元勇者提督   作:無し

310 / 625
ネット記者

The・World

Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

青葉「…此処も、行き止まり…そろそろ逃げ隠れは限界ですか…」

 

このゲームを本格的に調べ始めて数日

あの塔の周りは厳重な警備が敷かれており、タウン内をどんなに探っても、たとえシステム管理者に見つかってもあの塔の警備は持ち場を離れない

 

青葉(間違いなくあの塔に何かあるとして…)

 

管理者「見つけたぞ!侵入者!」

 

青葉「…見つかってしまいましたか……いや、覚悟はしていました、私も生半可な気持ちでこの世界に関わっていませんから」

 

槍の切先をシステム管理者に向ける

 

青葉(…普通に戦っては不利、それどころか相手の攻撃は…一撃で私をロストさせるかもしれない…一瞬で決める…!)

 

槍を横薙ぎに大きく振るう

遠心力で槍が外に逃げる力を利用し、手の中の槍を滑らせ石突を握り、片手で槍を振るう

 

青葉「やあぁぁぁッ!」

 

システム管理者のPC(プレイヤーキャラクター)を浅く斬りつける、そして右足を軸に身体を捻り、全身の勢いを込めて

 

青葉(もう一撃!)

 

管理者「ぐああぁッ!」

 

システム管理者のPCが灰色の死体に変わる

 

青葉「……前より、細かな動きができる…VRスキャナで処理能力が上がったおかげ…なのかな…」

 

路地裏に入り込み、槍を立てかける

中世的な、夕暮れと水の都は…いつの間にか灰暗い、ホラーチックな街へと姿を変え始めていた

 

青葉「…こんな世界、いやだ…!」

 

私が、やるしかない…

 

Cubia「君もこの世界が嫌いなの?」

 

青葉「っ!?」

 

槍を掴み取り、声のした方向を探る

 

Cubia「大丈夫、ボクはシステム管理者じゃない」

 

青葉(…少年の、PC…)

 

Cubia「……へぇ、重槍士(パルチザン)…そこの死体も君がやったの?だとしたら、かなり強いんだね…」

 

青葉「貴方は…」

 

Cubia「…名前はないよ、ただのAIさ」

 

青葉「AI…」

 

Cubia「……キミは此処に何をしにきたの?」

 

青葉「…人を、助けに…」

 

Cubia「へぇ…凄いね、勇気あるんだ」

 

青葉「いえ…」

 

青葉(…この人、一体何者なんだろう…)

 

Cubia「…おっと…システム管理者に見つかったかな?」

 

青葉「っ!」

 

路地の先から複数の足音が近づいてくる

 

Cubia「いいものを見せてもらったお礼に、ここはボクに任せてよ、キミは逃げて」

 

青葉「で、でも…」

 

Cubia「大丈夫、ボクは強いんだ、ほら、早く」

 

青葉「…ええと…ありがとうございます」

 

少年に背を向けて路地を走る

 

青葉(…この路地、入り組んでる上に、長い…っ!?)

 

足元が無くなったような感覚

 

青葉「落ち…っ…きゃあぁぁぁっ!?」

 

 

 

Cubia「…キミに…絶望を与えてあげるよ、カイト」

 

 

 

 

 

Δサーバー 水の都 マク・アヌ

 

青葉「…うわっ!?……いた、た…腰、打った……体感設定が高い…ほんとに痛い気がして来ちゃう……っ…」

 

夕陽の日差しが目に突き刺さるような感覚

つい、手で夕陽を覆い隠す

 

青葉「……路地一本挟んだだけなのに、こんなにきれいな夕陽…あ、れ?…なんで?アカシャ盤が無い…それに、システム管理者しかいない筈のマク・アヌに…なんでこんなに人が…」

 

行き交う人々、川をゆっくりと進む小舟、美しい中世の街並み、そして夕焼け…

 

青葉「……違う、ここはさっきまでのマク・アヌでも…R:2のマク・アヌでもない…!ここ、は…どこ…!?」

 

慌ててあたりを見渡す

 

青葉(元来た路地を戻れば…路地…!)

