元勇者提督 作:無し
艦内 甲板
駆逐艦 曙
曙「…はぁ…」
潮「曙ちゃん不機嫌だね…」
漣「そりゃ…ご主人様に捨てられておこなんでしょー」
朧「捨てられた訳じゃないけどね」
曙「馬鹿言ってないで…さっさと見張りに戻って」
さっきからレーダーにチラチラと映ってるらしい水中の深海棲艦らしい影…
あたしの目には当然見えないし、かと言って海に降りて戦闘態勢をとればいつ引き摺り込まれるかわからない…
曙「…あ?…ら、雷跡!」
朧「雷跡!12時の方向……と、遠ざかってる…?」
漣「え?…本当だ…つまり敵が追ってきてる!」
潮「報告!こちら甲板見張り員!6時の方向から射出されたと思われる雷跡有り!!」
曙「後ろの敵を…!」
正面で複数の水柱が上がる
漣「うわっ!深海棲艦!」
朧「何言って…そりゃ深海棲艦が撃ったんだから…いや、違う?」
深海棲艦の残骸が海に浮かぶ
曙「…今の魚雷…深海棲艦を倒した…?」
潮「…と、とにかく、他の敵を仕留めないと!」
曙「あたしがやる、ワイヤーつけて!」
艤装にワイヤーをかけ、飛び降りる
曙「引き摺り込まれたのみたら直ぐに巻き上げなさいよ!」
朧「待って!アタシも行く!」
大きな水飛沫をあげて海面に降りる
曙「…さて、出てきたわね雑魚ども」
朧「アタシ達が相手するよ…!」
曙「…って、なんでアンタ素手なのよ!」
朧「あ、ごめんごめん」
朧が主砲を取り出す
曙「…それ、主砲?」
朧「そうだよ、パンチを出しやすい様に小型化してるけど…威力も少し低いかな」
曙「大丈夫なんでしょうね…」
朧「それは見ててよ…アタシ1人でも余裕だから」
朧がステップを踏む様に前に駆ける
曙「ちょっ!?待ちなさいよ…!」
打撃の度に砲撃
殴り、主砲を突きつけてゼロ距離での砲撃
深海棲艦の体を突き破った砲弾が周囲に血肉を撒き散らす
曙(あのサイズの主砲で仕留められてるってどういう…)
朧「アタシの本気…見せるよ!」
深海棲艦をボールの様に蹴り上げ、大きく体を使った回し蹴りを叩き込む
曙「ひぇ…グロ…」
蹴りを受けた深海棲艦が肉片となり、周囲の深海棲艦にかかる
朧「まだやる?」
深海棲艦が狼狽える様な動作と共に退がり始める
曙「逃してどうすんのよ!」
朧「そっか、全滅させなきゃなんだ!」
朧「よし、巻き上げて!」
曙「まあまあ…ってところかしら…結局6時の方角の敵はどうなってんの?」
朧「さあ、多分誰か見に行ってるでしょ」
艤装にかかったワイヤーに引っ張り上げられる
曙「…これ欠陥ね、肩とか腰に体重かかりすぎて痛い」
朧「太ったの?」
曙「…アンタ殺すわよ…?」
朧「それにしても、敵の数少な過ぎるよね」
曙「…まあ、そうね…」
朧「やっぱりここから進むほど敵の数が増える、それを考慮して…ええと…」
曙「佐世保の連中がやる気ないなら今やらせるべきよ、決戦に出す程の実力はアイツらには…」
背筋に冷たいものが走る
曙「…何、今の感覚」
朧「…居る、何処に…?」
レ級「ここだ」
直ぐ真上から声がする
曙「な…!」
朧「ワイヤー巻取中止!」
釣り上げられている所為でマトモに動く事すらままならない
船体を蹴り、若干の距離を取る
レ級「そんな状態では…戦いにすらならないか」
レ級は尻尾で船に噛みつき、張り付いていた
曙「アンタも器用な事して…いや、それよりいつから…!」
レ級「つい先程から、それと…衝撃に備えろよ」
レ級が大きなナイフを二本取り出しワイヤーに押し当てる
朧「ッ!」
曙「良いじゃない、やってやる!」
剣に炎を纏わせ、ワイヤーを焼き斬る
船体を蹴り、空中で翻り着水する
曙(これで水中から来られた際の保険は無くなった…ちゃんと覚悟しなさいよ、あたし!)
