元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
海斗「……明日、か…」
明日、アウラに会う…その準備もしないといけない
でも何より今僕がやらなきゃいけない事はリアルにある…
海斗「…如何してだろう、今日は気が重いな…」
朝潮「コーヒーでもお淹れしましょうか」
海斗「…いつの間に部屋に入ったの?」
いつの間にか真横にいた朝潮に驚きつつも彼女の提案を受け入れる
朝潮「お砂糖とミルクは」
海斗「…一つ入れてくれるかな、ミルクはなしで」
朝潮「お時間少しいただきます」
海斗「…え」
朝潮がワゴンにカセットコンロとポット、コーヒーミルなどいろいろな一式を乗せて運んでくる
海斗「あ、朝潮…?そんなに本格的にやらなくても…インスタントで良いんだけど…」
朝潮「一つの基地の司令官がそれではいけません、一流のものを嗜んでこそです!」
海斗「…ええと…」
海斗(曙辺りが見たら何遊んでるんだって怒りそうだなぁ…)
朝潮(…のの字…のの字…)
朝潮は真剣な表情でコーヒーを淹れている
朝潮「…よし、ちゃんとできた…!」
朝潮がデスクにコーヒーの入ったカップを置く
海斗「ありがとう…あれ」
飲もうとしたところを手で制される
朝潮「まだです、まだ飲まないでください」
不思議な形のスプーンに角砂糖と液体が入ったものをカップの上に乗せられる
海斗「…この匂いは、ブランデー?」
朝潮「はい、あとはこれに火をつけて…少々お待ちください」
海斗「…わざわざ準備してくれてありがとう」
朝潮「これはカフェロワイヤルと言って…以前青の方の曙さんが提督に淹れる練習をしてたものです」
海斗「…曙が…」
朝潮「はい、そろそろ良いかな…砂糖を溶かしてどうぞ」
海斗「ありがとう」
香ばしくて、甘い香り
海斗「こういう凝った趣味は…曙らしいのかもね」
朝潮「…まあ、そうですね…苦い思い出でもあります」
海斗「朝潮も飲んだの?」
朝潮「……不慮の事故で」
海斗(…?)
朝潮「如何でしょうか、アルコールもしっかり飛ばしたはずですし、豆やブランデーの種類も曙さんが選んだものをそのまま流用しています、相性も悪くないかと…」
海斗「美味しかったよ、ありがとう」
朝潮(…流石に司令官は酔わないか)
海斗「…どうかした?」
朝潮「いえ、それならば良かったです」
海斗(…あれ、メールが来てる…これは、誰から……ハル?曙のアドレスだ…)
朝潮(…何かあったようですね)
メールを読む
海斗(…そう言う事、か…それなら…早く進める方がいいかな)
朝潮「司令官、難しい顔をされておられますが…」
海斗「いや、丁度解決したところだよ」
海斗(…大丈夫、絶対に上手くいく…!)
佐世保鎮守府
駆逐艦 不知火
不知火「…帰ってきてしまいましたか」
門の前を最早何往復したか
入れば良いのに入れない、司令にも連絡が入っている、きっと今頃心配をかけているのに…
不知火(しかし私は司令からの誘いを直接断り大した戦果も上げず…く…!)
