元勇者提督   作:無し

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忘刻の都

The・World

Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

青葉「思ったより、状況は悪いみたいですね…!」

 

不正ログインであることは分かっていた

だからシステム管理者に追われるのは想定内だったが…

 

青葉「数が多い…撒けないし…そもそも戦って勝てる相手なんでしょうか…!」

 

反転し、槍を地面に叩きつける

瓦礫と土煙が周囲を包む

 

青葉(今のうちに、エリアを移動しないと…!)

 

青葉「っ!?」

 

マク・アヌの橋の上に、確かにその石像はあった

この世界には明らかに異質で、元々のマク・アヌには存在するはずのない像

そして、見間違いじゃないのなら…

 

青葉(司令官…!)

 

助けなきゃいけない…

そう思って、体がそちらを向く

 

青葉「う…っ…!」

 

管理者PCの投げた槍が体を掠める

 

青葉「あっ…!ぐ…あああああっ!!」

 

 

 

 

リアル

大黒宅

青葉

 

青葉「ぁ…がぁ…!っ…」

 

ディスプレイデバイスを外し、投げ捨てる

デスクから転げ落ち、乱れた呼吸を必死に整える

 

青葉「…かはっ…!……なん、なんで…こんな…」

 

明らかに異常な痛み、槍が掠めた腕には未だに激痛が残ったような感覚

 

青葉「……はぁ…はぁ……し、死んじゃうかと…思った…けど……」

 

目的の一つは見つかった…

 

青葉(ネットに囚われた司令官を…見つけられた…私が、助けなきゃ、いけない…!)

 

メガネの様なデバイスをまた頭から被る

先程の短時間で異常な倦怠感が身体を包む

あの槍の効果なのか、それとも自身にそれだけ疲労が溜まっている証なのか…

 

 

 

 

The・World

Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

青葉「……あ、れ…?さっきの人達、居ない…」

 

先程の管理者は辺りにいる様子はない

 

アルビレオ「まだ1人、居たか」

 

背後から金属音が鳴る

反転し、槍を振るう

 

槍同士がぶつかり合い、金属音が響く

 

アルビレオ「っ…速いな………ん?」

 

青葉「…あ、れ…貴方は…」

 

アルビレオ「…宿毛の青葉…」

 

青葉「…佐世保の…」

 

アルビレオ「……何故、ここに」

 

青葉「その…ソ、ソフトをもらって…司令官を助ける為に…」

 

アルビレオ「…あの像、か…」

 

青葉「はい…」

 

アルビレオ「……悪い事は言わない、あまりここに長居しない方がいい、相手はデバッガーだ、通常の攻撃手段は何も効かない、それに一撃貰えばデータも消去されかねない」

 

青葉「…えっと…さっき掠っちゃったんですけど…」

 

アルビレオ「何?なんとも無いのか?」

 

青葉「いや…倦怠感と…痛みは」

 

アルビレオ「痛み……倦怠感…?…よく、わからないが…The・Worldでそんな物が発生するとは…いや、ヴォータンの所為か」

 

青葉「ヴォー…たん?」

 

アルビレオ「神槍ヴォータン、デバッグアイテムだ…これに貫かれた物は消滅する」

 

青葉「しょっ…!?」

 

アルビレオ「…君のPCが消滅してないのは…理由はわからないが幸運だった、デバッガーを敵に回すのはリスクが大きい、これ以上ダメージを受ける前にログアウトした方がいい」

 

青葉「……いいえ、私はやる事があってここに来ました…!ここで逃げたりなんか…しません!」

 

アルビレオ「…君が直面している問題は簡単に解決できない、それに…想像してる以上に危険な問題だ」

 

青葉「わかってます、でも…私がやらなきゃいけない事だから」

 

アルビレオ「……The・Worldは、今、世界の形が変わりつつある」

 

アルビレオが槍をタウンの中心に向ける

 

青葉「…な、なんですか、アレ…」

 

今まで気づかなかった、タウンの中央に聳え立つ巨大な塔…

 

アルビレオ「アカシャ盤、と呼ばれてるらしい…あの中に解決の糸口があるんじゃないかと思っているが…未だに糸口は見えてこない」

 

