ちゃんってこんな味なのねぇ…」

 

ニタリと笑顔を向けられる

 

天龍「…本当に刺す人が…ありますか…」

 

傷口に片手を当て、強く握りしめる

 

龍田「お説教?良いわよ〜、お姉ちゃんっぽくて」

 

天龍(…痛みのない勝利は存在しない…)

 

空いた片手で刃を掴む

 

龍田「あら?手が斬れてるわよ〜?」

 

天龍(…刃の腹をしっかり握れ…力を込めろ…大丈夫)

 

天龍「ふっ!」

 

刀の切先を床に突き刺す

 

龍田「あら、そんな事して何になるの?時間稼ぎにも…」

 

天龍「本命はこっちです!」

 

手に溜まった血を龍田の顔目掛けて放つ

 

龍田「あら…やだ、目が…」

 

天龍(今!)

 

立ち上がり、龍田の槍まで走る

 

龍田「…何を…あら?…させない」

 

背後から走ってくる足音、そして空気を切る音…

 

天龍(稼げた時間はあまりにも僅か…でも…)

 

槍を掴み、振り向きざまに振るう

槍の柄と刃がぶつかり、振動が全身に伝わる

 

天龍「…重い…」

 

龍田「それでも軽いのよ〜?」

 

龍田の斬撃を槍で防ぐ

 

天龍(使い慣れない…だけど、無いよりは断然マシ…)

 

龍田「随分抵抗するのね…悲しいわ」

 

天龍(…頭がぼうっとする…出血も多過ぎる…早く勝負を決めないと…)

 

天龍「…ここらで終わるつもりはありませんか…私は今回の事を報告するつもりは…」

 

龍田「無いわよ〜?」

 

龍田の刀が左目の直ぐ前を通り過ぎる

 

天龍(っ……動きが鈍ったからまた左目を…いや、これは好都合か…)

 

天龍「…片目くらい…」

 

龍田「あら?」

 

天龍「…貴方に一つだけ言っておかないといけない事があります、人に刃物は向けてはいけません…誰にも習いませんでしたか」

 

龍田「だーれも、そんな事言わなかったわよ?」

 

天龍「…なら、私が教えましょう」

 

龍田が踏み込み、左目へと突きを放つ

 

天龍(…今)

 

槍を振るい、石突で龍田の肩を突く

 

龍田「っ…痛い、じゃない……あら?」

 

刀が床に落ちる

 

天龍「ふっ」

 

肩と手首を石突で突き、柄で脚を払う

 

龍田「あら…なんで、手が動かな…」

 

天龍「痺れてるんですよ…それだけです……」

 

刀を拾い上げ、壁に寄り掛かる

 

左目に手を当てる

 

天龍(…血…左目は間に合わなかったかな…)

 

倉庫の扉が音を立てて開く

 

春雨「居ました!」

 

曙「な…ここで何が…」

 

天龍「…良かった…来てくれて…」

 

槍と刀を手放し、壁に背中を擦りながら地面に腰を下ろす

 

曙「天龍、その怪我…!」

 

天龍「龍田さんを…拘束してください……暴走時とは違いますが、異常です」

 

龍田「異常…?私が?そんな訳…」

 

春雨「いや、その前に試すべき事が…」

 

春雨が機器を取り出し、龍田に向ける

 

春雨「さて、データドレイン、行きますか」

 

曙「…データドレイン?」

 

激しい光が辺りを包む

 

天龍「…っ…何が…」

 

春雨「…正常に作動した…龍田さん、わかりますよね?」

 

龍田「…何が…い、嫌…私、何を…」

 

天龍(…あの機会は、暴走を抑えるための物…?)