不知火「あれ」
いつの間にか警備の人員に両脇を抱えられ、抵抗すらままならないまま連行される
不知火「…あの、不知火は不審者では…」
警備員「申し訳ありません、連行するようにと言う命令ですので」
不知火「……なんと」
応接室
不知火「……あの」
度会「なんだ」
不知火「謝りますので…その、陽炎をどうにかしてください」
陽炎に背後から硬く、強く抱きしめられる
陽炎「……」
不知火「何も言わないし、怖いんですが」
度会「…秋雲が意識不明になってから陽炎も精神的に不安定でな、許してやってくれ」
不知火「秋雲が?」
度会「The・Worldをプレイ中にな…知っているか?」
不知火「…プレイした事はあります」
不知火(PKとしてですが)
陽炎「不知火…本当に生きて帰ってきてくれて良かった…もう一度会いたかった、それが叶って…本当に……」
不知火「泣いてるんですか……情けない人ですね」
陽炎「っ……」
度会「おい、不知火…」
不知火「私の姉は…折れない人でした、おちゃらけた所もありましたが…真面目で、常に妹達の前に立ち、自身を導として私達を率いる人でした、今の貴方は陽炎とはとても呼べません」
陽炎「…でも、私は…」
不知火「秋雲が帰ってきた時もそんなに情けない顔をするつもりですか、もっと堂々と受け入れなさい」
陽炎「……そうね、少し走ってくる」
陽炎が俯きながら部屋を出る
度会「…随分厳しいな」
不知火「鬱陶しいので…別に陽炎はさっき言ったほど立派ではありませんよ、ただ明るくてうるさくて、私たちの先頭に立つのが大好きな困った姉と言うだけです」
度会「……」
不知火「…改めまして、司令…恥ずかしながら帰ってまいりました」
度会「ああ、おかえり…で良いのか」
不知火「熱いバグもあれば百点なのではないでしょうか」
度会「瑞鶴か龍田にでもしてもらえばいい、呼んでやる」
不知火「冗談ですから受話器をおいてください、特に龍田さんは馬鹿力で締め上げるので」
度会「……お前には早速働いてもらうつもりだが」
不知火「それはお待ちください、私は新しい艤装の適合手術を受けています…慣らしが必要です」
度会「それならば慣らしにおあつらえ向きの仕事がある」
不知火「…太平洋深海棲艦基地奪取作戦」
度会「そうだ」
不知火「わかりました、その作戦に合わせて準備させていただきます」
度会「活躍を期待している」
不知火「私はただ一つの銃です…銃は銃として存在する…どんな敵も撃ち砕きます」
度会「…お前もお前だな、もっと自分を大事にしろ…陽炎が泣くぞ」
不知火「…わかっています、しかし私が力であることに変わりはない…強力な力である事に」
不知火(…秋雲の事が気になりますし…やるべき事は多い、か)
横須賀鎮守府
提督 火野拓海
火野「本当にそれで良いのか」
浜風「…はい、私は戦います、深海棲艦を殺します…例えそれがかつて人間だった存在だとしても…私はその方達が新たな犠牲者を出す事は絶対に防ぐ…それが私の決断です」
火野「…ならば、君には次作戦に参加して貰う」
浜風「はい」
火野(これでこちらの手札も揃ったか…後は何で勝負するか)
アオバ「失礼します、司令官、大淀さんが作戦に差し当たって出撃するメンバーの調整を行いたいと」
火野「わかっている」
この作戦にかける我々の人材は少数かつ精鋭であるほど良い
佐世保の連合艦隊は大規模で仕掛ける陽動であり本命
我々は展開し、各方向から敵の注意を集めて上陸戦を仕掛ける…しかし、全員が単独で敵を殲滅する力を持った…
火野「言わば…両方が本命と言うわけだ…」
アオバ「…深海棲艦なんて無限に湧いて出るのに、上手くいくんでしょうか…」
火野「…上手くいく、そうでなくてはならない」
しかし、どう動けばいいか…
慎重に進めなくてはならない
火野「アオバ、君は自分の仕事に戻りたまえ」
アオバ「ありがとうございます、どうやら見つかりそうです…もう1人の青葉」
火野「…それは良かった」
今我々を照らすのは…月と星の明かりか、それとも太陽の輝きか
宿毛湾泊地近海
イムヤ
イムヤ「…うう…何と言うか、警戒体制敷かれてるし…近寄り難いなぁ…」
海から顔を出して様子を伺う
イムヤ「…あ、あれは…」
少数の部隊が海へと飛び出し、整列する様子からこれから出撃に出るらしい
駆逐艦のみの編成から哨戒の可能性が高いか
イムヤ(……沖でちょっと話すくらいならいいかな)
水中に潜り哨戒部隊の見える位置をキープする
イムヤ(…みんな、頑張ってるな…元気で良かった)
編成は朝潮型の4人、話が通じそうなのは朝潮と山雲
イムヤ(タイミングを見て朝潮に…でも、哨戒の邪魔したら危ないか…)
思案しながら進む
ぼちゃぼちゃと頭上で音が鳴る
イムヤ「…へ?」
爆雷がゆっくりと沈んでくる
イムヤ「嘘!レーダーにかかっちゃった!!」
急速潜行でなんとか爆発を逃れ、距離を離す
イムヤ(10メートル以上は潜れないしこの移動速度じゃやられるなぁ…って、あれは…深海棲艦の群れ!)