青葉「…なる、ほど…わかりました、私も調べてみます」

 

アルビレオ「…む…昼休憩が終わるな、俺は落ちる」

 

青葉「あ、お疲れ様です…」

 

青葉(休憩時間中にこのゲームをやってたんですね…)

 

アルビレオ「そろそろデバッガーたちが戻ってくる、その前にログアウトする事を推奨しておく」

 

青葉「わかりました、ありがとうございます」

 

アルビレオ「……」

 

アルビレオがエフェクトに包まれてログアウトする

 

青葉「…私はどうしよう…まずは、調べるならアカシャ盤…あと司令官の像…」

 

像に近づく

 

リアルの、その姿のままで、何かと対峙しているかの様な表情の石像

 

青葉(…きっと司令官をネットに連れ去った人に…石にされてしまった…でも、石になったなら、助かるの…?)

 

青葉「…考えても仕方ないか、どうにか…ううん…倒して割れたりしたらどうしようも無いし…アカシャ盤を…」

 

周囲にエフェクトが現れる

 

青葉「っ!…システム管理者…一旦ログアウトするしか、無い…か」

 

ログアウトし、ディスプレイの電源を落とす

 

 

 

リアル

大黒宅

青葉

 

青葉「…アカシャ盤…司令官の石像……The・World R:X…」

 

検索エンジンにめぼしいワードを打ち込む

 

アカシャ盤というワードには引っ掛かるサイトがほぼ無いことに対し、The・World R:Xには新作に期待する記事が何件も見つかった

 

青葉「……途方もない…数ですね、先にアカシャ盤について…アカシャ…アカシャ…?あ、明石さんのキャラ名…!…関係、あるのかな…ま、まあ、とりあえず…先に…」

 

アカシャ盤、それ自体に引っかかる物はない、だが

 

青葉「アカシャ…アーカーシャ…インドの哲学における四大を包括する空間を作る為の概念…虚空……虚空の、盤…?」

 

Webサイトを次々に移し替える

 

青葉(…だめだ、出てくる情報はどれも同じ様なものばかり…しかも私の求めてる情報とはまるで違う、アレがもし虚空の盤だったとして…塔の存在の意味が…いや、次はThe・Worldについて…)

 

青葉「…未帰還者…か…秋雲さんの症状…うーん……未帰還者に関しては、なつめさんに聞いた方がいいかな…」

 

軽くノビをして席を立つ

気づけば窓の外は暗く、部屋の明かりがない所為で足元も暗い

 

青葉「…時間は…うわっ…5時間も経ってたんだ…」

 

部屋を出てリビングに向かう

 

大黒「あれ?青葉さん、いつの間に帰ってたんですか?」

 

青葉「へ…?で、出かけてませんけど…」

 

大黒「え、いや…だってもう昨日から見てないし…てっきりお仕事に行ってるんだと…」

 

そう言ってなつめさんがカレンダー付きの電子時計を指す

 

青葉「あれ…う、嘘!丸一日経ってる!?」

 

大黒「…あー…まあ、真剣な事はいい事ですよ…多分」

 

青葉「そ、そういえばすごくお腹が減ってるかもしれません…というか…色々やってきた様な…」

 

大黒「と、とりあえず…その色々を済ませましょうか」

 

 

 

 

青葉「あ、あの、なつめさん」

 

大黒「は、はい?」

 

青葉「…未帰還者について、できる限り詳しく知りたいんです、教えてくれませんか?」

 

大黒「…まあ、それは構いませんが…何から話せばいいのか…」

 

青葉「…未帰還者を元に戻す方法、とか…」

 

大黒「それは…うーん…正確な言葉では言い表せないんですよね…私たちの時はモルガナ八相を倒した結果が未帰還者たちを助けることにつながった…ハセヲさん達の時は…再誕…?よくわからないんですけど、結局は元凶を倒す事、でしょうか」

 

青葉「…元凶…秋雲さんをあんな風にした相手は…偽物のカイト……偽物のカイトについて、調べる必要がありますね…」

 

