元勇者提督   作:無し

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守る

離島鎮守府

提督代理 朧

 

レ級「……結果発表をします」

 

一日経ち、全員の試験を片付けた曙が怠そうに辺りを見る

 

レ級「…まず論外組から…敬称略ですのでご容赦ください…朧、那珂、曙、春雨、島風」

 

朧「えっ!?」

 

那珂「わかってたけど…他のメンバーは意外だね…」

 

曙「……」

 

春雨「私がダメなら他の駆逐はどうなんですか」

 

島風「っ…」

 

レ級「順番に話します、まず、那珂さんと朧…2人とも近接に頼りすぎです、朧の主砲なんて改造のせいで有効射程が10〜15メートルくらいでしょう?」

 

朧「いや、一応着脱可能な砲身は持ち歩いてる、軽く捻ってつければそこそこな強度で扱えるし、車体も普通の駆逐砲より少し短いくらいかな」

 

レ級「……成る程、なら、一応論外から外しておきましょう…論外組の理由は近接攻撃に頼りすぎていたり、隊での連携を取ろうとしない点です、後ろ3人は近接に頼る気もありますが後者の連携ミスが顕著です」

 

春雨「ですが私たちは目的を達成しましたよ」

 

レ級「誰が目的を達成したら合格だと言いましたか、貴方みたいな傲慢な戦いをすると後始末のために犠牲が出るんですよ」

 

春雨「…どの口が言うのやら」

 

レ級「私はその後始末すら自分でやってます」

 

春雨「……」

 

レ級「特に、近接武器を扱うのだったらより気をつけなさい、敵に突っ込んでやられたら…その時点で死は必然、誰も助けられない…最悪、餌にされてより大勢死ぬ…」

 

島風「……」

 

レ級「あと、曙」

 

曙「……」

 

レ級「貴方の隊は夜戦で、尚且つ私はかなり離れた位置にいた、確かに貴方は私を視認できたかも知れないけど…貴方の炎は夜の闇には目立ちすぎる」

 

曙「…わかってるわよ、そのおかげで…アンタに狙い撃ちにされたんだから」

 

レ級「作戦自体は理解できる、炎を扱う以上どうしても夜は目立つ、注意を惹くために孤立したのまでは…貴方の考えの中では致し方ないことかも知れない、だけど敵が1部隊だったらいい、速攻で仕留められるなら悪く無いかも知れない、でも、貴方の炎で他所から迫る敵に味方が気付けなかったら…」

 

曙「……」

 

レ級「炎は確かに目を惹く、でもそれは敵も味方も同じよ」

 

曙「わかってる…」

 

レ級「それと、春雨さん、貴方は非常にタチが悪い、川内さんが2人をサポートしていなかったら目標を果たすことなんてできてませんよ」

 

春雨「…でしょうね」

 

レ級「理解してるなら直せ」

 

春雨「隊の連携は私には合わないんですよ」

 

レ級「…救いようが無い……次に、島風さん、貴方は焦りすぎです、持ち味のスピードに逆に振り回されていては意味が有りません、しかし、焦る気持ちは理解できます…ですが、ゆっくり、周りを見てください、貴方らしく、戦ってください」

 

島風「…私らしく…?」

 

レ級「……次に、合格者…名前を呼ばれなかった方は皆不合格です、しかし不合格だからといって何かあるわけではありませんのでご安心を…えー…潮、漣、阿武隈、川内、赤城、龍驤、朝潮、山雲、不知火、扶桑、長門、金剛、それとキタカミさん…あー、そっちじゃなくて…」

 

キタカミ「…あたし?」

 

レ級「そう、そっちのキタカミさんを抜いた球磨型五名」

 

キタカミ「不合格なんね…」

 

阿武隈(キタカミさんが不合格って…なんで?)

 

レ級「それについては後で、秋月、雲龍、大鳳、霞、霰、大和…以上です」

 

朧(…なんか、メンバーに違和感が…)

 

阿武隈(そうだ、キタカミさんのチームって今の6人とキタカミさんの7人編成…!でも、キタカミさんだけ不合格…?)

 

レ級「それと、私のバリアを破壊した分隊長…名前を呼びますね、阿武隈、川内、キタカミ、以上3部隊には褒章を用意します、後ほど執務室まで」

 

不知火(不合格なのに、目的を達成してるのか…)

 

朧(龍驤さんも赤城さんも朝潮達も、目標は達成してない…)

 

キタカミ「はーい」

 

レ級「なんでしょう、キタカミさん」

 

キタカミ「やっぱコレって手の内全部見せてるかとか、チームの連携で判断してんの?」

 

レ級「その通りです、今回の採点基準は私という未知に対する対応力と…その人が秘めてる隠し弾、チームとしての考え方などを取り入れたものでした、キタカミさんは1人行動が目立ちました、その上全く活躍もなし…それはルールをわかった上で?」

 

キタカミ「…まあね、事前にウチの艦隊には私ができる限り仕込んであるよ、怪我させたら悪いしね、まー…時間足んなくて基礎だけだけど…ほら、やっぱみんなで勝ちたいじゃん?」

 

朧(…キタカミさんの基礎ってどんなの…?)

