元勇者提督 作:無し
The・World R:X
Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ
双剣士 カイト
カイト「…これから、僕はどうすればいいんだろう」
ヘルバ「その答えは簡単なものでは無いわ、だけど貴方にはきっと何らかの役割がある……その理由が、腕輪よ」
カイト「…腕輪、か…」
右手に視線を落とす
はっきりと…それを感じる
ここにあることもわかる
ヘルバ「ゲートハッキングを行えば…きっと敷波の行った先に行けるわ」
腕輪の仕様外の力、その一つ、ゲートハッキング
あらゆるプロテクトを無視してゲートを通り過ぎる力
カイト「…ログはある?」
ヘルバ「ええ、ここにあるわ」
ヘルバからデータログを受け取り、辺りを見渡す
カイト「…R:Xのマク・アヌは…少し暗すぎるね」
ヘルバ「気に入らなかった?」
カイト「うん、僕はあんまり好きじゃ無い」
ヘルバ「このタウンの制作にはあのグラフィッカーは関わってないそうよ」
カイト「……だから、かもね」
ゲートに視線を移す
この先に何があるのか、わからないけど
カイト「ゲートハッキング」
ヘルバ「幸運を祈ってるわ」
カイト「…うん」
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
カイト「ここは…R:1のマク・アヌ…!?」
かつて何度も見た光景、見間違えるわけがない…
しかし…R:1のデータをR:Xに移植するつもりだった…にしては、人通りが多過ぎる…
いや、というより、何かがおかしい
カイト「……僕の知ってるマク・アヌじゃない、ような…」
気にしていても、仕方ないか
カイト「…ここに敷波がいるとして…どこにいるんだろう?タウンを回ってみようかな」
マク・アヌを歩き回る
隅々迄探しても、敷波らしい人影はない
カイト「……まさか、エリアにいたら…エリアだとモンスターもいる、危険も大きい…急いで探さないと」
ログを眺める
BT「最近妙なキャラクターが多い気がしないか?」
ミミル「んー?司の事じゃなくて?」
BT「ベアが最近面倒を見ているというキャラクターもそうだが、さっきのエリアにいた学生服のキャラ」
カイト(学生服のキャラ…敷波だ!)
発言したプレイヤーを探す
カイト「あの!」
BT「…何だ?お前」
海斗(気が強そうな女性の呪紋使いと、ブラックローズそっくりの重剣士…)
カイト「今言ってた学生服のキャラってどこのエリアで見たの?」
ミミル「え?チートPCっぽかったけどアンタもしかして知り合い?」
カイト(確かに、あんな格好してたらそう見えるだろうけど…構ってはいられない)
カイト「いや、イベントの装飾品だよ」
BT「成る程?本当にそうなのか?」
カイト「…どうしてそんなに気になるの?」
BT「いや、本当にチートPCじゃないとしたらどんなアイテムを使ったのか…と思ってな」
カイト「…それは…」
BT「なんだ?言えないのか?」
カイト「…もう手に入る事はないよ」
BT「だとしてもだ」
カイト「……」
カイト(ダメだ、根負けしてくれそうにない…素直に事情を話したところでふざけてるとしか思われないだろうし…)
ミミル「一旦待った!」
BT「なんだ、ミミル」
ミミル「えーと、アンタ名前は?」
カイト「…カイト」
ミミル「あたしミミル、こっちBT、よろしくね」
カイト「よ、よろしく…」
ミミル「そのキャラのいたエリアは教えてあげる」
BT「おい、ミミル」
ミミル「BTは黙ってて!…但し、あたしらを連れて行く事!それが条件」
カイト(…敷波はチートPCではない、だけど…いや、ここは素直に従うしかないか…敷波が危ない)
