元勇者提督   作:無し

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名刺

The・World R:1

Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック

重槍士 青葉

 

青葉「つ、連れ去られた?!」

 

ベア「ああ、俺も軽く聞いた程度だが…」

 

敷波さんに会いにきたのに、私が明石さんとやりとりしてる間に敷波さんは紅衣の騎士団に連れて行かれた…

 

青葉「紅衣の騎士団……流石に、看過できません、どこに行ったかわかりますか!?」

 

ベア「ああ、それなら……」

 

周囲の景色が切り替わる

 

水色のステージに、空間に走る青いライン

まるで籠に入れられたような…

 

青葉(閉じ込められた…誰に…!)

 

武器を構え、辺りを警戒する

 

フリューゲル「あーあー、そんな警戒しなさんな、話し合いに来ただけだ」

 

腰まであるボサボサの白髪と黒いロングコート、金のモノクルの男のPC…

 

青葉「話し合いにしては…こんな所に放り込む意味がわかりませんね、あなたは何者ですか」

 

フリューゲル「それはこっちも聞きたい所だねぇ…ま、名乗っとこうか…アカシャ盤の管理をやってるシックザールのフリューゲルってモンだ」

 

青葉「フリューゲル…アカシャ盤の管理者…」

 

フリューゲル「ただ管理するだけじゃない」

 

フリューゲルがこちらに拳銃を向ける

 

フリューゲル「邪魔者は排除する…ま、今はその前段階だ、今消えるなら見逃してやる」

 

青葉「…貴方はCC社の人間…と言う事ですか」

 

フリューゲル「答える必要はない、って感じなんだがな…ま、そうだ」

 

青葉「…私の目的は未帰還者を取り戻す事です、貴方がCC社だと言うなら…未帰還者をもとに戻す方法を知っているんじゃないですか…?」

 

フリューゲル「未帰還者…ね、つまり未帰還者のリアルを洗えばお前さんを捕まえられる訳だ」

 

青葉「……未帰還者を助けるつもりはなさそうですね…残念です」

 

フリューゲル「こっちも、お前さんが言う事を聞く気がなさそうで残念だよ」

 

青葉「人の命がかかってるんですよ…!何で貴方達の都合で引き返さなきゃならないんです…!自分たちの運営するゲームで起きた問題でしょう!?」

 

フリューゲル「今、こっちが把握してる限りThe・Worldが原因の意識不明者は居ない」

 

青葉「よくもそんな事が…!」

 

フリューゲル「なら、本当にいるなら言ってみろ、そいつの名前、住所、入院してる病院まで」

 

青葉(…こっちの情報を引き出そうとしてる…リアルで捕まる訳には…いや…)

 

青葉「未帰還者は…貴方達が本当に知らないなら調べれば直ぐにわかるでしょう…軍人ですから」

 

フリューゲル「何?」

 

青葉「佐世保鎮守府所属、駆逐艦秋雲の名で登録されています、国に仕える人間がそうなっている…無視はさせません」

 

青葉(…国を出せば、少しは考えが変わると思ったけど…)

 

フリューゲル「…待て、確認する」

 

青葉(よし、絶対に無視はさせない、秋雲さんも、司令官も、敷波さんも…絶対に助け…)

 

青葉「…え…」

 

背中が何かに貫かれる

ゲームの中なのに、脳が揺さぶられるほどの激痛が走る

 

青葉「…あ……」

 

 

 

 

 

リアル

病院

駆逐艦 陽炎

 

陽炎「…そうですか、青葉さんも…」

 

大黒「はい…必死に秋雲さんを助けようとしていたのに、今朝部屋を見たら…ディスプレイの前で倒れていました…ただ、この病院は青葉さんを受け入れてはくれましたが…明日にも神奈川の方に移されるそうです」

 

深海棲艦になりかけている青葉さんを詳しく調べさせる訳にも行かない、明日には軍のお抱えの病院…なのかも怪しい施設行き

 

陽炎「……」

 

