元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
双剣士 カイト
カイト「…なんだか、尾けられてるような…」
敷波「…そうだ、司令官、青葉さん見てない…?」
カイト「…青葉?まさか青葉もこの世界に…?」
敷波「え?知らなかったの?最近会えてないけど…この世界で色々面倒見てくれて…」
カイト「待って、その話も詳しく聞きたいけど…やっぱり尾行されてるかもしれない、エリアに行こう」
敷波「え?何でわざわざエリアに…」
カイト「向こうが管理者じゃないならエリアに飛べば追いかけられない」
敷波「管理者なら…?」
カイト「…考えならある、走るよ!」
敷波を連れてカオスゲートへと走る
昴「あ、カイトさん」
カイト「昴…!ごめん!今急いでるんだ!」
敷波「向こうも走って来てる!緑の服のやつ!」
カイト(まさかタウンの中で仕掛けてくる気じゃ…!急がないと!)
カオスゲートに近づき、ランダムなエリアに転送する
カイト「っ!先読みされてた…!」
青いフィールドに転送される
周りには何人かのPCも居る、誰も出ることはできない様だ
カイト(一般PCも巻き込んで…!)
メトロノーム「捕まえたぞ、蒼炎のカイト」
緑の服、少年の様な出立ちながらに眼鏡が理知性を感じさせる
カイト(見たことないエディットだ…ジョブは…)
体格に見合わない長い袖の先端からナイフが覗いている
カイト(…双剣士?いや、違う…チートPC…敷波も居る以上やり合いたくはない、ゲートハッキングで逃げる…!)
メトロノーム「もし、ゲートハッキングで逃げる様ならここに居るPCは全てキルする」
カイト(…キルされるだけなら、ただのPKなら何も問題はない…それよりも問題なのはゲートハッキングの移動の負荷に生身の体が耐えられるか…)
メトロノーム「…なるほど、脅しは通用しないか…しかし」
PCが敷波を睨みつける
メトロノーム「貴様の様なハッカーの影響でアカシャ盤の正常な運行に支障をきたす…お前の仲間は始末した、ここにはもうお前1人だ、お前を倒し、この世界をリセットする」
敷波「仲間…?まさか、青葉さんを…」
メトロノーム「青葉?名前は知らないが、重槍士だろう?」
カイト(…青葉を…しかも、さっきの口ぶり、ただのPKとは考え難い…まさか、リアルで青葉は意識不明に…?)
カイト「…ごめん敷波、耐えて……すぐに追いかけるから」
敷波「え?司令か…」
敷波だけを脱出させる
メトロノーム「…逃がしたか、何のためにそんな真似を…」
カイト「青葉は、どうなったんだ…!」
メトロノーム「……さあな?このナイフで斬り裂かれた者は意識すらも斬り刻まれる、今頃病院のベッドで寝てるんじゃないか?」
カイト「……そんな物を人に使うなんて…そんなの間違ってる!キミは腕輪の危険性を知ってる!ならその武器の危険性もよくわかってるはずだ!」
メトロノーム「…黙れ、AI風情が」
PCがボソリと呟く
カイト(AI…?)
メトロノーム「貴様はシックザールNo.2、メトロノームが削除する!」
カイト「青葉の仇は討たせてもらう!」
メトロノームが飛び上がり、ナイフを周囲へと投げつける
カイト(周りのキャラを攻撃してる?なんのために…)
メトロノーム「これでお前の味方をするキャラは居ない」
カイト「…僕と一対一で戦う為に…?それだけの理由でこの人達も…!」
双剣を構え直し、メトロノームを睨む
メトロノーム「来い!」
カイト(ナイフの投擲をメインにした中距離タイプ…だけど、武器は近接攻撃もできるナイフ、油断しちゃダメだ…!)
油断せずありったけのアイテムを…!
カイト「暗黒神話の巻物!オルメアンクルズ!」
闇の球体がメトロノームを襲う
メトロノーム「何?!なんだこの魔法は…!」
カイト(やっぱりR:1のアイテムを知らない、これなら有利に立ち回れる!)
