元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
離島鎮守府 司令室
駆逐艦 朧
朧「はぁぁぁ…」
大きな溜息が不意に口から吐き出る
レ級「みっともないわよ、提督代理」
駆逐艦 朧 改め 駆逐艦兼提督代理 朧
朧「いや…曙の独断で決められた提督代理なんて…」
レ級「文句でもあんの?」
何故アタシなのかという文句はあるのだが、この化け物の皮を被った妹はそんな弱音を言おうものなら何をしでかすかわからない
朧「そ…それより、整備はどう?」
レ級「順調も順調、綾波が人間用の部屋をある程度揃えてたから寝床は十分だし元々ある程度施設が整ってるから」
朧「ここを離島鎮守府として運営するのは難しくなさそうだね…」
レ級「食料問題も完璧、衣類とかはこれから取りに帰れるし…なんとかなるでしょ」
朧「うん、それで……尋問は…」
レ級「これが結果」
ドサっと大量の資料が置かれる
朧「え、これ何枚あるの…」
レ級「200かしら、調書全部、まあ、尋問内容とかも全部書いてるし……役には立つでしょ」
朧「要点だけまとめたものは…?」
レ級「甘えんな」
朧「提督相手なら用意したでしょ!?」
レ級「当然よ、貴重なお時間を使わせるわけなんだから」
朧「アタシ、今、提督の代理…」
レ級「100年早いわ」
朧「曙ぉ…」
レ級「はぁ……じゃあ説明してあげる、まず飛行場姫こと雲龍だけど……早期段階で役に立たないことが分かったわ、小型深海棲艦での人間の操作とか含めてアイツの能力というより上の命令でしかないみたい」
朧「ホントに?」
レ級「あんたも春雨さん式の拷問受ける?爪の中に針入れてぐちゃぐちゃにかき回したりとか…」
朧「えぐっ…」
レ級「雲龍の方はトロいからずっと子供みたいに泣いてて春雨の方が根負けしたわ」
朧「…じゃあ、報告書の量は…」
レ級「20枚、行った拷問が詳細に書かれてる」
朧「要らないじゃん!それ!」
レ級「次に戦艦棲姫改め大和だけど、こっちは面白いくらい素直に喋ってた、背後関係とか聞いてないものまでなんでもね」
朧「背後関係…」
レ級「原初の深海棲艦、元々深海棲艦はたった3体だった…そのうちの一つが離島棲姫、そして大和が会ったことある相手はもう1人だけ、駆逐古鬼って名乗ってるらしいわ」
朧「駆逐古鬼…」
レ級「あと、大和だけど元々深海棲艦として生まれたみたい、雲龍も同様にね…あと雲龍についてだけど、春雨さん曰く深海棲艦としてこの世に産まれたせいで身体は大人だけど精神は未熟な子供そのものだって」
朧「……そっか」
情報が多すぎて頭に入れるのすら億劫になる
レ級「それと、離島棲姫、大鳳だけど……入りなさい」
大鳳「は、はい」
最初から待機させられていたのであろう大鳳が入ってくる
レ級「原初の深海棲艦について、要点だけ言いなさい」
大鳳「げ、原初の深海棲艦は…さ、3人の実験体の事です…私、駆逐古鬼、それともう1人…今なんと名乗っているのかは知りません…私達は基本的に連絡を取り合う事はなく…そ、その…私が1番下っ端で…だから何も…」
レ級の尻尾が床を打つ
大鳳「ひぃっ!」
レ級「お前の立ち位置なんか聞いてない、お前はどこで産まれた」
大鳳「と、東京の…」
レ級「…そうじゃなくて、実験体なんでしょうが」
大鳳「よ、横須賀基地です!せ、正確には覚えてませんが10年ほど前に…」
朧「10年!?」
レ級「…紙で渡したい気持ちわかった?」
つまり、深海棲艦は10年前には存在していた事になる
しかし、表面化してから一年と数ヶ月が経ったばかり…
いや、それよりも…自国が深海棲艦を生み出したことになるのか…
朧「…それは後にしよう…活動開始までは?」
大鳳「イ級のような小さい深海棲艦を作ってました…」
