元勇者提督   作:無し

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信頼

駆逐棲姫のアジト

駆逐棲姫

 

駆逐棲姫「実験記録…これは幾つでしたか」

 

護衛棲姫「76ニナリマス」

 

駆逐棲姫「どうも、ええと……そうだ、私の作成した黄昏の書の記録…これを黄昏の書・炎として記録、曙さんは適合の気を見せていましたねぇ…」

 

コンピューターにデータを打ち込む

 

駆逐棲姫「……まあ、一度拒絶反応を起こして気絶したし……完全に適合はしない可能性が高そう……っと?…成る程、強いストレスを与えると適合率が跳ね上がってる…アハッ!良いデータですねぇ!イムヤさんの死体は効きましたか!」

 

次のターゲットをそろそろ絞るか

誰を殺せばストレスになる?誰でもなりそうだが、死に慣れる前に最も強くショックを受ける相手を…いや

 

駆逐棲姫「1人だけ、あの人の1番仲のいい人をギリギリ生かし続けましょう、そしてこの人は死なないと確信した時に…アハッ♪」

 

なんで楽しいんだろう

 

駆逐棲姫「曙さんが悪いんですよぉ?レ級さんと同じ顔してるから…痛ぶって〜、殺して、レ級さんと同じにして……私の物にしてあげますからね♪」

 

護衛棲姫「…駆逐棲姫様、レ級ト言ウノハ…」

 

駆逐棲姫「んー?私の妹ですよ、大事な大事な妹です、だけど私と過ごすのは嫌みたいなのでー…壊しちゃいます♪壊して、壊して、精神を完全に壊して…人形みたいにして、飾るんですよ〜、飽きるまではお世話もしようかな♪」

 

飾る場所と、着せ替える服も用意しないと

でも、可能なら私を愛して欲しい、私に従って欲しい

レ級さんの頭脳なら私の補佐を任せても全く問題ない

 

駆逐棲姫「……っと?」

 

テレビをつける

英語でニュースが流れる

 

テレビ『艦娘による攻撃は苛烈さを増し、ニューヨークの基地で立て篭り状態に…』

 

駆逐棲姫「アメリカは楽しい事になってますねぇ…次の旅行で自由の女神像を見に行きましょうか!」

 

テレビ『建造物への攻撃により、文化財にも被害が発生している模様です』

 

駆逐棲姫「んっ!?……幸先悪いですねぇ…無事だと良いんですけど、自由の女神」

 

装甲空母鬼「駆逐棲姫様」

 

駆逐棲姫「はーい?」

 

装甲空母鬼「来客デス」

 

駆逐古鬼「…邪魔スルヨ」

 

駆逐棲姫「おやおやまあまあ、原初の深海棲艦の一柱様が何か御用ですか?」

 

駆逐古鬼「……単刀直入ニ行コウ…手ヲ組マナイカ?」

 

駆逐棲姫「その話の中身は?」

 

駆逐古鬼「…艦娘ハ私ニトッテ未知ノ存在ダ、私ハ…ソッチト違イ…」

 

駆逐棲姫「腹に何か抱えてる人と喋るのは不愉快ですねぇ、摘み出しなさい」

 

駆逐古鬼「マ、待ッテクレ!」

 

駆逐棲姫「私を制御できないからと言って止むを得ず協力の姿勢を取るのまでは良いんですけど…なんで私が貴方に協力すると思ってるんですか?」

 

駆逐古鬼「ソ、ソレハ…」

 

駆逐棲姫「同じ深海棲艦だとか思ってるなら…お笑い草ですねぇ、悔い改めて死んでも良いですよ、また来世でお会いしましょう?」

 

護衛の深海棲艦が辺りに現れる

 

駆逐古鬼「ッ…!」

 

駆逐棲姫「さっさと尻尾を巻いて逃げるなら命だけは勘弁してあげますよ?」

 

駆逐古鬼「…失礼スル…!」

 

駆逐棲姫「……うーん、いい気味ですねぇ!こちらに深海棲艦を殺し切る手段があるだけであんなにビクビクしちゃって!」

 

護衛棲姫「…駆逐棲姫様」

 

駆逐棲姫「装甲空母鬼にあの離島鎮守府周辺の島を確保させなさい、辺りに陣取られればウザいでしょうし、上陸を防ぐのは簡単でしょうから」

 

護衛棲姫「カシコマリマシタ」

 

駆逐棲姫「さーて、何して遊ぼうかなぁ…あ、不覚を取らないように私も強くなってみようかな!」

 