 

近くの路地に入る

 

青葉「…今、何かが通ったような…?」

 

あたりを見渡すも、何もない

夕焼けの微かな光に照らされた薄暗い路地

 

青葉(…気の、せい…)

 

楚良「ばみょん!」

 

背後から首に刃物を突きつけられる

 

楚良「ねぇねぇ、メンバーアドレス…ちょ〜だいっ♪」

 

青葉「ひへっ!?だ、誰…」

 

楚良「んー?内緒!それより…よく見たら珍しいエディット!おんもしれ〜!」

 

青葉(…全身黒の暗殺者みたいな格好…それに、籠手から飛び出した剣…かなり特殊な装備だけど…双剣士だ…!)

 

楚良「ねぇねぇ、お友達になろうよ」

 

青葉「へ?」

 

楚良「お友達になるとお得だよ?裏切るケド♪」

 

青葉(裏切る前提!?)

 

楚良「ねぇねぇ、メンバーアドレス、頂戴っ♪」

 

耳元で囁かれる

 

青葉(ゾワゾワする…怖い…ど、どうしよう…メンバーアドレス…ええと……いや)

 

青葉「…貴方、PKですよね…」

 

楚良「何?俺のこと知ってんの?アンタもしかして騎士団の連中?…じゃないか、紅くないし」

 

青葉「騎士団が何かは知りませんが…斬風姫の召喚符!」

 

呪符を使い、背後のキャラクターに竜巻を直撃させる

 

楚良「おわっ!?」

 

青葉(今のうちに…!)

 

解放されたと同時に路地の奥へと走る

 

楚良「…んー……気に入った!おっ友達になりてぇ〜!」

 

 

 

青葉(な、なんだったんだろう、さっきの人…上位の呪符を消費しちゃったけど…大丈夫かな…)

 

青葉「…あ、カオスゲート!」

 

カオスゲートへと駆け寄る

 

青葉(これでマク・アヌに帰れば…あ、あれ?マク・アヌが選択できない…な、んで…)

 

ベア「…すまない」

 

青葉「ひぁっ!?ご、ごめんなさい!邪魔でしたか!?」

 

振り返ると、腰当てと全身に施された青いボディペイントが特徴的なワイルドな中年剣士がすぐ側にいた

 

ベア「いや…もしかするとログアウトができなくて困ってるのかと思ってな」

 

青葉「ロ、ログアウト…?」

 

ベア「違うならいいんだが…」

 

青葉「い、いや…そういう訳じゃ…あ、あの、このタウンって…」

 

ベア「…マク・アヌだが、どうかしたのか?」

 

青葉(やっぱりマク・アヌなんだ…どうしよう、いや、一回ログアウトしてみるしかないのかな…)

 

ベア「…あー…もしかして、初心者か?…力になれる事があれば手を貸すが」

 

青葉「い、いえ…そういう訳じゃ…ごめんなさい!失礼します!」

 

カオスゲートを選択してログアウトを実行する

 

 

 

 

 

リアル

大黒宅

青葉

 

青葉「……はぁ……こ、これで入り直せばきっと…あのマク・アヌに戻れるよね…」

 

 

 

 

 

The・World

水の都

重槍士 青葉

 

青葉「…なんでぇ…!」

 

ベア「……」

 

青葉(ま、まって、落ち着いて…わた、私は…R:Xのマク・アヌからここにきて…)

 

ベア「…あー…本当に、大丈夫なのか?」

 

青葉「…えっと……ここってリビジョンは…」

 

ベア「リビジョン…?」

 

青葉(リビジョンが伝わらない…?まあ、私みたいに調査してないと知らないのかな…うーん…ログインするときに調べた限りソフト自体に異常はないし…私、どうしたら…)

 

Johnny「それでさ、デジタル一眼レフ、アレも最近一気に生産終了しただろ?」

 

