元勇者提督 作:無し
福岡 ネットカフェ
青葉
青葉(…不味い、翔鶴さんにもらったお金も今日で尽きる…もう2日ちゃんと食べてないのに…せめて朝食無料のところが空いてれば……こんなにお腹が減るのはこの身体の所為なのかな…)
憂鬱な気分に呑まれそうになる
ログインしていたThe・World用のアカウントにメールが表示される
青葉「あれ…メールだ…もしかして司令官…!」
[from:ぴろし3
件名:青葉さんへ
あの件の後ログインをされた様なので連絡させていただきました。
貴方は無事なのでしょうか?
是非あの事件についてお話がしたいと思っています、可能ならば直接会えませんでしょうか。]
青葉「…凄く真面目なメール…」
ゲーム内のおちゃらけたキャラクターとのギャップに驚きつつも内容を見て考え込む
青葉「…この姿を見られたくないけど、今日返事をしないともうネットカフェには入れないから…」
[from:青葉
件名:Re:青葉さんへ
わかりました、私は訳あって福岡から動けないのですがそれでも良ければお会いします]
送信してすぐに返事は届く
[from:ぴろし3
件名:なんと
私も今福岡にいます、動けないとの事ですがこちらから向かった方が良いでしょうか?
場所を教えていただければすぐに向かいます。]
青葉「…近くの公園どこだろう…」
[from:青葉
件名:Reなんと
福岡市にある天神中央公園でお待ちしています、黒い長手袋と白いパーカーでフードをかぶってる女性です]
青葉「…良し…行こう…!」
覚悟を決めるしかない
私ができることやるって決めたから
天神中央公園
青葉「…暑い…」
真夏の日光に晒されるだけではなく、フードと長手袋
蒸れる上に熱された衣服が地獄の様な暑さを作り出してくれるおかげで五分とたたずに熱中症や脱水症状の影に悩まされる
青葉「…時間も指定しておけば良かったな…二時間後とか言われたら…死んじゃうかも…それにこの公園、広すぎるし…迷ってたら…」
松山「すいません、貴方が青葉さんですか?」
予想に反して待ち人は5分で来てくれた
青葉「…ぴろし3さん…?」
松山「はい、改めて自己紹介させていただきます、松山洋です」
青葉「…すいません、青葉ですとしか名乗れません…」
松山「ネットゲームで出会っただけの相手を急に信用するのは難しいでしょう、どうぞお気になさらず…此処暑くないですか?良ければ場所を移しませんか?」
青葉「…いや…」
青葉(…お金が無いのでとは…言いづらいような…ええと…)
松山「丁度昼時ですし良ければ食事でも、お話さえ聞かせていただければ構いませんから」
青葉(ご飯…!でも、殆ど見ず知らずの人にご馳走になるのは…でもご飯が…)
青葉「…はい」
青葉「…んぐ…ぷはっ…」
氷水が痛いほど胃に染み渡る
松山「しかしよかった…福岡から動けないと言われた時は入院されてるのかとばかり…」
青葉「…そう言うわけでは無いですね、ご心配をおかけしました」
松山「ああ、いえ…あ、どうぞお気になさらず好きなものを頼んでください」
青葉(…当たり前だけど様子を窺われてる…それにしても…個室のお店なんて…秘密の話におあつらえ向きな…)
メニューを受け取り読む
青葉(…たくさん食べられるの頼みたいけど…そう言うわけにも…うう…どれが1番…これかな、これが1番安い…)
青葉「じゃあ…これで」
松山「本当にいいんですか?ほら、以前に私のPCを直すのを手伝っていただいたしそのお礼と思っていただいて…」
青葉「いえ、結構ですので…」
松山「青葉さんは艦娘でしたか」
青葉「…まあ」
松山「秋雲と言う子については」
青葉「伺ってます…その、はい」
