元勇者提督   作:無し

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声無き宣戦布告

福岡

青葉

 

青葉「…ここは?」

 

松山さんに連れてこられた家屋は街から少し離れたところにある普通の一軒家だった

 

松山「友人のアトリエ兼住居です、ちょっとお待ちを…なつめさん、留守ですか?」

 

大黒「は、はーい…ちょっと待ってもらえますか!?」

 

松山「居たようだ、良かった」

 

少しして玄関の扉が開く

細目の特徴的な女性が慌てた様子で顔を出す

 

大黒「ああ、ぴろしさん…と、そちらは…?」

 

青葉「…初めまして、青葉です」

 

大黒「あ、はい…初めまして…」

 

向けられる視線は明らかに警戒のものだった

当然ながら私の今の格好は顔どころかほとんどの肌を隠している、怪しまれて当然だ

 

松山「なつめさん、ちょっと上がって行ってもいいですか」

 

大黒「…別に良いですけど…その方は?」

 

松山「秋雲さんが意識不明になった時のもう1人です」

 

大黒「……わかりました、どうぞ」

 

どうやら、逃げ場が失われただけなのかもしれない

 

 

 

 

大黒「自己紹介が遅れましたね、私は大黒なつめです」

 

青葉(大黒なつめ…どこかで聞いたことがあるような…?)

 

松山「彼女は絵本作家でして、最近有名になったばかりの」

 

青葉「…あ、ああ!どうりで聞いた事があると…」

 

青葉(…いや、それだけだったかな…)

 

大黒「知っていただけてるようで嬉しいです、そしてG.U.のメンバーの1人で…」

 

松山「現在意識不明の秋雲さんの親族でもあります」

 

青葉「っ…!」

 

大黒「…お茶入れますね、と言ってもウチはオール電化なので…全部ダウンしちゃってて」

 

松山「クーラーも?」

 

大黒「私おっちょこちょいで…スマホで電源入れたり切ったりするやつにしたほうがいいって言われたものですから、あはは」

 

出された麦茶は氷のおかげでとても冷たかった

 

松山「なつめさん、先に言っておきますが青葉さんから聞き出せる事はありません、避難の目的でお邪魔しました」

 

大黒「ああ、別に良いですよ…松山さん、時計持ってますよね?今何時ですか?」

 

松山「13時37分です」

 

大黒「ネットワーククライシスから大体25分かな…原因がわからないから復旧も…うーん…ところで屋内なのにそんなに厚着で大丈夫ですか?」

 

青葉「…ええと…」

 

素肌を晒す事はできない…

首元、顔の少し下あたりにも侵食が進んでいるせいで外にいる時は一瞬たりとも気が抜けない…

 

青葉「どうか、お気になさらず…」

 

大黒「……まあ、良いんですけど…そのパーカー、すごく汗を吸ってますよ」

 

青葉「ご、ごめんなさい…」

 

大黒「あ、別に臭うって意味じゃ無くて…」

 

松山「…あ、ネットが回復した」

 

大黒「へ?」

 

大黒さんの間の抜けた声と同時にクーラーが起動する

 

大黒「お、おお…おおー!涼しいが帰ってきた…」

 

松山「電話回線はまだ繋がらないか…」

 

大黒「会社ですか?」

 

松山「いや、海斗君に」

 

青葉「……司令官に…?」

 

大黒「司令官?」

 

松山「…艦娘だとは聞いてましたが、海斗君の所の?」

 

青葉「…え、と…はい」

 

松山「…何でまたこんな所に?確か彼は高知に…」

 

青葉「…ごめんなさい、言えません」

 

大黒「うーん…まあ言えないことを聞き出しても仕方ないですけど…青葉さんでしたっけ、今どちらにお住みなんですか?」

 

青葉「……えっと…」

 

大黒「…まさか、とは思うんですけど…帰れるお家がなかったりしませんか?」

 

青葉「………」

 

松山「…まさか、本当に?」

 

青葉(…隠しても仕方ないか…)

 

青葉「はい、私は訳あって帰る場所がありません」

 

松山「…海斗君の所には…」

 

青葉「戻れません…」

 

大黒「…それは、誰に原因があって戻れないんですか?」

 

青葉「…大丈夫です、司令官は何も悪くないので…」

 

大黒「……つまり、貴方に問題があって貴方は帰れない、と」

 

青葉「はい…あの?」

 

大黒さんが席を立ち、携帯を使いどこかに電話をかける

 

青葉「何して…」

 

大黒「海斗さんに連絡してるんです…ダメですね、回線が混み合って繋がらない…」

 

青葉「だ、ダメです!そんな事…!」

 

大黒「迷惑がかかるから連絡できない、って…貴方は何か罪を犯したわけじゃないんですよね?」

 

青葉「…私は、誓って何も悪い事はしてません…!だけど、私は戻れるカラダじゃない…」

 

大黒「カラダ…?」

 

松山「…肌を隠してるのに…理由が?」

 

青葉「……」

 

勢いで余計なことを口走ってしまった

 

青葉「…お見せ、します」

 

