元勇者提督   作:無し

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evolution

離島鎮守府 執務室

提督代理 朧

 

朧「…海底にケーブルを引くにもこの距離じゃ無理だもんね…」

 

レ級「何より最近攻撃が苛烈になり過ぎ、私たちもろくに動けないし簡単に全ての予定が壊される…輸送船を守ることすらままならないわ」

 

朧「簡易的な電波塔は?」

 

レ級「んなもん1時間待たずに壊されるに決まってる、見張りを置くにも本土との距離がどれだけあると思ってんのよ」

 

朧「…全部ダメ、か…曙の方は春雨さんにもう少し様子を見ろって言われたし…」

 

レ級「アンテナを作るしかないんじゃないの?どでかい奴」

 

朧「……実はそれも本土の方から打診されてるんだけど、技術者はみんなこっちに来るの拒否してるらしくて…明石さん頼るしか無いけど、最近オーバーワーク気味だし…」

 

レ級「…材料を運ぶ船に説明書をつけさせなさい、私が作るから」

 

朧「できるの?」

 

レ級「説明書が正確なら誰でもできるわ」

 

朧(誰でもできないからこうなってるんだけど…)

 

朧「それと…リミッター、朝潮や漣達がモニターになってるみたいだけど、機能の低下はそこまで顕著なものじゃない、技術で充分補えるみたいだよ」

 

レ級「そうじゃなかったら困るわ」

 

朧「…曙」

 

レ級「何」

 

朧「曙も、オーバーワーク気味…って言うか、オーバーワークすぎ、休んで」

 

レ級「私を下げることをは提督の意思に逆らうことよ」

 

朧「真逆だよ…提督は曙1人に無理をさせたくて「みんなを守れ」なんて言ったんじゃない」

 

レ級「私が戦わなければみんな死ぬわ」

 

朧「そんな事ない、みんな強くなってるんだ、曙が想像してるよりずっと」

 

レ級「……じゃあ、アンタらに駆逐棲姫が止められるの?私ですら手を焼くアイツを誰が殺せるのよ…!」

 

朧「…それは……今重要なことじゃない」

 

レ級「たった一回の選択ミスで向こうはこちらを全滅させられる、それを分かった上で話してるんでしょうね?朧」

 

朧「……」

 

確かに、最高戦力を下げたとして…その隙を突かれて補給物資が一度届かなければ?

士気は下がる、アタシは非難され、誰も従わなくなるかもしれない

 

だとしても

 

朧「アタシは今は提督代理、アタシの命令が優先」

 

レ級「深海棲艦にオーバーワークなんて言葉存在しない」

 

朧「曙は人間だよ…!」

 

レ級「どこが、誰がどう見てもバケモノでしょうが」

 

朧「私の目には曙は曙として映ってる、アタシには脆いただの人間に見える」

 

レ級「ならアンタは何でそれに頼ってんのよ!」

 

朧「…アタシが弱いからだよ!そんなの分かってる!本当ならこんな戦い誰もしたくないんだ!だけどやらなきゃいけない!それはみんな知ってるんだよ!曙がみんなを戦いから遠ざけようとしてるのもわかってる!」

 

レ級「私にそんな意図はない、単純にアンタらが弱いだけでしょうが!」

 

朧「……曙、やっぱりアタシ達は逆なんだよ、もう曙は戦わなくて良いんだよ」

 

レ級「…アンタが戦っても碌な戦力にならないのに?」

 

朧「アタシがやって来たことは曙もよく分かってるでしょ…?ねぇ、曙…」

 

レ級「……足りないから、止めてるんでしょうが…」

 

朧「輸送船の護衛にはアタシが行く、メンバーは川内さん達と阿武隈さん、不知火さん」

 

レ級「空は」

 

朧「艦載機なんてどれだけ使っても全部落ちるよ…書類を用意して届ける手配をしてくるから」

 

レ級「本気なのね、後悔するわよ」

 

朧「…覚悟はしてるよ」

 

 

 

 

波止場

 

川内「へぇ、無茶するんだね」

 

朧「…曙だって、元々は戦うのが嫌いだったんです、戦うしかなかったからこうなっただけで」

 

神通「それでああなれたのなら…恐ろしいことですね」

 

那珂「でも、なんで朧ちゃんはそんなにムキになってるの?」

 

朧「……1人でみんなの分まで戦っても何も解決しない、曙が苦しむだけだって思ったから…アタシはアタシのやり方でこの戦いに臨む…」

 

阿武隈「確かに、曙さんに頼り過ぎかもしれませんね…」

 

