元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
駆逐艦 曙
曙「…カートリッジ?」
明石「そう、双剣にカートリッジを挿せるようにして…一時的に威力を上げたり、放電させたり…鹵獲した画像を見て思いついたその場凌ぎの考えだけど…これならより強力な攻撃ができると思う」
曙「……カートリッジで一時的な強化…ねぇ…ところで、なんでキタカミは不満げなのよ」
キタカミ[うちの台所事情的にはちょっと…結局使うのって燃料とかその辺だし、特に燃料は発電機にも使うから少し困ってる。]
曙「…あんた、その辺細かいわよね…」
明石「でも、他に対抗策が思いつかないし…コレしかないんですよ、キタカミさん…!」
曙(まあ、でも…)
曙「試してみない?キタカミ…私達は使えるものを何でも使ってあの駆逐棲姫をぶっ倒さないといけない、有効打になるなら何でも良いでしょ」
キタカミ[なるならね]
明石「むぐぐ……」
曙「まあ、役に立つかどうかは使わなきゃわからないから」
キタカミ[試してみようか、阿武隈なんか相手に丁度いいでしょ]
曙「そうね、そうしましょ」
演習場
曙「…カートリッジってあたしだけじゃないのね」
阿武隈「私に渡されても…どう使えば?」
明石「その新しい主砲に挿してください、挿してる間は砲弾に属性を付与できます」
曙「属性…またゲームみたいになってきたわね」
明石「…今回はリアルでできる限りのことに留まってますから」
阿武隈「…炎、雷、炸裂…とりあえずこの三つ…」
曙「炎?炎の弾丸ってどんなモンなのよ」
明石「…撃てばわかりますよ」
阿武隈「と、とりあえず…」
阿武隈がカートリッジを挿して主砲を構える
明石「さあ!」
阿武隈「撃ちます!…ヒェッ!?」
砲口から火炎放射の様に火を噴き、炎を纏った散弾が周囲に散らばる
曙「…射程距離は短そうね…でも、炎が、散弾みたいに…」
明石「みたいというか…まさしくそのまま、焼夷弾の様に着弾した相手をそのまま燃やす力が有ります、有効射程は20メートルでしょうか〆
阿武隈「次…雷…撃ちます!ッ!!」
阿武隈が大きくのけぞりながら砲撃する
曙「…え?今撃った?空砲に見えたけど」
明石「雷は砲弾の速度の限界を無視するってコンセプトです…つまり加速効果です…!上手くいってる!」
阿武隈「でも…これ、1発撃ったら結構手が痺れて…反動が大きすぎます」
明石「えっ?…反動が上がるのか…うーん…」
曙「そもそも、雷っていうなら放電するとか…」
明石「それは危険です、砲弾の内側に電気を留めておく手段はないわけでは無いですが…万が一小さなミスがあれば感電してしまいます」
阿武隈「…ちなみに、威力は?」
明石「威力は計測してませんけど、初速は確か…5000メートル毎秒です!」
阿武隈「…あれ、何でそれをあたしは撃てるの…?」
明石「AIDA感染者だからだと思います、人の体では無理だと思いますし…」
阿武隈「…あはは、あたし半分人外…?」
曙「……じゃあ、炸裂は?」
明石「これは防ぐものがあるとわかりやすいのですが…ええと、まあ時間で爆発するし大丈夫かな、これも散弾銃みたいな…まあ、海面に撃ってください、でからだけ遠くに」
阿武隈「はい!」
放たれた砲弾が炸裂する
曙(ちょっと威力の強い榴弾…じゃないわね、これは…)
着弾点で小さい爆発が暫く起こり続ける
阿武隈「……これは無しですね」
明石「やっぱりダメですか」
曙「教育に悪いわね」
明石「教育対象はどこなんでしょうか…それより、曙ちゃんも…」
曙「はいはい」
双剣の鍔に空いた穴にカートリッジを突き刺す
曙「…まず、炎」
双剣に炎がともる
曙「……なんか、悪く無い気がする」
剣を振るった軌跡を炎がなぞる
曙「…火炎車!」
望んだ通りの動き
まるで身体の動きをサポートする様な…
曙「……剣に推進力でもついた?」
明石「どうですか?」
曙「いける、次は雷…」
剣が雷を纏う
明石「単純な属性付与みたいなものですけど…」
曙「最高ね、これなら…もっと戦える気がする」
曙(問題は、あたし自身が弱すぎること、か)
曙「アイツの分はあるの?役立ててくれるんじゃ無い?」
明石「曙さんは…ちょっとどこかに行ってるみたいで」
曙「ふーん…ま、アイツが動いてるなら必要な事なんでしょ」
