元勇者提督   作:無し

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悪意

離島鎮守府 演習場

駆逐艦 朧

 

朧(1…2…3…ここで勢いを乗せて…回し蹴り!)

 

水面を巻き上げる程の勢いを伴い、反転回し蹴りを放つ

 

朧「…違う…綾波の蹴りの勢いはもっと鋭かった……もしぶつかりあったとしても…今みたいに勢いをつけて漸く威力の出るアタシとノーモーションであんな威力を出せる綾波じゃ話にならない…」

 

今はとにかく、綾波を倒すことだけを考えなくてはならない

綾波を倒さなくては何かを解決する事以前に明日の命の保証もない…

 

朧(できるなら綾波を元に戻したい、だけど…何も思いつかない)

 

朧「…綾波は砲撃を全くしてこなかった、それはしなくても勝てるから…それに、綾波は更に強くなってる、綾波は…!」

 

那珂「朧ちゃーん?」

 

朧「あっ…はい!」

 

那珂「随分と焦ってるみたいだけど…大丈夫?」

 

朧「……いいえ、ちょっとよくわからなくて」

 

那珂「私も、わかんない事たくさん有るけどさ…神通姉さんの事とか!でも、悩んでも仕方ないよ、私達は朧ちゃんと一緒にここで戦うから」

 

朧「ありがとうございます…」

 

那珂「ところでさ、はいこれ」

 

ブーツの様な艤装を受け渡される

 

朧「…綾波の艤装…明石さんが調整してたはず…」

 

那珂「うん、調整終わったって、後これね」

 

アタシが改造した主砲…近接格闘も想定し、ハンドガードも自分で取り付けた…それがより固く、壊れにくい物になっている

 

朧「…明石さん……あれ?」

 

ハンドガードの内側に小さなスイッチが複数ある

 

朧「これは…」

 

那珂「それで艤装の機能を操作するんだって、試してみよっか」

 

朧「はい」

 

艤装を付け替える

 

朧「重い…何キロあるんですかコレ…!」

 

那珂「12キロだって」

 

朧(…さっきまでつけてた方は左右で6キロだから倍…か)

 

使いこなす自信は正直ない

 

朧「…っりゃぁぁ!」

 

渾身の蹴りを放つ

 

那珂「……蹴り、遅いね…止まって見えるよ…」

 

朧「ですよね…」

 

片足6キロ、それを持ち上げるのは非常にキツイ…

 

朧(…いや、機能を使えば…これがブースト…よし)

 

朧「…はぁぁッ!」

 

冗談めがけての回し蹴り

 

那珂「…まだ、ちょっと遅いかな……ん?」

 

朧(…ブーストしてもここまで重いなら…!)

 

足先が一番高い位置に行ったタイミングで捻り、海面へとその足を振り下ろす

 

那珂「…成る程ね、重さを利用して上りじゃなく下りの蹴り…確かに勢いはすごく良かったけど…予備動作が遅くない?」

 

朧「…いや、これはこれで使えます…確かに遅いけど、それは日々の修練で早められるし、何よりこれはキメです、そう何度も振る技じゃない…だから今必要なのは、綾波の動きを止められる何か」

 

那珂「止められる…ね…たとえ当てたとしても無限に再生するんだよ?」

 

朧「わかってます……綾波を仕留めるには…この世界じゃ無理なのかもしれないって事も」

 

那珂「…どういう事?」

 

朧「綾波達はネットとリアルを行き来できる…ネットに入る瞬間があるなら、そこで本物のデータドレインを打ち込めば…」

 

那珂「…確かに、そうすれば…うーん…でも、死んじゃうかもよ」

 

朧「…わかってます、それでも止めなきゃ」

 

心のもやを晴らすように、艤装のスイッチを入れ、空を蹴る

 

朧「……そうだ、確かめないと」

 

那珂「朧ちゃん?」

 

 

 

執務室

 

朧「すいません、聞こえてますか?」

 

火野『問題ない』

 

アンテナの設置…だけで解決したわけじゃないけど、おかげで本土との連絡が簡単に取れるようになった、これはすごくありがたい事だけど

 

朧「ダミー因子について調べて欲しいんです」

 

火野『…特務部が作成したダミー因子は合計8つ、すでにほとんどの所持者は特定済みだ』

 

朧(はやっ…)

 

火野『軍内の医療施設の使用歴からダミー因子の所持者はあるタイミングで長く昏睡していた…』

 

朧(…そうだ、あの時だ…)

 

朧「……ネットワーク、クライシス…」

 

火野『そうだ、君も、其方の明石もダミー因子の所持者だろう?』

 

朧「…綾波は」

 

火野『彼女は…敷波と共にゴレのダミー因子保持者となっている…といっても彼女の因子は自分で作り上げたような物だが…』

 

朧「…ゴレ…」

 

火野『ゴレについては…そちらにより詳しい者が居るだろう』

 

朧「ありがとうございます」

 

パソコンを閉じる

 

朧「…那珂さんと同じゴレの…」

 

 

 

那珂「それでまた私が呼ばれたわけ」

 

朧「はい、ゴレの碑文について…わかる限り教えていただけませんか」

 

那珂「うーん…って言っても、ただ味覚が増大したり…碑文が使えたりするくらいだよ?ダミー因子って碑文は使えないんでしょ?」

 

朧「…そうですね、ダミー因子では碑文の力は使えません、ただ…タルヴォスのおかげで嗅覚は増大しています」

 

那珂「嗅覚かー…凄いの?」

 

朧「例えば今、食堂で如月が煎茶と羊羹を食べてるのもわかります」

 

那珂「誰かもわかっちゃうんだ…」

 

朧「…まあ、匂いで」

 

那珂「凄いね、他には何かない?」

 

