元勇者提督   作:無し

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願わくば

海上 

駆逐艦 不知火

 

不知火「……因縁はここで晴らしましょう…ご期待に応えてみせます、第十八駆逐隊、不知火…出撃します!阿武隈さん、手筈通りに」

 

阿武隈「気づかれずに侵入するのは得意なんです、任せて任せて!」

 

不知火「ええ、お願いします」

 

飛んできた砲弾を撃ち落とす

 

不知火「私たちは船を進めます、危険な役割ですが……お願いします」

 

阿武隈「大丈夫!潮ちゃん達もきてくれるから」

 

不知火「お願いします」

 

リフトが降りてくる

 

大井「重雷装艦大井、出撃します」

 

北上「…同じく北上、出るよ」

 

夕張「軽巡夕張、護衛任務に着きます!」

 

扶桑「戦艦扶桑、同じく護衛任務に参加します」

 

長門「同じく長門、同様に護衛に参加する」

 

朧「駆逐艦朧、遊撃作戦に参加」

 

漣「同じく、遊撃部隊に参加…!」

 

潮「私も…!」

 

阿武隈「遊撃部隊は私についてきて下さい!行きますよ!」

 

不知火「護衛部隊はお互いの位置を視認できる場所に、無線の周波数をしっかり合わせてください、応急修理要員はちゃんとセットしてますか?」

 

大井「はい」

 

北上「…役に立つんかね、これ」

 

阿武隈「ほら、突っ立ってないで!動いてください!」

 

朧「は、はい!」

 

長門「私達はどうすればいい」

 

不知火「砲撃は全て防ぎます、周囲の雑魚を仕留めてください」

 

扶桑「わかりました」

 

不知火(…そうはいっても、私の集中力がどれほど持つか…消耗をいかに抑えるか…考えるべき事は多過ぎる)

 

阿武隈(キタカミさんの鼻に感づかれる前に近づいて仕留めないと…少しでも確実な結果を求めて…)

 

阿武隈「加賀さん!赤城さん!」

 

加賀『わかってるわ、必要になったら指示して』

 

阿武隈「夕張さん!」

 

夕張「はいはい、これね」

 

不知火「……それは」

 

阿武隈「臭い玉です、これを複数の方角に放って撹乱します、必要なものは揃いました、遊撃部隊!出撃!」

 

 

 

不知火「…さあ、掃除を始めましょう」

 

手袋を強く引っ張り、力を込める

 

不知火「暁さん、いいですか」

 

暁『大丈夫、甲板に着いたわ、ここから戦況を見て指示するわ』

 

不知火「助かります、降りかかる火の粉は…」

 

暁の方へと飛ぶ砲弾を撃ち落とす

 

不知火「私が全て撃ち落とします」

 

長門「左舷軽巡級2!」

 

扶桑「右舷重巡級1、攻撃します!」

 

不知火「……キタカミさん、あなたを私は超えて見せます、時は今、場所は此処…!」

 

 

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

大井「…北上さん、感じる?」

 

北上「……何を」

 

周囲の敵へと魚雷を流しながら会話する

 

大井「居るの、姉さん達が…」

 

北上「…何処に」

 

大井「そこまでは、だけど感じる…此処に居るって…」

 

北上(…血、って奴?いや、大井の話では血の繋がった姉妹というわけではない……なら、心の繋がりとでも…)

 

不満を押し殺し、装備を動作させる

 

北上「…全部死ね…!」

 

周囲の深海棲艦に魚雷を撃ち込む

 

大井「魚雷の消費が多過ぎる、もっと落ち着いて戦って」

 

北上(誰のせいで……いや、あたしの問題か、これは…)

 

北上「…ふぅ…すぅ……はぁ…」

 

大きく深呼吸をする

 

北上(そうだ、あたしは決めた…何処の誰とも知らないもう一人のあたしが使い捨てた姉妹をあたしが貰っていくって)

 

大井「北上さん、右舷の軽巡級!」

 

北上「……あれ、ね」

 

それがたとえ人の形をしていなくても

それがたとえどんなに醜い姿なのだろうと

 

主砲に砲弾を再装填し、向ける

 

北上「アレが私の姉妹ってわけだ……仲良くできるといいけど」

 

