元勇者提督 作:無し
海上
軽巡洋艦 阿武隈
阿武隈「特殊弾装填、発射用意!」
朧「用意良し!」
漣「良し!」
潮「良し!撃ちます!」
阿武隈「撃て!」
それぞれの砲弾がバラバラの方向に飛び、空中で炸裂する
阿武隈「第五戦速維持!このまま視認距離まで行きます!」
潮「はい!」
朧「前方的駆逐隊!」
阿武隈「砲撃用意!撃て!」
道中の敵を撃滅して進む
阿武隈(…わかる、このあたし達の真上を通る砲撃、それがキタカミさんの砲撃だって…絶対に倒さないと…)
阿武隈「っ!?」
艤装を盾に砲撃を受ける
阿武隈(今の砲撃、何処から…ほとんど真っ正面から飛んできたのに、まだ姿が見えない…!)
立て続けに砲弾が飛んでくる
阿武隈(受けてたら持たない…!)
阿武隈「散って!各自回避か防御を!」
朧「散るのは不味いです!これ、狙って撃ってきてません!」
阿武隈(たしかに…至近弾どころか的外れな砲撃も多い…それに、キタカミさんの砲撃は止んで無い…)
朧「アタシが前に出ます!単縦陣で突っ切りましょう!」
阿武隈「…良し、OK!それで行くよ!」
阿武隈(落ち着いて、冷静に周りを見て…私は…私はキタカミさんを超えてみせるんだ、そうしなきゃ…いけないから)
潮「…この高さ、もしかして…跳弾?」
漣「跳弾って…弾が何かにぶつかってって奴?そんなまさか…」
阿武隈「いや、そうだよ…私の艤装なんてさっきの砲撃で貫かれててもおかしく無い…絶対にそう、じゃないとあんな威力で飛んでこない…それに…」
阿武隈(姿が見えないと言う事は大体2.5浬以上先…口径と飛んできてる距離からして戦艦級の攻撃それなら…)
阿武隈「電探、持ってきとけば良かった…何もなしじゃレーダー射撃は無理…」
潮「えぇっ…持って来てないんですか!?」
阿武隈「だって使わなかったし…射角見るにも…多分波で変な跳ね方してる……待って、こっち弾薬の匂いが消えるまで確か10分やそこら…潮ちゃん!日没までの時間わかる!?」
潮「あと2時間です!」
阿武隈「夜戦…に持ち込むのは危険…かな」
朧「多分、完全に不利になると思います…深海棲艦が水中を自由に動けるのも考慮したら…何処からくるか」
阿武隈「そうだよね…」
悔いても仕方ない、やるしかない…
阿武隈(鼻を潰して方角を有耶無耶にして早期決着にしたかったのに…この感じは完全にバレてるし、突っ切るしか…)
朧「…砲撃が止んだ?」
深海棲艦の砲撃が止む
漣「やりぃ!弾切れだ!」
潮「めちゃくちゃに撃ってきてたもんね!急ごう!」
阿武隈「…ホントに?え?」
私の思考を全て否定するように、海に静寂が戻る
阿武隈「…捉えた…」
それとほぼ同時にターゲットを発見した
朧「…キタカミさん」
まだ遠くではっきりと姿を視認できていないものの…対象を捉えた、間違いない
阿武隈「…やらなきゃいけない…いや、やってやるんだから…!」
甲標的を取り出す
阿武隈「……あたしの改二…見せます…!」
甲標的を水中に潜り込ませる
阿武隈「ッ!?水中に深海棲艦…しかも囲まれて…」
知りたくなかった甲標的を通して情報が頭の中にどんどん入り込んでくる
阿武隈「浮上してきた!全員周囲警戒!」
朧「魚雷用意!発射!」
漣「全然たりてないよ!?」
潮「多すぎるよ!!」
一瞬にしてこちらの何倍もの数の深海棲艦が浮上してくる
阿武隈「…読まれてた、あたし達別働隊の動きも…あたし達のやろうとしてる事も、全部…」
深海棲艦の群れを割り、海の上をゆっくりと歩きながらその人は近づいてくる
キタカミ「当ったり前じゃ〜ん…阿武隈、誰にその技術教わったか…忘れちゃった?」
阿武隈「…キタカミ、さん…」
首の痛々しい傷痕
青色に濁り、輝く目
口角を無理やり引き上げて笑ったような表情
自身の記憶が違うと否定しても…
