元勇者提督   作:無し

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隠し事

東京

駆逐艦 朝潮

 

朝潮「…この辺りは、平時のように賑わっているのですね…」

 

海斗「いや、コレでも十分人が少ない方だよ」

 

歩道にはたくさんの人、車もかなりたくさん通っている

コレでも一通りが少ないとは…東京都は本来どんな街なのか

 

海斗「…ここから数分歩けば前の深海棲艦の襲撃痕が見える、だからこの辺りを通る人は少ない方だし…」

 

朝潮「ですがお店などは通常通りやってるように見えますよ」

 

海斗「生活にはお金が必要だからね…少しでもお金を集めようとみんな必死なんだと思う、特に輸入ができなくなってからは農家も増えたけど、それでも自給自足には程遠い…食料品の値上がりは激しいからね…」

 

朝潮「生活はより苦しいものになりつつある…ということですか」

 

海斗「うん、でも台湾方面で作戦が成功したおかげで大陸側からの輸送は可能になると思う…コレできっと、少しは…」

 

山雲「あー!司令さーん、ゲームセンターが有りますよ〜?ゲーム得意なんですよね〜?」

 

海斗「得意というか…好きなだけなんだけど…それに、君たちの息抜きなんだから」

 

満潮「…あれ」

 

朝潮「満潮?何か見つけたんですか?」

 

満潮「あそこにいるの…天龍さんじゃない?」

 

満潮が指差した先には天龍さんが何かに悩んだ様子で立っていた

 

朝潮「…声をかけてみましょうか」

 

海斗「そうだね」

 

山雲「天龍さ〜ん」

 

天龍「…ああ、これはみなさん…提督も、どうされましたか?」

 

海斗「いや、たまたま歩いてたら君を見かけたから」

 

天龍「そうですか…」

 

朝潮「困っていたようですが?」

 

天龍「…実は、先程襲撃の被害にあった地域を見に行ってきたんです」

 

朝潮「何故…?」

 

天龍「…もっとたくさんの深海棲艦を倒していれば…もう少しは被害を抑えられたのではないか、そう思って…」

 

満潮「…無理だと思うけど…」

 

天龍「確かに、そうでしょうね…どんなに強い人でも千以上の敵と相対してそれを殲滅することなど不可能です」

 

朝潮「そういう意味では…」

 

天龍「…今、私にできることが何かと考えた時…やはりこの食糧難、周辺の食品を買い集めて届ける事くらいしか思い浮かばず…」

 

海斗「…それは、やめた方がいいと思う」

 

天龍「…提督、何故でしょうか…」

 

海斗「あの襲撃からもう一ヶ月が経った、国からの支援は継続して続いてる、それが限度なんだよ…こういう事は言いたくはないけど、天龍、例えば君がもしそれを実行したとして…何人に配れるのかな」

 

天龍「…比較的安いもの…インスタント食品やファストフードなどを…私の今の所持金ではあまりにも僅かですが貯金も使えば…」

 

海斗「そう言うと思ったけど…君がどんなにお金持ちだったとして…被災者は数百人じゃないんだよ、何万人と居るんだ…目立った被害があるのはここだけじゃない、もしこの地域の被災者全員に食糧を渡せたとして…他の地域の人はどう思うかな」

 

天龍「…それは」

 

海斗「君がやった事は必ず伝わってしまう、だって君は艦娘だから…大袈裟な言い方だけど、君の行動は国の行動になってしまう」

 

天龍「……」

 

海斗「でも、君のやろうとした事は全く間違いじゃない、むしろ素晴らしい事なんだけど…」

 

天龍「すいません、私の思慮が浅いばかりに」

 

海斗「いや、違うんだ…なんて言えば良いのか…」

 

山雲「は〜い、お話はそこでおしま〜い」

 

満潮「…そうね、折角会ったんだし…一緒にこの辺りを歩かない?」

 

天龍「……わかりました、御同行いたします」

 

朝潮(…艦娘という存在自体は有名になっているけど、確かに個人が有名になったりはしていない…だからここで目立った行動をすれば…辛い思いをすることもある…そういう事だとは思いますが)