レ級(…こいつに喋らせてたら明日の朝までかかるな)
レ級「先の駆逐古鬼に関しては相当南にいるらしい、もう1人は長身の女でどこにいるか不明、深海棲艦の目的は仲間を増やす事と何かを食らう事、前者は種の保存の本能だが後述する理由で矛盾が生ずる、何かを食らうことに関しては深海棲艦は活動するにはエネルギーが必要で、それは人間の食事と同じ…」
朧「待って、ペースが速すぎるよ」
レ級「チッ…要するにお腹減ったしついでに仲間増やすって感じに人襲ってたのよ、こいつらは」
大鳳「…ごめんなさい…」
レ級「深海棲艦を構成してるのはナノマシン、私達は人の形をして生きてるけど人間じゃない…ナノマシンを動かすには生体エネルギーが必要で…まあ、簡単に言えばそれだけ」
朧「全然簡単じゃない…」
レ級「…一旦ナノマシンじゃなくて幽霊だと考えたら?死体に取り付く幽霊、イムヤさんや私は幽霊に体を貸してるけど意識があるから乗っ取られてないみたいな」
朧「…なる、ほど…?」
レ級「深海棲艦ってのは身体の中で砲弾や燃料まで作れる、自己再生もできる、ただしそれだけのことをするには莫大なエネルギーが必要…そして人間はエネルギー効率がとてもいいらしいわ」
朧「…だからたくさん人を…」
レ級「ま、青葉さんは少し違うみたいだけど…で、コイツの処分は?」
曙が手に火を灯す
大鳳「ひ…!ゆ、許してください!死にたくない!焼かないで!」
朧(完全に怯えてるし…なんだか可哀想になってくる…)
朧「…悪さ、しない?」
大鳳「しません!人間になった以上する意味もないし…」
朧「…要監視で放流」
レ級「海に投げ捨てればいいの?」
大鳳「え、私泳げない…」
朧「…とりあえず…曙、ご飯食べてくれば?昨日から何も食べてないでしょ」
レ級「…そうするわ、ちなみにこの人の扱いは?」
朧「…提督なら…「今は人間だよ」って言うと思う」
レ級「…仕方ない、提督に恥じないように接するか…行きますよ、大鳳さん、あなたも空腹でしょう?」
大鳳「ほへっ!?」
大鳳(な、なんでいきなり敬語…)
朧「多分外で炊き出しやってるはずだから…」
レ級「心配しなくても此処までカレーの匂いがしてるわ…」
曙が大鳳を連れて部屋を出る
朧(…しまった、深海棲艦の開発に至った点を聞き忘れた…いや、まあいいか…後回しで)
席を立ち、窓から外を眺める
ちょうど昼時なおかげで大量に人が集まっている
朧「…お腹減ったなぁ…でも、提督の仕事しないと…」
天龍「失礼します」
朧「あ、えーと…今日は天龍さんか」
天龍「日向でも天龍でも、お好きにどうぞ…提督代理、夕張さんからですが、球磨型全員の意識が回復したようです」
朧(…これで、そっちはひと段落か)
天龍「戦闘による負傷も順次回復しつつあります、医務担当の夕張さんですが、今作戦を最後に横須賀基地に帰られるそうです」
朧「えっ…了解…」
天龍「春雨さんが居られるので…問題は無いかと」
朧「うーん…アタシあの人苦手なんですよね…」
天龍「私もです、あの人は何を考えているのか…」
朧「悪人じゃ無いとは思うんですけど…」
春雨「私の陰口はやめた方がいいですよ」
朧「えっ」
春雨さんが天井から落ちてくる
朧「え、今…えっ?」
春雨「倉持司令官の代理さん、佐世保艦隊が明日には帰投します、それに合わせて私たちも半数を一時的に帰還させる必要がありますが」
朧「天井から…」
春雨「くだらないこと気にしてないで、どうするんですか」
朧(くだらなくは無いはずだけど…それより問題なのはメンバーか…辺りを確保したとはいえ…此処って見方によっては敵地のど真ん中だし…ああ、もう…嫌になってきた…)
朧「…曙に聞いて…」
春雨「わかりました」
天龍「…それでいいんですか?」
