元勇者提督 作:無し
繁華街
駆逐艦 曙
曙「へぇ、忙しくて見てなかったけどこのブランド新しいの出してるんだ」
漣「漫画の新刊も買えたし、いやー、ホクホクですな!」
曙「荷造りなんて丸一日もかかるわけないしね、今のうちに内地を楽しんどきましょ」
漣「…それはそうとして…この人どうすんの?」
大鳳「へ…」
曙「…ま、暴れたらどうなるかはわかってるんでしょ?」
大鳳「わ、わかってます!」
曙「…なら、いいんじゃない?」
漣「いいのかー、ぼのたんいいのかー」
曙「だって…ねぇ?」
ライターを取り出し火をつける
大鳳「ひぅっ!」
曙「これじゃ、悪さなんてできないでしょ」
漣「…まあ、ねぇ…」
大鳳「お、おねっ…お願いします!その火を消してください!」
曙「はいはい」
漣「ライターでこれって…なんか不憫になってきた」
曙「そもそもあたし達こいつと戦ってないしね…アンタ向こうで何してたわけ?」
大鳳「えと…その……指揮とか…」
漣「一回ボーノに勝ったんじゃなかったっけ」
曙「…コイツが?」
大鳳「…そ、総力をかけて…倒しただけなので…傷だらけだったあの人を倒すのに私達もほぼ壊滅状態にされましたし…そ、それに、あなた達が乗り込んできた時は何かする前に首を刎ねられて…」
漣「…うん、えぐい」
曙「アイツが真っ先に潰す程度の力はあるわけね」
大鳳「…さ、さあ…」
曙「…あ、加賀達じゃない」
加賀「あら」
赤城「やっぱりみなさんも遊びにきてましたか」
曙「まあね、やる事ないし」
龍驤「まー、ウチらは生活用品買いに来ただけやけどな」
赤城「そうですね、チリパウダーにジョロキアに…」
加賀「カイエンペッパーは譲れません」
漣(なんか、赤城さん染まってない…?)
曙「…赤城、アンタ記憶戻ってるでしょ」
赤城「まあ、離島鎮守府を見た辺りで」
加賀「あそこは印象深く感じる子も多いわ、思い出しても仕方ないんじゃないかしら」
曙「ま、そうかもね」
龍驤「やっぱ自分に関わり強いモン見たら記憶が戻るんか?」
赤城「恐らくは」
漣「あのー…ところで、お二人の後ろに小さくなってる方は…」
雲龍「……」
加賀「怖がらなくていいわ、漣はマトモな子だから」
曙「おい、あたしはマトモじゃないって言いたいの?」
加賀「火を操るようなのがマトモなわけないでしょう?」
赤城「それに今は姿の方も…所々包帯だらけな訳ですし」
曙「…ちぇっ」
曙(傷の治りが早ければもっと好きにできるんだけど…)
曙「ま、それよりもアンタら、ちゃんとアイツの言葉の意味わかってんの?」
加賀「ある程度察してはいるけど、差し詰め私達全員を解体させるのが目的なのでしょうが…理由がわからないわ」
曙「…ま、アイツと直接やり合ったら嫌でも聞き出せるでしょ」
雲龍「…ねぇ」
赤城「どうかしました?」
雲龍「…お腹減った」
曙「…マジで言ってんの?コイツ、さっきまで怯えてたくせに…」
龍驤「最初はウチらにも怯えとったけどな、さっき喉乾いた言うから赤城が缶ジュース買ったらいきなり懐いてきよったわ」
雲龍「あの飲み物、初めて飲んだし、美味しかった…今まで、辛いものばかり飲んでたから」
赤城「辛いもの?」
曙「…辛い飲み物…タバスコとか?」
大鳳「た、たぶんアルコール類のことだと思います…基地には飲み物は飲料水とアルコール類ばかりで…」
加賀「要するに、お酒ですか…」
雲龍「…あれは、喉が辛くて…美味しくないの」
曙「見た目のわりに子供ねぇ…」
大鳳「……その…飛行場姫…雲龍は、生まれてまもないですので…」
加賀「…あなた、自分がいくつかわかる?」
雲龍「…?」
龍驤「自分、歳わからんのか?」
雲龍「歳…わからないわ…あの、私は何歳なのですか?」