松山「あの時現れたカイトというキャラクター…彼を見た時貴方はすぐに逃げようと言いましたよね、あれは何故でしょうか」
青葉「……AIDAはご存知でしょうか」
松山「…軽くでしたら」
青葉「あのカイトの周りにAIDAが見えました…AIDAにやられると意識不明になる…だから逃げなきゃいけないって…そう思ったんです…」
松山「…成る程、そうでしたか、わざわざすいません…どうしても確認したくて」
青葉「いえ…」
料理が運ばれてくる
青葉「あれ、私が頼んだものと違う様な…」
松山「お気になさらずどうぞ」
青葉「いや、悪いです…!」
と言いつつも目は料理に釘付けになる
空腹を理性で押さえつけるにも限界というものがあり、同じ様なやりとりを何度かするうちに私は箸を握っていた
青葉「ご馳走様でした…」
明らかに2人分以上にあった食事を平らげ、漸くまともな思考回路が戻ってくる
青葉(…ああ、なんてはしたない…ホントにもう…)
松山「実の所…」
青葉「…はい」
松山「いろいろなことを調べさせていただいたんです、貴方はカイトと行動を共にしていましたよね」
青葉「…っ……」
青葉(…なんで今更と思ったけど…そういう…)
松山「私は貴方がカイトを呼んだのかもしれない…とも思っていました、カイトは最早私の知る勇者では無く…その刃を悦楽の為に振るうような外道に成り下がったのかと」
青葉「そんな事ありません…!」
松山「わかっています、度会って奴は分かりますか?彼に貴方たちについて聞きました、2人のカイトについても」
青葉「…そうですか」
松山「…良ければ、秋雲さんを…そしてThe・Worldを救う為に一緒に戦って欲しいんです」
青葉「それは…難しいです」
松山「…まあ、当然の反応だと思います、急に無理を言ってすいません」
青葉(…私にはやらなきゃいけない事がある…私にはいつか帰らなきゃいけない場所がある…だから、それは…)
青葉「……松山さんは、どうするつもりなんですか…?」
松山「とにかくゲームの中で情報を集め続けるつもりです、ゲームで起きた意識不明事件はゲームの外で解決したことがありませんでしたから」
青葉「過去にも意識不明者が出るような事件に…?」
松山「言いませんでしたっけ、私は昔カイトと一緒に黄昏事件…あー…たくさんの未帰還者…ゲームで意識不明になった人達を助ける戦いに参加したんですよ」
青葉(そう言えばゲームの中で知り合いっぽい事言ってた…)
松山「…あれ、なんだ?」
テーブルの皿がカタカタと音を立てて振動する
何かが唸るような音、そして悲鳴…
青葉「地震…」
松山「かなり大きいですね、逃げる準備を…いや、でも地震の通知が来てないな…ちょっと失礼」
松山さんがスマホで何かを調べ出す
その間にもまた悲鳴
そして何かがはしゃげたような音…
青葉(すごく、すごく嫌な感じが…)
松山「な…!」
青葉「…どうしたんですか…?」
松山「……遅かった…
青葉「あの…?」
松山「外に出ましょう、携帯も今圏外になってしまったようで」
青葉「…わかりました」
真剣な表情の松山に連れられ屋外に出る
青葉「…これ、何ですか…?」
道路に横転する電車
それが走っていたであろう線路の破片が車を押しつぶし、信号機も何が原因か捻じ曲がり倒れている
事故を避けようとした車が建物や歩道に進出した痕も、何もかもが連鎖し悪い方向へと進み続けた結果が目の前に広がっている
松山「…信号のシステムはダウン、いや…電車も…それだけじゃない、ネットに繋がった全てが一時的にダウンした…」
青葉「それで、こんな…」
松山「…此処にいたら事故に巻き込まれかねない、移動しましょう」
青葉「…はい」
青葉(リアルでこんな事になるなんて…ネットで何が…?)
