元勇者提督   作:無し

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元勇者提督//悪性変異 vol.2
進め


雷巡 北上

 

「うん、私は演習以外だと水雷戦隊を率いることばかりだから」

 

「わたしも水雷戦隊として戦いますが、北上さんのように自分以外は駆逐艦という構成ではありませんね…」

 

神通とゆっくり話す

きっと今の私に必要なことだ

 

「七駆のメンツはよくついてきてくれてるよ」

 

「すごいですね、でも、やっぱりあの戦い方だと」

 

「うん、こっちを恐れない、被弾上等の相手には弱いね」

 

「なにより演習で見せた攻めの姿勢が実戦で活かせないなら意味はないです」

 

「うーん…命懸けになるとどうしてもね」

 

「怖いんですか?」

 

「うん、私じゃなくて、他の子が沈むことが」

 

「……なるほど、気持ちはわかりますけど」

 

「わかってるよ、確かにその気持ちは要る…だけど私は誰も沈ませない」

 

「ついこの間心中覚悟の戦いをしたところなのに?」

 

「…うちは、提督が最後の砦なんだよ、少なくともずっといる面々は絶対に」

 

「心の支えですか」

 

「そういう事、だから失えば…わかるよね」

 

「……私も、那珂ちゃんと姉さんがいなければ…戦えません」

 

「さて、暗い話はやめて…うん、この前の戦闘からずっと思ってるんだ」

 

「このままじゃダメ、ですか」

 

「それ以上に、私は弱い」

 

「………そんなことを言ったら殆どの方が…」

 

「違うんだ、単純に火力不足、雷撃も効かないしね」

 

「…あぁ、例の」

 

「そう、紋章砲、アレの威力はすごいよ、私の魚雷が霞むほどに」

 

「でも北上さんは主砲をメインに戦っていますよね?」

 

「…魚雷より使ってるね、確実に一撃で仕留められるから」

 

「…ありえない話です」

 

「でも現実、神通以外は仕留めた」

 

「…じゃあ、もう通用しません」

 

「それはよく知ってる」

 

「なんで重雷装の強みを捨てるんですか?」

 

「…一航戦は強いよね、正確に艦載機で敵を仕留めるし」

 

「駆逐艦も場合によっては大活躍をします」

 

「もちろん軽巡、重巡、戦艦、全部凄いんだ、私は…その枠組みに入れない」

 

「なぜですか?」

 

「私の戦い方は演習だから通じる、奇抜な敵を掻き乱す戦い、そして私だけが体を張るから…そう、私が全部引き受けられるから…でも、実戦は違う、まず魚雷が効かない、浮いてるし」

 

「主砲も狙う弱点がないので効きませんでしたね」

 

「そう、つまりは役に立たない」

 

「………」

 

「卑屈なこと言うけど、私の強みは通じないんだよ、野球場でサッカーするんじゃないんだから」

 

「…だからインファイトを?」

 

「そうだね、できたらゼロ距離から魚雷をいくらでも叩き込めるかも、でも…それも結局意味はないよ、雷巡の強みって先制雷撃で味方の負担を減らすことなんだから」

 

「……」

 

「色々違うところはあるけど、空母の代わりなんだよね、で、それが果たせない………今の私を見たらなんて言うかなぁ…」

 

「少なくとも今のままではダメだ、と言われるでしょうね…」

 

「いや、思ってる以上に甘いからねぇ…」

 

「そうではなく、貴方がこのまま腐ってるのは、見てるのに耐え難いと思います」

 

「腐ってるかぁ…そんなつもりないんだけどね」

 

「やれることを全てやりましょう、自分じゃできないことは周りに頼りましょう、自分でやるために」

 

「矛盾してない?」

 

「していません、例えば新鋭装備を貰うとか、自分用の何かを開発してもらうとか」

 

「魚雷発射管に噴射機構をつけて、パージした後戻ってくるようにはしたんだけどね」

 

「なるほど、だから頻繁に外して戦うんですね」

 

「そう、それに戻ってくるなら応用が効くしね」

 

「噴射機構は緊急回避のためにあっても良さそうですね…」

 

「あー、やめたほうがいいよ、私が試しにやった時、骨が折れそうになったし」

 

「ジャンプから、とかはできないんですか?」

 

「…フル装備でジャンプは私には無理だね、神通を誤解してた気がする、実は筋肉で全部できてたりする?」

 

「流石に怒りますよ…?」

 

「こわいこわい、じゃあ私は逃げるわ」

 

「それではまた」

 

 

 

 

 

「で、立ち聞きは良くないんじゃない?翔鶴」

 

「誰か、までわかるんですね」

 

「…なんでだろうね?」

 

「北上さん、私は、あなたより無力です」

 

「そうかもね、特殊な力はないし、単純に私とやり合えば傷一つつけられない」

 

「……いいえ、腕一本はもらいます」

 

「おお、こわっなんでそんな殺気だってんの」

 

「…………すいません、私自身に自信がないのに、もっと不安そうにしている北上さんを見ていると…」

 

「………どうしたらいいと思う?」

 

「その、急降下爆撃の逆をやってみたらどうでしょう」

 

「あー、ごめん、私には艦載機積めないよ」

 

