元勇者提督   作:無し

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エンカウント

The・World R:1

Σサーバー 空中都市 フォート・アウフ

双剣士 カイト

 

カイト「…このタウン、もう暫くしたら制限区画になるんだっけ…敷波が何処のタウンから行けるエリアにいるのかも分からないし、レベルをできるだけあげて何があっても対処できるようにしなくちゃ」

 

幸運というべきなのか、この世界はステータスさえ上がれば多少の痛みは耐えることができる

ゲームの世界なのだからゲームらしくて当然だが…

 

もうこの世界に来てどれほどの日時が経ったのか、それすらも把握できない

だけど、ここが僕の知っているThe・Worldなのかも正直怪しいところだ

 

BT、ミミル、この2人を僕は知っていた

黄昏事件を終わらせた後、ネットスラムで集まって勝利を祝った事もある、だけど向こうは僕を知らなかった

 

つまり、この世界は過去の世界である可能性が浮上した…が、それもすぐに不自然な点が見つかった

 

2人の使うスキルはどれもR:2の物だった

R:1のスキルを使う様子はなかったし、最近のレベル上げで出会った人達もそうだった

 

そこで一つの結論を導き出した、ここはパラレルワールドのような場所なのかもしれない、と

 

カイト「…ありえない、か」

 

否定の言葉を口にしてカオスゲートに向かう

 

カイト(…それより敷波だ…このまま放置しておくわけにはいかない、もしこの世界でやられたら…いや、考えるのはやめておこう)

 

Cubia「やあ、カイト」

 

カイト「クビア…!」

 

Cubia「怖がることはないよ、ボクは君と戦うつもりはない…今のボクじゃ全力は出せないしね」

 

カイト(…なんでクビアがここに…)

 

Cubia「キミが探している…敷波だっけ、今アウラとリンクしてるよ」

 

カイト「アウラと…?」

 

Cubia「といっても、過去の…目覚める前のアウラだけどね」

 

カイト「ここのアウラは目覚めてない……司がリアルに帰る前の世界…?」

 

Cubia「大正解、君のお友達はモルガナの手に落ちた…」

 

カイト「モルガナだって…!?」

 

Cubia「そんなに身構えないでよ、直接的な危害は加えられないし心配は無いさ…ただ、感情をモニタされるだけ」

 

カイト「…どうして?」

 

Cubia「アウラを目覚めさせないために…アウラに負の感情を与え続ければアウラは正しく覚醒しない、そしてそのために感情をアウラに送り続ける役割を与えられたのが司…でも、司1人じゃ前を向いてしまう可能性がある、そこで敷波だ」

 

Cubia「司を嫉妬させられる上に敷波はこの世界で異端すぎる、味方なんてまずできないと思ったんだろうね」

 

カイト「…だからって…」

 

Cubia「思惑は大成功、敷波は悪意を持ったプレイヤーに陥れられそうになり、人間不信…にはなってないけど、強いショックを受けたみたいだ」

 

カイト「敷波は何処に…」

 

Cubia「教えてくれると思ってた?」

 

カイト「……」

 

双剣を構える

 

Cubia「嘘嘘、教えてあげるよ…Θサーバー、高山都市ドゥナ・ロリヤック…プチグソ牧場の裏にいるはずだよ」

 

カイト「聞いておいて何だけど…何で教えてくれるの」

 

Cubia「アウラの覚醒が失敗に終われば…次にモルガナはボクを排除しようとするだろうから、強いて言えば利害の一致、かな」

 

カイト「…ありがとう」

 

 

 

Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック

 

カイト「ここのプチグソ牧場の裏に……あれは…?」

 

赤い衣装のキャラクター達が目の前を通る

 

カイト(随分たくさんいる…あれが紅衣の騎士団……初めて見た)

 

騎士達が通り過ぎ、プチグソ牧場への道が開く

 

 

 

プチグソ牧場

 

カイト「…居ない…騙された?…いや、嘘をつく必要はないはずだ…ここで待ってみようかな…」

 

高原に腰掛け、空を眺める

 

カイト(…みんなは大丈夫かな…曙も無理してないと良いけど…)

 

昴「すみません」

 