明石「多分…」
阿武隈「…でも、最近曙さんは様子おかしいし、朧ちゃんとも喧嘩してるし…」
曙「お留守番に疲れたんじゃない?」
阿武隈「お留守番って…」
曙「何にしても、頭が2人揃ってへそ曲げてるのは不味いわね」
明石「何とかならないかなぁ…」
阿武隈「2人ともあんまり話を聞いてくれる雰囲気じゃ無いですから…今はそっとしとくのが一番だと思います」
曙「それより、早い話はカイトを連れ戻すことね」
阿武隈「…提督を?」
明石「いつから下の名前で呼ぶ仲になったんですか…」
曙「別にそこは良いでしょ、簡単な話、曙はあんたたちが思ってるより精神的には弱いのよ、アイツが朧にここを任せてるのも自分の動揺や不安を悟られたく無いからだろうしね」
阿武隈「そうは見えませんけど…」
明石「いや、私もそんな話を潮ちゃんに聞きました」
曙「あたしらの間じゃアイツのメンタルの弱さは常識よ、アイツにとっては自分が最初に自分で有ることを認めてくれたカイトだけが心を許せる存在なのよ」
明石「…七駆のみんなでもダメなの?」
曙「らしいわね」
阿武隈「らしいわねって…」
曙「…悔しいけど、あたしらとカイトじゃ違うらしいわ、それに……特に、朧は最初、あたしとアイツを重ねてたらしいからね
明石「……その立場になったことがないからわからないけど…」
曙「根深い確執じゃない、お互い納得して終わったことでも今になって足を引っ張ってる、2人揃ってどうして良いかわかってないのよ」
阿武隈「…曙ちゃんはわかってるの?」
曙「冗談、わかるならもう引っ叩いて前を向かせてるわ」
明石「…弱りましたね」
曙「そうね、すごく弱った事に…だから頭をすげ替える必要がある…わかる?」
明石「…私は余裕ないですよ」
阿武隈「いや、何で交代って話に…」
曙「アイツら2人ともお互いを認めてないのよ、それが今同位のトップになってしまってる、みんな誰についていけば正しいのかわかってない、それが一番まずいのよ…あーもう、キタカミも喋れなくなってるせいで任せらんないし…!」
阿武隈「…あれ、みんな海に出て、何してるんでしょう」
明石「…不知火さんや潮ちゃんたち…と言うか、かなりの人数いますけど…」
曙「…奥にはキタカミと春雨もいる…戦闘演習ってとこか、燻ってても意味ないし、混ざりましょ」
明石「私は工廠に戻ります、カートリッジはまだ使わないでくださいね、試作品なので」
曙「はいはい」
阿武隈「カートリッジ一つで6発分くらいだし…試しに使い切りたいなぁ…」
駆逐艦 朧
春雨「…朧さんもキタカミさんに用事ですか」
朧「はい、少しだけ良いですか」
キタカミ[何?]
朧「……次も綾波に負けないためには、どうすれば良いのかわからなくて」
キタカミ[朧はさ、そこそこ砲撃精度良いよね]
朧「…多分」
キタカミ[朧は普通じゃないよ、だから普通じゃない練習をしよう]
朧「…それは…どんな?」
キタカミ「………」
キタカミさんが練習方法を書いたボードをこちらに向ける
春雨「…くふっ…!…ふっ…本気ですか…?」
朧「…え、本当にその通りにやるんですか?」
キタカミ[誰かに見られちゃダメだよ、恥ずかしいからね]
朧「……いや、あの…」
春雨「…でも、確かに……これは予想外かもしれませんね」
キタカミ[朧が本気なら、できる。朧、気持ちで負けちゃダメだよ]
朧「……わかりました」
キタカミ(上手くいけば良いけどなぁ…多分、無理かな)
食堂
イムヤ
イムヤ「…みんなボッロボロね…」
曙「…キタカミ、自分はのんびりしてるくせにガチガチな体力作りからさせるもんだからみんなグロッキーなのよ…大和とか大鳳も居たけど…吐いてたわね」
イムヤ「うえ…」
阿武隈「挙句、体力作り乗り切ったら砲撃練習…あたしと曙ちゃんは1on1で実戦形式…徹底的にみんなを鍛え上げようとしてるのはわかるんですけど…」
曙「…乗り切ったのはあたしと、阿武隈…それから朝潮だけよ」
イムヤ「え?他は?」
阿武隈「…ちょっと窓の外見てください」
イムヤ「え…?うわっ…」
海から這い出た様な格好で大量の人間が地面に上に転がっている
イムヤ「…何で途中で抜けたりしなかったの…」
曙「意地になってたんでしょ…春雨とかムカつく煽り方してたし」
阿武隈「何回か撃ちたくなりましたから」
イムヤ「…ええと、それで…あと1人の生存者は?」
