元勇者提督   作:無し

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姉妹

離島鎮守府

提督代理 朧

 

朧「…ええと…」

 

レ級「あきつ丸、神州丸、照月、吹雪、確保できたのは四つだけね」

 

あきつ丸「殺すなら殺せであります!できるだけ何もせず迅速に!」

 

神州丸「……死にたくない…」

 

照月「…あっ…あぅ…」

 

吹雪「……」

 

並べられた4人は血の気の引いた顔で此方を見つめている

震えてる子もいるし…

 

朧「…なんでこんなに怯えてるの?」

 

レ級「人間に戻した後の拷問を見せたからじゃない?」

 

朧「……はぁ…」

 

どうしてこうも余計なことばかり…

 

レ級「まあ、それよりも…どうする?」

 

朧「…武器を持たせたら反乱されるかもしれない、かといって…うーん…」

 

レ級「提督なら、そのまま受け入れたんでしょうね…もしそうなら私ですら甘い、間違ってると思うけど」

 

朧「…なら、そうしようか」

 

レ級「わかったわ、具体的にどうする?」

 

朧「部屋…食堂の予定の部屋に1番近い個室を用意するから…」

 

吹雪「……殺さないんですか?」

 

朧「いや、だってお互い人間でしょ?」

 

4人が曙を見る

 

レ級「…私は例外」

 

朧「心配しないで、アタシ達が手を出すような事は絶対しないから」

 

レ級「あなた達が私達に反旗を翻さない限りはね」

 

吹雪「……」

 

吹雪はどこか躊躇ったような表情が窺える

 

朧(ま、そんなにうまくはいかないよね)

 

朧「一応聞くけど本土に帰れる家がある人はいる?」

 

4人「……」

 

朧「…わかった、じゃああなた達にここで生活するスペースを与える、だからみんなの衣食住のサポートをして欲しい」

 

照月「ふ、ふざけないで!私たちはもともと此処で…」

 

曙の尻尾が床を打つ

 

レ級「ふざけてるのはどちらですか、あなた達はつい数日前まで捕虜でしか無かったこと…忘れてませんか?」

 

あきつ丸「く、駆逐棲姫様は人として扱ってくれた…!」

 

レ級(使い捨てのコマにされてただけのくせに…まあ、狂信者に何を言っても無駄か、自分でよくわかってるし)

 

神州丸「さ、先に住んでた私たちから家を奪ってそれを与えるなどと…」

 

朧(確かに、見方によってはそうなのかな…でも、何も他に思いつかないし…本土に送ってもまともに人として取り合ってくれるかどうか…)

 

レ級「…どうする?」

 

朧「さっきのサポートの話はなしにとりあえず生活スペースだけ提供するよ、きっと、いつか分かり合えると思うから」

 

レ級「…まあ、いいか、それで」

 

曙が4人を睨む

 

レ級「そのまま海に放り出されたくないなら、これが最大限譲歩した条件です」

 

朧「本土に送っても今の段階でまともに扱ってくれる事はないと思うし、これで納得してくれると嬉しいんだけど…」

 

4人は何も言わずに困ったような表情を見せる

 

レ級「…返事」

 

曙の尻尾が床を破壊する

 

4人「「「「は、はい!」」」」

 

レ級「よろしい、じゃあ、連れて行ってくるわ」

 

朧「よろしくね…」

 

朧(優しい刑事怖い刑事ってあるけど…うーん…圧は凄いなぁ…)

 

青葉「失礼します…」

 

朧「あ、青葉さん」

 

青葉「一応、一言挨拶だけ…」

 

朧「へ?」

 

青葉「移籍ではないのですが…私は、佐世保鎮守府の監視下に置かれる事にしましたので…」

 

俺「あ、そっか…」

 

今の青葉さんの居住地は九州、やり残した事を終えるまではこちらに合流できない変わりに佐世保の戦闘の補助を行う事を申し出て、了承されたらしい

 

朧「実質的に2人佐世保に行っちゃうのか…」

 

青葉「人手が必要な時に…その、ごめんなさい」

 

朧「いや、多分提督もその方が喜びますし…」

 

