元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府 応接室
駆逐艦 朝潮
海斗「今回の作戦はよろしく」
火野「当然だ、早急に完遂しよう」
海斗「わかってる…1週間から…2週間かな」
火野「長引けば長引くだけ成功の可能性も低くなるだろう…人員が疲弊してしまう前に作戦を完了しなくてはならない」
海斗「佐世保組の出発は2日後を予定してるけど…台湾の高雄までで1日、そしてここから深海棲艦の拠点までで5日を想定してる…」
火野「夜間停泊したとしても見張りを立てねばならない、人員はいくらいても足りんだろうな」
朝潮(…確かに、この作戦は横須賀に全戦力を集めて総攻撃を仕掛ける形にした方が…)
海斗「そっちから出せる戦力は?」
火野「艦娘システムを使用するのは浜風のみだ」
海斗「…そうだったね」
火野「此方のメンバーは全員艦娘システムを取り除いている、だから出撃までに新しいシステムを取り付ける手術が必要だ」
海斗「分かってる、そのために春雨に来てもらってる」
火野「…では、出撃できるのは大淀、電、アオバ、衣笠、浜風と言うことになるか」
海斗「十分だよ、ありがとう」
火野「…本当に大丈夫なのか」
海斗「万事上手く行く…そう約束する」
火野「果たしてそう上手く行くものか」
海斗「考えがあるんだ…朝潮」
朝潮「はい」
事前もに渡されていた札を司令官に渡す
火野「…それは?」
海斗「うちでは誰が出撃してるか一目でわかるように…出撃時は指定の場所に札をかけるんだ」
六枚の札を机に並べる
火野「…裏向きに見えるが」
海斗「これは切り札だから…まだ切らない」
火野「…だから、札、か?」
海斗「そう言うわけじゃないけどね…でも、その時になればこの札を切る」
火野「…君の奥の手に期待しよう」
朝潮(…司令官の奥の手……でも、あの札…全部名前が入ってないはず…)
海斗「僕の第一艦隊は…絶対に活躍してくれるよ」
朝潮(…司令官の、第一艦隊…)
食堂
朝潮「同じ食堂でも基地によって違うものですね…」
間宮「宿毛湾の方はここにくらべて家庭的と言うか、暖かいところですよ」
朝潮「…そうでしょうか」
間宮さんの言う通り確かにここは綺麗すぎる
汚れひとつも存在せず、完璧なまでに行き届いた清掃、そして計算され尽くしたレイアウト
どこか機械的で冷たさを感じてしまう
朝潮「…確かに、そうかもしれません」
間宮「ここは横須賀、日本の海軍の中で最も人の目に触れる場所…このくらいのアピールが必要なんですよ」
朝潮「…アピール?」
間宮「東京は深海棲艦の侵攻でボロボロに、そしてやっと始まった復興もネットワーククライシスで中断…自分達はちゃんと仕事をしていると言うところを見せないと何を言われれか…」
朝潮「…大変なんですね」
間宮「まあ、少し内陸に行けば深海棲艦の事なんて知らない人ばかり…そんな人達ですら私たちに深海棲艦の討伐を急かす…」
朝潮「…人間になってから思いました、人間なんて所詮そんな物です…たくさんの人が命懸けで戦ってるのに…」
満潮「朝潮姉さん」
朝潮「満潮、どうかしましたか?」
満潮「…いや、そう言うわけじゃないけど…不安だったから」
朝潮「満潮は人見知りですからね、でもここには間宮さんもいますし…」
間宮「あ、私は道具を撮りに戻ってきてただけで佐世保の方に…」
朝潮「そうでしたか…」
満潮「……」
満潮が私の服の裾を強く握る
満潮「なんで私達も戦うのかしら…」
朝潮「…満潮は船内でみんなのサポートに徹してくれればそれでいいです、大丈夫ですから」
満潮「…わかってるけど…絶対、死んじゃ嫌だからね…」
朝潮「わかってますよ、この作戦は司令官の物です、どんな犠牲も許されません」
満潮「そう言う事じゃなくて…」
朝潮「……」
満潮「…朝潮姉さん…?」
朝潮「…司令官の第一艦隊って、誰?」
満潮「そりゃ…七駆の曙とか…長門さんとか…阿武隈さんとか加賀さん、あと日向の艤装の天龍さんとか…」
朝潮「…そうね、そうだと思う…」
朝潮(じゃあ、なんでその有力候補がここに居ないの…?)
