元勇者提督   作:無し

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特殊作戦

宿毛湾泊地

駆逐艦 曙

 

曙「……」

 

レ級との勝負から一晩が明けた

途中からは私が戦ったとは言えないし…思い出すだけで気分が悪くなる

 

曙「…アイツ…」

 

レ級は半分意識を失ってる私の顔を覗き込み、小さな声でこう言った

 

レ級「お前の手の内は全てわかっている…その力では私には勝てない」

 

誰も聞こえてなかった様だけど、私にははっきり聞こえた

私は…その言葉の意味を刻み込まれた、敗北という形で

 

曙「…次会ったら、絶対に殺す…!」

 

体を起こし、周囲を見渡す

この部屋は私達の、7駆共同の部屋

なのに誰も居ない、私1人しかいない

 

曙(…朧達は任務?)

 

ベッドから立ち上がる

体に違和感を覚える

 

曙(…あんなに無茶したのに、傷がない…?)

 

爆風を浴び、炎に包まれたこの体

少しは痛むところがあるはずなのにそれすら無い

 

曙「修復剤って事…かな…ん?」

 

扉を何度かノックされる

 

曙「誰」

 

春雨「医務の者です、倉持司令がお呼びですよ」

 

曙「…わかった、執務室に行けばいいの?」

 

春雨「最速でお願いします…ああ、応接室で良いそうですよ」

 

 

 

 

 

応接室

 

曙「何よ、応接室なんて随分な…本当に何の用なの?」

 

海斗「ごめん、ちょっと待って…もうすぐ来るはずだから」

 

曙「来るって…誰が」

 

扉が開き、春雨が顔を覗かせる

 

春雨「失礼します、お連れしましたよ」

 

島風「……」

 

曙(島風?なんでまた…いや、現状の最高戦力を揃えたって事は大きい作戦でもあるのかしら)

 

海斗「島風、座って」

 

島風「…はい」

 

曙(…そんな雰囲気じゃ無さそうね)

 

春雨「念のため、同席致します」

 

私の隣に島風が座り、そしてその背後に春雨が立つ

 

海斗「島風、君が昨日曙を暴走させた…違うかな」

 

曙「アタシを?暴走って…」

 

島風「……」

 

曙「ちょっと待ちなさいよ、島風がアタシに何できるっていうの?あの時の島風はただ見てただけで…」

 

春雨「それがそうでもなさそうなんですよねぇ、ほら、早く答えてくださいよ…」

 

島風「っ……」

 

海斗「僕は君が曙を暴走させた…そう考えてる、違うなら違うとハッキリ言って欲しい…」

 

春雨「言えるのなら、ですが…アナタは嘘をつくのか、それとも真実をその口から話すのか…」

 

海斗「春雨」

 

春雨「…はいはい、黙ってますよ」

 

海斗「島風、君は暴走の危険性についてよく知ってるはずだ…だから、できるなら違うと信じたい」

 

島風「…私は…」

 

曙(…どういう事?島風がアタシを暴走させた?なんで?)

 

島風「……やって、ません…」

 

春雨「…へぇ…」

 

海斗「…それなら良いんだ、時間を取らせてごめん、もう良いよ」

 

島風が席を立ち、部屋を出る

その足取りは重く、顔は悲痛な面持ちのままに

 

曙「…何あれ、嘘ついてるの?」

 

海斗「…疑いたくはなかったけど…僕にもそう見えた」

 

春雨「持ち物検査でもしてみますか?」

 

海斗「必要ないよ」

 

春雨「…倉持司令、貴方やっぱり甘すぎますよ」

 

海斗「……次は然るべき対処を取るつもりだ」

 

曙「待って、全く話についていけてないんだけど…どういう事?」

 

海斗「曙、君がレ級との戦いの途中暴走したのは覚えてる?」

 

曙「…まあ、自我を失ったのは…」

 

海斗「その直前に島風が不審な動きをしてたのを見たんだ、それで念のため探ったら…他の子も島風が曙に何かを向けてたのを見た子がいた」

 

曙「…それで」

 

海斗「だから確認した」

 

曙「ほとんど黒なのわかっててお咎めなしで帰したの…?」

 

海斗「…本人が違うって言ってる以上はね…島風にも思うところがあったんだと思う」

 

曙「…疑わしきは罰せよ…って言葉、知ってる?」

 

海斗「疑わしきは罰せずだよ」

 

曙「…アンタの言ってることは…島風のためにならない」

 

春雨「私も同意します、あんな危険な状態に自由になられてはリスクが…」

 

海斗「…だからと言って今すぐに強引な手段を取る必要はないよ」

 

曙「納得できないわ」

 

海斗「島風とは時間をかけて話す、もし本当に暴走させたのが島風なら…」

 

曙「なら?」

 

海斗「…どうすれば良いんだろうね、あんまりこういう事は慣れないから…」

 

曙「…春雨」

 

春雨「私ならまず折檻として牢屋に入れて鞭打ちですかね」

 

曙「鞭打ち…」

 

春雨「痛くないと覚えませんから、人間は」

 

海斗「…身体的に痛めつける必要はないよ島風もきっと自分のやった事の重さくらいわかってる」

 

春雨「精神的に痛めつけますか?」

 

海斗「…そうじゃなくて」

 

曙「…何にせよ、島風に入れ込んでるのはわかるけど…」

 

海斗「そうじゃない、いや、メインの理由はあっちだったんだけど…もう一つ理由がある」

 

書類が卓上に置かれる

 

曙「…太平洋深海棲艦基地奪取作戦?」

 