耕次「そうなのか?カメラの事はよくわからないからなぁ…」

 

青葉「…え?」

 

会話しながら通り過ぎて行ったキャラを追う

 

ベア「お、おい」

 

青葉「あ、あの!すいません!」

 

Johnny「うわっ…な、何?」

 

青葉「さっき…さっき生産終了したって言ってたの…DSLRシリーズのこと、ですよね…?」

 

Johnny「そ、そうだけど…」

 

青葉「…あれの生産が終了したのは2009年ですよね…?」

 

Johnny「…えと…うん、だから今年…」

 

青葉「…え…?」

 

Johnny「…な、なんだよ…」

 

耕次「も、もう行こうよ」

 

Johnny「ああ…かわいいキャラしてたけど、ちょっと変な奴だったな…」

 

青葉(…今年が、2009年?2020年じゃなくて…?)

 

ベア「…ど、どうしたんだ?いきなり…」

 

青葉「すいません、今年は…何年ですか?」

 

ベア「…2009年だが…」

 

青葉(…まさか、私は…タイムトラベルしてる…?)

 

青葉「ご、ごめんなさい!ちょっと失礼します!」

 

カオスゲートに走り、ログアウトする

 

 

 

 

リアル

大黒宅

青葉

 

青葉「な、なんで!?こっちは2019年!なのにネットの中は2009年…わ、訳がわからない…!どうして!?」

 

大黒「あ、あのー…青葉さん、もう夜も遅いので…」

 

青葉「あ…ご、ごめんなさい」

 

大黒「何かあったんですか?」

 

青葉「…いや…その…私もよくわからなくて……え?もう夜…!?」

 

大黒「ええと、はい」

 

青葉「……し、失礼しました…わ、私少し…出撃に行って来ます…」

 

大黒「い、いまから?」

 

青葉「…多分、今頃佐世保の方は夜間哨戒をしてますから…万が一を防ぐ為に」

 

大黒「…そ、その…あんまり無理は…」

 

青葉「…大丈夫です、少し整理したいこともありますので…」

 

 

 

 

 

海上

 

青葉「……艤装、展開しなきゃ…」

 

肌が白く染まり、黒い甲殻に体が覆われる

 

リ級「…あ、そうだ」

 

甲殻を操作し、細長い槍を作る

ゲームの中のような槍

 

リ級「……これなら…大丈夫」

 

 

 

天龍「あ、青葉さん」

 

リ級「あ…どうも」

 

龍田「味方でよかったわ〜、危うく撃つところだったから♪」

 

リ級(…この人苦手だなぁ…)

 

天龍「…それは…槍?」

 

リ級「…その、趣味と言いますか…ちょっと」

 

龍田「へぇ…使えるの?」

 

リ級「…つ、使ったことは無くて…あ……」

 

天龍「…青葉さん?」

 

リ級「南に深海棲艦が居ます」

 

龍田「あら、戦闘開始ね〜」

 

リ級「私に任せてください…この身体は夜目が効くので」

 

主砲を向けながら敵に迫る

 

天龍「先導はお願いします」

 

リ級「はい!」

 

砲撃を開始し、敵の注意を惹きつける

 

天龍(…見えた、敵の砲火で青葉さんを撃ってる敵の位置は掴めた…)

 

龍田「回り込むわね〜」

 

天龍「同行します」

 

リ級(…戦艦級達が肉薄して来た…!)