カイト「ビバクローム!」
魔法で視界を塞ぎ、メトロノームの背後をとる
カイト「雷独楽!」
メトロノーム「ぐっ…!後ろだと!」
カイト(体制を崩した瞬間に連続で叩き込む!)
カイト「雷舞擾乱!」
メトロノーム「チッ!」
徹底的に背後を狙い、攻撃を続ける
メトロノーム「なめるな!何時迄もそう易々と攻撃させると思うな…!」
メトロノームがこちらに向き、双剣をナイフで受け止める
カイト「っ!」
メトロノーム「貴様をデリートする!」
メトロノームの声に混じり、右から地面を踏みしめる様な音…
カイト「夢幻繰武!」
メトロノームの真上を飛び越えながら斬りつける、それと同時にけたたましい銃声が響き、つい一瞬前まで僕が立っていた場所を銃弾が通り過ぎる
メトロノーム「ぐ…!オルゲル!外したな!?」
オルゲル「うるせぇ!タイミングが悪かっただけだろうが!」
片腕がガトリング砲の男がメトロノームに怒鳴る
カイト(2対1…!…いや、大丈夫だ、絶対に青葉の仇を倒す!)
カイト「雷・々・剣の巻物!メライローム!」
2人に向かって雷を飛ばす
オルゲル「チッ!うぜぇんだよ!」
オルゲルが左手にリボルバーを持ち、こちらへと向ける
メトロノーム「先走るな!オルゲル!」
カイト(ここで倒し切る!)
カイト「巻物・密林の邪法!ラジュローム!」
床を突き破りオルゲルと僕の間に木片が隆起する
オルゲル「チッ!邪魔臭えんだよ!!」
カイト(これで撃てな…い…!?)
ガトリングが木片を撃ち砕く
カイト(この威力…!壁は意味がないか…)
カイト「超流星の巻物!オメガノドーン!」
メトロノーム「オルゲル!上だ!」
オルゲルが隕石にガトリングを向ける
カイト「漸く近づける…!裂破轟雷刃!!」
オルゲル「がッ!?」
先に1人を仕留め、メトロノームに双剣を突き立てる
メトロノーム「ぐ…!油断はなかった、なのに…!」
カイト「青葉の仇は…討たせてもらったよ」
メトロノームから双剣を引き抜く
メトロノーム「く…そ……」
カイト「…敷波を追いかけよう…」
Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域
グリーマ・レーヴ大聖堂
カイト「…敷波、大丈夫かな」
聖堂の扉をゆっくりと開く
カイト「……なっ…!?」
クラリネッテ「……」
眼帯を付けた少女のPCが敷波の襟首を掴み、持ち上げていた
カイト「敷波を離せ…!」
クラリネッテ「……2人は?」
刺す様な視線が此方を射抜く
カイト「……」
クラリネッテ「…やられた?……そう」
敷波が聖堂の床に落ちる
カイト「消えた…!…うっ…?」
腹部への拳打
一直線だったはずなのに、捉えられなかった…
カイト「がはっ!…ぁ…!」
カイト(見えなかった…透明化?いや、速いんだ…島風みたいな戦い方…それなら)
カイト「メライドーン!」
雷の範囲魔法で近寄れない様に攻撃する
クラリネッテ「っ…!」
カイト「…これ以上はやらせないよ…!」
クラリネッテ「……」
睨み合いの膠着状態になる
カイト(…このキャラも、見たことないエディットだ…本当にチートPCなのか…?)