大鳳「ええと…一歳?」
曙「一歳!?」
漣「衝撃的すぎてなんも言えねぇ…」
龍驤「一歳でこの身長かいな…」
大鳳「…わ、私たちは肉体なんてあってないようなものですから…私達は本来ナノマシンの集合体で、人とは呼べない存在です、こうして人間の形になっていたとしても所詮私達は…」
大鳳のお腹が鳴る
大鳳「……」
漣「私達は何?…まあ、お腹が減ると言うのは生きてる証なんじゃない?」
曙「そうね、雲龍、アンタなんか食べたいものは?」
雲龍「…知らないものを食べてみたいわ…魚じゃないもの」
赤城「どんな食生活を…?」
雲龍「魚を取って食べたり、人間の持ってる食べ物をそのまま食べたり、人間を食べたり…」
加賀「…人も食べるのね」
雲龍「……エネルギーの効率が良いって言われた」
雲龍が大鳳を見たのに釣られて全員が大鳳を見る
大鳳「…細胞をそのまま取り込んで自分のものにしたりもできたし…すごく効率が良かったんです…そうしないと、動けず朽ち果ててしまうから…」
龍驤「…まあ、そうか、難儀な体なんやな」
大鳳「人間が持っている保存食は…味は良かったですが、エネルギーの効率が悪くて…」
漣「あー、なんか聞いてたら食欲失せちゃうし…」
曙「そうね、赤城、加賀、希望は?」
龍驤「ウチには聞かんのかい!」
赤城「…赤から鍋とかどうでしょう」
龍驤「却下や却下!こんな暑い時期にそんなモン食うなや!」
加賀「…韓国料理とかどうでしょうか、もしくは中華なんて…」
曙「あのねぇ、あたしらは理解あるけど…アンタらの食べてるもんは普通じゃないのよ?というかその手の店に行ってもアンタ達普通の辛さじゃ足りないでしょ」
龍驤「ここはベーシックにお好み焼きでも…」
漣「やっぱそれか…美味しいけど…」
曙「…焼肉でも行く?」
大鳳「焼き……」
漣「せんせー、拒絶反応一名でーす」
曙「……はぁ…もうファミレスにしましょ…」
赤城「1番安直ですよね」
漣「何より安いのがねー」
ファミレス
雲龍「…この、お子様、ランチ…食べて見たいわ」
曙「…残念ながら小学生以上は頼めな……いや、あんた一歳なのか…」
赤城「でも…この体型で一歳は通用しないのでは…?」
漣「…ま、とりあえず注文しませう……店員さーん!このページの全部ねー!」
曙「何やってんのよ、食べきれないでしょ」
漣「いやー、だって思ったより食べそうだし?」
赤城「注文が早いのは良いことじゃないですか」
雲龍「…これ、人間の食べ物?何これ…」
赤城「それはフォークです、このパスタを食べるのに使ってください」
雲龍「…刺すの?…刺さらないわ」
加賀「刺して、フォークを回しなさい」
雲龍「…できた、食べても良い?」
龍驤「先にいただきます言ったか?その辺ちゃんと覚えさせなあかんで?」
漣「さっすが面倒見いいなぁ…」
曙「ま、こっちは特に手間かかってないしね…」
大鳳「…まあ、私は一応元人間なので…」
曙「へぇ」
大鳳「…美味しい……ご飯を食べて、お腹に溜まるなんて…いつぶりなんだろう…」
曙「何?アイツ人間に戻すだけ戻して食べ物渡してなかったの?」
漣「そりゃお腹も鳴るよ…」
大鳳「いえ…贅沢を言える立場ではないですし…」
曙「餓死されても困んのよ、ちゃんと食べときなさい」
雲龍「…無くなった」
赤城「よく食べましたね」
龍驤「すぐ食べ終わったけど腹一杯なったんか?」
雲龍「…もっと食べたい」
龍驤「しゃーない、ウチが奢ったろ、次は肉でも食うか!」
曙「あら、太っ腹じゃない、おねーちゃん」
漣(うわっ)
龍驤「…別にウチはお前らまで奢る言うとらんで」
曙「えー?」
龍驤「こんな時だけあざとい素振りしおってからに…」