カイト「…何?」

 

カイト(確か、このキャラは昴…)

 

昴「ここに女の子が座っていませんでしたか?その、少し…珍しいエディットの…」

 

カイト「敷波の事?」

 

昴「お知り合いですか…?」

 

カイト「うん、昴…だよね?何で敷波を探してるの?」

 

昴「…紅衣の騎士団が…という言い方は間違っていますが、敷波さんを捕まえようとしています」

 

カイト「…なんで」

 

昴「……紅衣の騎士団はThe・Worldのより良い自治を目指す団体でした、しかし…それが…完全なる管理を求める者たちが増えてしまったのです…敷波さんのキャラは目立ちすぎます、故に追われているのではないかと…」

 

カイト(…待って、さっきのが紅衣の騎士団なら…まさか敷波は捕まったんじゃ…!)

 

昴「…あの?」

 

カイト「昴は紅衣の騎士団のリーダーなんだよね?捕まえたら何処に連れて行くか、わかる?」

 

昴「…確実ではありませんが、想像はつきます」

 

カイト「さっき大量に集まってる紅衣の騎士団を見たんだ、もしかしたら…」

 

昴「…わかりました、ご案内します」

 

 

 

 

Θサーバー 病める 堕天使の 処刑場

 

銀漢「昴様…と、何だ貴様は」

 

カイト「…君達が捕まえてる敷波の仲間だ」

 

銀漢「つまり、貴様もチーターか」

 

昴「やはり、貴方達なのですね…司も、敷波さんも…」

 

銀漢「…奴等はThe・Worldを乱す悪です」

 

カイト「それなら、敷波が何をしたって言うんだ」

 

銀漢「エディットを弄った、でなければあのキャラは説明がつかん」

 

カイト「説明できないだけで拘束するなんてやりすぎだ!」

 

銀漢「黙れ、貴様もチーターなのだろう、此処で斬り捨てても構わんのだ」

 

カイト「僕は戦いに来たんじゃない!ただ敷波を解放して欲しいだけだ!」

 

昴「銀漢」

 

銀漢「…昴様」

 

昴「貴方達が捕まえている2人に会います、通しなさい」

 

銀漢「…私も同行します」

 

昴「結構です、私1人で参ります」

 

銀漢「しかしそれは…」

 

昴「聞こえませんでしたか?」

 

銀漢「…わかりました」

 

昴「カイトさん、暫く待っていてください」

 

カイト「……わかった」

 

銀漢「…貴様、何処で昴様と会った」

 

2人になった途端、銀漢が話しかけてくる

 

カイト「さっき、ドゥナ・ロリヤックで」

 

銀漢「…ならば、2度と会うことはないな」

 

銀漢が剣を構えると同時に周囲の騎士達が集まり、剣を抜く

 

カイト「…戦うつもりはないよ」

 

両手を挙げ、地面に座る

 

銀漢「……チッ」

 

 

 

 

重槍士 昴

 

昴「非礼をお詫びします」

 

隅で三角座りをしている司に近寄り、膝をついて話しかける

 

昴「私の力が及ばないばかりに、貴方に嫌な思いをさせてしまって…貴方と話がしたかっただけなのです、ですが…いざこうして見ると、何を話したものか」

 

司「…良い匂い…コロン?」

 

昴「わかるのですか?」

 

司「匂いだけじゃない…手触りも…痛みも、全部わかる」

 

昴「ゲームの中なのに?」

 

司「ボクにとっては…違うみたい……嘘ついてると思ってる?」

 

昴「…いいえ、それは……辛いね…」

 

司「え…」

 

昴「これからどうするつもりですか?」

 

司「それを決めるのはアンタじゃん」

 

昴「…貴方が無茶をしなければ、騎士団が貴方を拘束する理由はありません、解放させてみせます」

 

司「無茶?」

 

昴「貴方が連れていた、モンスターです」

 

司「…ボクを放っておいてくれるなら、何もしない」

 

昴「約束してください」

 

司「そっちこそ」

 

 

 

 

双剣士 カイト

 

カイト「…誰か来た」

 

銀漢「む…」

 

楚良「ぽっほーん……ん〜ふ〜ん?」

 

銀漢「…楚良」

 

カイト(…紅衣の騎士団の…仲間?)