朧「よ……ッと!…そっちも降りてきなよ、レ級」
レ級「お言葉に甘えて…ふふっ…相手してくれるんだな?」
曙「アンタには借りがあるから、たっぷりとね」
朧「ここで仕留めるよ、曙…第七駆逐隊で仕留める」
曙「そうね、それに…こいつさえやれば敵の戦力は大きく落ちる」
レ級「そうでしょうね、私はとても強い…アンタらじゃ足下にも及ばない程に」
レ級が笑いながら呟く
曙(…なんか、コイツ口調変わった?)
朧「アタシから行く!曙、サポートして!」
曙「わかった!潮!漣!全体に連絡は!?」
潮『もう済んでるよ!』
漣『そっち行こうか!?』
曙「アンタらじゃコイツは無理!数を集めなさい!それと漣!爆雷ある!?」
漣『あいよ!』
朧の艤装がレ級のナイフにぶつかり金属音を響かせる
朧「っ…この…!」
レ級「…驚いた、まさか戦艦相手にここまで競り合える筋力…」
朧「なら、もっと驚かせとかないとね…!」
朧の主砲がレ級を捉える
朧「くらえ!」
至近距離から砲撃を撃ち込み続ける
曙「一回遮る!」
朧とレ級の間を炎の壁が走る
朧「なら、オマケ!」
回し蹴りの要領で魚雷を射出する
炸裂音が鳴り響く
曙「どーせ、まだまだ耐えるんでしょ?それにアンタは水中に逃げられる…」
水に何かが落ちる音が連続して鳴る
曙「漣、ナイスタイミング」
爆雷が炸裂する
漣『ぼのたんもボーロも援護は任しときな!』
炎が消え、水煙が晴れる
レ級「…ふーん」
レ級についた傷がどんどん再生する
曙「やっぱ尻尾千切んないと話にならないか」
レ級と自身の周りを炎で囲む
レ級「そう、私はこの尻尾を残して消し去られるか尻尾を切り落とさないと…」
曙「ところでさ、アンタ…というかアンタらってどういう存在な訳」
レ級「…死体」
曙「死体?それだけ?」
レ級「それ以外は一切わからない…ああ、でも一つだけわかるのは…人工の兵器ってコト」
曙「人工の…!?」
曙(つまり、深海棲艦を作ったのは人間?自然発生とかじゃなくて…)
レ級「あと、そういうのは感心しない」
レ級の尻尾が炎を突き破り朧に噛み付く
朧「ぁが…な…んで、バレて…!」
レ級「いや、周りの状況見えなくしてお話なんて…しかも1人は炎の外にいる、明らか不意打ち狙いでしょ、喋らせたのも場所を伝えるため」
曙「…そうね、そうよ、だけどその尻尾、少し伸ばしすぎじゃない?」
レ級のピンと張った尻尾に剣を向ける
レ級「投げナイフでもしてみる?」
曙「いや?でも…近いコトならもうしてる」
レ級「…何を…」
レ級に砲弾が降り注ぐ
レ級「これはっ…!?」
複数の砲弾がレ級の尻尾を捉え、根本から弾け飛ぶ
レ級「く…広角射…!」
曙「アンタは、第七駆逐隊が相手してんのよ、アタシら2人じゃなくてね…ちゃんと4人見なさいよ」
レ級「……ふ…はは…あはははははははっ!!」
曙「うるさっ…!」
朧「耳が…!」
レ級「…最っ高…!これは…勝てないかも」
曙「なんて?アンタ今何を…」
炎が周囲を包む
レ級「…ま、でも…少し考えものか」
レ級がナイフを振り、遊ぶ様な仕草で近づいてくる
曙「何言ってんのか聞こえないけど…サシ…って訳ね、良いわ、尻尾切られたアンタなんか…!」
双剣を構え、姿勢を落とす
レ級「…場所、変えようか」
曙「…何?…うわっ!?」
駆逐艦 朧
朧「炎が厚くて中に入れない…!」
炎のドームが厚すぎて中の様子を伺う事すらできない
中にいるのは曙とレ級の2人だけ、幾ら尻尾を落としたとしても…
レ級「……」
レ級がドームから飛び出す
朧「レ級!曙は!」
レ級は何も言わずに炎を指す
朧(ドームができて10秒も経ってない、そんなにすぐやられる訳ないし…先にこっちって訳ね…!)
朧「…尻尾、もう再生して…!」
レ級が尻尾を靡かせて近寄ってくる
朧(大丈夫、絶対勝てる)
脚の艤装を起動する
朧「…行くよ」
艤装のブーストを効かせ、距離を詰めて回し蹴りを放つ
レ級「ッ!?」
レ級が受けきれずに水面を転がる
朧「痛いでしょ、この蹴りは…」
朧(覚えさせるんだ、この蹴りを…!)