カイト「わかったよ、パーティーに誘う」
BT「…意外と素直だな」
カイト「探してた子なんだ、急いで見つけなきゃいけない」
ミミル「…なんか訳あり?」
カイト「まあね」
2人をパーティーに招待し、ゲートへ向かう
ミミル「エリアは、Δサーバー、閉ざされし 孤高の 碧野だよ」
カイト(…初心者でも大丈夫なエリア…そこまで強い敵も出てないだろうさ、きっと無事なはず…)
BT「一つだけ聞きたいことがある」
カイト「…何」
BT「私たちが見たキャラは「助けてほしい」だの、「どこにいけばいいかわからない」だの、初心者のような言動をしていた」
カイト「…それが」
BT「限定クエストをこなせるほどの実力者とは思えなかったが、まさかお前の方がクリアしたのか?」
カイト「……今は話してる暇はないんだ」
Δサーバー 閉ざされし 孤高の 碧野
駆逐艦 敷波
敷波「…はぁ……ま、撒いたかな…あの辺な怪物…」
もうどれほどの時間が経ったのか、太陽はどこにあるのか、時間を測ることすらできない
わかった事は黄色く輝く魔法陣に近づいたら敵が出てくるという事、そしてこの世界の人は誰も助けてはくれない事
今のアタシは無力で、何もできない事
そして何より…
敷波「…やばい、喉渇いた…あれ?」
視界の端にちらりと映る池
敷波「…み、水だ…!」
池に近寄る
敷波(ここってゲームの中らしいけど…水、大丈夫なのかな…飲んでも…)
水面に手を伸ばす
敷波「あっ」
懐からペンがこぼれ落ちる
ネットに送られる前に事務仕事をしていたから持っていたのだが…
敷波(…底見えないし、拾えないか…諦めて水飲もう…)
水面が光り輝く
敷波「…なんか、変?」
水から勢いよく何かが飛び出す
敷波「うわっ!?」
ムッシュ「貴方が落としたのは、金の斧ですかァ?それともこの、銀の斧ですかァ?」
敷波「き、キモっ…!」
水滴のような形なのにアタシよりも大きいし、たらこ唇で目と鼻と眉毛まである…水の精霊?がアタシの前に飛び出した
ムッシュ「…もしかしてェ…落としてなァい?」
敷波(…金の斧と銀の斧って美しい女神様が出てくるんじゃないの?……とりあえず…)
敷波「どっちも違う、けど…」
ムッシュ「えぇ!?どちらも違う?…じゃあ、これかなァ?」
何かが泉から飛び出す
ムッシュ「また会いましょ。さよならァ…」
遥か上空へと鼻水型の精霊は消えていった
敷波「さ、さよなら…てか…この池あんなのがいたんだ……飲みたくないな…ん?」
手元に何かが当たる
敷波「…武器?」
ただの直剣、ペンがこれになったという事か
敷波(…ま、まあ…使った事ないけど、ないよりマシ!)
剣を拾い上げる
敷波「…ステージクリアすれば、帰れるかな…」
遠くに見える洞穴の入り口を見つめる
双剣士 カイト
カイト「…このエリア?」
ミミル「そ、ここに居たよ」
BT「といっても20分以上前だ、エリアを出ていても責任は取らない」
カイト(…敷波はこの世界のことを何も分かってない、急いで合流しないと…)
ミミル「あ!居た!」
ミミルが指した先にダンジョンへと進む敷波
カイト「敷波!……聞こえてないか…!」
BT「敷波?アイツの名前か?」
ミミル「ま、それより追っかけようよ…っと?」
遠くの魔法陣が何故か反応し、モンスターが飛び出す
カイト(この距離じゃエンカウントはしないはずなのに…!僕達がこの世界にいるせいで異変が起きてるのか…?)
カイト「やるしかない…!」
ミミル「ま、ここに出るのは雑魚ばっかだし!すぐ終わらせよ!」
BT「…まあ、いいか」
カイト「…結局、魔法陣全部潰す事になるなんて…」
ミミル「ついてないねぇ…だいぶんロスしちゃった」
カイト(敷波はダンジョンに潜ってる、ならそこで捕まえられるはず…!)
