元勇者提督 作:無し
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
双剣士 カイト
カイト「…これ、は…」
過去の、
カイト「レベル99…アイテムも、装備も…あの時のまま…?」
『今、再び世界に鍵が舞い降りた』
『黄昏の幕が、今降りた』
『知られざる勇者の冒険譚、女神の騎士は何処へと』
カイト「この声は…誰の…」
覚えてる、だけどわからない
カイト「ぁ…ああああっ!」
頭が割れそうに痛い
目の前に音を立てて落ちてくる一冊の本
『影を持たざる勇者に、再び影を』
『勇者に再び光を』
本が浮き上がり、音を立てて開く
カイト「…インストール、ブック……黄昏の書…!」
本から光の束が放たれる
右腕に、そして全身に
焼けるような感覚と滾る力
『これは目覚めの唄』
『凍てつく氷のように』
『再び形を持つ為に』
目の前が明滅し、弾ける
カイト「…っ…?」
目の前の景色が大きく変わり、映し出されるのは荒廃した空間
そして僕を取り囲むように鎮座する八相
一体でも倒すのが大変な八相が揃っている
なす術などない
フィドヘル『偽りの鍵、真実の鍵、其が産み落とされる時、幾重に重なりし波、明けに沈まん』
カイト「…この声、そうだ!さっきまでの言葉はフィドヘルの…」
フィドヘル『黒き疫病の芽、花開く時…真なる黄昏始まらん、愚かな子の泣き声のままに、連鎖する、憎悪の花…』
フィドヘル『声無き泣き声に、無垢なる嵐、吹き荒れん…境界は、交わり消える、時は不可逆なればなり』
八相の姿が霧散していく
カイト「…一体何が起きて」
どんどん意識が遠のく
カイト「…っ……」
Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ
カイト「…う…あ?」
八咫「カイト」
目が開かない、頭痛で操作すらままならない
カイト「…誰…いや、その声…ワイズマン…?」
八咫「ああ、私だ…だが今は八咫だ」
カイト「八咫…う…ああ…」
八咫「…危険な状態の様だな、今すぐ安全なエリアに転送する」
カイト「待って……さ、さっき…フィドヘルの予言を聞いたんだ…」
八咫「なに…?」
カイト「黄昏が…また迫ってる…!」
八咫「なんだと…そんな筈が…待て、カイト…君のその姿」
カイト「うぁぁ…」
八咫「とにかくここにいるのは不味い」
レイヴン ギルド@ホーム
カイト「…ごめん、ようやく落ち着いたよ」
八咫「随分と書類仕事が続いていたと聞いた、エコノミー症候群か?」
カイト「…だと良いんだけど…」
半透明の腕輪が明滅する
カイト「…腕輪、か」
八咫「…君のキャラクターについて軽く調べさせてもらったが…データ全てがR:1のものだ、そしてレベルは…1」
カイト「レベル1…?待って、さっきステータスで見た時は…」
確かに、自身のステータスは全て最低の値
そしてレベルは1、装備も初期装備、アイテム一つない
カイト「…そんな」
八咫「…それと、同時にもう一つわかった事がある…カイトの反応はもう一つ有る」
カイト「もう一つ…」
八咫「もちろんステータスや細かい差異はある、だが…カイトというキャラクターはもう一つこの世界に存在している」
カイト「…そうだ、青葉をキルしたカイト!」
八咫「…キミはもう1人のカイトを追ってこの世界に戻ってきた、ということか?」
カイト「…詳しく話すよ」
部屋の真ん中に効果音と共にキャラクターが転送される
ヘルバ「同席しても良いかしら?」
カイト「ヘルバ…!」
八咫「ヘルバが相手ではどうやっても隠す事は不可能だ」
ヘルバ「で、返事は?」
カイト「もちろんだよ」
カイト「つまり、今の青葉の身体は一部が深海棲艦の様になりつつあるんだ、そしてその原因はおそらくAIDAだと思う…破壊衝動やそこからくる快楽、AIDAの症状と一致してる」
八咫「十中八九、と言ったところか…しかし、何故?」
ヘルバ「情報量が少なすぎるわね、でも追うべきもう1人のカイトは捕まえた、そして青葉の身に何が起きたのかも…」
周囲にモニターが現れる
カイト「…これは?」
ヘルバ「ロスト・グラウンド…死世所 エルディ・ルーの映像よ」
八咫「ここで?」
ヘルバ「ええ、それと…被害者は青葉だけじゃないわ」
青葉と一緒に2体の
カイト「…え?このキャラクター…」
モニターに映る独特な造形のキャラクター
カイト「これってぴろしさん?」
八咫「…ぴろし3だ」
ヘルバ「ぴろし3ね」
カイト(ヘルバまでぴろしさんにさん付けなんて変わったなぁ…)
八咫「カイト、チャットログも一応見ておいてくれ」