ト級「ギャァァァァァッ!」

 

鼓膜が破れそうな方向を上げて大井へと突進してくる

 

北上(…撃って来ないで直接?突進で押し潰しに…いや…)

 

大井「…姉さん、絶対倒して…え?」

 

主砲を向けようとした大井を制し、主砲を下げさせる

 

北上「…何となくわかってきた…」

 

他の深海棲艦へ向けて足止めの魚雷を流し、ト級と大井の間に立つ

 

大井「ちょっ…!」

 

北上「…大丈夫だから、落ち着きなって……3人とも」

 

ト級が減速し、軽くぶつかり、とまる

 

大井「……止まった…?」

 

北上「…はは、腰抜けそ……なんでこんな馬鹿な真似…」

 

北上(でも、そうしなきゃいけないって思った…それだけで理由は充分…)

 

ト級「…ギ、シィィィィッ…」

 

ト級が大井の方を見る

 

大井「…姉さん、わかるの…?」

 

ト級「……」

 

ト級の首が縦に動く

 

大井「姉さん…良かった…!」

 

北上「…っ…?」

 

ト級の周囲に赤いオーラの様な何かが一瞬浮かぶ

 

北上「…何、今の……」

 

ト級「ギ、ギギギガ……ギシッ…」

 

大井「姉さん?大丈夫なの?姉さん…!」

 

ト級の主砲がこちらを向く

 

北上「っ!…クソッ!大井!!」

 

大井「……こんなの…なんで、こんな…!」

 

大井と共に主砲を向けて放つものの、ト級の装甲に防がれる

 

ト級「ギジャァァァアッ!」

 

ト級の砲撃が至近距離に着弾する

護衛するはずの船が砲撃を受けて揺れる

 

北上(ヤバい…ヤバい、どうしたら…!)

 

大井「くっ……北上さん!無事!?」

 

北上「問題ない…!」

 

大井「…良く聞いて、この軽巡級をここで完全に仕留める!」

 

大井が砲撃を始める

 

北上「…アンタの姉妹なんじゃ…」

 

大井「姉妹だから、私が…私たちが蹴りをつけなきゃいけないの」

 

北上「………都合のいい時だけ姉妹扱い…って訳ね…」

 

主砲を向け、砲撃しながら距離を取る

 

北上「…ま、いいか…一緒に背負う物がある方が……姉妹っぽいし」

 

ト級の艤装が大口を開けて近寄ってくる

 

北上「……くらえ…!」

 

ギリギリで魚雷を発射し、口内に突き刺す

すんでのところでト級の噛みつきを回避する

 

ト級「ギッ…ギィシャッ!」

 

大井「体制が崩れた!北上さん!接続部を狙って!」

 

北上「わかってる!」

 

回り込み、砲撃を接続部に撃ち込む

 

大井「…姉さん…!」

 

大井が主砲をト級に押しつけ、何度も砲撃を撃ち込む

 

大井「もう、起き上がらないで…!」

 

北上「……」

 

大井に向けていた視線を無意識に落とす

どこか苦しく、物悲しい感情が胸に宿る

 

北上「…アンタらの妹は…ちゃんと強いから、心配しなくていい…」

 

黒い深海棲艦の艤装がボロボロと溢れ落ち、海に沈んでいく

 

ト級「ギィィィィッ!」

 

突如ト級が飛び上がり、その両腕をこちらへと伸ばす

 

北上「嘘でしょ…!」

 

大井「させない!」

 

北上「っ…大井!」

 

あたしを突き飛ばした大井がト級に鷲掴みにされる

 

大井「ぐ…ぁ……姉、さん…!」

 

北上「大井を離せ!」

 

ト級の腕に砲撃を撃ち込む

 

北上(全然効いてない…いや、ダメージはあるはず、その腕千切れるまで…!)

