元勇者提督 作:無し
海上
軽巡洋艦 阿武隈
不知火「最悪ですね…レ級にもキタカミさんにも逃げられた…また戦ったとして、もう油断は無いでしょう」
阿武隈「…そう、だね…それより、もう1人の北上さんは?」
不知火「重症です、急いで移送しましょう」
北上さんに近づき、あまり傷を刺激しないように背負う
不知火「…脇腹、背中…かなり重症ですね……こちら不知火です、応答できますか?……はい、夕張さんは…そうか、負傷してましたか…」
北上「……ねぇ…」
阿武隈「…起きてたんですか…?」
北上「…どう…なったの……ちゃんと…助けられた…?」
不知火「…それは…」
北上「……そっ、か……大井…悲しむ、かな…ぁ…」
阿武隈「あんまり喋らないでください、傷に障るので…」
不知火「…一つだけ、どうしても気になることがあります……なんで貴方は意識を失う直前、私たちにキタカミさんを"助けろ"なんて…」
北上「…大井も…みんなも……代わりじゃ嫌でしょ…」
阿武隈「…まさか、あっちのキタカミさんを元に戻したら消えるつもりだったんじゃ…」
北上「……」
不知火「…そのつもりだったようですね」
阿武隈「……貴方は、鼻につく所はあっても、ちゃんとみんなの仲間になれたんですよ…大事な仲間に…」
北上「…だと、良いなぁ…」
龍田「あら〜、コレで全員ねー」
不知火「リフトをあげてください、重症者がいます、手当の用意を」
阿武隈「…あれ?イムヤさん…」
不知火「…そういえば居ませんね、気にする暇がなかったですが…」
阿武隈(…イムヤさんも気になるけど……あの重巡級…なんであたし達の味方をしてくれたんだろ…)
阿武隈「今、傷の手当てをできる人は誰が?」
龍田「如月ちゃんと天津風ちゃんね〜、夕張ちゃんがちゃんと見てくれてるみたいだから安心してねー」
不知火「……司令に負傷者を本土へ戻す事を提案するべきか」
阿武隈「…多分、それは狙い撃ちにされるだけだと思う…戦力を割いたらその時点でこの戦いは負けが決まっちゃう」
不知火「……どうしたものか」
艦内 医務室
夕張「…コレは、ひどいわね…」
北上「……」
夕張「破片が相当深くまで入り込んでるし、火傷も酷い…修復材の使用申請を出してくれる?破片だけ摘出するから」
阿武隈「修復材…」
阿武隈(修復材も結局なんなのかよくわかってないまま、あんまり使いたく無いって提督も言ってたけど…)
夕張「…私も修復材使える身体ならなぁ…」
阿武隈「修復材、使えないんですか…?」
夕張「まあ、ね……とにかく早く処置しないと手遅れになるよ、急いで明石にこの書類渡してきて」
阿武隈「は、はい!」
軽巡洋艦 夕張
夕張「…はー…私の体で高速修復剤試そうかなぁ…でもThe・Worldがサービス辞めちゃったせいで今はAIDAを取り除くことができないし…」
如月「あの、コレ、どうすれば…」
夕張「ああ、右の棚に入れておいて、あと天津風ちゃんはそっちの点滴交換してね」
天津風(なんであの大怪我でケロッとしてるのか…)
夕張「…さてと、摘出手術、始めますかぁ…」
甲板
駆逐艦 島風
秋津洲「なんでまだ戦わないの?」
島風「…提督に、スイッチのこと気づかれたから…あんまり派手には動けない…コレって要するに危険なモノでしょ?」
秋津洲「それを分かっていて、なんで捨ててないの?」
島風「……それは」
秋津洲「破壊の衝動…そして衝動のままに全てを壊す快楽」
島風「…違う、そんなものない」
秋津洲「ホントかなぁ…使わなきゃいけない時、それを待ってる…だからまだ戦ってない…」
島風「違う!」
秋津洲「…コレは例え話かも、主力メンバーはさっき帰投して、疲弊してるし……今、深海棲艦の群れがいたら…」
島風「……」
海に視線を落とす
月を綺麗に反射する、暗くて冷たい海
秋津洲「…今護衛に出てるのは龍田と陽炎、磯風、叢雲かも〜…でも、本当に大丈夫だと思う?」
島風「何、言って…っ!?」
サイレンが鳴る
島風「敵襲!…いや、このサイレンの音はワイヤーに異常だっけ!?」
甲板から垂れたワイヤーのリールが回転している
ワイヤーの先には哨戒班、つまりは
島風(下の人たちが海に引き摺り込まれたんだ!夜を狙って…!)