曙「いいじゃない、奢ってよ」
龍驤「……はいはい、負けたわ、奢ったるわ」
曙「っしゃ!漣!ステーキとパフェ!」
漣「あいあいよー!」
龍驤「おぁっ!?それはちゃうやろ!?」
雲龍「…龍驤、曙と漣と、仲が良い?」
龍驤「……まあ、他よりはええ関係やろな」
雲龍「…私も、そうなれる?」
龍驤「ええ子にしとるんやったら、ええで」
赤城「あら…」
加賀「ジュースより食事みたいですね」
宿毛湾泊地
駆逐艦 朝潮
朝潮「…よし、みんな、揃ってますか?」
大潮「はい!」
満潮「…ちゃんと準備はした、けど…」
荒潮「そうねぇ…霰ちゃん、凄く調子悪そうね〜」
霰「……大丈夫」
霞「そうは見えないけど…」
山雲「あ、でも出発は明日だし〜…お土産でも買っていきましょうか〜」
朝潮「まあ、それに限らずとも準備ができたなら、自由に行動して構いません」
山雲「それじゃあ、解散ね〜」
執務室
朝潮「…山雲、荒潮、出かけなくていいのですか?」
山雲「うーん…私はいいかな〜」
荒潮「そうね、私も別に行くところはないし…」
朝潮「……では、司令官のパソコンを確保したいので…ついてきてくれますか?」
山雲「パソコン…?」
荒潮「パソコンに何かあるの〜?」
朝潮「明石さんが元気がなかったので…あの人は機械を触るのが趣味でしたから」
山雲「そうね、それなら怒られないかも」
朝潮「…これでしょうか」
荒潮「多分…この辺りの一式も持っていく?」
山雲「そうしましょ〜」
離島鎮守府
戦艦 レ級
レ級「…よくもまあ、一日でこんなに大量の物を…」
曙「まー、最後の娯楽のつもりでね」
レ級「……ああ?そう、アンタは覚悟できてんのね」
曙「それより、全員集めたんならさっさと言いなさいよ」
レ級「日にちをあけたのは私の都合じゃない、直接話したいって方がいたからよ…だからわざと横須賀と…あと佐世保の一部の人員には残ってもらってる」
火野「と言っても、話が終われば早急に戻るつもりだ」
度会「こちらもそのつもりだ」
レ級「大丈夫です、すぐに始めます…ちょうど、始まるみたいですから」
明石さんがみんなの前に出る
明石「…すいません、少しだけ聞いてください…皆さんの体に関することです」
曙(明石…?あいつ、最近工廠に引きこもってるって聞いたけど…)
レ級(…明石さんにとって、これはどんな結末でもかなり辛い物でしょう)
明石「…正確には艤装、艦娘システム…それを使用しているとどうなるか、です…高速修復剤を始めとした…一見非現実的なそれらについてです」
朝潮(…確かに、非現実的な物だらけではありますが…)
明石「…現行の、艦娘システムには重大な欠陥が見つかりました……こ、これを使用し続けると、いずれ体内の細胞全てがナノマシンと置き換わり…人間と呼べる存在ではなくなってしまいます」
どよめき
覚悟のできない者、それ以前にこんなことを言われると思っていなかった者も居るだろう
レ級「どうか、静かに…」
明石「…い、今、システムから外れれば…ナノマシンは機能を失い、老廃物として体外に少しずつ排出されると思います…ですが、このまま使い続ければ、人として生きることは難しい…と、思います」
曙「待ちなさい」
レ級「質問は、手を挙げてしなさい」
曙が苛立ちを抑えて手を挙げる
曙「高速修復材、さっき明石が挙げてたわよね、あれはどういう物なの」
明石「……生きた、ナノマシンの塊です…傷口にナノマシンをぶちまけて傷口を覆い隠し、治ったように見せる……そして、体内に入り込んだナノマシンが強制的に体を作り替えて直す…」
曙「……修復剤を使った奴らは」