「いえ、魚雷を使うんです、魚雷を深く沈めて、あるタイミングで急浮上させるんです、充分な推進力が必要ですがこれなら多少浮かんでる敵にも当たるはずです、タイミングはとても難しいはずですが」

 

「…………なるほど、その発想はなかったな、明石に頼んでくる、ありがとね翔鶴!」

 

「北上さん」

 

「ん?何?」

 

「……私は北上さんに感謝してます、あなたのおかげで、こうやってまた先輩や皆んなと肩を並べられる、でも、何で私のことをはぐらかしたままなんですか?」

 

「………沈んだのはあんた1人じゃないんだよ、翔鶴…誰にも、敵を沈めることを迷わせちゃいけない…助けられる?違う、たまたま助けられただけ、特殊な力が明日もあるなんて、明日も私たちの艦としての力があるなんて、全部保証はないんだよ」

 

「そうですか…」

 

「深海棲艦との交戦の際、翔鶴は海からデータドレインで引き摺り出されたってことにしてあるけど、もし、みんなが敵として戦った深海棲艦に仲間が紛れてると知ったら?」

 

「もし、知って仕舞えば…私も弓を引くことを…躊躇います」

 

「私たちも、人から見れば化け物だけど…心があるんだよ、だから、知っちゃいけない」

 

「………」

 

「誰にも言わないでね」

 

 

 

 

「なんで…そんなに、強いんですか…?」

 

強くないよ、私は、今にも崩れそうなんだ

 

 

 

 

 

 

元勇者提督//悪性変異 vol.2

 

 

 

離島鎮守府

提督代理 明石

 

「え?うーん、できない話ではないですけど…コストが…」

 

「普通の魚雷でいいんだよ、これなら雷跡も残らないし」

 

「……よし、とりあえず取り掛かってみます」

 

強敵との戦いのあと

私たちはいつ同じような敵が来るかもわからない

そして次は誰の手も借りられないかもしれない

そう考えて十分な蓄えと、練度の向上を目指している

 

ここの扱いも変わった

新人教育部だったここは、前線基地として姿を変えた

今まで隠していた発展した姿をそのまま報告できるため、何倍も楽だし、執務も減った

 

工廠に籠ることも増え、自分らしさを取り戻せた気がした

でも、まだ足りない

 

「あ、北上さん、那珂さんたちの搬送の際の護衛お願いしていいですか?」

 

「……あ、やっと帰るんだ」

 

もうあれから2ヶ月になる

毎日の戦いも随分と楽なものになったがそれでも…

 

まだ、怖い

 

あの時胸を貫かれた感覚は、いまだに残っているのに

私には何もない

 

アレはタイミングからしてデータドレインなのではないか?

そう考えるようになった

だけど私に変化はない

 

提督は私に何も残さなかったのか

落胆した

 

でも、ちゃんと進まなきゃ

 

 

 

 

 

呉鎮守府

 

「大井っちまたね」

 

「北上さんもお元気で…」

 

「ほら、早く行きなよ、私より会いたい相手がいるんじゃないの?」

 

「あ、いません!そんな人!」

 

「あれ?久しぶりに会うから楽しみにしてたんじゃないの?」

 

「誰があんなの…!」

 

「いや、流石に球磨姉達をあんなの呼ばわりはまずいって…」

 

「え?…へ?」

 

「………え?」

 

「……………成る程、確かにその通りですね、今後改めます、それでは」

 

「……びっっくりした…本当に他に誰かいるのかと思ったよ」

 

 

 

 

離島鎮守府

 

「え?なにこれ」

 

「あなた用のパソコンです」

 

「なんで私に?」

 

「データの解析が必要になったからです、夕張さんの力を借りたいんです」

 

「……OK、ハッカーの力見せてあげる、ただ…期待しないでね、アレには手も足も出ないから」

 

「私たちが求めてるのはリアルデジタライズ学、それとデジタルリアライズに関してです…」

 

「……データ兵器」

 

「そう、つまり、向こうがあちらの世界の化け物なら、私たちはそれに対抗するために武器をアップデートする必要があります」

 

「分かった、私にできることならなんでもやる…」

 

「じゃあ、まずは………」

 

 

 

 

 

世界が回っている

日にちが経ち、進んで行く

平和を望んで

しかし、戦いは苛烈さを増していく

 

『この世に平穏が訪れた時など一度もない』

 

 

 

???

 

「こんにちは」

 

「…貴女は?」

 

「キミに逢いにきた、それだけだよ」

 

「……ここには誰も来ないと思ってました…私と、この子以外」

 

「…そっか、でもこの子はここを出ていくんだ」

 

「…何故?」

 

「此処は、ゆりかごだから、眠っている間はここにいられる…だけど、目を覚ましたら出ていかなければならないんだ…」

 

「貴女も夢を?」

 

「……僕は…そうだね、すごく長い夢を見てた、だけど、その夢も楽しいことばかりじゃなかったんだ、辛いこともあったから」

 

「……」

 

「現実は辛いものになるけど…キミも、僕も、そしてこの子も戻らなきゃいけない」

 

「…この子の名前は…」

 

「君は、わかるはずだよ」

 

「…ア……ウラ…?」

 

「また、目が覚めたら会おう」

 

「……また」

 

そう、また

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

 

「……そう、私の名は…アウラ」

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