大湊警備府
提督 徳岡純一郎
徳岡「おい、五月雨!起きろ!」
つい先程、五月雨がゲームをしていて急に倒れたという同室の涼風の報告があった
涼風「そのメガネみてーなのつけたままふらーって…!いきなり倒れたんだ…!」
白露「これ…M2Dだ、しかもCC社が最近出したThe・Worldモデルの…つまり五月雨はThe・Worldをプレイしてたの…?」
涼風「知らねえよ!でもこんなのつけてるの見た事ない…」
白露「…待って、時雨たちは?睦月も…こんなに騒いでるのに何で反応ないの!?」
徳岡「…アイツら、暇な時にThe・Worldをプレイしてたよな…?」
白露「…提督は睦月たちをお願い!」
徳岡「わかってる!」
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
海斗「状況は!?」
朝潮「意識が戻らないのは朧さん、明石さんのみです、他の気絶してた方は順々に目を覚ましてますのでおそらく2人も…」
海斗「良かった…それで、全員がそうなの?」
朝潮「はい、全員、ゲームをしていて急に画面が強く光ったと」
海斗「やってたゲームは…The・World?」
朝潮「いえ、それが…どのゲーム、と言うわけではないようなんです、例えば意識を失った曙さんはアクション、漣さんはシューティング…パズルゲームをしていた潮さんだけは意識を失いませんでした」
海斗「…何が違うんだろう」
朝潮「意識不明者は全員アレをつけていました」
朝潮がFMDを指す
海斗「…そうか、みんなFMDを…?」
朝潮「司令官、一体何が…」
海斗「…わからない」
春雨「居た、倉持司令官」
海斗「春雨?」
朝潮「私が調査をお願いしてたんです」
春雨「意識不明の原因ですけど、FMDやM2DみたいなVR機器で強力な刺激光線を受けた事による脳の防御反応と見られます」
海斗「じゃあ…」
春雨「ええ、大事に至る人は居ないかと」
海斗「良かった…」
春雨「…何で貴方は意識不明になってないんですか?」
海斗「それはわからないけど…」
朝潮「…あれ、スマホが圏外になってる…」
春雨「貴方もですか、私の携帯が壊れたのかと思ってましたけど」
海斗「…え?」
慌ててスマホを確認する
圏外と表示され、ネットに繋がらない
海斗「……まさ、か…」
潮「あ、提督…」
海斗「潮、そういえば君は意識不明になってないんだったね…」
潮「すいません、食堂のテレビ、映らなくなっちゃって…直せる人知りませんか?」
海斗「テレビまで…?」
春雨「私が直しましょうか」
潮「お願いします」
食堂
満潮「なんか…電子レンジが壊れたみたいで…」
如月「最近買った遠隔操作できる凄いやつらしいのに…どうしましょう…オーブンとしても使ってたのに…」
曙「火なら用意できるけど」
満潮「燃料臭くなりそうだから要らない…」
海斗「曙?もう動けるの?」
曙「別にちょっと気を失っただけよ、余裕余裕」
春雨「それで?壊れたテレビは…これか、いや、ちゃんと点く…放送局とかアンテナの問題ですね、見てきます」
海斗(やっぱり、まさかネットワーククライシスが起きてるんじゃ…アウラが穴場に呼び起こされた事でネットに何か…)
夕張「提督!繋がる電話ありますか!?」
海斗「夕張?いや、ごめん、ないよ…」
夕張「不味い…あ、春雨さん!」
春雨「え、なんですか」
夕張「医療関係のものがストップしました!今日の手術は以降全てできません!」
春雨「…嘘でしょう?」
海斗「…みんな、ネット関連のものは全て使えなくなってると思って」
朝潮「司令官?」
海斗「ネットワーククライシスが起きている…動ける人を集めて!きっと街も混乱してる筈だ、事故が起こってるかもしれない、急いで動くよ!」
春雨「ネットワーククライシス…?そんな馬鹿な…」
朝潮「私は姉妹を呼んできます!満潮!手を貸して!」
満潮「わかった!」
海斗「…アウラを呼んだのは、間違いだったのか…」