言われた通り会話のログを眺める
カイト「…あ、ぴろし3なんだ…ぴろし3さんって呼んだ方がいいのかな」
八咫「そんな事を言っている場合ではない、見ろ、カイト」
ぴろし3『な…なんと…!』
青葉『…あれって…』
オークラ『…アレ、まさか…英雄カイト?復帰したって噂は聞いてたけど…』
カイト「…僕の、PC…?」
ぴろし3『おお!カイト!我が友カイトではないか!』
オークラ『えっ、知り合い?』
青葉『…逃げなきゃ』
オークラ『へ?』
青葉『逃げましょう!危険です!』
オークラ『何言って…アレはThe・Worldの英雄カイト、伝説のプレイヤーで…』
端にいたキャラクターが斬り刻まれる
カイト「…そんな」
ヘルバ「まだ見る?中々嫌な映像だと思うけど」
八咫「……」
カイト「…見るよ、何が起きたのか、知る義務があるから」
ぴろし3を圧倒し、青葉の攻撃をすり抜け
ぴろし3をその刃に捉え、青葉を…
カイト「ダメだ…データドレインなんて…!ダメだ!」
モニターに向かって叫ぼうとも、何も変わる筈がないのに
青葉『か…』
青葉が力なく倒れ、消滅する
カイト「そんな…何で、何でこんな事に…!」
八咫「…ヘルバ」
ヘルバ「そうね、カイト、もう一度この部分を見て」
青葉へとデータドレインを放つ瞬間がリピート再生される
カイト「っ…」
直視したくはない、だけど見なきゃいけない
カイト「……これって…AIDA…」
データドレインのエフェクトに纏わりつくAIDA
八咫「…データドレインと呼ぶには程遠い代物だな」
ヘルバ「そうね、あのカイトはAIDAに感染している、そのおかげでこっちの子、リアルでは秋雲という艦娘だけど、意識不明らしいわ」
カイト「未帰還者って…事…」
カイト(でも、青葉は未帰還者じゃない…いや、それよりも秋雲さんは佐世保の…)
八咫「ゲームをしていて意識不明になった、未帰還者…まさかまたこんな事が始まるとはな」
カイト「…待って、ぴろし3は?!」
八咫「…どうなんだ」
ヘルバ「安心しなさい、無事よ…その代わりこの件で会社にバレて謹慎をくらってるわ」
八咫「とうとうバレたか」
カイト「…やっぱりCC社の人間だったんだね…」
ヘルバ「カイト、貴方この光景に見覚えは?」
モニターの映像が切り替わる
戦う2人のカイト、そしてつぎはぎの騎士達
カイト「…オルカとバルムンク…それと僕が2人…いや、片方は…
三爪痕に僕が敗北し、消滅する
カイト「…何で僕が三爪痕と…あれ、また同じ映像…」
先程とは違う、先程の映像ではつぎはぎの騎士は三爪痕の味方だったのに、今度は此方の味方の様に振る舞っている
カイト「……う…ぁ」
ヘルバ「思い出しなさい、カイト」
八咫「ヘルバ、これはどういう事だ」
三爪痕が、敗北する
カイト「…なんで…頭が、痛い…!」
八咫「ヘルバ!」
ヘルバ「荒療治よ、カイトの診断結果はAIDA感染者、もしこの映像の内容を忘れてるのなら思考がブロックされてるって事」
八咫「だからと言って…これでは」
カイト「…そう、だ…そうなんだ…僕が、この世界を…壊したんだ…」
視界に黒い斑点が現れる
カイト「AIDA!何で、ここに…」
ヘルバ「八咫、今AIDAが寄生してるのはカイトじゃない、倉持海斗自身よ」
八咫「…ならば、The・Worldに入り込む前に始末する…顕現しろ、フィドヘル!』
巨大なデータドレインが此方を捉える
八咫『カイト…随分な荒療治になるが…』
カイト「わかってる…」
光の矢が僕を貫く
カイト「うわああああああッ!」
壁に打ち付けられ、転がる
カイト「かはっ…あ…」
ヘルバ「…腕輪のおかげで意識不明は免れたみたいね」
カイト「…う…ん…」
八咫『…すまない!大丈夫か、カイト!」
カイト「大丈夫…だけど、今日はもうダメかも…」
ヘルバ「そうね、ログアウトしなさい、詳しい方針はまた話しましょう」
八咫「すまない…だが、AIDAは取り除くことができた」
カイト「…助かった、と思うよ…ありがとう」
Σサーバー 絶叫する 過去の 義兄弟
拳闘士 ボーロ
ボーロ「…居た、貴方が…私に情報をくれるっていう人ですか」
「……」
片目を閉じた、人当たりの良さそうな少年のPC
ボーロ(…ターゲットしても名前の表示が出ない、なんで?)
「キーオブザトワイライト、だったかな」
ボーロ「…はい」
「コレだよ」
PCの右腕が割れ、光線が射出される
ボーロ「ぁ…がぁ…っ!」
「…組み込めた、かな…よし、もう帰って良いよ、君に用はない」
ボーロ「…ま…っ…」
意識が遠のき、倒れる
艦娘PC名一覧
青葉→青葉
オークラ→秋雲
ボーロ→朧