頼みの綱すらも斬られた

ミイラ取りがミイラになるとはまさにこの事か、しかも悪いことに…新しいミイラは研究者が唾を飲む深海棲艦のサンプルと来た

 

陽炎「…っ………はぁ…」

 

頭が痛い、おかしくなりそうだ、なんでこんな事に

文句を言い始めれば終わらない、責めちゃいけないのはわかってる、だけど…なんでこうなった、納得できない

 

大黒「…大丈夫ですか?」

 

陽炎「…はい、気にしないでください」

 

正直に言えば、ついさっきまで本気で秋雲を助けようとしているかすら疑問だった

だからこそ居た堪れない気持ちでここまで来たのに、直接見舞う事すら躊躇う、できない、私が追い詰めたせいでこうなった

 

陽炎「…ええと、失礼します…」

 

つい、秋雲の病室へと逃げ帰る

そこにいることすら間違いなのに

 

陽炎「…え?だ、誰」

 

秋雲の病室には私と司令以外誰も見舞いには来ない

今迄来たのはみんなが気を遣って来てくれた時だけ

なのに今ここには医者らしくない姿の男がいる

 

曽我部「ああ、失礼しました、私サイバーコネクト社の曽我部隆二と申します」

 

陽炎「サイバーコネクト……CC社…!?何でここに!」

 

曽我部「…貴方が青葉さんでしょうか」

 

陽炎「青葉…?」

 

陽炎(…青葉さんを探して…なんで?CC社と協力していた?だとしたら顔を明かしてないのは……いや、ここは様子を見るべき)

 

陽炎「私は青葉さんじゃないです、病室を間違えてると思います」

 

曽我部「そうですか…貴方はこちらの…秋雲さんの御親族ですか?」

 

陽炎「姉です」

 

曽我部「意識不明になられた理由なども…」

 

陽炎「The・Worldをプレイ中に意識不明になった」

 

曽我部「ご存知でしたか」

 

陽炎「……今更、何の用ですか、この子が貴方たちが運営しているゲームで意識不明になったのはもう2ヶ月以上前です、何で今になって…!」

 

曽我部「…実を言うと、私がその事実を知ったのはつい昨日の事です、青葉というキャラクターに伺いました…青葉という方に心当たりはありませんか?」

 

陽炎(艦名でやってるの…?それは…なんか、大丈夫なのかな…)

 

陽炎「いいえ、それで貴方達は秋雲の意識を回復させてくれるんですか?」

 

曽我部「…正直な所、原因がわかっておりませんので難しい問題です…なにが理由で意識不明になったのか…」

 

陽炎「クビア」

 

曽我部「…クビア?」

 

陽炎「クビアって奴にキルされた結果…らしいけど」

 

これはなつめさんから聞いた、正しいのかはわからないけど…

 

曽我部「…成る程、ありがとうございます、直ぐに調査し、報告させていただきますので…もう少しだけ時間を頂けますか?」

 

陽炎「……」

 

今までCC社に問い合わせたことは何度かあった、でもまともに取りあわれたことなんて一度もなかった

何が変わった?何の為に対応した?…わからない

 

曽我部「それと、もし青葉さんをご存知でしたら…無事かだけをお伺いしたいのですが」

 

陽炎「知りません」

 

 

 

 

曽我部隆二

 

曽我部「…参ったねぇ…向こうさんは全然協力的じゃないし、上司のジーニアスはうるさいし…まだアカシャ盤に潜り込んだ邪魔者が居るっていうのに…」

 

ポケットから棒付きキャンディーを取り出して口に放り込む

 

曽我部(メトロノームが後ろからやっちまった所為で青葉ってキャラは多分意識不明だろうしなぁ…平和的に解決できる話ならそれで済むってのに…しかし、クビア…クビアが出てきたとなると簡単な話じゃない、意識データが何処を彷徨っているのやら…)

 

曽我部「しかも事件が起きたのはR:2だ…?冗談キツイぜ、データ破棄してねぇだろうな…CC社なら隠蔽してる可能性も…あーヤダヤダ、考えたくねぇ…業務外でも働いてんのに給料まで安いって、ヤになっちまう…なあ、元、碧衣の騎士団さん」