 

 

 

離島鎮守府

駆逐艦 春雨

 

春雨「……馬鹿ですね」

 

イムヤさんの死体を眺める

身体の隅々が白くなり始めており、このまま進めばそこらの深海棲艦の様になるのだろう

 

春雨「あなた一人で綾波さんを追う必要はなかった、あの人を信じて死ぬなんて…最も馬鹿馬鹿しい……ですが、綾波さんは…もはや、私たちをなんとも思ってないのでしょう、あの人は戻ってしまった、何にも縛られない…悪魔の様な…」

 

傷口は誰も浅い、しかし、数が多すぎる

徹底的にいたぶられ続けた上での失血多量

 

春雨(当然人間ならもう蘇生なんて無理、臓器の機能も失われて細胞が壊れ切っていてもおかしくない…だけど、深海棲艦なら話は変わる、全身がナノマシンで形成されているとも言える深海棲艦なら…)

 

正しいとか、正しくないの前に

 

春雨「…これが、命を一つ救う手段なのなら」

 

 

 

 

 

イムヤ「…っ……?」

 

春雨「目を、覚ましましたか」

 

器具を台に置き、近寄る

 

イムヤ「…ここは…」

 

春雨「離島鎮守府です、体に異常はありますか?イムヤさん」

 

イムヤ「…イムヤ?…私の名前?」

 

春雨「……え?」

 

心臓が強張る感触

 

イムヤ「何も、思い出せない…」

 

春雨(…脳の損傷が酷すぎた…と言うことか……つまり、遅すぎた…)

 

どうしようも無い、それだけは…

破損して失われた記憶を取り戻すことなんて決してできない…

例え取り戻しても…想いは、決して

 

イムヤ「…貴方は…」

 

春雨「…駆逐艦、春雨………貴方の友人です」

 

イムヤ「親友じゃなくて?」

 

春雨「は?」

 

イムヤ「…ダメかぁ!これなら親友って言ってくれるかと思ったのに!」

 

…つまり、この目の前の患者は

 

春雨「……記憶喪失のフリをしましたね、貴方」

 

手を伸ばし、顔面に指を食い込ませる

 

イムヤ「あだだだだっ!?ご、ごめん!悪気はなくて!」

 

春雨「…命を扱う場で軽率な嘘はやめていただきたいのですが」

 

イムヤ「軽率じゃ無いよ!私は春雨と仲良くなりたくて…」

 

春雨「……そういうのいいですから」

 

イムヤ「…それじゃ、私をどうやって生き返らせてくれたか…」

 

春雨「…生き返らせては、いません……今の貴方は完全な深海棲艦です、今までが深海棲艦でありながら人だったとしたら、今の貴方はただの深海棲艦です、衝動に呑まれかねない獣です」

 

イムヤ「……そっか」

 

春雨「許してください」

 

頭を下げる

 

春雨「無力な、私を……貴方を、助けられなかった…人としてのあなたを生かせなかった…」

 

イムヤ「…私は生きてるよ」

 

春雨「いいえ、死んでいます…私が殺した…」

 

イムヤ「…え?」

 

春雨「貴方の肉体はそもそも死んでいた、深海棲艦であり人として…死にながら生きていた…そして、肉体が破壊され…貴方の身体は死んだ、だから…私は、貴方を…深海棲艦にした」

 

…データドレイン

全てを改変する、恐ろしい力

 

春雨「…データドレインで、貴方を改変した…深海棲艦として…死にながら、生きる…いや、死に続ける様に…私は信じていましたが、貴方の記憶すらも…私が作り出した虚構かも知れない…私は、貴方を殺したんです、貴方が死に続けるように…貴方の身体に作り物の魂を入れたんです…」

 

自身の力では何もできないが故の、禁忌

決して生きることのない、死に続けるという過酷な運命を私の都合で決めつけて…勝手に科した

 

イムヤ「…そっか、うん、じゃあまだ戦えるんだ」

 

春雨「……あなたが戦線を去ることに誰も文句は言いません」

 

イムヤ「いや、戦う、だって…まだ綾波が帰ってきてないから」

 

春雨「…なんで?あなたは綾波さんに殺されたんですよね…!?」

 

イムヤ「……私の命は綾波に救われた、そして春雨にも救われた……春雨はもう綾波を諦めたの?」

 

春雨「それは…」

 