朧(…いや、こんな考え方で運営なんてできないか…できれば明石さんあたりに任せたかったけど、肝心の明石さんは他のことで忙しいし…もう、ほんとに…曙がやればよかったじゃん…)

 

青葉「…あの?」

 

朧「あ、いや、なんでもないです…」

 

朧(…作戦完了からまだ2日、この先どうなるのか…頭が痛いなぁ…)

 

 

 

 

 

医務室

重雷装巡洋艦 北上

 

北上「はー、つまり助けに行ったつもりが…まあ、ミイラ取りがミイラになったって事?」

 

キタカミ「まあね、いやー、ほんとやらかしてるよねぇ…」

 

大井「そんなにヘラヘラしながら言うことじゃ有りません!ほんとにキタカミさんは変わらないんだから…」

 

キタカミ「別にいいじゃんかさー…結果的にはみんな助かったんだし」

 

大井「本当に、結果的にはですけどね…私も死にかけたんですから」

 

キタカミ「…ま、そんなに強い自分の腕が怖いってことで、許しといてよ…それに」

 

キタカミがこちらを向く

 

キタカミ「あん時は麻痺ってだけど…あんたのパンチ、よーく効いたからさ」

 

北上「…ああ、そう」

 

キタカミ「んー、自分の顔でむくれられると変な感じだねぇ」

 

大井「……不安に思う事なんて何もないわ、北上さん…あなたは私達を助ける為に全力を尽くしてくれた、それはみんながよく知ってるから」

 

北上「別にそんな事気にしてなんか…」

 

キタカミ「後はアンタ次第さね」

 

北上「……」

 

キタカミ「受け入れられたきゃ、受け入れるしかないよ…ウチの姉妹はみんな癖が強いし、ちゃんと仲良くできるかねぇ」

 

北上「……あたしは…この世界に来て、いろんな奴に受け入れてもらったから…」

 

たとえ、姉妹がいなくても怖くない…

それに、大井との絆は、もうどんな事があっても消えたりしないって、信じてるから…

 

キタカミ「…んじゃ、よろしくね」

 

キタカミがこちらに手を差し出す

 

北上「…まずは、アンタと姉妹になるわけだ」

 

キタカミ「双子…ってのも悪かないと思わない?」

 

北上「…かもね」

 

キタカミの手に手を重ね、握手する

 

キタカミ「ようこそ、離島鎮守府へ…球磨型軽巡洋艦、三番艦の北上」

 

北上「…こっちこそ、よろしくね、球磨型軽巡洋艦三番艦のキタカミ」

 

キタカミの手はあたしの手とは違う

あたしよりごつごつしてて、手にたくさんのマメの痕があって

力もあたしより強い

 

北上「……何やってんの?」

 

キタカミに手首を掴まれ、手をいじくられる

 

キタカミ「いや、同じなのに、違うんだなぁって……ほら、見てよ大井っち、私より全然手が綺麗じゃん」

 

大井「…ふふっ、キタカミさんの手も私は好きですよ?」

 

キタカミ「えー、でもこの手は努力してきた手だよ、ほら、こんなに指細いのに、マメもたくさんあるし…いやー、いい手だね」

 

北上「それは、お互い様じゃない?…あたしもアンタの手、嫌いじゃないし」

 

キタカミ「えっ…いや、なんかそう言われると恥ずかしいなぁ…」

 

北上「…あたしと殆ど変わらない、その手でみんなを守ってきたんだね」

 

キタカミ「…他に誰も居なかったから…みんな死ぬのを待ってたから…でも、そんなの間違ってる」

 

北上「……アンタにしか、できなかったよ」

 

キタカミ「他に誰もやる奴が居なかっただけ、だよ…たまたま、本当に…たまたま私がその気になって、みんなを守れたのも…たまたまで…」

 

大井「…人は、あなたの写鏡です」

 

キタカミ「…なにさ、大井っちまで」

 

大井「常に正しい姿を写してくれるわけでは有りませんが、2人の北上さんは、お互いを正しく写しあってると私は思います」

 