 

山雲「そういえば〜…司令さんは東京の御出身だったり〜…」

 

海斗「うーん…僕の両親は転勤族だったから、何処が出身っていうのもないかな…東京にいた時もあったけど…」

 

山雲「じゃあこの辺りのことはわかりますか〜?」

 

海斗「……わからなくはないけど…そこまで詳しいわけでもない、よ」

 

朝潮(…なんだろう、司令官の顔が何処か暗いような…)

 

海斗「……」

 

満潮「…ブティックとかはあるの?」

 

海斗「確か向こうにあったかな、行きたい?」

 

満潮「…別に欲しいものがあるわけじゃないけど…」

 

山雲「行ってみましょ〜」

 

 

 

 

 

 

満潮「…すごいものばっかりだった…完全なオフの時に来たいわね」

 

朝潮「そうですね、今買ったとしても持ち帰ることができませんから…」

 

海斗「作戦が終わったらみんなで買い物に来ると良いよ、一度横須賀に帰投する事になってるし、時間を取れるようにするから…」

 

天龍「お気遣いありがとうございます」

 

山雲「うーん…少しお昼を過ぎたくらい…ですね〜…」

 

天龍「そうですね…あれ、ここは…どうやら一周して出会った場所に戻ってきたようです」

 

朝潮「いつの間に…」

 

海斗「何処かで何か食べようか」

 

山雲「…そーれーよーりー…司令さ〜ん、私、ゲームセンターに行ってみたいです〜」

 

朝潮(…山雲はヤケにゲームセンターを推しますね)

 

満潮「…確かに、今ご飯食べに行っても凄く並ぶだけだと思うし…時間潰して行かない?」

 

海斗「みんながそれで良いなら」

 

天龍「…私は構いませんよ」

 

朝潮「私もそれで」

 

 

 

天龍「…あまり来たことはありませんでしたが…中々、騒がしいですね」

 

朝潮「山雲は目当てのゲームがあるんですか?」

 

山雲「有りますよー、コレです〜」

 

満潮「…格闘ゲーム…?確か昔キタカミさんとかがハマってた奴…」

 

海斗「朧が強かったかな、山雲もやってたんだっけ…?」

 

山雲「はい〜、嗜む程度に…対戦します?」

 

海斗「いや、僕はやめておくよ」

 

山雲「…じゃあ、野良の人とやってますね〜」

 

満潮「オンライン対戦って事ね…じゃあ私達はどうする?」

 

朝潮「とりあえず少し見てまわりましょう」

 

 

 

天龍「一通り見てまわりましたけど…どうですか?」

 

満潮「…やりたいのは特にないかな」

 

朝潮「満潮の趣味には合いませんでしたか」

 

海斗「…あれ?」

 

山雲「司令さ〜ん!」

 

山雲が走ってくる

 

山雲「仇を討ってください〜…同じ人にもう10連敗してて…」

 

海斗「ええと…山雲、もうやめた方が…」

 

山雲「ダメですよ〜…負けっぱなしじゃ納得できません…」

 

海斗「別にそんなに僕も上手くないんだけどな…」

 

司令官が山雲に手を引かれ、格闘ゲームの席に座らせられる

 

山雲「絶対勝ってください」

 

朝潮(山雲の顔がすごく真剣…)

 

海斗「ええと…わかったけど…この相手凄く強いし勝つのは難しいんじゃないかな…」

 

天龍「そうなんですか?」

 

海斗「…うん、負けちゃった…」

 

山雲「つ、ぎ、で、す」

 

山雲が小銭を投入口に押し込む

 

海斗「い、いや…山雲…」

 

山雲「勝つまで、やります」

 

海斗(…どうやら本気みたいだ…弱ったな…)

 

朝潮「そんなに勝てないものなんでしょうか…」

 

天龍「さあ…でも、さっきよりは善戦してるような…」

 

山雲「いいえ〜、完全に相手のペースですよ〜、体力こそ勝ってますけど技を振るタイミングを間違えたら一瞬で負けちゃいます〜」

 

海斗(騒がしくて集中できない…)

 

朝潮「あ、倒した」

 