こんな人じゃないと思っても…
阿武隈(この人が…キタカミさんなんだ)
わかってしまう
キタカミ「今なら楽に殺してあげるけど?」
阿武隈「……」
答える事なく、装備を向ける
キタカミ「…悲しいなぁ…他の…駆逐は?どうするのさ」
朧「……アタシはキタカミさんを倒します」
漣「みんなそのつもりで来てるんで…!」
潮「…ごめんなさい」
キタカミ「…良いよ…良いよ良いよ、やってみなよ、やれるもんならさ…」
キタカミさんが主砲を天に向け、持ち上げる
キタカミ「もし勝てたら…アンタらが1番知りたい事、教えてあげても良いよ」
阿武隈「…1番、知りたい事…?」
キタカミ「気になんないかなぁ…?曙のコト」
朧「っ!」
漣「…ぼのたんを出されたら…よりやる気も出るってもんですよ…!」
潮「うん…絶対に倒さないと」
キタカミ「……おーおー、舐めてくれたもんだねぇ…私相手に逃げない事、褒めてあげたいところだけど…良く無いね」
周囲の深海棲艦がバラバラな方向に砲口を向ける
キタカミ「…コレ、味わってみる?」
キタカミさんが砲撃したのにならって他の深海棲艦が砲撃する
一つの砲弾が別の砲弾にぶつかり、また他の砲弾に
金属が激しくぶつかり合う音が鳴り響く
朧「耳が…!」
阿武隈「く…ッ…!」
阿武隈(何の為にこんな…!)
主砲を向けて放とうとしたところに背後から砲撃が着弾する
阿武隈「ぁ…が……ぅぐ…」
立て続けに砲撃をくらう
キタカミ「痛いでしょ、中途半端な威力だからなかなか死なないだろうねぇ…」
阿武隈(砲弾をぶつけ合って無理やりルートを…!)
漣「回りくどい手使わないで…直接撃ってくりゃ良いのに…」
キタカミ「いやー、だってさ、普通に撃ったら全方位からの同時射撃だろうと防がれかねないじゃん、特に阿武隈と朧は突出してきたねえ…見違えたよ」
朧「……」
阿武隈「…貴方を人間に戻す事だって…できるかもしれない」
キタカミ「だから?」
阿武隈「…こんな戦い、やめませんか…?」
忘れてしまった貴方を…取り戻したい
その一心での言葉だった
キタカミ「…あはっ…悪いね、今の私は頭の中まで深海棲艦だからさぁ…」
阿武隈「なら、ここで倒します!!」
その一声が合図となり砲戦が始まる
朧「っやあぁぁぁっ!」
漣「当たれぇっ!」
大きく激しい動きは危険も大きい、しかしここまで囲まれたのならそうせざるを得ない
阿武隈(私が2人を守る…!)
2人に迫る砲弾だけを見極めて撃ち落とす
潮「きゃぁっ!」
阿武隈「潮ちゃ…っ!…モロに…貰っちゃった…」
阿武隈(だけど、甲標的が…あれ?)
キタカミ「どしたの阿武隈…なんか焦ってるみたいだけどさぁ…まさか、そこに浮かんでるそれのこと?」
少し離れたところにバラバラになった甲標的が浮かび上がる
阿武隈「…嘘…そんな…」
キタカミ「ま、甲標的が使えるようになった事くらいは…褒めてあげようか」
砲弾が直撃して海面に仰向けに倒れる
阿武隈(…やっぱりあたしじゃ無理なんだ…あたしじゃ…)
キタカミ「阿武隈は堕ちた、次は駆逐…」
朧「こんなところで終わらない…終われない!!」
漣「絶対にぼのたんの話聞かせてもらわないと!」
潮「阿武隈さん!立ってください!」
阿武隈(…確かに、このまま負けて終わりたくなんかない…それでも…)
キタカミ「…へぇ、そんな事するんだ」
潮「え…?」
周囲の雰囲気が変わる
なんとか上体を持ち上げて様子を伺う
リ級「……」
リ級が此方へ艤装を向け、立っていた
ただそれだけで、何が起こっていたのかは掴めなかった
キタカミ「邪魔するんだね、別に良いけどさぁ……いや、この匂い…」
リ級が周囲の深海棲艦を撃つ
阿武隈(深海棲艦が…深海棲艦を…?いや、確か報告にあった…もしかしてこのリ級があの重巡洋艦…!?)