長手袋を外す

 

大黒「…随分と色白な…」

 

松山「……いや、これは色白というか…」

 

フードを脱ぎ、肌の侵食されてない部分を見せる

 

大黒「こ、これは…?」

 

松山「…もしかして、貴方は深海棲艦に…?」

 

大黒「深海棲艦!?」

 

青葉「…はい、私の身体はどんどん深海棲艦へとなりつつあります、侵食はどんどん進んで行って…あそこに居たら深海棲艦を匿っていると言われるかもしれない、司令官やみんなに迷惑をかけたくない…」

 

大黒「……松山さん」

 

松山「…そうするしか無い、と思いますね」

 

青葉(…警察あたりに引き渡されるか…その前に逃げないと)

 

青葉「…失礼します」

 

大黒さんに手を掴まれて引き止められる

 

青葉「…触らない方がいいと思いますよ、どうなるかわかりませんから」

 

大黒「青葉さん、ここで暮らしませんか?」

 

青葉「…え?」

 

大黒「ここ、私がアトリエとして使ってるんですけど…まあ、1人じゃ持て余してて…良かったら住みませんか?」

 

青葉「…私は…深海棲艦になりかけてるんですよ…」

 

大黒「貴方が悪い人じゃ無いなら構いませんよ」

 

松山「海斗君には連絡だけしておきますから」

 

青葉「いや、なんで…?」

 

大黒「1人で生きていくのって、凄く大変ですよ…大変な時に助けてくれる人がいないと辛いですよ」

 

青葉「だから、なんで私なんかに…」

 

大黒「…深い意味はないんですけど、強いて言うなら私たちが海斗さんの仲間だから?」

 

松山「それに、困った時はお互い様でしょう、貴方は今まで艦娘として私達を守ってくれていた、その恩返しをする」

 

青葉「……」

 

大黒「あんまり深く考えないでいいんですよ、私たちは貴方の敵じゃないんです」

 

青葉「少し、考えさせてください」

 

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

ネットワーククライシスから4日、ようやく辺りは落ち着きを取り戻してきた

 

朧達は気を失っていたもののなんとか目を覚ました、気絶してた理由は不明

 

アウラがあの世界に降臨してから28分間、世界中のネットワークがストップした、まるで第一次ネットワーククライシス…PlutoKiss(冥王の口付け)のように、世界中が混乱した

 

だけど歴史上4度目のネットワーククライシスだった事もあり、対応はスムーズだった、被害も今までよりずっと少なく済んだ

 

海斗「…この辺りだけでも死者はこんなに…」

 

しかし、今までよりというだけだ、とても大きい傷であることは変わらない

 

この世界でネットが絡まないものはほとんどない、それが一つ残らず機能停止した…

 

ネット接続する家電から…政府の中枢のコンピュータまで、一つ残らず

幸いな事にハッキングしようにもパソコンが動かないお陰で機密データが漏れ出すことはなかったけど、株や銀行に預けた資産は一部が消失し、小さくない規模で経済が損失した。

 

ネットに接続しているおかげで動く機械もたくさんある、そしてそれは工場や…大きな病院、電車みたいな物にも絡んでいる。

機械の誤作動が各地で起こった、信号トラブルによる追突事故、制御を失ったせいで脱線する電車…

 

ネットワーククライシスが急に発生したせいで避けられない犠牲も多かった。

 

 

 

 

 

海斗「……アウラはネットワーク全体を管理する存在だった、それをThe・Worldに呼び出す行為が…こんな結果を引き起こした…」

 

つまり、これは…

僕達がやったことだ

 

その事を受け止めなくてはならない

 

 

海斗「…メール?」

 

 

メールバックを開く

やりとりした覚えのないメールが複数出てくる

 

海斗「ブラックローズに…?メールを送った覚えなんてないのに…」

 

その中の一つを開封する

 

[from:カイト

件名:ネットワーククライシス

 

ブラックローズ、The・Worldでまた何かが起きてるみたいだ、手を貸してもらえない?]

 

血の気が引いた

送った覚えがないメールが存在する事にじゃない

このメールの送り主とその意図を理解してしまった

 

他のメールを急いで開く

 

海斗「…そんな、オルカ、バルムンク…こっちはガルデニア…レイチェル、マーロー…月長石…!」

 

かつての仲間に送られたメールの文面はほとんど変わらない、そして返送されたメールにはほとんど了承の旨が書かれていた

 

海斗「僕もログインしないと……クビアを止めないと…!!」

 

The・Worldのページを開き、ログインを押す

 

[複数の端末から一つのアカウントにはログインできません]

 

海斗「…そん、な…電話!」

 

アドレス帳から目につくものへと電話をかける

 

海斗「…出ない…誰も……」

 

無情にも、コール音が鳴り続けるだけで誰からも返事は返って来なかった

留守番電話に注意喚起の連絡を残し、ネットワーククライシスで起こった被害の書類を眺める

 

海斗「……クビア…!」

 

これ以上の好き勝手は、許さない…絶対にここで止めなきゃならない

僕が取り戻さなければならない、みんなを…!

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