佐世保鎮守府
三崎亮
亮「…なんで俺が引率なんかしなきゃなんねえんだよ」
大井「ガタガタ言わず用意しなさいな…私だってこんな事…」
亮「点呼は」
大井「済んでます、27名全員到着済みです」
亮「…じゃああと頼んだ、俺は会議がある」
大井「頼んだって…馬鹿言わないでくれますか!?宿毛湾泊地の人達をまとめ上げるなんて無理です!第一私は部外者で…」
亮「俺は海斗に宿毛湾の連中のまとめ役頼まれてるんだ、その俺がお前に任せるって言ったんだ、歯向かう奴は居ねえだろ」
大井「そ、それはそうかもしれませんけど…!」
亮「…とりあえず、任せたぞ」
大井「いや、だから……本当に話を聞かない…もう」
度会「手短に済ませよう、出発を早めたい」
亮「俺もそうするべきだと思う、1日でも遅れたらどうなるかわからねえ…それに台湾の方も今は深海棲艦が出てないんだろ?」
度会「ああ、一刻も早く攻め込むべきだ」
亮「…いけるか?」
度会「こっちの準備は済んでいる…が、ほとんどのメンバーは士気が低い、瑞鶴や龍田のように割り切って戦うものも居るが…殆どは暴走を起こしたばかりだ、それについての恐怖が大きいらしい」
亮「……」
度会「だが、だからこそ今行くしかない、時間が経ち、向こうの守りが盤石になれば確実に犠牲者を出す…そうならない為にも今向かうべきだろう」
亮「…宿毛湾の連中のやる気は十分すぎる、あとはそっち次第だろうな」
度会「なら…日程を早める」
亮「よし、全体に通達してくる」
度会「横須賀には俺から連絡する、ウチの艦隊にもすぐ話を通す、船に荷物を積んでおいてくれ」
亮「わかった」
横須賀鎮守府
提督 倉持海斗
火野「…君は本当に外れなくていいのか」
海斗「そっちこそ、僕も君も…状況は何も変わらないでしょ?」
火野「…それはそうかもしれないが」
海斗「この戦いに決着をつけないと…どうしても行けないんだ、クビアのところには…」
火野「なら、その時は私も手を貸そう」
海斗「ありがとう、でも今は作戦に集中しよう」
火野「…もちろんだ」
太平洋 深海棲艦基地
戦艦 レ級
レ級「キタカミ、元球磨型軽巡3番艦、そして今は深海棲艦もどき」
キタカミ「……」
レ級「頭にフナムシでも湧いたか?言葉を理解できないのか」
キタカミ「…チッ」
レ級「お前はここに攻め込んできた艦娘にグチャグチャにされた、しかし頭は人間のまま、不完全に復活した…中途半端なお前は腐り始めてる、心も、身体も…」
キタカミが此方を睨みつける
キタカミ「だからなんなのさ」
レ級「そして、駆逐棲姫に付き従うわけでも、明確な反乱の意思もない…何処までも中途半端な奴だな」
キタカミ「うるさいんだよ、さっきから」
キタカミが単装砲に弾を込め、此方へと向ける
レ級「……それでいい」
吹き飛ばされたキタカミが壁を突き破り、水面を転がる
キタカミ「がはっ…あー…くそ、バケモンめ…」
レ級「化け物で結構、事実だからな…」
手に持ったナイフを艤装に飲み込ませ、拳銃を取り出す
キタカミ「…拳銃…」
レ級「例えば…ロボットのアームだけが中途半端に壊れたとして…それをどうするか」
キタカミ「…は?」
レ級「私の答えは…取り外して捨てる、他のパーツが使えるのであればそこだけを交換すればいい」
キタカミ「…何の話…」
レ級「お前を深海棲艦にしてやる」
キタカミ「……チッ…!」
キタカミが立ち上がり此方に向かって砲撃を始める
それを撃ち抜くように射撃する
レ級「砲弾というのは信管を…ふむ…AP弾か」
砲弾を一つ掴み取り、眺める
キタカミ(砲弾を撃った上に…掴んだ…!)
レ級「貫通性能を高めている…いや、待てよ…なんで徹甲弾を軽巡が積める?」
キタカミ「…こちとら、半端者なんでね…!」
レ級「…なるほど、もっと撃ってこい、半端者」
キタカミ「言われなくても撃ち殺してやるっての…!」
砲弾がキリなく飛んでくる
レ級(…先ほどとは弾頭の色が違う、これは炸裂弾…)
炸裂弾だけを撃ち、破裂させる
キタカミ(…何これ、冗談キツイって…全部かわされる上に弾の種類見極めて…あー、やってらんない…!)
レ級「どうした、諦めたか」
キタカミ「冗談でしょ…!」
キタカミ(今の声、その匂い…場所は完全に把握した…位置は捉えてる…撃ち抜く!!)
キタカミ「っ!?何で昼間なのに暗く…」
レ級「何処を見ている、お前は既に私の艤装の口の中だ」
キタカミの頭を尻尾が丸呑みにし、徐々に圧を加えていく
キタカミ「が…ぁが……!」
レ級「固定完了…言い残す事は?…無さそうだな、斬首と圧殺、好きな方を…選ぶ事もできんが、では斬首だ」
骨を噛み砕く音ともにキタカミの胴体が水面に倒れる
レ級「…圧殺にしてたら本に血がつきかねなかったな」
尻尾を振るい、頭を放り出す
レ級「…さて、仕上げだ…」
キタカミの頭を掴み、持ち上げる
右手をかざす
レ級「特に強力な奴だ、壊れるなよ」
眩い光があたりを包む
レ級「……眩しいな、これで頭をここにつけて…よし…ん?こっちは背中向きか、じゃあ顔は反対で……ああ、これでいいか」
動かなくなったキタカミの脚を引きずり、基地へと戻る
レ級「駆逐棲姫、こちらレ級…キタカミの調教は終わったぞ」
返事は返ってこなかった
レ級「…まあ良い…ここからはお手並み拝見だ」