漣「どうなって…」
朧「なんだっていい…敵の陣形が崩れた、今のうちに…終わらせるよ!」
潮「うん!」
潮ちゃんに掴まれた手を振り払う
潮「…阿武隈さん…?」
阿武隈(…無理でも、たとえ不可能でも、価値の可能性がなくても…)
自力で立ち上がる
キタカミ「……多分、起き上がった事後悔するよ」
阿武隈「…でも…このまま負けるなんてイヤ…!」
主砲を構え直して砲撃を開始する
阿武隈「潮ちゃん!日没までは?!」
潮「あと30分です!」
いつの間にそんなに時間が経ったのか…それなら、上等
阿武隈「なら、やるっきゃないよね…!」
特殊弾を装填し直し、砲撃する
キタカミさんの砲弾と正面からぶつかり、周囲に悪臭が漂う
キタカミ「ゴホッ…こんなの無いでしょ…」
阿武隈「鼻は潰した、後は目を奪えば良い…!」
潮「まだ夜じゃ無いですよ!?」
阿武隈「視界を奪うのは何も暗闇だけじゃ無いんだよ…!」
キタカミ「っ…!」
キタカミさんが手で顔を覆う
潮「そっか、夕日…!」
阿武隈「今!全力で仕掛けるよ!」
キタカミ「ちぃっと…不味いかな」
キタカミさんが水中に姿を消す
朧「逃げられた!?」
阿武隈「違う!キタカミさんはここであたし達と決着をつけようとしてる…今は周りの深海棲艦を倒して!」
阿武隈(次の作戦は想定できてる…次は下から引き摺り込みにくる…)
魚雷発射管から魚雷を抜き取り、投げる
漣「!了解!」
漣ちゃんが爆雷を周囲に撒き散らす
潮「これで最後…!」
阿武隈「…周りに深海棲艦の影は無し…爆雷もかわされた…?」
周りを眺める
爆雷の爆発で水中の深海棲艦を一掃できたのか、黒い破片が次々に浮かんでくる
しかしキタカミさんの姿はない
阿武隈(本当に逃げた?いや…待って、あたしならどうする?あたしがもし深海棲艦で…自分の気持ちじゃなくて、作戦を優先するなら…)
阿武隈「全員全速!母艦に撤退!護衛班と合流!」
朧「まさか…!」
阿武隈「狙いはそっちだと思う…!」
朧「待ってください、何か浮いてきて…」
阿武隈「……ボストンバッグ…?」
駆逐艦 不知火
不知火「…お久しぶりですね、大湊以来でしょうか」
キタカミ「…邪魔しないでくれるかなぁ…不知火…」
微かな星の明かりがキタカミさんの表情をより狂気的に映し出す
不知火「…船と少々距離がある地点で浮上してきた点から…貴方は水中で呼吸ができるわけでは無い…そして長く潜っていられるわけじゃ無いようですね」
キタカミ「……だから何なのさ、邪魔するならどのみち死ぬだけだよ」
主砲に弾を込め、上空に放つ
砲弾が空中で炸裂し、赤い煙を撒き散らす
不知火「此方不知火、今射出した煙の地点に深海棲艦を発見…支援を要請」
長門『長門了解した』
扶桑『扶桑了解致しました』
不知火「……ここで死ね」
声を絞り出す
キタカミ「可愛く無いなぁ…前はそんな事言わなかったのに」
不知火「貴方を敬愛していた、規範とし、私はそれに倣い、貴方になろうと努めた…だが、貴方は堕ちてしまった…堕落した、越えてはいけない一線さえも越えた…そんな貴方に用はない、今の貴方はそこらにあるただの深海棲艦に過ぎない」
キタカミ「…ああ、そう」
キタカミさんが支援の砲撃を全て撃ち落とす
キタカミ「…悲しいなぁ…」
北上「そんな想いをしてまで、そっちにいる事が重要なの?」
不知火「…貴方は…何でここに、護衛の任務は…」
北上「黙ってなよ駆逐…今、あたしはそれと話ししてるんだからさ」
キタカミ「…それ、ねぇ」
北上「…ねぇ、なんで大井を撃ったの?」
キタカミ「…なんでだろ、わかんないや」
北上「躊躇いもなかった?」
