元勇者提督   作:無し

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深い海へ

東京 下北沢

 

「………」

 

「…こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「よく来たね、まさかここまで来るなんて思わなかったよ」

 

「…ただ、会いたくなった、確かめたくなった、この感情の正体を」

 

「答えはわかった?」

 

「……わからない、でも…懐かしい…」

 

「そう、私も懐かしい」

 

「…僕って言わないの?」

 

「それは、ほら、ロールプレイだから」

 

「…そう」

 

「そう、じゃあ、行こうか」

 

「何処に?」

 

「キミの世界に」

 

「私は…何処にいけばいいの?」

 

「…そうか、じゃあ名前はわかる?」

 

「……アウラ」

 

「よかった、アウラ」

 

「うん、わかってる、この身体は…私のものじゃないから、返さないと」

 

「まだ何も言ってない」

 

「この子には妹がいる、たくさん」

 

「そっか、じゃあ、帰らないといけないね」

 

「…私と、この子を分離するために力を貸して」

 

「…それは無理、私にできるのはアウラを目覚めさせることだけ」

 

「どうして?」

 

「それが…私と貴女の繋がりだから」

 

 

 

 

 

「懐かしい空気」

 

「…僕もここにきたのは久しぶりだよ」

 

「いつもここだけは変わらない」

 

「そう、この聖堂だけはずっと」

 

「グリーマ・レーヴ大聖堂」

 

「隠された禁断の聖域、か」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「…離してくれない」

 

「……好かれてるんだよ」

 

「違う、怖がってる」

 

「怖がってる?」

 

「…私を力として見ている、そして、それを無くせば…」

 

「それは…良くないね」

 

「違う、これはいいこと」

 

「……」

 

「この子は、大事な人を守るために、力を持ちたがってる」

 

「………そっか、なら、僕と君で助けてあげよう」

 

「…私と共に歩む限り、私たちが貴女達を守ります」

 

「僕が、そばに居るから」

 

「貴女は、守られてるから…」

 

 

 

 

「…誰?」

 

気づけばベッドに寝ていたのは私だった

うっすらと開く目に、誰かが映り込む

 

「君を見ててあげる、だから、安心して」

 

それがこの夢を見た中で最後に聞こえた言葉だった

 

 

 

駆逐艦朝潮

 

「…あれ?」

 

不思議と心が軽かった

ぽっかりと空いた穴を感じたのに

全く辛くない

 

「大丈夫?」

 

知らない…いや、良く知ってる人が、声をかけてくれた

 

「大丈夫です、信じてますよ」

 

「任せて、強くはないけど、君を助けるために…」

 

私は、いろんな人に守られてる

だから、戦えるんだ

 

 

 

 

離島鎮守府

 

工作艦 明石

 

「ねぇ、見てよこれ」

 

「…提督のパソコンのデータ?これは勝手に触っちゃダメだって言わなかったっけ?」

 

「いや、触りたくて触ったわけじゃなくて、勝手に動いてたから…ハッキングされてたらまずいじゃない」

 

「……で?これがなに?」

 

「ここだけ見ればわかると思うわ」

 

「…データ容量がアホみたいに増えてる…」

 

「ねぇ、これどうするの?」

 

「………死ぬほど容量入れれるヤツ用意したのに…」

 

「外付け、買おっか」

 

「……はい」

 

「よーし!今度電気街行くわよ!」

 

夕張は思ったよりフレンドリーだった

今では友人として仲良くさせてもらっている

軍医としての仕事も普段はないので、パソコン係として活躍している

 

横須賀には今の所帰る話は来ていない

とても助かる

 

「明石!ちょっと来て!」

 

「えっ北上さっ…うわっ!?引っ張らないで!?」

 

「何々何事!?」

 

 

 

離島鎮守府 ドッグ

 

 

「………この人って」

 

「そう、ウチで轟沈した、青葉」

 

「…え、青葉ってここにもいたんだ」

 

「…随分前だけどね」

 

「なんで回収できたんですか…?」

 

「いつも通り、ウイルスバグと戦ってたんだ、そしたらさ、アオボノいきなりデータドレインかますんだよ、驚いちゃうよね」

 

「データドレインをしたら青葉さんが…?どこから…」

 

「海からじゃないかな、沈んでたんだし」

 

「………可能性としてはありますね、でも青葉さんは意識がないみたいです」

 

「…そのうち目を覚まして欲しいけど…」

 

「………轟沈した方ですからね…」

 

結果的には2時間ほどして目を覚ました

 

「…ども…あの…重巡、青葉です」

 

「おかえりなさい!青葉さん」

 

「いやー、めでたいね、おかえり、青葉!明石、先にみんなにも合わせてくるから」

 

そう言って北上さんは青葉さんを連れて行った

 

「…私の知ってる青葉じゃない…」

 

「その…あの青葉さんは、ずっと前線の偵察に行ってた方なんだけど…何度も味方が沈んで、それで…」

 

「それで暗い性格ってわけ?」

 

「…というか多分他所の青葉さんより大人しいと思う、取材とかしたがらないし」

 

「え!?じゃあ、あの子の生き甲斐は何!?」

 

「花の写真を撮ることだって昔聞いたけど…」

 

「……違うものねぇ」

 

「…今呉にいる川内さんなんて夜戦恐怖症だよ」

 

「………ちょっと怖くなってきたわ」

 