クラリネッテ「…倒す…っ!」
聖堂の天井から何かが降ってくる
ハル「……此処は、どこだ…」
カイト「曙!?」
ハル「…提督、なのですか…!?提督…!」
クラリネッテ「…邪魔が入った…うん、一度戻るね」
眼帯のPCが消える
カイト「…逃げた?」
ハル「…アレは提督の敵だったのですか?」
カイト「…多分…あ…敷波!」
敷波に駆け寄る
カイト「…気を失ってるだけ…か、良かった…」
ハル「敷波は…生きていたのですね」
カイト「みたいだね…リアルに戻してあげたいけど…」
ハル「……申し訳ありません、提督のお言葉が途切れ途切れに…」
カイト「回線が悪いのかな…曙はどこからログインしてるの?」
ハル「離島鎮守府の工廠です、勝手ながら提督のパソコンをお借りしました」
カイト「…まあ、あそこだと回線問題は仕方ないのかな……あれ?」
聖堂の祭壇、まだアウラの生まれていない世界だからこの聖堂には石像がないはず…
だけどそこに、本来石像のある場所に小さな女の子が座っている
カイト「…アウラ?」
アウラ「……」
自身の知っているアウラよりずっと幼く、小さなアウラ
真っ白なはずの衣装はどこか汚れ、歪んだような…
カイト「…アウラ…キミは…」
アウラ「………」
アウラが此方へと手を伸ばす
しかし、伸ばした手はどんどんと崩れていく
カイト「この世界のアウラは覚醒できなかった…?…そんな…!」
アウラの伸ばした手を取る
アウラ「…かあ、さん…」
アウラは崩れ落ち、データの粒となって消えた
カイト「……なんでこの世界は、こんなに…」
悪い方向へ進み続けるのか…
ハル「…腕輪に粒子が吸い込まれて…」
カイト「……アウラ…」
腕輪に手を添える
カイト(…覚醒できなかったアウラが腕輪に取り込まれた…今の腕輪なら、敷波をリアルに帰せるのかな)
腕輪が仄かに光る
アウラ『カイト…』
カイト「…アウラの声…?アウラ!僕がわかるの…!?」
アウラ『…その力は、この世界に留めてはいけません…どうか、此処ではないどこかに…その力は、ただ救う力…どうか、貴方の力で…』
腕輪の光が消える
カイト「…僕の力で…?どうすれば…」
ハル「提督」
カイト「…どうしたの?」
ハル「…いえ…」
何かを言いたそうな素振り
カイト「…そうだ、曙…僕の居ない間、みんなを守ってくれてありがとう」
ハル「…いえ、身に余るお言葉です…」
カイト「僕はもう少しだけ戻れないかもしれない、曙…あと少しだけ…いや…」
まだ、呪い続けるのは…
ハル「提督、私は大丈夫です…私は大丈夫ですから…全て私にお任せください、貴方に頼られなくては私は存在する意味がないのです…」
カイト「…それは、僕がキミに甘えてるだけだ…キミ1人を苦しめてるだけだ」
Cubia「その通り、それは間違いさ」
曙と僕の間にCubiaが降り立つ
カイト「クビア…!」
Cubia「そのデータ、もらいに来たよ、カイト」
カイト「…アウラを…?」
Cubia「そう、そのアウラはもらうよ」
カイト「……なんのために」
Cubia「勿論、ボクが成長する為さ」
カイト(…このアウラのデータをクビアに渡すな…って事か…)
ハル「私と提督の会話を邪魔するな…!」
曙がCubiaに斬りかかる
Cubia「カオスゲヘナ」
Cubiaの手から球体に三つの触手がついた様なクビアゴモラが無数に飛び出す
ハル「ぐ…!」
カイト「曙!」
Cubia「さあ!そのデータをもらうよ…!」
カイト(…仕方ない…!)
カイト「ごめん、曙…!」
曙に向けてデータドレインを放つ
ハル「っ……!確かに、受け取りました…!そして、これの意味も…」
カイト(意味…?)
曙がエフェクトに包まれて消える
Cubia「…逃げられた……か」
カイト「あとはクビア、お前を倒すだけだ…」
Cubia「倒す?……ああ、まさかまだ理解してないの?キミが死ねばボクも死ぬ、ボクが死ねばキミも死ぬ…キミを殺すつもりなんてないんだよ」
カイト「…そんな事、理解してるさ」
Cubia「じゃあ、ボクは道連れはごめんだ」
Cubiaがエフェクトを伴って消える
カイト「……つ……」
膝をつき、そのまま意識を失う