 

レ級「だとしたら…唯一無二の100点ですね、キタカミさんも合格です」

 

キタカミ「っし」

 

レ級「……今回の事で得た収穫として、合格者は基本的な連携が確実にできます、艦隊を編成する際、殆どの場合は組み込まれることを理解してください」

 

朧「ま、まって、曙」

 

レ級「何か」

 

朧「…雲龍さんと大鳳さんとか…その辺りは深海棲艦として戦ってたから経験あるんだろうけど…秋月は今まで艤装つけてなかったよね…?」

 

秋月「は、はい…今回の演習で初めて戦闘訓練を…」

 

朧「そ、それで組み込むの?」

 

レ級「…キタカミさんの部隊は、全員が素晴らしい適性を見せました、具体的にはチームとしての動き方を理解していました、後衛の雲龍さんと大鳳さんはしっかり艦載機を運用して前衛を担当した霞さんと霰さんをサポート、秋月さんは対空射に集中、大和さんも水上機を利用した超射程の弾着観測砲撃…キタカミさんは1人で浮いた行動こそ目立ちましたが、結果的にチームを守り、できる限り私を攻撃せず他の6人で私を倒すように仕向けた」

 

朧「…つまり…?」

 

レ級「霰さん、霞さんには厳しい言い方ですが、今まで戦闘面で適性は高くなく、なにより朝潮型の他姉妹とばかり行動していた…なのに今回は部隊のメンバーと打ち解けていたし要所で攻撃を決めていた、特に大鳳さん、雲龍さん、大和さんの3名は深海棲艦だった事もあり、警戒されていたのに打ち解けていました」

 

霰「…悪い人じゃ、なかった…から」

 

霞「まあ…そうね」

 

レ級「キタカミさんは戦闘経験のなかった人材、戦闘経験は有るにはあったが運用できなかった人材、様々な不安要素がある人たちを今回問題なく運用してみせました、私からすれば大変助かる事です」

 

キタカミ「だってそういう目的でやるんじゃなかったらこんな大掛かりで疲れることする必要ないでしょ」

 

レ級「ごもっともです、それと阿武隈さん達」

 

阿武隈「はい!?」

 

レ級「そう身構えないでください、貴方達が使っていた陣形はとても有効だと思います、今後運用するにあたり、全体に共有することになると思います」

 

阿武隈「え?本当に…?」

 

レ級「ええ、後方からの攻撃、確かに装甲の特に薄い駆逐艦が受けては大変な事です、その点阿武隈さんが最後尾で全体の流れを掴む、非常に素晴らしい案だと思いました、司令塔としての役割も問題なくこなしていたようですし…非常に高評価、です」

 

阿武隈「やったね!潮ちゃん!漣ちゃん!」

 

潮「ちゃんと頑張った甲斐ありましたね!」

 

漣「いぇーい!」

 

レ級「まだ、話の途中ですので浮かれないように」

 

阿武隈「あ、は、はい、ごめんなさい…」

 

レ級「まあ、問題点もあります、周りから見ていた人たちには一目瞭然でしょうが…阿武隈さんが私を惹きつけるのは構いません、潮と漣が孤立するのは危険も伴います、相手が私1人である保証はありませんから」

 

阿武隈(…それは、当然そう)

 

レ級「今回のような対個人なら…本当に有効な戦術ですが、3人編成でやるのはややリスクがあることだけ理解を」

 

阿武隈「はい」

 

レ級「それと、最後に明石さんから発表が」

 

明石さんが曙の隣に立つ

 

明石「…すいません、少しだけ…昨日の戦闘訓練と、皆さんの艤装データなどから…できる限り私なりに皆さんにかかるリスクを減らせないかと考えてました、それで、皆さんの使ってる艤装にリミッターをかける事にしようと思います」

 

朧「リミッター…?」

 

明石「勿論、これは艤装の性能が下がり、戦闘面で危険を伴います、なので希望者だけにします…AIDAの活動を低下させ、AIDA自体も削減し、艤装の出力を落とす事で皆さんの体内のナノマシンの変化なども詳しく調べるつもりです…」

 

朧(…リスクが伴う…か)

 

明石「ただ、それで乗り切れるほど甘く無い戦いがあることはわかってます、なのでリミッター使用者には自身の意思でリミッターを外せるように設定しますので…どうか、ご一考お願いいたします」

 

明石さんが深く頭を下げ、戻っていく

 

朧(…曙達みたいにデータドレインでAIDAを抜くのが間に合ってない人もそれなりに居る、必要な措置、か)

 

島風(……)

 

 

 

 

工廠

駆逐艦 島風

 

明石「…誰も近づかないようにしたし、多分誰かに聞かれたりもしない…と思う」

 

島風「ありがとうございます…これ」

 

黒いモヤが右手を包む

 

明石「…それは…」

 

島風「…わからないけど、艦娘システムを暴走させるアイテム…私は、これに頼りたいわけじゃ無いけど…利用できるなら…」

 

明石「制御したい、と…」

 

島風「うん…」

 

明石(見たところ全く未知な何か、コレを制御する…片手間にできる事じゃ無い…)

