元勇者提督   作:無し

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処理

特務部 オフィス

駆逐艦 敷波

 

誰も居ないオフィスのソファに腰掛ける

 

敷波「…はぁ……何にも、うまくいかないなぁ…」

 

自分には、何もない…何もできない…

最近は事務整理以外した覚えもない

アタシを誰も求めてないのがよくわかる

苦しくて、辛くて…何のためにいるのかわからなくなる

 

敷波(…でも、綾姉ぇなら…きっと…)

 

最期の笑顔が頭の中でリピートされる

自身の行いをどんなに悔いても…許されるわけなんて無いのに

 

カツン

 

ヒールのような足音が誰も居ないはずのオフィスに響く

咄嗟に立ち上がり、周囲を見渡す

 

駆逐棲姫「んー…間取りが変わってなくってよかった…派手に壊しましたからねぇ…」

 

黒い艤装の間から真っ白な肌が覗く

此方を見た顔は…あの時とは違う狂気的な笑みで…

 

敷波「…綾、ね…ぇ…?」

 

その名を口にした瞬間、アタシは膝をついていた

感動とか、そう言うのじゃない…立ってられない恐怖を感じた

 

駆逐棲姫「あら、よくわかりましたねぇ…敷波」

 

敷波「っ…」

 

わかる、間違いない、あの時の…前の世界の、綾波…綾姉ぇ…

そして、最悪な事に…本気で頭にキてるらしい…

 

駆逐棲姫「悪い妹には、お仕置きが必要だと思いませんか」

 

アタシの目の前まで歩いて近寄り、片手で首を締め上げる

 

駆逐棲姫「ほら、立ちなさい」

 

首を締め上げながら、持ち上げられる

 

敷波「…ぁ……が…」

 

駆逐棲姫「ああ、何でこんなに腹が立つのか…遊んであげようと思ったのに」

 

目が、熱い…

 

駆逐棲姫「因子は、貰っておきます…あなたにもう用はありませんよ、消しておきます」

 

真上に投げ飛ばされ、天井に体を強く打つ

 

敷波「っ…ぁ…」

 

駆逐棲姫「カケラも残さず、消してあげましょう」

 

綾波の右足を形成している艤装が光る

 

駆逐棲姫「アハハッ!」

 

天井から落下するアタシを綾波の右足が容赦なく砕く

 

一瞬にして、アタシはその場から消滅した

 

 

 

駆逐棲姫「…まさか、これで協力関係が失われたり…しませんよねェ?」

 

数見「……何一つ、問題はありません」

 

駆逐棲姫「…じゃ、今後に期待してますよ…特務部サン」

 

数見「…こちらもそちらの活躍に期待します」

 

駆逐棲姫「ええ、好きに期待してください、私は私のやりたいようにしかやりませんので」

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

戦艦 レ級

 

大鳳「あ、あの…わ、私は何を…」

 

レ級「深海棲艦のこと、多少はまだ操れますか?」

 

大鳳「え、いや…そんな力もう無いですよ…」

 

レ級「…チッ、じゃあ、拷問の続きといきましょうか」

 

大鳳「えっ……」

 

右手に炎を灯し、向ける

 

レ級「貴方達が製造された目的、と言うかその経緯、もう一度話しなさい」

 

大鳳「や、やめて…もう熱いのは…!」

 

レ級「命令してるのは私です」

 

大鳳「わ、私達は医学や軍事経済の為に身体をナノマシンに作り替える実験の被験者です!」

 

レ級「そしてそれは、中央の連中がやってた実験だった…と」

 

大鳳「は、はい!わ、私達は不老不死の初期個体として放流されて観察されていました!」

 

レ級「それだけですか?本当にそれだけなんですか?」

 

炎を近づける

 

大鳳「わかりません!わ、私はこれ以上はわからなくて!…お、お願いします!やめてください!」

 

大鳳は目に涙を浮かべて懇願する

流石にこれで嘘は無い、だろうか…綾波ならあと少しいたぶってから判断するだろうがあいにく私にその趣味はない

 

レ級「…怖がらせてすみません、ちゃんと話してくれたんですね」

 

炎を消し、大鳳を抱き寄せる

 

大鳳「…っ…」

 

ガクガクと震える大鳳の背中を軽く叩く

 

レ級「貴方を仲間として受け入れるにあたり…どうしてもあなたからすべての情報を引き出さなければならなかった…理解してくれますか?」

 

大鳳「は、はい…」

 

レ級(しかし、まあ…深海棲艦を産み出したのは日本政府…だったとして)

 

レ級「そういえば、煙草に洋酒…かなりの種類が有りましたが、アレは?」

 

大鳳「ぜ、全部…輸送船を襲って手に入れたものです…」

 

レ級「それにしては保存状態が良かったですが」

 

大鳳「……私の、唯一の娯楽でした…深海棲艦になった私は…孤独でした、酒に酔い、煙草に耽る…体がナノマシンになってしまったせいで成長もしない私にとっての唯一の楽しみでした、成ることのできない大人の真似事だけが、唯一の…」  

 

レ級「…今の貴方は成長するんでしょうかね」

 

大鳳「…その…きっと…」

 

レ級「なるほど、では今の貴方には酒も煙草も必要ないわけだ」

 

大鳳「…まあ、そうですね」

 

レ級「あれらは一通りいただいておきますよ」

 

大鳳「えっ」

 