秋津洲「巻き取りのスイッチ押したかも〜」
島風「かもじゃどっちかわかんないって…!」
秋津洲「行かなくて良いの?せっかくのチャンス」
島風「っ…」
秋津洲「大義名分…そう、みんな疲れてるし、今動けるのは貴方だけ…みんなのために戦う…コレは言うならば…仕方なかった」
島風「仕方、ない…」
秋津洲「そう、だって私戦闘艦じゃないしぃ〜」
島風(…仕方ない、だから私が戦うしか…)
島風「連装砲ちゃん!!」
海へと飛び降りる
秋津洲「…ホンットに…扱いやすいカモ」
海上
島風(ただ戦うだけ…別にスイッチはいらない!)
船体を蹴り、宙を舞う
島風「居た!」
巻き取られている人には大量の深海棲艦がまるでミノムシのようにしがみついていて…
島風(深海棲艦だけを仕留めるなら、砲撃は危険)
双剣を抜き、最高速度で降下しながら斬りかかる
島風「やああぁぁッ!」
薄暗い闇の世界を火花が照らす
島風「硬い…!」
周囲に深海棲艦が音を立てて落ちてくる
朧「島風!引き上げた人たちのことは任せて!」
荒潮「深海棲艦も始末しておくから〜!」
島風「うん…わかった…」
島風(全部私のなのに……いや、違う、それで良いんだ…被害を抑えなきゃ…だから…)
スイッチを取り出す
島風「…悪いのは、そっちだよ」
連装砲ちゃんが周囲に飛び降りてくる
島風「最高速度で…倒す!」
連装砲ちゃんが撃った砲弾を背中に受けて加速する
背中を焼きながらも勢いを増し、最速で最高速度に到達する
島風(なんでだろう…痛みを感じない…それに、どんどん思考が…)
何度味わっても異様な感覚、自分が自分じゃなくなる
深海棲艦の装甲を剣先で撫でればソレは二つに裂け、掴みかかろうとするものは伸ばした手が粉微塵に刻まれる
誰も私に触れられない、誰も私に勝てない
島風「……」
はずだった、この身体は私の意思と関係なく、好き勝手動いて敵を殲滅する…そんな役割だったはずなのに、私の身体は海の真ん中で静止した
島風(…どうなって…)
駆逐棲姫「へぇ、もっと加速するのかと思ったら…まさか止まるなんて、読みにくい動きをしますねぇ」
島風(…コイツは…確か大阪で)
駆逐棲姫「どうも、大阪以来ですね、ウサギちゃん」
島風「…ウサギ…コレはただのリボンで耳じゃない」
スイッチを切り、駆逐棲姫に向き直る
駆逐棲姫「…貴方素材はいいのにファッションセンスないですね、なんで上下赤ジャージなんですか?」
島風「……」
駆逐棲姫「無視は傷つくなぁ…」
島風(なんで、身体が動かないの…?なんで怖いの…?)
駆逐棲姫「…やっぱり貴方は偽物だ…貴方の強さは誰かに借りたもの、貴方自身の強さじゃない、だから体がついてこない…」
島風(なんで、わかったみたいなこと…)
駆逐棲姫「…まあ、あなたに用は無くなりました、死んでいいですよ」
島風「死なない、お前を倒す…!」
加速し、スイッチを入れる
駆逐棲姫「やってみなさい」
何かを切り裂いた感触
鮮血があたりを舞う
島風(…え…)
駆逐棲姫「やっちゃいましたねぇ、人間を斬った」
駆逐棲姫の盾になるように、人が…
駆逐棲姫「あーあ、これは手当てしないと助からないなぁ…貴方はどうするのか、見せてください」
島風(そんなの、助けるに…あ、れ…)
意識が、呑まれる
剣を振るい、血を祓う
島風「……」
駆逐棲姫「…なるほど、正解ですよ、素晴らしい」
駆逐棲姫に詰め寄り斬撃を放つ、グローブで剣を弾かれる
斬れない、刃が通らない…勝てない
島風「……」
今は戦ってはならない
そういうように体を退かせる
駆逐棲姫「…そう、そのまま…」
頭が、支配される
駆逐棲姫「私の手駒になりなさい、駆逐艦島風…」
島風「……」
まるで、操り人形みたいに…体を反転させて.
駆逐棲姫「あなたは私の物」