海斗「深海棲艦の基地を奪って…此方の拠点にする」

 

曙「へぇ…具体的には見えて来ないけど、どの辺?」

 

海斗「横須賀から真南にある、かなり離れた位置だけどね…それに差し当たって今回は部隊を二つに分けて攻略する」

 

曙「どういう事よ」

 

海斗「北側から、つまり横須賀から横須賀との連合艦隊がこの基地を攻めるんだけど、その前に佐世保との連合艦隊が攻め込む」

 

曙「…つまり、陽動?」

 

海斗「そうだね、今回は中央も賛同してくれてるということもあって支援も期待できる」

 

曙「…アンタが組んだ作戦って事?」

 

海斗「元々、深海棲艦の基地は探してたんだ、キタカミ達とも決着をつけなきゃいけないから…周辺で1番深海棲艦の出入りが確認されたみたいだし…おそらくキタカミは此処にいる」

 

曙「そう…とうとうってわけね…それで?聞きそびれたけど支援ってなんかあるの?」

 

海斗「航空部隊、深海棲艦が対空能力を有してるからあんまり使われなかったけど、今回は本格的に導入するみたいだよ」

 

曙「…ふーん」

 

曙(なんか、気にかかるわね)

 

海斗「曙、いける?」

 

曙「任せときなさいよ、アタシはここのエースなんだから」

 

春雨「川内の方が強かったりして」

 

曙「…アンタ空気読むって事知ってる?」

 

海斗「ま、まあ…今回は特に大きな作戦で、この作戦の成否には色々な影響がある、絶対成功させよう…!」

 

曙「わかってるわ、任せときなさい」

 

 

 

 

 

 

大湊警備府

提督 徳岡純一郎

 

徳岡「これで全員送り出せたな…」

 

白露「よーし、早速動き出そう!体鈍っちゃった!」

 

徳岡「…お前大丈夫なのか?」

 

白露「なんで?」

 

徳岡「手術受けたばっかだろ」

 

白露「…あー、完璧!ほら、動きも悪くないでしょ!」

 

徳岡「本当に問題ないのか?お前がそう言ってたら時雨達も受けることになるんだぞ、いいんだな?」

 

白露「…うん、大丈夫…だと思う」

 

徳岡「…あー…悪い、卑怯な聞き方したな」

 

白露「そんな事ない、でも…もう少しだけ時間が欲しいかも、副作用がまだ出てないだけかもしれないし」

 

徳岡「ああ、わかった…どうせ暫くは事務仕事だ、ゆっくり慣らせ」

 

白露「了解!」

 

五月雨「失礼します」

 

徳岡「おー、五月雨、どうした?」

 

五月雨「春雨さんに連絡できますか?」

 

徳岡「いや…多分宿毛湾に連絡すりゃあ何とかなるだろうが」

 

五月雨「じゃあ、AIDAを除去して欲しい、って連絡してください…私は感染者ですから」

 

徳岡「そうだったな、わかった、すぐに連絡しとく」

 

五月雨「お願いします」

 

 

 

 

 

 

特務部オフィス

駆逐艦 敷波

 

数見「敷波、これに目を通しておく様に」

 

敷波「…ダミー因子…」

 

数見「君が以前受け入れたゴレ因子の事についてだ、明後日、君にも動いてもらうことになる」

 

手渡された書類に目を通す

 

敷波「……これは」

 

ダミー因子、これの力を利用すればAIDA感染者の能力を上げる事ができる

そう記載されていた

 

数見「ダミー因子、これは生体チップのようなもので、ダミー因子に適合さえすれば非感染者であろうと…そもそも艦娘である必要すらない…」

 

敷波「部長も?」

 

数見「この手に埋め込まれているのは。第一相の因子、それが何か?」

 

敷波(…人間でも、扱える…)

 

敷波「いいえ」

 

数見「ダミー因子は碑文使いが持つモルガナ因子と同等の物、AIDAも強い関心を見せる…そして、AIDAの能力を向上させる事も…簡単に言えばAIDAにやる気を出させる餌とも言える」

 

敷波(餌…)

 

数見「君以外にも、例えば第二相のダミー因子を元横須賀の五月雨に埋め込んである、彼女の適性は非常に高かった」

 

敷波(五月雨に…!)

 

数見「そう言えば君とは…友人だったかな」

 

敷波「いえ…ただの知り合いです」

 

数見「…何にせよそこまで気にする事はない、それは身をもってわかってると思うが」

 

敷波(…何処まで正しいのか…)

 

敷波「…下がってもよろしいですか」

 

数見「構わない」

 

 

 

 

宿毛湾泊地 食堂

駆逐艦 朧

 

朧「え…、秋雲が意識不明…って、いつから?」

 

潮「多分、1週間になるんじゃないかな…?」

 

漣「その位って言ってたよ」

 

朧「……あり得ない」

 

潮「え?」

 

漣「ボーロ、顔青いけど…?」

 

朧「有り得ないよ、そんなの…」

 

潮「友達が意識不明になって辛いのはわかるけど…」

 

朧「違う!そうじゃ無い!…昨日会ったんだよ!」

 

漣「へ?昨日ってボーロ寝てたじゃん」

 

朧「じゃなくて、ゲームで会ったんだよ…!」

 

潮「昨日会ったってどう言う事?本当に?」

 

朧「嘘なんかつくわけないじゃん…!」

 

漣「熱で変なもの見ただけじゃ無いの…?」

 

朧「…それは…わかんないけど…いや、満潮と天津風!あの2人も見てる!」

 

潮「…とりあえずその2人に聞いてみよう」

 

漣「えー、めんど…」

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