キタカミ「…無かったなぁ…だって、殺せるって思ったもん…あたしさ、頭ちょんぎられて改造されたせいで他の深海棲艦と視界を共有してるんだよね、頭にダイレクトに誰かの視界が入ってきてさ…大井っちの位置も、角度も…全部完璧にわかっちゃったんだよね」
北上「…大井は生きてるよ」
キタカミ「ありゃりゃ、そりゃあ…残念」
北上「……あたしも残念だよ、アンタが大井を殺さなかった訳でも…殺さなくて済んで喜ぶわけでもない…たった今から大井はアンタの姉妹じゃない、あたしの姉妹だ」
キタカミ「…弱いくせに、よく吠えるなぁ…」
北上「弱いかどうか、試してみりゃ良いじゃん」
北上さんが甲標的を取り出し、水中へと送る
キタカミ「…使えるんだ?」
北上「阿武隈仕込み…ってね」
キタカミ
阿武隈の行動は全て読み切って倒せた
そんな阿武隈が育てたコレをいたぶるのは難しい事なんかじゃない、何よりも簡単で…
なのに…
キタカミ「よく、耐えたよねぇ…不知火も、アンタもさ…」
不知火「……2対1でも、勝てないのか…」
北上「クソッ…あー…不知火だっけ、足引っ張って悪いね…」
何で立ち上がるのか、それが私には分からなくて…
キタカミ「…大人しくしてれば、いたぶらなくて済むのに…すぐに済ませるのに…」
北上「…ふざけるな!」
キタカミ「ふざける?真剣に言ってるんだよ、勝ち目ないってわかったでしょ?」
北上「姉妹に手を出されて、その挙句に大人しく死ね!?あたしはそこまで腐ってない!あたしは大井の分までアンタを殴ってやらなきゃ気が済まない…!」
キタカミ「……意味わかんないっての」
北上「…残りの魚雷、全部くらえば目も覚めるんじゃない…?」
よろよろと立ち上がって、惨めに、必死に魚雷を撃って…
艤装もおかしな形になってるせいで魚雷全部真っ直ぐ進みやしない
主砲を向けての砲撃もまっすぐ飛んだりしない
勝ち負け以前に勝負にならない、もう相手は吹けば斃れるような状態
キタカミ「…見てて可哀想になってきたわ、さっさと殺して……え?」
真下から水面を突き破り魚雷が一つ真後ろに飛び出す
北上「…コレが、全部」
魚雷が背後で炸裂する
背中が焼けるような感覚、無様に吹き飛んで水面を転がされる
キタカミ「いったいなぁ…」
胸ぐらを掴まれる
北上「漸く、アンタを殴れるね…」
不知火「動いたら、撃ちますよ」
キタカミ(別にアタシ死んでも死なないし…)
北上に顔面を殴られる
全く痛くない、深海棲艦だからとかじゃなく、拳に力が全く入ってない
キタカミ「……何、これのために今のを…」
北上「…そうだよ、これが今のあたしの…全身全霊」
キタカミ「アホらし」
主砲を突きつけて腹を打つ
北上「ぁ……が…」
不知火からの砲撃を北上を盾にすることで防ぐ
キタカミ「…はぁ、さっきの魚雷は驚いたけど……結果がコレじゃあね…」
北上「…あの魚雷……アンタが考案した、やり方…」
キタカミ「……」
北上「……アタシでも、でき、る…」
キタカミ「チッ」
ムカついたから、背中を蹴り飛ばして水面に倒れたところを撃った
苛立ちが収まらないから、ぐちゃぐちゃに壊そうとしたのに、邪魔された
キタカミ「不知火…あんたウザイよ」
不知火「……貴方の相手は、私達です」
阿武隈「…もう、逃しません」
キタカミ「…阿武隈…追いついちゃったかぁ…」
水面に横たわった北上がうわ言のように、何かをつぶやく
不知火「……わかりました」
阿武隈「あたし的には…OKです」
不知火と阿武隈が私を挟み込むように立ち、主砲を向けてくる
キタカミ「……アンタらじゃ無理なんだって…」
阿武隈の魚雷発射管が下を向く
キタカミ(…まさか何も無しでやるつもり?いや、できるわけない…)
阿武隈「……お願いします!」
阿武隈が魚雷を水中に向けて射出する
キタカミ(まさか、阿武隈、本気で…?いや、できたとしてもその前に潰してやる…!)