不知火「しかし、あの人無しにはここは成立していません」

 

朧「…わかってます、でもアタシは…アタシ自身が強くなることしかできないから」

 

阿武隈「……そろそろ出ましょう、日暮れです」

 

朧「予定通り、闇に紛れて低速で向かいます」

 

川内「神通、警戒は任せたよ」

 

神通「はい、姉さん」

 

那珂「よーし、行こう!」

 

 

 

 

 

海上

 

朧(…あと3時間で到着予定…か)

 

神通「前方に哨戒部隊と思われる深海棲艦発見」

 

朧「…避けましょう」

 

綾波に位置がバレて輸送作戦を妨害されることだけは避けたい

 

川内「……多分、ダメな気がするなぁ、これ」

 

阿武隈「…私も、ここまでに複数の哨戒部隊を発見、戦闘を避けて来ましたが…まるで此方がこう動くのを読んでいるようです」

 

朧(…だとしたら、綾波は…どう来る?アタシ達を弄ぶと考えたら……わからない、わからないけど…)

 

目の奥に熱が籠る

 

朧「…展開、輪形陣に、阿武隈さんと不知火さんで左右に広がって川内さんが前に、神通さんは後方警戒を」

 

川内「…朧?」

 

神通「どうしたんですか」

 

朧「…お願いします」

 

朧(綾波がアタシに想像なんてできない作戦を持ってるなら、綾波のことなんて何も分からなくて当然なんだから…だから、アタシが取るべき行動は…!)

 

朧「那珂さん、お願いします」

 

海面を二度靴で蹴る

 

那珂「…オッケー…せーの!」

 

2人同時に海面を強く殴りつける

 

川内「…何やって…?」

 

神通「……居ます、私と阿武隈さんの間!」

 

阿武隈「爆雷投下!」

 

爆雷が炸裂する

 

駆逐棲姫「アハっ!アハハハハハ!まさか即席ソナーとは…やりますねぇ」

 

朧「綾波…!やっぱりついて来てたんだ…」

 

駆逐棲姫「ええ、しかし、何で気づいたんですか?」

 

朧「……わからない、だけど…」

 

熱が、強く、脳に浸透するような

 

朧「…いや、そんなことどうでも良いんだ…ここで、倒す」

 

駆逐棲姫(…あの目の…ああ、なるほど…惹かれ合いましたか)

 

駆逐棲姫「なら、私の新しい力をお見せしましょうか」

 

軽く水面を飛んだ綾波に鋼鉄の脚が現れる

 

川内(…あの義足、仕込みだ)

 

朧「神通さんは周囲警戒継続!阿武隈さんと不知火さんはまだ待機!前衛はアタシが行きます!」

 

踏み込み、綾波に詰め寄る

 

駆逐棲姫(…砲戦かと思ってましたが、頭が弱い人の考えることは分かりませんねぇ…)

 

朧(大丈夫、秘策はあるんだ…やれる)

 

綾波に詰め寄り、格闘をいなさせる

 

駆逐棲姫(…何かをしようとしているのはわかりますが…)

 

朧(…十分距離は詰められた)

 

拳を引くフリをして爆雷をつなぐ紐を指に引っ掛ける

 

駆逐棲姫(爆雷?しかも、かなりの数…成る程、捕まえて爆破か、エグい真似を…)

 

朧「逃がさない!」

 

縄を鞭のようにしならせ、綾波を打つ

綾波を中心に縄が絡みつく

 

綾波(しかし、この爆雷は加圧で炸裂するタイプ…?)

 

両手に主砲を持ち、向ける

 

朧「焼夷弾!」

 

切り詰められた2つの主砲から四発の焼夷弾が綾波を捉える

 

駆逐棲姫(この距離で…自爆か)

 

撃ち込んだと同時に後方へと強く引かれる

 

那珂「イケてる!?」

 

朧「ジャスト!」

 

那珂さんがアタシをワイヤで回収することでアタシは継続して砲撃に集中できる…

 

朧(次は榴弾8発、その次が煙幕弾を右に2発込めてるから左の焼夷弾で焼き払う!)

 

綾波が榴弾と爆雷の炸裂で粉微塵になるまで撃ち込む

 

駆逐棲姫(…曙さんもそうですが、戦闘センスは素晴らしい…今の視線の動き、手首の返し方、薬莢の排出も通常よりスムーズ…私の思ってた通りのことをやってのける…しかし、あなたは私が気づかせたことを実践してるに過ぎない…)

 

朧「焼き払う…!」

 

焼夷弾が飛び散り、綾波のカケラを焼く

 

駆逐棲姫(…仕方ない、再生させるか)

 

朧(きっと、アタシが想像もできないことをやる、ありえないってことをやる…だから…いや、わかった!)