大黒「あ、それならおあつらえ向きの人が居ますよ!」

 

青葉「おあつらえ向き…?」

 

 

 

 

火野『…私も忙しいのだがね』

 

なつめ「テレビ電話くらい良いじゃないですか!あんまり時間は取らせませんから!.hackersの参謀、ワイズマンさん!」

 

火野『…古い呼び名だ』

 

青葉「お願いします、未帰還者を助ける為に…」

 

火野『……私も時間がない、本題だけ話す、偽物のカイト、その正体はクビアだ…クビアはThe・Worldに本来ありえないほどの力が行使された時現れる…いわばカウンタープログラム、対象と対消滅をするまで戦い続ける…』

 

なつめ「あ、あのクビアが!?」

 

青葉「…ええと…」

 

火野『…反存在、そう呼ぶ事もある…そして、今のクビアはカイトの反存在として誕生したそうだ』

 

青葉「…司令官の…」

 

火野『現状わかっている限り、AIDAとも深い繋がりがあるらしい…もし、出会ったとしたら、可能な限り逃げる様に…万が一やられれば』

 

青葉「意識不明…」

 

火野『…なんだ?大淀……地震、か…?』

 

大黒「え?どうしたんですか?」

 

火野『何…?なんだ、今の爆発音は…!…何…被害は…っ、すまない、用事ができた』

 

大黒「あ、切れちゃった…」

 

青葉「……なん、だろう…凄く、凄く嫌な感じが…」

 

大黒「…地震情報でも見ましょうか、あんまり大きくないといいですけど」

 

青葉「そうですね…」

 

なつめさんが付けたテレビには…

 

青葉「…こ、れ…は」

 

大黒「ほ、ホント…ですか…?」

 

ニュースには、横須賀基地が深海棲艦に襲撃されたと流れていた

 

青葉(…なんで、横須賀基地を………私は、リアルとネット…どっちで戦えば…)

 

何かが、後ろ髪を引くように

 

私は、どうすれば…

 

大黒「……あ、のー…」

 

青葉(…でも、リアルにはみんながいる、だけど1人でも多く戦う方が…)

 

大黒「ええと…?」

 

青葉(でも、基地の襲撃のように白兵戦になったら絶対戦えない…そうでなくてもあんまり自信はないし…私は、役に立てるかどうか…)

 

大黒「あ、青葉さーん」

 

青葉「はひゃっ!?」

 

大黒「…ええと…いま渡すべきじゃないかもしれませんけど、これ」

 

青葉「…眼鏡…?」

 

大黒「ヘルバさんから送られてきたんです…ええと…VRスキャナ…でしたっけ」

 

青葉「VRスキャナ…?」

 

大黒「青葉さん、古いモデルのFMDを使ってるでしょう?VRスキャナなら性能もいいし、読み込みも早いから…きっとゲームのプレイがし易いんじゃないかなって…あ!なんとこれとコントローラーがあれば外でもオンラインゲームができちゃうんです!」

 

青葉「す、凄いですね…というか、そんな凄いものを何故…?」

 

大黒「コレを使えば、きっとこの先の戦いで役に立つって…どうですか?」

 

青葉(…性能…か、あのFMD…咄嗟に投げちゃったけど…司令官から貰ったものだし…)

 

大黒「…青葉さん?」

 

青葉「…え、ええと…ありがとうございます」

 

青葉(同時に使えるのかな…眼鏡をかけながらゲーム…一応できる構造らしいけど…)

 

大黒「…もし、戦うのが嫌になったなら…無理をしなくてもいいんですよ」

 

青葉「…そうじゃありません、少し迷ってて…でも、私が…私がやらなきゃいけない、そう決めたんだから…途中で投げ出したくないって…そう思って…」

 

大黒「……」

 

青葉「私、決めました、リアルでの戦いはみんなが頑張ってくれてる…だから私は、一刻も早くネットの戦いを終わらせるって」

 

大黒「応援、してます」

 

青葉「はい」

 

青葉(…唯一、気になるのは…横須賀の衣笠さんと……それだけは確認しておきたいな)

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