 

島風「……その考えが間違ってる…のかも、しれない…だけど、私は…私はそれでも、コレを使ってでも、みんなのために戦う力が欲しい」

 

明石「…わかった、できる限り調べるので、そこに横になって…」

 

 

 

 

 

明石「…少なくとも、体に良いものじゃなさそうね…ナノマシンの技術を使ってるけどプログラムが独自のもので…解析に時間がかかりそう」

 

島風「そうですか…」

 

明石「…ちゃんと解析してみるから、もう少し待ってて」

 

 

 

 

食堂

重雷装巡洋艦 キタカミ

 

キタカミ「いやー、改めておつかれ、みんなよくやってくれたね」

 

秋月「い、いえ…」

 

大鳳「……」

 

キタカミ「…なんかみんな怖がってない?確かに私がみんなをメンバーに選んだのはそういう事情あってだけどね、でもそもそも嫌ってたりだとか、嫌な奴は選ばれないんだからさ、ちゃーんと合格したって胸はってこうよ」

 

霰「はい…」

 

キタカミ「んー……みんなまだ硬いなぁ…みんなで掴んだ勝利だよ?自信持とうよ」

 

霞「…って言われても」

 

秋月「私達はキタカミさんの指示に従っただけで、決して優秀だったわけでも何でも無いですし…」

 

キタカミ「んー、正直に聞きたいんだけどさ…私に誘われた時どう思った?」

 

霰「…ラッキー」

 

キタカミ「お、めちゃくちゃ正直者だねぇ、なんというか狙い通りだし、最高じゃん」

 

大和「狙い通り…?」

 

キタカミ「有名税って言葉あるしさ、別に良いんだけど…有名になった税を払わされるなら…有名を利用しなきゃだよねぇ…おかげさまで曙は私相手にマジだったし、みんな相手には抑えてた、だからみんなの攻撃が通って勝てた…何より、みんな勝てるって信じて戦えてた」

 

雲龍「…あれで、抑えてた…?」

 

キタカミ「それに、私ならここのメンツには名前が売れてるおかげで頼ってもらいやすくなるし、味方が合わせる事を意識してくれるだけで形を作れるじゃん?」

 

6人が呆然とした表情でこちらを見る

 

キタカミ「言葉って大事だよ、通り名とか二つ名、ああ言うのがあるのはさ、自分を鼓舞する為でもあるかもしれないけど、何より相手に伝えるためだから」

 

大鳳「相手に…?」

 

キタカミ「綾波なら…天才、相手が天才ってだけで負けたと思わせる…綾波はその辺上手いよね、勝てない戦いだと思わせてまず心を折る…それが弱いものいじめの正体さね…勿論、実力が伴ってないといけないけど」

 

キタカミ(さらに綾波の場合は自称する以上のことをやってのける…気持で負けないように言ったけど、舐めたら即死だからねぇ…)

 

大和「だから、離島鎮守府最強なんて触れ回ってるんですか?」

 

キタカミ「それもあるけど、私の唯一無二の誇りってのが大きいかな…コレだけは誰にも譲る気がないって事」

 

大鳳「…レ級さんに対しても?」

 

キタカミ「レ級じゃない、曙、そこはちゃんとしな、ここには深海棲艦は居ないんだから」

 

雲龍「深海棲艦は…いない…」

 

キタカミ「あれで曙も脆いからねぇ、優しくしてあげてね」

 

大鳳(…この人冗談好きなのかな…)

 

キタカミ「さてと、私は明石に会わないと…再三になるけど、お疲れ様、みんなよく頑張ったね、教えた事を守ればそうそう死にやしない、ちゃんと覚えときなね…勝とうとしてない奴らが勝つのは難しいんだからさ」

 

 

 

 

工廠

 

キタカミ「おっす明石」

 

明石「…キタカミさん」

 

キタカミ「いやー…お疲れみたいだね」

 

明石「まあ…やることは無限にありますから」

 

キタカミ「そんな頑張り屋の明石に…ちょっと話があってさ」

 

明石(…また仕事…?)

 

キタカミ「深海棲艦は力を送り、艦娘は力を与えられる…コレ、なーんだ」

 

明石「…なぞなぞですか?私忙しいので、要点を………艤装…?」

 

キタカミ「いま私が使ってる艤装、コレ元々盗んだ奴なんだけどさ、ぶっ壊されて、止むを得ず応急処置して使ってたんだけどさ、ぶっ壊れたからまともに使えないのよ」

 

明石「…修理の、依頼ですか?」

 

キタカミ「それもあるけど…助けになれるかなって」

 

明石「…助け?」

 

キタカミ「艤装弄りの事、少しは前に教わったじゃん?」

 

明石「…教えましたっけ」

 

キタカミ「ほら、記憶失ってた頃…少しだけ工廠に入り浸ってたでしょ」

 

明石「……あぁ!…でも、本当に少しだけじゃないですか…」

 

キタカミ「ま、少しでも居ないよりマシでしょ?それにさ…リミッター」

 

明石「……お願いします」

 

キタカミ(明石には時間が要る、1秒でも多く)

 

明石(……絶対に、みんなを守る)

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