 

春雨「問題なさそうですね、天龍さん、手当てします…傷口を」

 

天龍「それより、今何を…」

 

春雨「黙りなさい、大人しく傷口を出してください」

 

曙「何怒ってんのよ…」

 

春雨「…そこまで汚れてない、出血はかなり多いですが間に合うか…命は助かりますよ、よかったですね」

 

天龍「ありがとうございます…」

 

春雨「私の忠告を聞いて安静にしておけばこうはならなかった物を…」

 

曙「安静って…天龍どこか悪いの?」

 

春雨「艤装の適応手術後は、発熱や倦怠感など風邪症状に似た症状に苦しむんです、天龍さん、如何ですかドクターストップを無視した感想は」

 

天龍「…誰も死ななくて良かった」

 

春雨「話通じない馬鹿は嫌いですよ私」

 

荒々しく傷口を塞がれる

 

春雨「左目は…眼球にも若干傷が…失明とまではいかないですが視力に多少影響が出そうですね」

 

天龍「…そうですか」

 

春雨「まあ、大きな傷が残りますが」

 

天龍「わかってます…すいません、少し意識が…」

 

春雨「…無理に体を動かし過ぎましたね、近隣の病院にあとの面倒を見てもらいましょうか、寝てて良いですよ」

 

天龍「…すみません、あの…何故ここが?」

 

春雨「私は自分の持ち物には発信機仕込むんですよ、発熱もしてるし今頃死んでるんじゃないかと思いましてね」

 

天龍「…私の艤装に?」

 

春雨「そうですよ…あと、医官の言う事は死んでも聞いてください」

 

曙「それより、春雨…よく龍田の暴走抑えられたわね」

 

春雨「…まあ、対処法は確立しましたから」

 

春雨(結局はナノマシンの暴走…そのナノマシンの機能の根幹であるAIDAさえ吸い出して仕舞えば良い…弱ってる相手にならこのデータドレインが使える…良い実験結果だった)

 

龍田「…天龍…ちゃ…」

 

春雨「貴方も大人しくしてください、AIDA暴走の影響で混乱してるでしょう」

 

龍田「…ごめん、なさい」

 

天龍「…次は、有りませんよ…龍田」

 

 

 

 

 

 

海上

駆逐艦 朝潮

 

金剛「うーん…本当にまた深海棲艦来るんデスかー?」

 

朝潮「わかりませんが、私達だけでも防衛の任務を果たさないと…荒潮、大潮、山雲、周囲に敵影は?」

 

荒潮「ないけど〜」

 

大潮「全くもって!見えません!」

 

山雲「…いいえ、居ますよ〜?」

 

朝潮「敵の数は」

 

山雲「6体…あら、7体ですね〜…戦艦級1、軽巡級が3、駆逐級が2、少し離れたところに重巡級が1…レ級は居ませんよ〜」

 

金剛「…偵察機を出しマース!」

 

朝潮「陣形は」

 

山雲「単縦陣…と、そこから東に離れたところに重巡級…」

 

金剛「見つけましター!全砲門…fire!!」

 

山雲「魚雷を用意してー…」

 

朝潮「仕留めていきましょう!」

 

山雲「そうね〜…なるべくなら当てていきたいわね〜…」

 

魚雷を全て流す

 

金剛「軽巡級2撃沈デース!」

 

山雲「砲撃来てますよ〜、回避行動開始〜」

 

朝潮「駆逐級全滅を確認しました!」

 

金剛「装填よし!狙って…アレ?」

 

朝潮「どうしました!?」

 

金剛「…おかしいデース、同士討ちしてマース」

 

山雲「同士討ち?」

 

金剛「離れた所にいる重巡洋艦が戦艦を沈めました…いま軽巡級も…」

 

朝潮「…そんな事、有り得るんですか?」

 

金剛「……わかりまセーン…おかしいデス、こんな事今まで…」

 

山雲「重巡級は?」

 

金剛「…射程外に逃げていきました…まるで深海棲艦を倒すのが目的だったみたいデース…」

 

朝潮「…報告するにとどめましょう、一度佐世保鎮守府に戻ります」

 

山雲「はーい」

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