山雲「一本取っただけですよ〜、このゲームは二本取らなきゃ負けですから」

 

朝潮(…それにしても山雲が格闘ゲーム好きとは…)

 

海斗「…あれ、勝てた」

 

山雲(最後のは完全にコマンド誤爆の予想外な技で倒したように見えましたけど…勝てたなら良いとしますか〜)

 

海斗「…満足した?山雲…」

 

山雲「はい、スッとしました〜、さ、ご飯食べに行きましょうか〜」

 

海斗「う、うん…そうだね…あれ?」

 

立ち上がった司令官が目を丸くして対面の席を見る

 

朝潮「司令官?どうかしましたか?」

 

海斗「…キミは…」

 

トキオ「…へ?あ、対戦ありがとうございました!」

 

赤毛の少年が立ち上がり、司令官に笑いかける

 

海斗「…うん、こっちこそ付き合ってくれてありがとう」

 

海斗(…記憶は戻ってない、か…)

 

朝潮「司令官、お知り合いですか?」

 

山雲(私と同い年くらい…?この子にボコボコにされてたのね〜)

 

海斗「いや、違うよ…そろそろ出ようか」

 

山雲「は〜い」

 

 

 

 

朝潮「…それにしても、ネットで調べてもこの辺りの物価はここ一年で急激に上昇してるのですね」

 

天龍「深海棲艦の発生からもう一年以上…元々輸入国だった事もあり、かなり苦しいものとは思います」

 

海斗(…ネットワーククライシスから一週間と経っていないのに、こうしてネットに頼る生活が復活してる…もう二度と起こらなければ良いけど…)

 

朝潮「…?」

 

背後から誰かが走ってくる

フードを被った女性のような…

 

朝潮(……急いでるんじゃない、誰かを狙って…いや、司令官を…!)

 

摩耶「カイトォォッ!」

 

海斗「うわっ!?」

 

女性が司令官の背中にドロップキックをかます

 

海斗「いたた…何が…」

 

摩耶「テメェ!よくもこんなとこに…!」

 

朝潮「…貴方は…!」

 

天龍「摩耶さん…?」

 

摩耶「ああ?誰だお前ら…こいつのツレか?ヘッ…人を見捨てて逃げといて良い度胸じゃねぇかカイト!」

 

朝潮(記憶が戻ってない?なのに司令官の事を知っている…)

 

海斗「摩耶…!どうしてここに…」

 

摩耶「どうしたもこうしたもねぇだろうが!テメェ…ふざけやがって!」

 

摩耶さんが司令官の胸ぐらを掴む

 

摩耶「テメェは姉貴の仲間じゃなかったのか!?なんで…なんで見捨てて逃げやがった!」

 

海斗「それは誤解だ!あのメールは僕が送ったんじゃ…」

 

摩耶「ふざけんじゃねぇ…!それ以上その舐めたこと言うために口開くってんならここで…!」

 

天龍「ここで、どうするつもりですか?場合によっては私は貴方を制圧しますが」

 

摩耶「っ…なんだ、テメェ…」

 

山雲「とりあえず〜…場所変えましょ〜?」

 

 

 

 

天龍「…つまり、提督が貴方のお姉さんをメールでゲームに呼び出し、仕様外のモンスターに倒され…そして意識不明になった…」

 

摩耶「そうだよ、なんか文句でもあんのか」

 

天龍「…信じ難い話ですね」

 

摩耶「んだと!?」

 

海斗「待って、僕が呼び出したわけではないけどそれ以外は事実だよ」

 

摩耶「テメェこの期に及んでまだ言い訳する気か!」

 

海斗「話を聞いてよ摩耶…!」

 

摩耶「メールが残ってんだよ!お前が姉貴を呼び出したメールが…!」

 

朝潮「メールですか、本当に司令官が送ったものなんですか?」

 

摩耶「差出人はコイツだった!」

 

山雲「アドレスの偽装とか…」

 

満潮「パソコンのハッキングとかじゃないの?」

 

海斗「…多分そうだと思うけど」

 

摩耶「んなわけねぇだろ!クソが!」

 

海斗(弱ったな…)

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