明石「傷の具合にもよりますが…非常に大きい範囲が侵食されたと思っていただいて構いません…ナノマシンの侵食が激しくなると…感情が爆発しやすくなる、好戦的になる等の症状が予測されます…」
曙(…バトルマシンになるって訳か…)
明石「……私が、皆さんの艤装を扱っていた私が…やってしまったことなんです…本当に、ごめんなさい…」
朝潮「…明石さん1人の責任ではないんじゃ…」
明石「……修復剤を使ったのも、曙さんみたいな特殊な艤装を作ったのも…私なんです、それに……私は、私は…」
明石さんの目に何かが浮かぶ
レ級「…それは」
明石「……第三相、そのダミー因子です」
神通「メイガスの……ダミー…因子?」
明石「この因子を使えば…他人よりも艤装の出力を上げられます、そして何より、この因子の力を使えば…ナノマシンをいくらでも量産できてしまう…高速修復材は…私1人が生み出してきた物です…」
レ級「…流石にそれは聞いてませんでした」
明石「…本当に、ごめんなさい…」
レ級「…まあ、そういうことです、解体申請を受け付ける意味、理解できましたか?」
曙「待ちなさいよ、それなら春雨達の艤装で…」
春雨「別にいいですが、あなたは自分の炎で焼かれて死にますよ?」
曙「…何よ」
春雨「よく考えて見なさい、多少熱い態度で炎を扱えた理由を…もうあなたの外皮はナノマシンで覆われている、もしかしたらそれだけじゃない、私の見立てでは体内の30%はナノマシンに置き換わってるんじゃなきですか?」
曙「なっ…!」
レ級「私も、そう思う……なんのデメリットもなく、あんな力が使えるわけがないんだ、当然だろう」
曙「アンタまで…!」
レ級「曙、あんたの姉妹として言う……引き返せるのは、今だけよ」
曙「ふざけんな!…その程度であたしが怖がるとでも…」
曙を抱きしめる
曙「ちょ…級に何を…」
レ級「…私は、あんたにバケモノになってほしくない、アンタには人として内地で生きる選択肢がある」
曙「…そんな事…」
レ級「アンタのことを大事に思ってる、だからこそ…」
曙「…じゃあ、なんでアンタは深海棲艦のままなのよ」
レ級「……私にはまだやることがある」
曙「やり残したことがあるのは、アンタだけじゃない…!」
曙が私を押し退ける
曙「明石!」
明石「っ…」
曙「アンタが取れる責任は…バケモノになったあたしを元に戻す手段を探す事、あたしは絶対ここで逃げたりしない…あたしは…戦う、この戦争を生き抜いて、深海棲艦を全滅させて、ようやく人間として暮らせんのよ」
レ級「……」
朝潮「私も同じく、残りたいと考えています」
キタカミ「ほら言ったじゃん、余計なこと言わせずさっさと強制的に解体しちゃえばいいってさ」
北上「…アンタは?」
キタカミ「そりゃあ、残るけどさ、最低限の汚れ役だけでも良いかなぁ、とは思ってるよ」
北上「……あ、そ」
キタカミ「そっちこそどうすんのさ」
北上「残るんじゃない?知らないけど」
レ級「ここで解体を選ぶことは、逃げる事じゃない…きっと提督は皆さんにここで解体を選んでほしいと思っています」
朝潮「愚直に従うだけがその人のためではありません」
曙「後は、明石…アンタの気持ちだけよ、アンタがあたし達を全員元に戻すって覚悟、それだけ」
明石「…わかってます、私は私のした事の責任を取るつもりです…!」
レ級(計画は真逆の方向に流れた、全てが破綻か…)
曙「…なんで笑ってんのよ」
レ級「え?いやぁ…バカしかいないなって」
曙「…違うわよ、戦うことを選んだ全員、バケモノになる覚悟をしたってこと…それはバカだからじゃない、明石、それにアンタの事も…みんな仲間を信じてるからよ」
レ級「だから、バカなんだって…でも、そのバカに命懸けられる人生の方が…よっぽど楽しいか」