ダンジョンへと踏み込む
ミミル「…お?妖精のオーブ使ったんだ」
カイト「時間が惜しいから…」
ダンジョンのマップを埋めるアイテム
これの通りに進み、エンカウントしていない魔法陣があればそこは敷波は進んでいない
BT「おい」
ミミル「宝箱…空いてるねぇ、オブジェクトも壊してる」
カイト(…加速アイテムで逃げ切ったりは…いや、してない前提で追いかけよう)
カイト「!…ここ、敵が出る部屋なのに…倒せたんだ」
カイト(…なら、少し安心かもしれない…)
ミミル「先、急ごう?」
カイト「わかってる」
結局、最下層の最深部まで敷波は見つからなかった
カイト(…まさか、途中で追い越した?)
最深部の扉を開く
カイト「…居た!敷波!」
敷波「へ?」
確かに敷波だった
一瞬こっちへと振り返った敷波は…壁に溶けるように消えていった
カイト「…い、今、何が…」
BT「…壁に入ったように見えたが」
ミミル「そう?あたしのトコからじゃよく見えなかった…」
敷波が消えた壁に近づき、探る
カイト(…敷波に、一体何が…)
秘密の部屋
駆逐艦 敷波
敷波「…今、呼ばれた?」
『気の所為、でしょう…それより、ここを気に入ってくれましたか?』
敷波「……えっと…」
アタシはダンジョンを進んでる途中で不思議な声に捕まった
誰にも助けてもらえず可哀想なアタシに居場所をくれるって
そして連れてこられたのはココ、いばらの森に周囲を囲まれた灰暗い空の世界
何もなくて、静かな世界
敷波(…陰鬱な所だけど…誰もいない…)
敷波「…それより、誰なの?なんでアタシをここに…」
『…私はこの世界を統べる意志、この世界をより良い方向へと進めるモノ』
敷波(…よくわかんないな…)
『…貴方に自由になる力を授けましょう、好きな場所へ行ける力を、何者からも貴方を守る守護者を授けましょう』
敷波「別にいい……いや…その力があればアタシはリアルに帰れる?」
『…それはできません』
敷波「じゃあ要らない…」
『…貴方が求めるのなら、いつでもその力は貴方の元に』
敷波「…なんだかなぁ…」
まるでアタシは籠の鳥の気分…なんて
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
双剣士 カイト
BT「残念だったな」
カイト「…まあ」
ミミル「もうちょい早ければなー!残念」
BT「…幾つか確認したいんだが?」
カイト「何」
BT「さっきの敷波というキャラ本当にチートPCではないのか?」
カイト「…ずっとそうだって言ってるじゃないか…!」
ミミル「BT、いい加減やめときなよ…」
BT「気になるモノでな、壁に消えられては疑いたくもなる」
カイト「……」
ミミル「カイト、あんまり気を悪くしないでね、BTも悪気があるわけじゃないんだ」
カイト「……気にしてないよ、大丈夫」
パーティーの編成を解除し、タウンの奥に歩く
今は1人になりたかった
重槍士 青葉
青葉「…あれ?」
マク・アヌの橋の奥にちらりと見えたオレンジ色の影
青葉(司令官…?いや、そんな訳ないか…)
カオスゲートに向き直り、サーバーを選択する
青葉「今日の目標は新天地の探索…!……じゃなくて、未帰還者を元に戻す方法…なんだけどなぁ…」
何をしたらいいのか、全く想像すらつかないのだから困ったモノだ
Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック
青葉「……空気の綺麗そうな所ですね…」
感じる事はできないけれど
青葉「…ん?」
足元にまとわりつく、仔犬ほどの小さな動物
プチグソ「ぶひ?」
青葉「…ブサかわ…」
馬と豚のハイブリッドのような小さな四足歩行生物
グランディとも違う…
青葉(…野良の子…なのかな?)
プチグソを軽く撫でる
青葉「……未帰還者、助ける方法知ってたりする?」
プチグソ「ハラヘッタブヒ!」
青葉「しゃ、しゃべった!?……って、そっか、グランディも喋るし似たようなものかな…ごめんね、何も持ってないよ」
プチグソ「ぷぃぃ…」
プチグソはとぼとぼとタウンの奥へと歩く
青葉(うーん…可哀想…かな、何か食べられる物、今度までに探しておこうかな)