レ級「…何か、文句でも?」

 

大鳳「い、いえ!なんでも……」

 

大鳳(…確か素体の状態でも明らかに成人してなかったし…い、いいのかなぁ…)

 

レ級「…ま、それはそれとして」

 

懐から煙草の箱を取り出し、一本咥える

 

大鳳(もう持ってるし…)

 

レ級「駆逐棲姫だとか、名前のわからない深海棲艦だとか…その辺と対立するのは、貴方は良いんですか?近しい関係だったんじゃ?」

 

大鳳「…特に抵抗はありません」

 

レ級「ほぉ…」

 

火をつけて口に煙を吸い込む

 

レ級「うげ……気持ち悪…人の身体とでは感性が違うか……」

 

大鳳「…駆逐棲姫は、私の妹のような存在でした…もう1人の方は、母の様な方でした…ですが、結局は…私をあんな姿にし、孤独にした…恨む気にはなりませんが…親しいとは…」

 

レ級「…今の貴方は生きてるのがつまらなさそうですね」

 

大鳳(…言葉を間違えば、殺されかねない…)

 

大鳳「別に、そんな事は…」

 

レ級「私は…目的のためなら命を捨てられます、しかしそれは決して悲劇的なことでは無い」

 

大鳳「…な、何を…?」

 

レ級「私の命は提督の為にあります、だから任務のために死ぬのは怖く無い…貴方には分からないことでしょうが」

 

大鳳「…は、はあ…?」

 

レ級「そのくらいの熱量で…騙されて生きるの、楽しいですよ?」

 

大鳳「……楽しい…」

 

レ級「人は目的なく生きていれば腐ります、大抵の人間が命をかけるほどの熱量を持たない…自分の心を熱くできる何か、見つけた方がいいですよ」

 

大鳳「そ、そんなこと言われても…」

 

レ級「では、手始めに…貴女を秘書艦にしてあげましょう」

 

大鳳「へ?ひ、秘書?」

 

レ級「提督の代理にピッタリくっついてなさい、もちろんオフの時は好きにして良いですが」

 

大鳳「そ、それが私の仕事ですか…?」

 

レ級「ええ、まあ…疑わしきは罰せよ…これが私の信条であると言うことだけ覚えておいてください」

 

大鳳「は、はい!」

 

レ級(ま、そんな信条ないんですけどね)

 

大鳳を見送り、海辺に歩く

煙草を大きく吸い、海に向かって弾く

 

駆逐棲姫「へぇ、煙草ですか」

 

レ級「うげ…」

 

捨てた煙草を駆逐棲姫が海に落ちる前に手に取り、咥える

 

レ級「……なんでお前はそんなに気持ち悪いことを平然と…」

 

駆逐棲姫「んー、吸ったことはありませんが、悪く無いですねぇ?」

 

レ級「……」

 

駆逐棲姫「煙草のお礼に何かしてあげましょうか?」

 

レ級「やめろ、お前が悪行を積んでも提督はお喜びにはならない」

 

駆逐棲姫「……ま、いいですよ、そっちは…」

 

駆逐棲姫がタバコを海に捨てる

 

レ級「……」

 

駆逐棲姫「それより、先程…ここに来る途中、船が沈んでるのを見ましたが…アレは貴女が絡んでるんですか?」

 

レ級「私はずっと島の中にいた」

 

駆逐棲姫「では、深海棲艦の犯行でしょうが…どうやら、目的地はここだった様なんですよ」

 

レ級「…それで?」

 

思わず上がった口角を隠す

 

駆逐棲姫「…やはり、あなたは食えない…すごく魅力的な人ですねぇ…」

 

レ級「当たり前だ、大量の深海棲艦が出る海域を無理に突破しようなど…自業自得でしか無い」

 

駆逐棲姫「……貴方、やはり考え方が人間じゃ無いんですよ、私と来ても悪いことはないんじゃ無いんですか?」

 

レ級「提督がお悲しみになる、それだけでお前と共に歩む道は断たれた」

 

駆逐棲姫「……はぁ…」

 

レ級「…何のためにお前はこの辺りをかぎまわっている」

 

駆逐棲姫「…さぁ?何のことやら」

 

艤装が駆逐棲姫に照準を合わせる

 

駆逐棲姫「……私は貴方がいいんです、覚えておいてくださいね」

 

レ級「断る」

 

 

 

 

駆逐棲姫(ま、候補は2人か)

 

 

 

 

 

執務室

提督代理 朧

 

朧「……視察予定だった艦が深海棲艦に襲われて沈んだって」

 

レ級「でしょうね」

 

曙「なんか、喜べないわね…」

 

朧「…向こうから来るのは難しいからって、出頭命令が出たよ…」

 

レ級(早すぎる、予定通りって事ね…人の命をゴミいかにでも捉えてんのかしら)

 

曙「どうすんの?」

 

朧「……いや、どうすんのって…」

 

レ級「行くわよ、朧」

 

朧「…本気?アタシと曙で…?」

 

レ級「安心しなさい、アンタの秘書艦は大鳳に任せるから」

 

レ級(…やる事はやる)

 

朧「……どういう事なの…」

 

レ級「大丈夫、心配ないわ、私に任せなさい」

 

朧(不安しかないのは、どうしてなんだろう…)

 

レ級「さ、準備するわよ、来なさい」

 

朧「……うん…」

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