 

銀漢「貴様の協力には感謝しているが、今は誰も中には入れん」

 

楚良「…試していーい?」

 

銀漢「何?」

 

楚良「俺、裏切るね」

 

楚良と呼ばれたPCが銀漢を刺殺する

 

カイト「なっ…」

 

楚良「んふふ…キミら、弱すぎ……おんやぁ…?アンタも赤いけど、騎士様のお仲間?」

 

カイト「…それは、違う…」

 

楚良「なら良いや…司くん、も〜らい」

 

カイト(…もう1人、捕まってるのか…)

 

カイト「…僕も行こう」

 

 

 

 

カイト「…ダンジョンを丸々制圧してるのか…そしてそれに結界を張って牢屋代わりに…」

 

ダンジョンの最奥を目指す

 

カイト(…途中で見つかれば良いんだけど…)

 

カイト「…今、声が…」

 

声のした方を目指す

 

 

 

 

駆逐艦 敷波

 

敷波(…あの子のところに居たい、あのプチグソ牧場に居れば…まだ、あの子の温もりを感じられる気がするのに…)

 

この世界の誰もがアタシを否定して、アタシを拒絶する

アタシがいるだけで悪者みたいに言われて、アタシは…

 

敷波「…アタシ、この世界にいちゃいけないんだよね……早く、リアルに帰りたいなぁ…青葉さん…助けて…もうヤだよ……うぅ…」

 

何で何もしてないのに、こんなに悪者にされて…暗くて冷たい所に閉じ込められるんだろう

何でこんなに涙が込み上げてくるんだろう

 

カイト「敷波!」

 

敷波「…え…?司令官…?」

 

カイト「敷波、大丈夫!?ケガはない?」

 

敷波「…ホントに司令官だ…!司令官!」

 

カイト「良かった、無事だった…本当に良かった…!」

 

司令官が差し伸べてくれた手を取る

 

敷波「…あったかい…」

 

カイト「え?」

 

敷波「司令官の手、あったかいよ…あの子みたいに…」

 

カイト(あの子…?)

 

カイト「とりあえず敷波、ここを出よう!」

 

敷波「…出てどうするの…?もしかしてアタシ、リアルに帰れるの…!?」

 

カイト「……ごめん、それはまだできない」

 

敷波「…そっか」

 

カイト「きっと君をリアルに帰して見せる、だからもう少しだけ、待ってて」

 

司令官が手のひらサイズのオカリナを掲げる

 

カイト「……ダメか、結界のせいで精霊のオカリナが使えない…」

 

敷波「オカリナ?」

 

カイト「ダンジョンから出るためのアイテムだよ、今は使えないけど…一応敷波にも渡しておくね」

 

麻の紐にくっついた小さなオカリナを首にかけられる

 

敷波「…それで、どうするの?」

 

カイト「結界がある以上歩いて出るしかないね…紅衣の騎士団に見つかると面倒だけど…行こう」

 

敷波「うん…」

 

司令官に手を引かれ、ダンジョンを走る

 

カイト(…騎士達の死体だらけだ…さっきの双剣士がやったのか…)

 

敷波(うう…血は出てないけどグロい…)

 

カイト「…あれは、戦ってる…?」

 

全身黒で緑髪の忍者みたいなやつと…赤い法被と袴の薙刀男が戦ってる

 

楚良「あ〜ん?…なーんだ、お前も人探しだったんだ」

 

クリム「仲間か?」

 

楚良「じょ〜だん!むしろそっちの仲間じゃないの?」

 

カイト「どっちの仲間でもない、ただ、そこを通りたいんだ」

 

楚良「ん〜…ダメ♪」

 

クリム「倒してやりたいが…コイツの相手で忙しい!」

 

カイト(万が一敷波に攻撃が当たったら取り返しがつかない…迂闊に進む事も…)

 

銀漢「居たぞ!捕まえろ!」

 

騎士達が道を埋め尽くすほど押し寄せてくる

 

楚良「げ…うっざぁ…」

 

クリム「待て!逃げるな!」

 

戦っていた2人が脇道へと姿を消す

 

敷波「し、司令官…」

 

カイト「…来るなら、倒すよ」

 

銀漢「やれるものならやってみろ!」

 

司令官が一歩前に出て武器を構える

 

カイト「……」

 

銀漢「やれ!遠慮はいらん!」

 

カイト「火炎車!」

 

司令官が辺りの騎士を薙ぎ倒す

 

カイト(…騎士団と揉めたくはなかったけど…!)