春雨「賢い選択だと思いますよ、あの人なら自分の仕事が増えても気にせず、むしろ最善を尽くすはずです」
朧(…確かに、曙はみんな以上に働いてくれてるし、それ以上に仕事が増えても何も言わないだろうけど……)
朧「…いや、やっぱりアタシが決めます…」
春雨「前衛後衛のバランスもしっかりお願いしますね」
朧「……はい」
朧(曙のストレスを他で削るって手もあったけど…そもそもここは娯楽が何も無いし…仕方ない、かかるストレスをできるだけ減らそう…)
天龍「…それでは、失礼します」
春雨「私も失礼します」
朧「……はぁ…」
工廠
工作艦 明石
明石「ダメ!これでもダメ!なんで上手くいかないの!!」
人にAIDAを埋め込む機械が作れてしまったのなら、その逆もできるはず
AIDA感染者からデータドレインを使わず、AIDAを取り除く機械…
明石「…自分でやったことは、自分で責任を取らないと…」
別に全員にAIDAを埋め込んだわけじゃ無い、知らなかったし、結果としてそうなっただけ…だとしても、そんなこと微塵も関係ない、私は自分がみんなを危険に巻き込んだ以上…
明石(このままじゃ誰にも顔向けできない…!)
設計が悪いのか、それとも原理自体が違うのか
明石「…いや、というかそもそも…AIDAを抜き取るってことは体内のナノマシンを全部抜き取ることで…ナノマシンは身体の細胞にとって変わってたりするから…」
最悪の場合、死に至る
明石「っ……」
どうして現実から目を背けていたのか
完成してもそれはただの処刑器具ではないか
私に何ができるのか、何をすれば償いになるのか
明石「…でも、やるしかないもんね」
諦めたら本当に誰にも顔を向けられない
謝ることすらできなくなる
私は前に進み続ける事しかできない
それがなんであれ、どんな結末であれ、私はそれをやり遂げなきゃいけない
明石(…まずはデータドレインをベースにするしかない…これが成立してるなんてとても信じられないけど…)
夕張、綾波、春雨
自分とはまるで違う世界の住人のように、才能の差を見せつけられるかのように…私にできないことをやってのけるのだから…
.羨望、そして嫉妬
心の奥底の暗い感情に流されそうになる
私にもそれができればと思ってしまう
明石「…大丈夫!…うん、大丈夫だから…!」
仕方が無かったとか、諦めるしかないとか…そんな言葉は聞こえないから
戦艦 レ級
レ級「提督代理より、本土へ一時的に戻るメンバーを発表します」
曙「…キタカミ達がいないけど」
レ級「放っておきなさい、球磨型の関係は複雑だから…えぇと…まず、曙、漣、それと金剛さん、扶桑さん、長門さん、島風さん、朝潮型は全員…阿武隈さん、不知火さん…」
阿武隈「へ?不知火さん…?」
レ級「…ああ、伝え忘れてました、不知火さんは本日付けでこちらに移籍しました」
阿武隈「えっ…えぇぇぇっ!?」
不知火「…よろしくお願いします」
レ級「ついでに言うと、戦力面での不安が有りますので天龍さんには佐世保に行ってもらうことになってます」
天龍「…今発表するのですね」
レ級「ついでですから、えーと…川内型と明石さん、赤城さん、加賀さん、龍驤さん…以上、名前を呼ばれた人は明日出立です」
長門「待ってくれ、明らかに人数が多すぎると思うが…」
レ級「…何馬鹿なこと言ってるんですか?ここの防衛なんて私1人でも十分すぎる、それにキタカミさんは今動けない…私たち2人が同時にここを離れるとして…防衛にどれほど人員を割かないといけなくなるか……おわかりですよね?」
長門「…失礼した」
漣「ボーノ、怖すぎない?」
レ級「…全員死なないようにするためよ」
潮「…言いたい事はわかるけど…」
レ級「それと…1週間時間を差し上げます、実践形式の模擬演習を行い、分隊を決めますので…希望のチームなどがあれば先に作っておくように」