戦艦級を先頭に少数の深海棲艦の群れが朝潮達に接近している
イムヤ「……艤装は無いけど…やれるかな」
やる事はもう決めている
戦艦級へ向かって接近する
イムヤ(…足元に入ればこいつらは何もできない、大丈夫だから…)
静かに…
狙い澄ます、獲物を狩るために
戦艦級の真下に入り込み、少しずつ浮上し…
イムヤ「…聞いてるわよ…アンタらみんなにこんな事したんだって!?」
戦艦ル級の両足を掴み、水中に引き摺り込む
イムヤ「ようこそ潜水艦の世界へ…!」
戦艦の足を掴んだまま深く潜る
上の方で爆雷が落ちてくる音が鳴り続ける
イムヤ「武器がないからさ…こうするけど、許してね」
ル級を盾に爆雷の衝撃を受け止める
イムヤ「…深海棲艦だけじゃない、朝潮達も爆雷投げてる…そろそろ堪える頃かな…」
ル級の背中を蹴り上げ、急速浮上する
バッグを水面に引き上げ中から機械を取り出す
既に戦闘は終わっているらしくら浮上してくるル級と私の行為を遮るものは居ない
イムヤ「さあ…どうなるかな」
仰向けのままに浮上してきたル級に馬乗りになり機械を押し当て作動させる
眩い閃光に思わず目を閉じる
イムヤ「……っ?」
ル級の露出した肌が変色を始める
イムヤ「…は、肌が…ル級の肌が肌色になってきてる…!やった!多分成功だ…!」
後はル級を引っ張って帰るだけ…
私のやるべき事が今確立した…!
イムヤ「…あれ?朝潮達は……居ないし!」
周りを見渡しても誰も居ない…つまり急いで離脱したと言うことになる…
私はたった1人でル級を浜まで引っ張っていった
宿毛湾泊地
駆逐艦 朝潮
朝潮「点呼!1!」
大潮「2!」
荒潮「(目の前にいるのに…)さ〜ん」
山雲「よ〜ん…全員いま〜す」
朝潮「良し…哨戒は中断となりましたが其々ゆっくり休む様に」
山雲「うーん…仕方ない〜ですね〜」
荒潮「あの海に引き込む深海棲艦が出てきた以上は危険だものね〜」
朝潮「爆雷も初撃をかわされました、かなり知能が高い様ですね…」
荒潮「でもなんで味方を海に引き摺り込んだのかしら〜」
朝潮「…さあ、でもおかげで他の敵は殲滅できました、幸運だったと言うほかありません…私たちの腕力では誰かが掴まれた時点で引き上げるのも難しいですから」
山雲「もー、本当に困ったわね〜」
荒潮「ね〜」
大潮「でも、今日も無事に帰れたのでアゲアゲです!」
朝潮「とりあえず報告書は荒潮、作成をお願いします、大潮は艤装の修繕を…私達は引き継ぎをしますので」
2人を送り出す
朝潮「…さて、私達も仕事に」
山雲「…そうですね〜」