 

カイト「火炎独楽!」

 

銀漢「貴様、よくも!」

 

カイト「先に剣を向けたのはそっちだ、それに警告したはずだよ」

 

銀漢「黙れ!」

 

昴「やめなさい、銀漢」

 

銀漢「…昴様」

 

昴「銀漢、敷波さん達を通しなさい」

 

銀漢「しかし…」

 

昴「…彼女達は…私たちが捕らえるまでもなく、囚われ人なのです」

 

銀漢「…それは、どういう…」

 

昴「カイトさん、敷波さん、非礼をお詫び申し上げます」

 

カイト「…行こう、敷波」

 

敷波「うん……昴」

 

昴「はい」

 

敷波「ホワイトチェリーの事、ありがとう…それだけ」

 

 

 

 

 

 

The・World R:2

Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ

軽巡洋艦 神通

 

神通「…貴方がここに送り込んだのですから、当然来られる、と言うわけですか」

 

駆逐棲姫「ええ、まあ?」

 

神通「…トドメを刺しに来たのですね、しかし私はここでなら…メイガスを使える」

 

駆逐棲姫「そんな事どうでも良いんですよ、私はただお話に来ただけですから…ねぇ?座りましょうよ」

 

駆逐棲姫が橋の手摺りに腰掛ける

 

駆逐棲姫「貴方は、この世界に来て本当の感情を知りましたか?」

 

神通「…本当の感情…?」

 

駆逐棲姫「私は前の世界で敷波を守れなかった事を悔いて死にました、覚えてますよね?」

 

神通「…まあ」

 

駆逐棲姫「でも、あれはインプットされた…作られた感情によるものです、私の本当の感情はこの世界で人間となり、ようやく手に入った…」

 

神通(…AIだったから、と言う事ですか)

 

駆逐棲姫「敷波は私には忌々しい存在なんですよ、だってプログラムされた妹なんて可愛くないじゃないですか」

 

神通「…興味ありませんね」

 

駆逐棲姫「貴方の妹だって、貴方がAIの時にプログラムされた物でしょう?それでも可愛い妹だ、と…胸を張って言えますか」

 

神通「言えます、私の姉妹は間違いなくあの2人だけです」

 

駆逐棲姫「……ふふ、良いですねぇ…芯があるのは嫌いじゃないですよ」

 

駆逐棲姫が端から飛び降りる

 

神通「川に…!」

 

川を覗き込んだ瞬間、上から首元を押さえつけられる

 

駆逐棲姫「馬鹿ですよね、そんな視線誘導に引っかかって…ねぇ?」

 

神通「ぁ…がっ…!」

 

手すりに喉元を押し付けられ、呼吸を封じられる

 

駆逐棲姫「ねぇ、私の考え、わかってくれますよね?」

 

神通(…し、死ぬ…)

 

駆逐棲姫「わかんないかぁ…残念」

 

急に解放される

 

神通「がはっ!…ごほっ…」

 

駆逐棲姫「…おや、これは」

 

駆逐棲姫が自身の手をじっと眺める

赤黒い液体がボドボドと地面に流れ落ちる

 

駆逐棲姫「随分と気に入られてますねぇ!あははッ」

 

神通(…AIDAが私を、守った…)

 

駆逐棲姫「…まあ、また混んだ会いに来ますね、次会う時は貴方を連れて行きますよ、サンプルも手に入れましたから」

 

神通(サンプル…まさか、AIDAの攻撃が効かなく…!)

 

神通「ここで仕留めないと…メイガス!!……え?碑文が…」

 

神通(そうだ、女神を呼んだ時に…!)

 

駆逐棲姫「それじゃあまた」

 

神通「…く…これでは、私はどうすれば…」

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