 

度会「……」

 

曽我部「CC社に雇われた…掃除屋ってトコです、よろしく」

 

度会「……顔が売れている自覚は無かったのですが」

 

曽我部「2009年の黄昏事件、その責任者だったアンタを洗うのもこっちの仕事でね…意識不明者事件の裏にあるのが何なのか、調べなきゃならないもので」

 

度会「…この病院は地下にカフェテリアがあります」

 

曽我部「いやー、俺も誘おうかと思ってたとこなんですよ、気が合いそうだ」

 

 

 

カフェテリア

 

曽我部「ま、そう警戒しないでくださると嬉しいんですが…まさか今は軍人さんだなんて、いやー凄いなぁ!」

 

度会「……」

 

度会は明らかに不機嫌だった

ただ、目の前の剽軽な男に対して苛々しているのでは無い、別の何かへの苛立ちなのは見てとれた

 

度会「わざわざ俺に接触してきた理由は、何の為なのかお聞かせ願えますか」

 

曽我部「いや、本当に偶然なんですよ、秋雲さんという方の意識不明の原因を探りにきたら貴方がいた…」

 

度会「探りに来たのは秋雲じゃなく、青葉というキャラクターについて…ではないですか」

 

…まさかコイツが青葉?声は女だった、だがボイスチェンジャーでいくらでも変化させられる…

いや、メトロノームにやられている以上それはない、メトロノームのナイフは意識に直接的にダメージを与える危険な代物、それを背後から急所に受けたとなると意識が回復しているとは思えない

 

曽我部「目的がわかってるなら話は早いと思うんですけど…ま、単刀直入に聞きますが…青葉さんはどちらに?お話を伺いたいなー…なんて」

 

度会「それはできません、今彼女は意識不明で、その上…すぐに研究施設に搬送される」

 

曽我部「研究施設?」

 

度会「…ある奇病を患っています、残り少ないであろう自身の時間を削り、秋雲を助けようとしていた…」

 

曽我部「いやー、どうやらその青葉さんはとても素晴らしい方の様だ、人の為にそこまで…」

 

となれば軽率な発言は敵意を逆撫でするだけ…

厄介な案件に踏み込んだ自覚はあったが…これはより面倒になってきた

 

度会「…こちらも聞きたい事があるのですが」

 

曽我部「ああ、何でも聞いてください」

 

度会「リアルデジタライズ学を、ドイツで教えていたとか?」

 

曽我部「…ええ、まあ」

 

曽我部(…こっちを調べられてる?ここに来るのも織り込み済みだったか…いや、だとしても何故?)

 

度会「…いや、先に聞くべきはこっちか、貴方の目的は」

 

曽我部「CC社の目的はゲームの不正プレイを止めていただく事です」

 

度会「そうじゃなく、CC社の目的ではなく、貴方の目的を聞いている」

 

曽我部「……私ですか、そうですねぇ、せっかく九州に来たしお昼は名物でも食べて帰ろうかと」

 

度会「……」

 

曽我部「いや、ははは、冗談です冗談…」

 

曽我部(おっかねぇ…マジに人殺しそうな目してやがる…)

 

度会「それで、目的は」

 

曽我部「…雇われの身ですので、特に目的と言われましても…」

 

度会「つまり、CC社に雇われている以上、CC社の目的が曽我部さん、貴方の目的だと」

 

曽我部「…ええ、まあ」

 

度会「……これを」

 

度会が名刺をこちらに差し出す

 

曽我部「ああ、どうも…」

 

こちらも名刺を差し出し、受け取った名刺を確認する

最低限の事しか書かれていないのだろうと思っていたが、名前の右横に手書きで小さい赤い花のイラストがあった

 

曽我部「…ヒガンバナ、ですか」

 

度会「その絵は秋雲が書いてくれた物です、その名刺がなくなる前に秋雲を助けてくだされば有難いのですが」

 

曽我部「善処します」

 

曽我部(…さっさと帰れって事ね…)

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