 

手首に視線を送る

 

右手の主砲を捨て、上空へと右手を突き出す

中途半端に再生した綾波が上空から降ってくる

 

駆逐棲姫(読まれた…!?違う、匂いか……しかし、主砲を持ってない…?)

 

朧「…データドレイン!!」

 

眩い閃光とともに幾何学模様の腕輪が展開する

 

駆逐棲姫「…成る程」

 

電気が弾けるような音が響き、綾波が海面に落ちる

 

駆逐棲姫「思ったよりやりますねぇ、あー…気持ち悪…」

 

海面に寝そべったまま、だるそうに駆逐棲姫の姿のまま綾波が喋る

 

川内「…データドレインを受けて、何ともない…?」

 

神通「いや…弱らせられていなかった…」

 

朧「…そん、な…」

 

駆逐棲姫「うーん…朧さん、あなたへの見る目、変わりましたよ…素体にも向かないし、私をこんなに不愉快な状態にするし…」

 

綾波が状態を起こし、此方を向く

 

駆逐棲姫「あなたは目の上のたんこぶだ、あなたは妹にしたくない…」

 

綾波が立ち上がる

 

神通(…仕掛けるか…背後をとってる、今なら…)

 

川内(神通はやる気だし、こっちで意識を惹いて…!)

 

川内さんが綾波を砲撃する

 

駆逐棲姫「…まだ再生しきってないから痛むところは痛むんですよ、わざわざ痛覚をつけて自戒してるんですから邪魔しないでくれますか…神通さん」

 

背後から忍び寄る神通さんを回し蹴りで吹き飛ばす

 

神通「が……ぁ…!」

 

駆逐棲姫「…朧さん、あなたは本当に可愛くない人だ、痛めつけたいとか、苦しめたいって感情ばかり湧くのは何ででしょうか」

 

綾波の視線に貫かれ、膝が崩れ、海面に尻餅をつく

立ち上がることができない

 

朧(…なんで、体が動かなく…)

 

阿武隈「動かないで!」

 

不知火「撃ちますよ」

 

駆逐棲姫「…どうぞ?いくら私を殺しても再生する、それも一瞬で…無駄だと思いません?」

 

川内「那珂!」

 

那珂「わかってる!」

 

川内さんと那珂さんが2人がかりで近接戦闘を仕掛け、その隙間を阿武隈さんと不知火さんが狙い撃つ

 

駆逐棲姫(…誤射ひとつない、ありえない正確な砲撃…そして射線を気にしないこの大胆な格闘………児戯でしかない…ああ、朧さんは決して弱くない、潜在能力はまだまだあるのだろうが…何でこんなに気に食わないのか)

 

川内「…ぁ、が…」

 

那珂「川内姉さ……え…」

 

川内さんがまず崩れ落ちる

そして那珂さんも綾波の餌食になる

 

駆逐棲姫「そういえばこのメンバーでは見せてませんでしたっけ、朧さん以外」

 

阿武隈さんと不知火さんも、いつのまにかうつ伏せに倒れる

 

朧(…前に横須賀に行った時に見せた…島風と戦った時の超スピード…?)

 

駆逐棲姫「私はあなた達よりずっと強いそれを…朧さんも教えてあげればよかったのに」

 

朧「…なんで、データドレインが効かないの…」

 

駆逐棲姫「……ハァ…あなた、本当に馬鹿ですよね…私が作ったものが私に効くわけないのに…何で常識ないんですか?あなたが気に食わないのはそこが理由なのかなぁ…」

 

朧「今、何をしたの…」

 

駆逐棲姫「4名同時に仕留めた…それだけですよ?高速移動しただけです、あなた達もやろうとすればできますよ?身体が壊れちゃいますし、意識がスピードについていけませんけど」

 

朧「どうして…」

 

駆逐棲姫「なんで?何?どうして?……ほんっとウッザイなぁ…良いや、あなたは…っと」

 

綾波の右胸から槍が飛び出す

 

神通「…このまま…!」

 

槍が綾波の身体を縦に裂く

 

駆逐棲姫「…だから、痛いんですって!」

 

神通「ぁがっ…!」

 

綾波が一瞬で身体を再生し、神通さんに前蹴りを見舞う

 

神通「…こ、これは…動けない…!」

 

駆逐棲姫「…そうだ!良いものを見せてあげますよ、ほら」

 