北上「…まあ…間違ってはないんじゃない?アンタが頑張ってきたってとこくらいはさ」

 

キタカミ「…なら、アンタもよく頑張ったよ、私に手も足も出ない筈があんな事してくれたんだからさ……こう言っちゃアレだけど、過去の自分に殴られたみたいだったよ」

 

北上「……今もアンタが嫌いなら、嫌味として受け取ってたのかな」

 

大井「…じゃあ、今は違うんですか?」

 

北上「…今は、アンタみたいになりたいって思ったから…嬉しいよ、キタカミ」

 

キタカミ「ま、無理だろうけどねぇ?頑張って追い越してみなよ、北上」

 

北上「言ってくれるじゃん…!」

 

キタカミ「アンタも、啖呵くらいは一人前で…いい感じだねぇ……ん?…大井っち、ペン貸して」

 

キタカミが大井の胸ポケットからボールペンを抜き取る

 

大井「へ?」

 

キタカミがポールペンを壁に突き刺す

 

キタカミ「盗み聞きは良くないなぁ…入ってきなよ」

 

木曾「あー…悪い、悪かった、水さしたんじゃないかと思って…」

 

パジャマ姿の木曾が入ってくる

 

北上(なんでパジャマ…)

 

木曾「球磨型軽巡洋艦、五番艦の木曾だ、よろしくな」

 

北上「…よ、よろしく」

 

大井「木曾!少しはしっかりしなさい、なんでパジャマで出歩いて…」

 

木曾「いや、無茶言うなよ…そもそも服がないんだし」

 

大井「…ああ、そっか…」

 

北上「…ねぇ、その目…」

 

木曾「あー…いや、悪い、つまらねぇもんを…」

 

木曾が目を覆おうとする手を止める

 

木曾「っ…」

 

大井「……」

 

北上「…オッドアイ、って奴?色違うんだね」

 

木曾「……いや、そこじゃないだろ…俺の目は……あれ?なんでだ、右目が見えてる…」

 

大井「…人に戻った影響で視力が戻ったのかもね」

 

木曾「…全然気づかなかった、見えてたのか…」

 

キタカミ「木曾は相変わらず抜けてるねぇ…」

 

木曾「うるせえよ…」

 

北上「…綺麗な目だね」

 

木曾「…あ、あの…」

 

北上「あ、ごめん!いや…なんか、そっちの目見た事ないような気がして……あ、眼帯してたのって見られたくないから…ご、ごめん!悪気はなくて…!」

 

木曾「…くっ…ハハハ!」

 

キタカミ「どう、木曾、新しい"姉さん"は」

 

木曾「新しい姉さんが思ったより優しくて拍子抜けしちまった、姉さん…ってのは紛らわしいか…なんて呼ぶかな…北姉ぇ?」

 

北上「…そ、それ、あたし?」

 

木曾「勿論」

 

北上「…あ、れ…なんでだろ…泣きたく無いのに…」

 

キタカミ「嬉しい時は、泣いて良いんだよ」

 

大井「そうですよ、あなたの夢が、一つ叶ったんですから…」

 

木曾「しっかし、ホント心優しい姉さんで良かったぜ、他の姉さん達と違って…」

 

大井「はい?」

 

キタカミ「…木曾、私らが優しく無いって?」

 

木曾「まさか優しいつもりだったのか?」

 

キタカミ「この!いつからそんな犯行的になったんだよー…」

 

大井「全く、ちょっとお仕置きが必要そうですね」

 

木曾「ま、待て!こっち来んな!…あーもう!だから優しくねえんだよ!」

 

北上「…ははっ…これが、姉妹…か」

 

球磨「おー、やってるやってるクマ」

 

多摩「球磨型全員揃ってるなんて珍しいニャ」

 

キタカミ「おっ、球磨姉多摩姉お久、いま末っ子の教育中だけど…混ざる?」

 

球磨「勿論だクマ!」

 

多摩「混ざるニャ!」

 

木曾「4対1はないだろ?!」

 

北上「…いんや、5対1だねぇ」

 

木曾「…マジかよ」

 

…ようやく、夢が叶った

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