ゆっくりとレ級に近寄る
朧(…あと一歩近寄れば、間合い…)
踏み込み、もう一度回し蹴りの動作に入る
レ級がそれをみてガードの姿勢を取る
朧(良し!)
回し蹴りの動作の途中で脚を引く
それと同時に魚雷を射出し、直接突き刺す
レ級「!?」
朧「オマケだよ」
主砲を向けて魚雷を撃ち抜く
レ級が大きく吹き飛ぶ
朧(見えた、尻尾…!)
主砲を構えなおし、放つ
レ級「ガッ!?アアアッ!?」
尻尾を撃ち抜かれたレ級があたりを転がり回る
朧「ソレ、そんなに痛いんだね」
レ級の艤装部を踏み、千切る
レ級の体が大きく跳ねる
朧「くらえ…!」
レ級をボールのように蹴り上げ、膝を胸まで引き、突き刺すような蹴り
朧「せいっ!はあぁぁっ!」
艤装でブーストした蹴りがレ級を撃ち抜く
朧「…身体、真っ二つにしたんだから…もう起き上がらないでよね…」
炎のドームが徐々に消える
朧「曙!…曙?どこに…」
曙の姿はドームの中にはなかった
朧「曙!なんで居ないの…ねぇ、曙!通信も応答しない…」
漣『ぼのたんの艤装の反応消えてるって…』
潮『とにかく潮ちゃんは回収地点に!」
朧「…まさか…レ級は囮?狙いは曙を連れ去る事…?」
倒したレ級に近寄る
朧「!……違う、さっきまで戦ってたレ級じゃない…」
尻尾を再生させたんだと思った
完全に圧倒したから反撃できないんだと思った…
朧「…コイツは、ただの囮…」
でも、本当はそんなことなんてない
ただ出し抜かれただけだ
甲板
漣「ボーロ、怪我してない?」
朧「大丈夫…大丈夫だけど、曙は…?」
潮「今明石さんがレーダーで追ってるけど…反応がないらしいよ、艤装の反応が出たら直ぐ教えてくれるって…」
朧「…クソッ!!」
甲板を力一杯叩く
朧「あの時身を焼く覚悟で炎に入れば…曙は助けられたかもしれないのに…!」
漣「ボーロは悪くない、誰も悪くない」
潮「大丈夫、大丈夫だから」
朧「…曙を…アタシは2人とも…」
潮「…曙ちゃんなら、絶対に大丈夫」
漣「…それより、ボーロ、これみてよ」
漣が第七駆逐隊の出撃札を見せる
朧「…曙の札は?」
潮「…無くなってるみたい」
朧「……まさか、最初から曙を狙って…」
漣「待って、通信…明石さん?…え、何処に……敵基地?まだ10分と経ってな…え?」
朧「どうしたの、漣…」
漣「ぼのたんの艤装…これから攻める敵基地に反応があるって…」
潮「こ、ここからすごく遠いよ…?」
漣「わかってる、あり得ないんだけど…どうなって…」
朧「…なんでもいい、なんでも良いよそんなこと」
潮「…うん」
漣「そっか、なんでも良いか…まあ確かにやることはなんも変わらないしね」
朧「深海棲艦の基地を潰して…曙も助ける…行くよ!」
潮/漣「「おぉーっ!!」」
太平洋 深海棲艦基地
駆逐艦 曙
曙「うぎゃっ…つつ…何ここ」
生暖かい、ベトベトした狭くて暗い空間から投げ出されたと思えば…
今度は洞穴に鉄格子でできた牢屋…
レ級「牢屋に決まってるでしょ」
そして鉄格子の向こうからこっちを睨むレ級
最悪のシチュエーションだ
曙「…アンタ、せっかくやる気だったのに…」
レ級「なんで馬鹿正直に相手しないといけないの?…まあ相手はしてあげる、明日、改めて」
曙「そんなの待つつもりなんかないわ、今すぐに…」
レ級のナイフが首を掠める
レ級「ここには…ひーふーみー…5万の深海棲艦がいるんだけど、全部と戦う?生き残る自信は?」
曙「今の数え方でよく5万が出てきたわね…」
レ級「適当な数だから、でもそのくらい居る」
曙(…ま、勝ち目はないぞって事か…)
レ級「…しばらく大人しくしてれば食事くらいは出すから」
曙「ちぇっ…どうせここは明後日には火の海よ、見てなさい」
レ級「…楽しみにしてる」