綾波が脚を上げると足先が腹部に突き刺さったまま神通さんも持ち上がる

 

神通「…吸い込まれて…!」

 

駆逐棲姫「そうです、今この義足の内部は辺りの空気を取り込んでいます…ところで、空気砲ってありますよね?圧縮した空気を放ったらどうなるんでしょうか」

 

朧「…や、やめ…」

 

駆逐棲姫「やめな〜い」

 

神通「…あ……」

 

神通さんの腹部が弾け飛ぶ

真っ二つになり、海面に落ちる

 

朧「…そんな…」

 

駆逐棲姫「まだ終わってませんよ」

 

綾波がグローブのスイッチを操作する

 

朧(…この音、水を吸ってる…?ま、まさか…)

 

駆逐棲姫「おっ!気づきましたか〜、ご明察、水圧のカッターも作れるんですよ!」

 

綾波が空を蹴るような素振りを見せる

右手の指先がぐちゃぐちゃになる

 

朧「ぁ…ああ…!」

 

駆逐棲姫「痛いですねぇ…!もっと痛くしてあげますよ…!あなただけは特に痛ぶって殺すって……決めちゃいましたから」

 

こんなに痛いのに、もう動けない

身体が氷漬けにされたみたいに、立てない、指一つ動かない

 

朧(…まだ、終われないのに…アタシが失敗しちゃいけないのに…)

 

駆逐棲姫「あ?」

 

綾波の頭が海面を転がる

 

神通「……どうすれば、あなたは死んでくれるのか…」

 

朧「…神通、さん…?」

 

先ほど弾け飛んだ部位の衣服は無い、だが傷一つない神通さんが綾波の身体を蹴り飛ばす

 

神通「朧さん、手を出して」

 

神通さんが手を翳す

 

神通「…3分もあれば元に戻ります、多少傷跡は残るかもしれませんが…」

 

朧「え…?」

 

神通「……この力が、今のこの世界を蝕む外道の力であろうと…私は使う、そう決めました」

 

朧「そ、それ…」

 

神通さんの左肩から黒い泡が吹き出す

 

駆逐棲姫「…成る程?あなたは折角作り直した世界を壊そうと言うのですか」

 

神通「壊すほど暴れるつもりはありません…少し、時間を稼ぐだけです」

 

朧「えっ」

 

襟を掴まれ、後方へと引っ張られる

 

川内「急ぐよ!」

 

那珂「神通姉さん任せたからね!」

 

朧「待っ…」

 

川内「神通なら、大丈夫だから!」 

 

神通さんの左肩の泡が黒い異形の腕を形成する、そしてその腕に赤い亀裂が走る

 

神通「忘れ物です」

 

その腕が阿武隈さんと不知火さんを引っ掛け此方へと投げる

 

川内「よし!撤退!」

 

那珂「目的地まで撤退!」

 

川内さんと那珂さんが2人を背負い、進む

 

 

 

軽巡洋艦 神通

 

神通「妨害しなくて良いんですか」

 

駆逐棲姫「…うーん…貴方、碑文の力を使いましたね?AIDAだけじゃなく」

 

神通「…それが何か、わたしは増殖で失われた箇所を再生しただけです」

 

駆逐棲姫(…私が警戒してるのは本物のデータドレインなんですが…まあ気づいてないなら良いや)

 

駆逐棲姫「御褒美に、良いものを見せてあげましょうか!」

 

神通「…な…!」

 

駆逐棲姫の義足が外れ、生身の脚が生える

それだけでは無い、帽子や衣服にも変化…しかし、特筆するべきは腰のあたりから伸びる巨大な黒い腕

 

駆逐水鬼「駆逐棲姫改め…駆逐水鬼、と言ったところかな」

 

神通(…これは…何が起きて…)

 

駆逐水鬼「当然、できることも増えてるし、力の出力も上がってるので強いと思いますよ?ああ、あとは…」

 

外れた義足が駆逐水鬼の脚にまとわりつく

 

駆逐水鬼「これでいいかな」

 

神通(……強くなったとして、どれほど…)

 

駆逐水鬼「アハッ」

 

視界から駆逐水鬼が消える

 

神通「!?…どこに…」

 

駆逐水鬼「後ろ、ですよ」

 

振り向きざまにガードの姿勢を取る

 

駆逐水鬼「かる〜くパンチ」

 

神通「ぁ……」

 

ガードした腕だけじゃ無い、肩やAIDAの腕すらも砕けるような感覚…

 

駆逐水鬼「…まあ、軽く離島鎮守府までフライトしてもらいましょうか」

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