曙「ここに3人で飲み物取りに来て…1人で戻った」
イムヤ「…つまり、2人ともサボり?」
阿武隈「そうです…」
イムヤ「いや、曙はともかく阿武隈はそれよりキツいの毎朝やってるんじゃ…」
阿武隈「やってその後にコレやってるんですよ!!」
イムヤ「…なんか、ごめん」
曙「毎日こんな事させられたら体が持たないわ…」
イムヤ「…あ、なんかキタカミさんが呼んでるっぽいよ、2人とも」
阿武隈「……もう半年くらい顔見たくないです」
曙「次見たら斬っちゃいそうだわ」
イムヤ「…私も連行されるんだ」
曙「しっ…大人しく立ってなさい」
春雨「えーと、キタカミさんの言葉を読み上げますね…「とりあえず今日はお疲れ様、体力測定みたいなものだったので全員にあったメニューを今から組むよ、明日からはもう少し楽になるから安心して」との事で」
山雲「よかった〜…お野菜見にいく元気なくしちゃうかと思った〜」
春雨「「ただし、曙、阿武隈、朝潮の3名には今日のメニューは生ぬるかった様なので追加でやってもらいます」って」
曙「は!?」
阿武隈「そんな!横暴ですよ!」
キタカミ[頑張れ]
曙「頑張れじゃないっての!」
春雨「仲間に入れてくれって言ったのは自分なんですから、責任持ちましょうよ」
阿武隈「キタカミさんの隣で何もしてないくせに…!朝潮ちゃんも不満を言って良いんですよ!?」
朝潮「い、いえ…私は大丈夫です…大丈夫…大丈夫…」
曙「…朝潮が絶望で壊れたんだけど」
春雨「えーと…「今後の戦いの為に覚えて置いてほしい話があります、まず日常生活においてもですが、基本的に物事の表面を捉えるのはやめましょう、行動には理由があります、駆逐棲姫は深海棲艦の動きに理由を持たせます、その理由を見つけて対処してください」」
曙「…例えば?」
春雨「「例えば駆逐級一匹が攻撃もせず、通り抜ける様な動きをしたら?その一匹を攻撃する役割は確かに必要、だけどその駆逐級はみんなの資産を集めようとしている、本隊が後からやってきて、みんなの背中を撃つかもしれない」」
曙(…やられた側からすると苦い思い出ね)
春雨「「他にも、深海棲艦の海なら神出鬼没という特性を利用して数を偽装し、誘い込んでくるかもしれない…どんな危険を孕んでいるのかなんて、誰にも想像できない事、それでも本質を見続けて、仲間と守り合う事で死の危険を減らせる」」
イムヤ「なら、水中は私がやるわ」
曙「…毎回ってわけにはいかないでしょ」
イムヤ「毎回やる、私なんて時間があるのかないのかわからない身よ、死ぬほど戦ってやる」
春雨「イムヤさん、貴方…私の前でそんな事言って、許すと思ってるんですか…?」
イムヤ「私は終わりの時まで座ってる為にここにいるんじゃないの!私が戦えば水中のリスクはどれくらい減るか…わからないわけじゃないよね?」
キタカミ[イムヤの事は後にして、話の続きを…]
イムヤ「綾波の居場所、知ってるのは私だけだよね?」
曙「…居場所?」
阿武隈「居場所を知ってるんですか?」
イムヤ「じゃなきゃ出向いて殺されてないって、戦わせてくれないなら教えてあげない……いや、教えたところで私しか辿り着けない」
曙「あんたしかって…まさか…」
キタカミ[教えて]
イムヤ「……綾波は部下に私を水中に引き摺り込ませてこう言った「ようこそ深海へ」ってね…海面に逆さに立ってたの」
曙「逆さに立つ?」
イムヤ「…シンクロスイミングだっけ、アレと同じ感じ、靴底を海面につけて水中で逆さに立ってるみたいに…」
阿武隈「それが何か関係あるんですか…?」
イムヤ「あそこは逆さなのよ、重力なのかはわからないけど…少なくとも建物があって、それは逆さになってた……綾波は深海棲艦の基地を水中に持ってる、勿論施設の中は空気あったけどね」
阿武隈「…歪んだ世界…」
曙「逆さになるなんて、現実的にありえないわよね…しかも重力を操れる?いや、重力の中心が海の真ん中にあるとして、そこに建物が存在できるのも…色々とおかしい様な…」
キタカミ(綾波は…世界を壊そうとしてるのか、境界線を破壊して思い通りにする為に)
イムヤ「……綾波を止めるなら、私を置いて行くなんて許さないから」
春雨「…イムヤさん」
イムヤ「春雨、自白剤なんか私は聞かないからね?」
春雨「…よく知っています、効かない体にしたのは…私ですから…」