 

槍を構える

 

リ級「はっ!」

 

横薙ぎに斬りつけ、遠心力で槍が外に滑る

 

リ級(此処で体を捻って、回転して…)

 

リ級「やあぁぁぁッ!」

 

天龍(せ、戦艦級達が艤装ごと真っ二つ…)

 

龍田「…と、とんでもない切れ味ね」

 

リ級「…やった、上手くいった!」

 

天龍「あ、青葉さん!右!」

 

リ級「へ?…へぶっ…」

 

気が逸れた所に駆逐級の砲撃を受け、体制が崩れる

 

リ級(…カッコよく決めたつもりだったのに…)

 

 

 

リ級「…うう…情けないです…」

 

天龍「で、でも…凄かったですよ…」

 

リ級「…天龍さん達から見て、私のあの攻撃は…使えると思いますか?」

 

龍田「威力自体はすごいと思うわ〜」

 

天龍「…そうですね、ですが長物である事の弱点として…動作が大振りすぎます、厳しい物言いになりますが、一度見せた相手には…間違いなく通用しないと思います」

 

リ級「…1回目なら…?」

 

天龍「…身体を捻り、回転させる時の速度をもう少し早めれば…」

 

リ級(…1回目も通用するとは思わない方がいい…という事ですか)

 

天龍「…青葉さん?」

 

リ級「あ、いえ…わかりました!ありがとうございました」

 

 

 

 

 

大黒宅

 

青葉「…あれ、メールだ」

 

[from:アオバ

  件名:連絡

ども!お姉ちゃんの方のアオバですよ!

電話がかかって来てた履歴があったからかけ直そうかとも思ったけど、遅い時間になっちゃったのでメールにしいたよ!

こっちはとりあえずみんな無事…だけど、急に乗り込んできた深海棲艦が集まってた偉い人をみんな深海棲艦にしちゃったとかで…

陸上で深海棲艦を倒すのはなかなか大変だったよ!

そっちは元気?辛い事とかあったらすぐ連絡してね!]

 

青葉「……受信時間は…5分前…か」

 

携帯がない為、なつめさんの家の固定電話を借りる

 

1コール、2コール、3コール…

もう寝てしまったかと諦めかけた所で、コール音が途切れる

 

青葉「…もしもし…?」

 

アオバ『おお!起きてた?いやー…あはは…メールしたばっかだから…なんか…恥ずかしいね?』

 

青葉「…お疲れ様…大丈夫?」

 

アオバ『大丈夫大丈夫!メールに送った通りみんな元気だから!』

 

青葉「…メール、元気そうじゃなかったから…」

 

アオバ『…あー……そう、見えた…?』

 

青葉「うん…」

 

アオバ『…あはは…うーん…いや…』

 

青葉「取り繕わなくて、良いんだよ…私達なんだから」

 

アオバ『……アオバは……今日、目の前で深海棲艦にされた人を…撃った…その人は、その深海棲艦は…どっち…なんだろうって…』

 

青葉「…その深海棲艦を撃たなかったら、沢山の人が犠牲になってたかもしれない…だから…」

 

アオバ『…青葉は、言っちゃダメだからね』

 

青葉「っ…」

 

アオバ『青葉に…仕方ないなんて、言わせない…青葉が深海棲艦になった人間は撃たれて当然なんて…言わないで』

 

青葉「…うん、ありがとう」

 

アオバ『……ご…』

 

青葉「……」

 

アオバ『ちょっと待ってね、あはは…言いたいことの一つも言えないや……その…あの…』

 

青葉「大丈夫、わかってるから…それに謝らないでよ、だって立派にみんなを守ったんでしょ?」

 

アオバ『っ……あー…ほ、ほら…えっと.そうだ!青葉も、悩んでることがあったから電話したんでしょ?』

 

青葉「…ううん、さっきまではそうだった、だけど…声が聞けて…わかったから」

 

アオバ『何の話…?』

 

青葉「私も記事を書いてみることにしたの」

 

アオバ『記事…?』

 

青葉「そう、ネットで…取材したことをまとめて、記事にするの…完成したらURLをメールするから、読んでみてね」

 

アオバ『っ…!…うん、絶対読むよ…!』

 

青葉「じゃあ、切るね…お姉ちゃん」

 

アオバ『…またね』

 

 

 

青葉「…もし、私のやる事は決まった、私は、記事を書く…情報を集めてそれを記事にする、それを見てくれた人の中に…少しでも情報を持ってる人がいたら、私はそこからさらに情報を集める…!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。