元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 工廠
工作艦 明石
明石「…島風ちゃんの艤装に、曙ちゃんの艤装…それとこっちはキタカミさんの……え…?キタカミさんの艤装…なにこれ、もうほとんど壊れてる…応急処置はしてあるけど衝撃が全部体に流れるんじゃ…まさか、これで戦って……」
キタカミ[うん、それで戦ってた。]
明石「これじゃ狙いもまともにつけられないですよね…!?…本当にこれで戦ってたんですか…」
キタカミ[まあ、やれるから、ある程度は。]
明石「…ある程度はって、それでやられてたら…」
キタカミ[正直、あれを相手にするのは無理があるかな…]
明石(…キタカミさんでもそう言うほどの相手…私でも力になれる事は…何か、ないのかな…)
キタカミ[今の私にはもう戦う力はない、だからここでみんなの艤装を修理してサポートする事にしたよ、頑張るからこき使ってね]
明石「…わかりました、無理をしないでくださいね」
キタカミ[了解]
明石「…よし、私もやれる事はやらないと…!」
キタカミ[アテが有るの?]
明石「……私は天才じゃありません、みんなを劇的に強くするなんて事はできない、だけど…ここで使われている艤装全て、私が今まで弄ってきた物です、私は最高のコンディションを提供する事しかできないけど…それでも、何もしないより絶対良い…!」
キタカミ[よし、頑張ろうか]
明石(だけど、それだけじゃダメなのはわかってる…天才を殺すには何が要るの?…何をすれば、隙を作れるの?問題はそこに有る…)
駆逐棲姫のアジト
青葉
青葉「……ん……あ、れ…?ここは…」
駆逐棲姫「あ、おはようございま〜す!」
青葉「綾波さ…え、縛られて…!?な、何ですかこれ!」
椅子に四肢を縛られ、身動きは完全に取る事ができない
駆逐棲姫「何って…捕まえてるんですよ?わざわざ貴方を捕まえに行って、捕まえて、私のオモチャにするために」
青葉「オモチャって…」
青葉(いや、落ち着いて…確か、最後の記憶は…)
そう、ゲームの中で話してたら後ろから刺されて…
青葉(それで意識を失ってた…!?じゃあ、私は一時的に未帰還者に近い状況だった…秋雲さんを取り戻す方法に繋がる何かがあるかもしれない…)
駆逐棲姫「余裕ですね?別の何かを考える余裕なんてあるんですか?いやー、この状況ですごいなぁ!」
青葉「ぁ…」
目の前にメスが突きつけられる
駆逐棲姫「貴方は今の自分の状況をわかっていますか?あ、今の貴方と言っても捕まってることについてじゃなくて…その身体に起きた変化の話です、深海棲艦化している貴方…貴方はルールから外れてしまいましたよね?」
青葉「…ルール…?」
駆逐棲姫「ええ、簡単に言えば…人の身のままに深海棲艦の力を使う、私からすれば貴方は深海棲艦と何も変わりませんよ、それでも貴方は人のままに…そのまま行けば貴方の末路はわかってるんです、深海棲艦でも人でもない化け物になるんですから」
青葉「な、何言って…」
駆逐棲姫「私、クビアと協力関係にありまして…まあ、アレは未知数なのでやむを得ずですけどね、貴方がデータドレインを受けた事も知っています、死にかけている事も」
青葉「死にかけ…?」
駆逐棲姫「…ああ、自覚がないんですね、貴方は所詮すぐ死にますよ、だって体を構成する細胞は僅かな量を残して人間のそれとはまるで違う、脳もどんどん汚染されてるんじゃないですか?」
青葉「脳が…」
駆逐棲姫「…ま、私にはどうでもいい事です、しかし…アハッ、勿体無いなぁ…その顔、白い斑点がなければ綺麗なのに!」
青葉「っ…」
駆逐棲姫「消してあげましょうか?」
青葉「何の、為に…」
駆逐棲姫「綺麗な容姿は大事です、貴方が私に忠誠を誓うのなら…私の道具としてそばに置いてあげても良い」
青葉「……理解できません、貴方が何でそんなものを欲しがるのか…いや、欲しがる理由がわからない…私が口だけの忠誠を誓ってもそれを守る保証なんて無いのに…」
駆逐棲姫「ええ、私はそれでレ級さんに騙され、殺されかけましたから…ああ、なんて悲しいんでしょう」
駆逐棲姫が涙を溢す
駆逐棲姫「私はただ愛して欲しかっただけなのに…ああ、なんて、なんて悲しい事でしょうか」
青葉(…本当に、愛されたかっただけなの…?)