イムヤ「私は、いつかあの優しい綾波が帰ってくると思ってる、そうじゃなきゃやってられないよ!たとえ、どんなに痛めつけられても、酷い殺し方されたとしても…私の中の希望はそこにあるんだから…」

 

春雨「……」

 

イムヤ「…馬鹿だけどさ、友達の事、信じたいじゃん、取り戻したいじゃん!」

 

春雨「…とんでもない、馬鹿ですよ、それで命を捨てるつもりですか」

 

イムヤ「もう捨てる命も無くなった…でしょ?」

 

春雨「っ…」

 

イムヤ「…あ、ごめん、春雨に嫌味を言いたいわけじゃないの…でも、私の残りの時間、全部を目的のために使いたい、それを果たせたら死んでもいい…何も考えられなくなっても、何も感じられなくなっても…だって、私が春雨やみんなと少しでも過ごせたのはあの時綾波に助けられたからだから」

 

春雨「…今の綾波さんは誰より残虐ですよ」

 

イムヤ「でも、誰よりも心優しかった」

 

春雨「ここの皆さんは受け入れないと思います」

 

イムヤ「それなら…できるなら私が、無理なら…春雨、頼めない?」

 

春雨「何を」

 

イムヤ「居場所になってあげたい…なって欲しいの、でも…きっとみんななら受け止めてくれる」

 

春雨「……本当に信じてるんですか…!?」

 

イムヤ「私には…それしか無いんだ、綾波を元に戻すためならなんだってやる、どんな危険な事でもやるよ」

 

春雨「馬鹿な事言わないでください!貴方まで…」

 

イムヤ「…昔の春雨の事、聞いたよ」

 

春雨「…昔…?」

 

イムヤ「…多分、今の私と同じなんじゃ無いかな、つらいのに泣けなくて、こんなに誰かに想われてるのに…もう、逃げたくて仕方ない、目の前にある形の無い答えを掴もうと必死に手を伸ばしてる…ちゃんと前を見たら、私の為にこんなに泣いてくれる友達がいるのに」

 

春雨「…え?」

 

イムヤ「春雨は…泣くの似合わないね!」

 

そう言って笑い、イムヤさんはタオルを私の顔に押し付けた

いつから泣いていたのか、それすらもわからない

でも、イムヤさんをも失いたく無いという気持ちだけは強く…心に残っていた

 

春雨「うるさいです」

 

イムヤ「……私さ、どうなるんだろ…死に続ける、朽ち果てるの?それとも…永遠に今のまま?」

 

春雨「…永遠を彷徨い、感覚を失う事なく崩壊し、苦しむでしょうね」

 

イムヤ「つまり手足がボロボロになったらずっと痛いんだ…やだなぁ……傷は治るのかな」

 

春雨「治らないかも知れません」

 

イムヤ「…そっか」

 

イムヤさんの声は、軽くて、でも重たい覚悟が感じられて

 

春雨(…止めないと、この人は行ってしまうのか…それとも、ここにいてくれるのか)

 

私は、ずっと迷って…

 

イムヤ「…春雨」

 

春雨「はい…」

 

イムヤ「私さ、お腹減っちゃった、ご飯食べに行こうよ!みんなにひさしぶりって言いたいし」

 

春雨「……仕方ありませんね」

 

今だけは、この状況に甘えるしか無い

 

イムヤ「んー…くず切りが食べたいなぁ…乾燥春雨とかあるかな?」

 

春雨「やっぱり怒ってません?」

 

イムヤ「ぜーんぜん!」

 

弱い私は、まだ決断ができないのだから

 

 

 

 

 

工廠

工作艦 明石

 

明石「…あ、れ?」

 

キタカミ「どしたの」

 

明石「……艦娘は力を与えられて、深海棲艦は力を送る…」

 

キタカミ「私の出したなぞなぞだね」

 

明石「…深海棲艦は力を送るんですか?」

 

キタカミ「そうだよ、エネルギーっていうか…何かしらを送り込んで、艤装を稼働させる、逆に艦娘システムは艤装からナノマシンを送り込まれるわけだから……あれ?」

 

明石「…確か、ヘルバさんが調べたところによると艦娘システムを使い続けた場合深海棲艦に近づく………もしかして、深海棲艦はナノマシンを体内に放出して艤装を形成してる?」

 

キタカミ「…かもねぇ、だとしたら…艤装を壊し続ければデータドレイン無しでも人間に戻せる?」

 

明石「……そこまではわかりません、ですが春雨さんに伝えればきっと役立ててくれる……かもしれません」

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