 

北上「撃ち込んでやる!!」

 

ト級の片腕を執拗に狙い撃つ

 

北上「吹っ飛べ…その腕、吹っ飛べ!!」

 

ト級の片腕が半分ほど抉れ、ダラリと垂れる

大井が手の隙間から海へと滑り落ちる

 

大井「っ…う…」

 

北上(大井にもう無理をさせられない…あたし一人…やらなきゃ…大井の分まで…)

 

大井「待って北上さん、夕張さんを呼んで…」

 

北上「…大井、早くそこから…」

 

大井「…大丈夫だから、早く…私の通信機、故障したみたいなの」

 

北上「…応答して、北上から夕張へ、夕張に来てもらいたいんだけど」

 

夕張『了解!そっちに向かう!』

 

大井「…せめて、意識だけでも戻したい…から」

 

ト級が力無く海面に斃れる

 

北上「…コイツ…もう、動けなかった…?」

 

大井「…私を掴む力…だんだん弱まって…それでも、しがみつくみたいに…」

 

夕張「お待たせ…この軽巡級?」

 

大井「夕張さん、姉さん達をお願いします」

 

夕張「…まだ動作を完全には確認できてないけど、良いの?」

 

大井「はい、願わくば…意識だけでも戻って欲しいですけど」

 

北上「…何を…?」

 

夕張が右腕に物々しい器具を装着する

 

夕張「…お願い、ちゃんと動作して…!」

 

北上「っ!?」

 

眩い光が辺りを包む

 

夕張「データドレイン…!…っ!これ、ヤバ…!」

 

光が消えたと同時に小さい花火の様な音がする

 

夕張「っ…ぐ…痛…!」

 

大井「…前が見えな…」

 

北上「何が、どうなって…」

 

何かが手元から離れたような、そんな感覚が確かに有った

何かの分だけ体が軽くなった気がした

 

夕張「落ち着いて、数秒で視力は戻る……こちら夕張!戦闘外で負傷、左舷に誰か代理をよこして!」

 

不知火『陽炎、出撃してください』

 

陽炎『陽炎了解、出撃する』

 

北上「…その腕…」

 

機械が火花を散らしながら海面に落ちる

 

夕張「負荷に耐えきれずショートしちゃった…いつつ…でも、動作はしてる…」

 

大井「…じゃあ…」

 

大井に手を引かれる

 

北上「え?」

 

大井「…貴方の、姉でもあるんですから」

 

北上「……うん」

 

斃れたト級に近寄る

 

大井「…球磨姉さん、多摩姉さん…ようやく静かに眠れますよ」

 

北上「……あれ」

 

ト級の白い皮膚が溶けだし、海に流される

 

大井「…こんな、ことって…」

 

北上「……願わくば、ね…」

 

かつて見たことがある、ほんの僅かな間だけしか関わることが無かった姉が2人そこに横たわっていた

 

夕張(…イ級に対して使用したレポートではこんな事は起きなかった…何が理由で…いや、今はそれを考えるよりも…)

 

夕張「ごめん、あと二人くらい寄越して!人を運搬しないと!」

 

大井「…心臓、動いて…息もしてる…意識は無いけど、生きてる…!」

 

北上「……良かったじゃん、大井」

 

大井「北上さんも…」

 

北上「…ま、いいけどさ…」

 

受け入れてもらえるかの不安はある

だけど今はこの幸福を噛み締めることにした

 

夕張「…あれ?2人とも、応急修理要員は?」

 

大井「…無くなってる…?」

 

北上「あたしもだ…」

 

夕張「……実験が必要だけど、もうこの機械は無理…か、リフトに運搬を…うわっ!?」

 

複数の至近弾が着弾する

 

北上「っ!?いきなり何!」

 

大井「…っ…」

 

すぐ隣で大井が崩れ落ちる

大井の艤装が外れ、周囲に散乱する

 

北上「大井!!」

 

夕張「待って、触らないで…気絶してるだけ……っ!?」

 

大井の魚雷発射管が全て破裂する

 

夕張「ぁ…が…っ…最、悪…!」

 

夕張が爆発に巻き込まれ、倒れる

 

北上「…これ、覚えてる……そうだ、アイツだ…」

 

相対さないと…

 

北上「…あたしが、やらないといけないんだ…アイツもそれを望んでるから」

 

夕張「どこに…?」

 

北上「…ケリを、つける…もう1人のあたしと…誰か!早く来て!夕張も大井も重症だから!」

 

不知火『左舷に増援を!』

 

北上「あたしの姉妹に手出した事…絶対に、後悔させるから」

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