朧「えっと……いや、うーん…関係あるかわかりませんけど、潮と漣には好戦的になったって」

 

那珂「…性格、か……あ、じゃあさ…今はほとんどそんな事ないんだけど…一個だけあるよ、ゴレのデメリット…って言うか、影響」

 

朧「どんなのですか?」

 

那珂「私さ、結構表裏が激しくって…川内姉さんとかに聞けばわかるけど…昔AIDAに取り憑かれた時とか本当に自分でも誰だかわかんなくなっちゃったの…そう、例えばもう1人の自分がいるみたいな…あ、今はそんな事ないからね!」

 

朧(もう1人の、自分…)

 

那珂「まあ、参考にはならないと思うけど…」

 

朧「…二つで一つの碑文…綾波と敷波で、二人で一つの碑文だったんだ…それが、綾波一人に…じゃあ既にそれを綾波は克服してる…?」

 

那珂「……ダミー因子がどんなものか、私にはよくわからないけど…朧ちゃんの今の艤装はダミー因子が有ると動きが良いんだよね?」

 

朧「…はい」

 

那珂「鍵なのかもね、何かの」

 

朧「鍵?」

 

那珂「ほら…えっと…鍵穴には鍵がいるでしょ?ぴったり合うやつ…ダミー因子で識別してるのかなって」

 

朧「ダミー因子で、識別…そっか、だからこれがあるんだ…」

 

那珂(本当はアウラを呼ぶための鍵だったみたいだけど…覚えてないみたいだし、言わなくて良いよね)

 

朧「明石さんに伝えてきます!きっと何かの役に立つかも…!」

 

那珂「あんまり根を詰めないでね〜……うーん、朧ちゃん前向きだなぁ…」

 

 

 

 

 

工廠 

工作艦 明石

 

明石「…メール?……青葉さんから、20通!?…うわ、ネット環境が整備されたからか…サクラソウさんからもメール来てるし………名前の由来?アカシャの?……何でそんな事…」

 

朧「明石さん!」

 

明石「うひゃあ!?」

 

朧「うぇっ!?お、驚かせちゃいましたか…」

 

明石「い、いいいい、いや、大丈夫…」

 

朧(全然大丈夫じゃない反応してるし…)

 

朧「出直しましょうか…?」

 

明石「あー…いや、気にしないでいいから…それより何かあった?」

 

朧「いや、ダミー因子…綾波はダミー因子を識別して艤装を使ってたのかなって」

 

明石「あー…なるほどね、そうかも」

 

朧(あんまり役立ってなさそう…)

 

明石「……やっぱ後にしてもらっても良いかな?」

 

朧「あー…いえ、アタシの用事は終わったので…」

 

朧ちゃんが部屋を出るのを見送り、パソコンに向かう

 

明石「…悪いことしちゃったな……でも青葉さんからのメール……提督のことも書いてある…?石に…ど、どういう事なの…ネットの中で石になってるって…生きてるの?それ…」

 

返信用のメールを打つ

 

[from:明石

 件名:由来

提督の事、もっと詳しく教えていただけますか?

それと由来ですが、アカシャはアカシックレコードから来ています。

ご存知かもしれませんが、アカシックレコードとは原初から今までのすべての事象は記録、記憶されているという概念です。

何故アカシャになるかと言うと、それを記録させる場所がアストラル光(もしくはエーテル体とも、簡単に言えば精神世界)か、アーカーシャ(虚空)です。

まあ、ちょっと粋がった名前というだけで、恥ずかしいのでもう勘弁してください。]

 

明石(…提督を助けるために必要なのかな……返信早っ!?)

 

[from :青葉

 件名: Re:由来

アカシックレコードですか、一つ謎が解けたかもしれません、ありがとうございます。

司令官はゲームの世界で石にされてしまいました、しかし必ず助けてみせます、どうかお待ちください…。]

 

明石「…石になったって本当に?大丈夫じゃないと思うけど…これ、良いのかなぁ…」

 

 

 

 

演習場

駆逐艦 朧

 

朧「…このスイッチ、使っちゃダメだ…」

 

那珂「え?」

 

朧「周りの空気を吸い込むんですけど…ほら、一瞬使っただけなのに…」

 

艤装から脚を出す

脹脛に細かな切り傷が無数に現れ、血が海に流れ落ちる

 

那珂「酷い怪我…なんで…」

 

朧「…この中で空気がカッターみたいにアタシの脚を刻む…」

 

那珂「ソックスごと斬り刻まれてる…」

 

朧「これを使えば空気を散弾銃のように放つ空気砲としても使えるし、水を使えば射程距離も伸ばせるとは思います、だけど…アタシが使っても怪我をするだけ……本当に必要な時にしか、それもトドメに使うくらいしか…」

 

那珂「使ったら脚が上がらなくなるかもしれないもんね、奥の手…にしてもリスクが大きい…今は一瞬でやめたから浅い傷だけど、実際に使う為にはどのくらいのタメがあるのかな…」

 

朧「綾波は2.3秒で使ってました…それでも人の胴体を吹き飛ばすくらいには…」

 

那珂「…十分脚が使えなくなるね…スイッチの操作はハンドガードの内側だから悟られないかもしれないけど…うーん…使うのはやめたほうがいいかも」

 

朧「アタシも正直そうは思います」

 

那珂「朧ちゃんは無理しちゃダメだよ」

 

朧「大丈夫です、無理しなくても…内側の機構さえ変えて貰えば…」

 

那珂「頼んでみよっか」

 

朧「はい、中に鉄板を仕込めば…」

 

 

 

駆逐棲姫(うーん、多分扱えないと思いますけどねぇ……見に来てよかった、貴方をいたぶる最高の手段を思いつきましたよ、朧さん♪)

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