不知火「…今」
背後から飛んでくる不知火の砲撃をかわす
キタカミ「…そうだった、2対1だった……あんまり影が薄いから忘れてたよ」
不知火「安い挑発ですね」
最後の砲戦が始まる
阿武隈(……タイミングは、いつ…?いつなら…)
キタカミ(阿武隈の考えてることは手に取るようにわかる、本気でやるつもりみたいだけどさ…その賭けは私には通用しない)
砲撃が阿武隈に直撃する
阿武隈「っう…!」
不知火(このままではやられる…いや、こうなったら…やれるだけの事を…)
不知火がよろめきながら砲撃する
キタカミ(低すぎ、先に不知火がバテた…)
不知火の砲撃が海へと吸い込まれる
不知火「く…ッ!」
キタカミ(主砲を持ち上げることすらできてない、不知火はもう良い、阿武隈をここで折れば勝ちはもう決まった…)
下から突き上げるように砲弾が背中を捉える
キタカミ「っが…なん……で…」
不知火「…貴方に見せられた技、ですよ…」
不知火の放った砲弾が水面を跳ね、直撃する
キタカミ(跳弾を、モノにした…?さっきの失敗してた砲撃もブラフ…!)
キタカミ「チッ……!そんな小手先の技で…」
複数の魚雷が目の前に飛び出してくる
キタカミ「なっ…ー!」
魚雷の爆発をもろにくらう
キタカミ「ぁが……この…マジでやるなんて…!」
阿武隈「…いいえ、私は何も無しでこんな雷撃はできません」
キタカミ「…何言って…?」
両足が何かにつかまれる
キタカミ「っ!…イムヤ…!」
イムヤ「お久しぶり…先に阿武隈と合流しておいてよかった…!」
キタカミ(イムヤが水中から阿武隈に指示してたのか…!昔の私と同じ手段で…)
阿武隈「コレで、終わりです」
阿武隈と不知火の主砲がこちらを向く
阿武隈「……」
不知火「……」
キタカミ「…あーあ、負けた負けた…あはは」
私が斃れるまで、2人は砲撃をやめなかった
何発もの砲弾をその身に受け、ようやく私の身体は立っている力を失い、斃れる
阿武隈「…倒した…?」
不知火「……その様、ですね…」
阿武隈がゆっくりと、警戒を解かずに近寄ってくる
阿武隈「約束です、曙ちゃんの事を…」
キタカミ「…あ…ああ……」
アレの正体を教えたら、阿武隈たちはどんな反応するかなぁ…
キタカミ「…曙…ね……」
風を切るような音が聞こえる
キタカミ(……来ちゃったか)
大きな水飛沫をあげてレ級が着水する
レ級「邪魔だ、どけ、軽巡洋艦、潜水艦、駆逐艦」
レ級の出現に阿武隈が飛び退き、主砲を向ける
阿武隈「レ級…!」
不知火「今、どうやって…」
レ級「落ちてきただけだ…安心しろ、お前たちに手を出したりはしない…私は口止めに来た、ネタバレはつまらないだろう?」
阿武隈「そんな事させない!」
阿武隈が主砲を向けているのに構わずレ級の右手が私に触れる
レ級「…楽しかったですか、キタカミさん」
キタカミ「……いや…嬉しかった、かな…」
レ級「……今から、もっと嬉しい想いをする」
レ級は砲撃が直撃するのも構わない様子で私の身体を掴む
レ級「……」
キタカミ「ぁが…ああああああっ!」
阿武隈「キタカミさ…っ…見えない…!」
不知火「これは…!」
体中に激痛が走る
頭が壊れそうに痛む
何も見えない、何も聞こえない
全身が焼かれるような熱さに包まれる
レ級「……コレで、良い」