駆逐棲姫「まあ、お話はこのくらいにして…答えを聞かせてください」
青葉「お断りします…」
駆逐棲姫「正直者ですねぇ!私はそう言うの好きですよ!」
青葉「……」
綾波さんの手が私の変色した肌をなぞる
駆逐棲姫「うーん、もう全身が真っ白になってると思ってたんですけど…いや、やはり内側は変質してるのでは?…にしても、貴方も島風さんも、本当に服のセンスないですね…」
私の服を破り捨てられる
青葉「っ…!」
駆逐棲姫「あ、ここは色が変わってないんですねー、下はどうなんでしょう!アハッ…綺麗じゃないですか、ねぇ?」
青葉「…もう、やめてください」
駆逐棲姫「…意外と泣かないんですね、てっきり泣きじゃくるかと思ってましたよ、人の悪意に晒されるのに慣れてるんですねぇ」
青葉「……」
駆逐棲姫「あ、私なりの慈悲なんですけど…今死にますか?それともお仲間さんに殺されますか?」
青葉「…え?」
駆逐棲姫「いや、どの道あなたは死ぬんですけどね、死ぬタイミングぐらい選ばせてあげますよ、お仲間に殺されるなら豪華特典として最期に会話できるかも!
青葉「…どう言う意味ですか」
駆逐棲姫「そのままの意味ですよ、察し悪いなぁ…今から貴方は怪物になるんですよ、今死んで死体の怪物になるか、生きたまま怪物になってお仲間に殺されるか…選ばなくても良いなら私が選びますけど」
青葉(…逃げられるとは思わない方がいい、私はどの道このまま殺されるんだろう…それなら不死の怪物になるより、殺せる怪物になって殺された方がまだ…みんなを傷つけなくて済むかもしれない)
駆逐棲姫「決まりましたか?」
青葉「……生きたまま…」
駆逐棲姫「お、醜くも生きたいですか!良いですねぇ、その生への執着心!」
青葉「…そんなのじゃ…ないです」
駆逐棲姫「あーあー、ダメですよ、嘘ですねぇ…いくら心を取り繕っても貴方は死にたくないと思っている、私には嘘はつけませんから♪貴方は心の底から死にたくないと思っている…」
顔に綾波さんの手が伸びる
目を片手で塞がれる
青葉(何を…)
駆逐棲姫「教えてあげましょう、貴方の心の内側」
耳元でそう囁かれると同時に首が絞まる
青葉「あ"…!か……ぁ…!」
全身を必死に動かしてもがく
呼吸をしようと必死になる
駆逐棲姫「…ほら、息を吸いたいなら吸わせてあげますよ…頑張って吸い込んで」
口を何かに塞がれると同時に首を絞める何かが外れ、息を大きく吸い込む
生暖かい空気が肺に流れ込む、体が酸素を求め、必死にその生暖かい空気を取り込もうとする
駆逐棲姫「♪」
ニュルニュルとした何かが口内を這い回る
どれくらい経っただろうか、漸く生暖かいそれが私を離れる
駆逐棲姫「ぷぁ……ふぅ、なかなか情熱的でしたよ♪」
青葉「…何…何なの、さっきの…?」
漸く視界が戻る
あたりがやけに眩しく感じる
駆逐棲姫「んふふ♪」
目の前の綾波さんは口元をハンカチで拭きながらニコニコとこちらに微笑みかける
駆逐棲姫「どうでした?私の肺から吸い出した空気の味は…あんなに必死になって情熱的なキスをするほどなんですから…よっぽど死にたくないんですよね?」
青葉「…じゃあ、あのニュルニュルしたのも…」
駆逐棲姫「私の舌ですね、青葉さんの唾液で口がベッタベタになっちゃいました♪」
青葉(…吐きそう…)
駆逐棲姫「そんな顔されると悲しくなるなぁ…そんなに嫌でした?まあ貴方の都合とか関係ないですけど」
青葉(最悪の気分…)
駆逐棲姫「その落ち込み様……もしかしてファーストキスでした!?きゃー!ファーストキス奪っちゃった!」
青葉「……もう、殺してください」
駆逐棲姫「あ、その何もかも諦めた様な冷めた目!良いですねぇ♪……さて、その美しい姿を壊すのは惜しいですけど…今から貴方の時間を少し進めてみましょうか」
青葉「…時間?」
駆逐棲姫「どの道貴方が怪物になるのは時間の問題でしたから…えーと、これで良いのかな?」
私の身体の内側から、ひっくり返る様な衝撃が何度も走る
青葉「……え?」
真っ黒な、六角形の甲殻が両腕に現れる
駆逐棲姫「深海棲艦よりになるかもしれませんけど…まあ、貴方は深海棲艦でも、人でもない化け物になって、お仲間に殺されて死ぬんですよ、楽しみですね?」
青葉「……」
私が、私じゃなくなる
駆逐棲姫「どのくらいかかるかなぁ♪この待ち時間が楽しいんですよ♪」
駆逐棲姫「ああ、なんて醜いんでしょうね…貴方は誰にも望まれる事なく、ただ殺されて終わるのに、こんなに醜くては誰かに同情されてしまうかも」
怪物「……」
形はかろうじて人形
しかし、前脚は血につくほど長く、黒い甲殻に包まれた鈍器の様な腕、そして中心には発砲用の穴
口は大きく、そして釣り上がり、顔の形を壊すほどの笑顔を貼り付け、目は潰れ…
駆逐棲姫「貴方はもはや深海棲艦ですらない…ま、貴方の魂が地獄で裁かれることを祈ります」