阿武隈「それは…どういう?」
レ級「例えば、阿武隈さん、あなたなら誰を分隊に入れますか?」
阿武隈「…艦種に縛りが無くて、あたしが旗艦なら…第七駆逐隊と不知火さん、かな…」
レ級「軽巡1と駆逐5…かなり偏ってはいますが高速で整っており悪くはありません、これをA分隊とします…このA分隊と私が模擬演習を行う」
曙「…1対6?」
レ級「1対12でも良いけど、評価が疎かになるわ」
阿武隈(というか、勝つにはどうすれば…)
レ級「手加減はします、殺しはしませんよ…別に」
不知火「…その目的は?」
レ級「…あなた達の強さを測る以上に、未知に対する対応力が知りたい…」
尻尾が地面を打つ
レ級「例えば…」
曙「…なっ……!」
潮「尻尾が、ふたつに…」
漣「増えとりますがな!?」
レ級「レ級の尻尾は一本…だったとして、それは絶対不変の真実なのか、結局深海棲艦は未知の生物、想定外のことに対応できなくてはならない…わかる?」
阿武隈「…なるほど、そういう狙いで…」
レ級「私に勝てたら景品くらいは用意しますよ、まあ、無駄になりそうですが」
不知火「随分な自信ですね」
レ級「……なんで私が二本目の尻尾を見せたと思いますか?」
阿武隈「…まだ、隠し球が?」
レ級「当たり前でしょう?漣、私を撃ちなさい」
漣「ひょえっ!?」
レ級「さっさとしないとこっちが撃つわよ」
漣「わ、わかったって!」
漣が手法をこちらに向けて撃つ
阿武隈「へっ!?」
曙「…何、今の…バリア…?」
レ級「駆逐棲姫は、これを常に身に纏ってます、原理はまあ…技術者にだけは説明するから後で気になるなら来てください……勝利条件はこのバリアを破壊する事、比較的簡単に壊せると思いますよ、長門さんの主砲2発くらいかな」
長門「…2発…か」
扶桑(砲弾を撃ち落とされる時点で十分無理難題な気もするけど…)
阿武隈「……今のバリア、体から少し離れた位置で防いでた…手が届かないくらいの」
レ級「良い着眼点ですね、私は近接攻撃をすることができません、まあ、これを好機ととるか逆に辛いものだと受け取るか…は、お好きにどうぞ」
川内「ちなみにそれって私等も参加?」
レ級「当然です、ただし…川内型3名のチームは禁止します、私も加減が効かなくなりそうですから」
川内「こっちもそのつもりはないって、心配無いよ」
レ級「それと…もう一つ発表が、暁さん、響さんですが、横須賀鎮守府に移籍になりました」
曙「まだ移籍者居たのね」
レ級「今のところは以上です、何か質問は?」
神通「はい、私から」
レ級「内容はわかっています、三崎亮さんですが、提督代理補佐として滞在していただくように既に申請してあります」
神通「…提督代理、もしくは提督ではなく?」
レ級「離島鎮守府の提督は倉持海斗、以上です、他に質問は」
神通「…まだ、私は納得していませんが?」
レ級「何故、あなたを納得させる必要があるのですか?」
神通「……」
川内「やめときなよ、神通…それより、大鳳達の扱いは?」
レ級「あの人たちには戸籍も何もありません、まあ、人権があるのかも微妙ですので、ここでの預かりになります、力は完全に人間の女子供レベルですし、明日の荷物持ちとして同行させることになりました」
曙「それを先に言え!」
川内「まあ、それより…戦わせんの?」
レ級「…また後日、話しますが…解体申請を受け付ける事にしました、あなた達全員から」
全体がどよめく
レ級「この戦いはリスクが大きい、その事も含めて…あなた達は自身のことをしっかりと知る必要がある、違いますか?」
曙「……成る程ね、帰ってきてからその話か…狡いわね」
レ級(…提督は、きっとみんなに解体を選んでほしいと思っている…で、あれば私のやる事もその意思に沿うことだ)