「でもね、当然なの、私だって夕張だって、他にもたくさん居るんだから」

 

「ま、そうでしょうね…よし!あの青葉とも仲良くなってみせるわ!」

 

 

 

重巡洋艦 青葉

 

「……帰ってきてしまった…私は…帰ってきちゃいけなかったのに」

 

「ダメだよ青葉、それは言っちゃダメ」

 

「…北上…さん…」

 

「青葉、絶対に深海棲艦になってたことは言っちゃダメだから」

 

「……わかってます、言えるわけがない…です」

 

「大丈夫…誰も青葉を恨んでないから…」

 

「でも、私が…私が何人沈めたか…わかりますか…?」

 

「大丈夫…大丈夫だから…青葉と同じようにみんなを助けるから」

 

「……川内さんは…?」

 

「呉に行けたよ、心配しなくていいんだよ」

 

「よかった……ずっと不安だった…私のせいで川内さんが……」

 

「…そっか…確かに、あの後、川内は夜戦が怖くなった…でも、今は提督が変わって、しっかりみんなを守ってくれた、ここは良くなったんだよ」

 

「…あの…そう言えば…今の司令官は…?」

 

「………今は、会えないかな、だから明石が代理」

 

「…わかりました」

 

「よし!じゃあみんなに紹介しなきゃだから行こうか」

 

「わかりました…」

 

ごめんなさい北上さん、川内さんの水雷戦隊を壊したのは…私なんです

 

「…え?」

 

「………ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

「蒼葉?今、何か…言った?」

 

「い、いえ…」

 

声に、出てた…?

 

「…川内の、水雷戦隊が壊れたのは…青葉の…せいなの…?」

 

「…なんで…」

 

なんで聞こえてる、の…?

 

「いや、今青葉が…え、ちょっと待って、どういうこと?」

 

言わなきゃ…今言わなきゃ…

 

「その…あの時、私は川内さんと連合艦隊として出撃していました……情報収集がメインの私は単艦でしたが…その…敵の空襲を受けて…一撃で私は沈められたんです…海に沈みながら…すぐに…うっ…うぇっ…」

 

「青葉!無理しないで…ちょっと待ってて、バケツ取ってくるから!」

 

ダメ、行かないで!

 

「待って…最後まで…言わないと……私は…!あの時…その場で深海棲艦に…!」

 

私は、私の罪が…!

 

「ダメ!これ以上いうな!お願いだから!」

 

「っ…うぇぇ…っ…うっ……」

 

「青葉!青葉!」

 

 

 

軽巡洋艦 夕張

 

「…強いストレスが原因の気絶ね」

 

「…そっか」

 

「何も食べてなくてよかったわ、吐きながら気絶して窒息、危ない事態になってたかもね」

 

「………聞かなくていいの?」

 

「聞く必要ある?どう考えても北上が無理に連れ回してストレス与えたんじゃないの?」

 

「…まあ、そうかもね」

 

「冗談よ、間に受けないで」

 

「青葉が起きるまでここにいてもいい?」

 

「ダメって言っても聞かないんでしょ?」

 

「…青葉は無理に話そうとする、何があったのか、だから、私しか聞いちゃいけないの」

 

「………そういうこと、分かったわ、また後で戻るから、誰か呼んだほうがいい?」

 

「…じゃあ、翔鶴」

 

 

 

 

 

雷巡 北上

 

「迂闊だったよ、そりゃ、青葉や翔鶴がどんだけ辛かったかわかってなかったしね」

 

「……私は、誰も沈めませんでしたから」

 

「運が良かったね」

 

「…私は不幸艦です」

 

「…幸運艦でも沈んでるよ」

 

「ごめんなさい…思慮のない発言でした」

 

「翔鶴、焦らないで」

 

「焦る…?」

 

「落ち着いて、こっち来な」

 

翔鶴は言うことを聞いてすぐそばにくる

 

「青葉も、おきてるよね、おいで」

 

「…バレてましたか…」

 

「…あら…」

 

「大丈夫だから…ほら、もっとこっちきて」

 

3人で並んでベッドに座る

 

「…ね?安心するでしょ」

 

「………そうですね」

 

「寂しくはないです…」

 

「青葉、青葉が誰を沈めたとしても、誰も責めない、だけど、深海棲艦だったってことは言っちゃダメなの、みんな戦うのを躊躇うから…」

 

「…そんな…」

 

「だから…私に全部教えて、私が聞いてあげる、私と、翔鶴と、青葉だけの秘密だから」

 

「………北上さん」

 

「私も…ちゃんと聞きますから…」

 

聞こえる

やっぱり、この2人の声がよく聞こえる

声じゃない声、心の声

 

「…青葉、泣いちゃいますよ…」

 

「大丈夫、今泣いて、落ち着いたらみんなに会いに行こ、もし笑う奴がいたら私が叩きのめしてあげるから」

 

「…冗談に聞こえませんね」

 

 

 

 

駆逐艦曙(青)

 

「…私が頑張れば、もっと助けられるんだ」

 

立ち聞きが趣味なわけではなかった

ただ聞いてしまっただけ

 

「私が頑張ればいい」

 

まだ条件がわからない

キメラになるのか、救えるのか

その違いはなんなんだろう

 

「でも、やる、私が全力で」

 

 

 

 

 

正規空母 加賀

 

「…胸騒ぎがします」

 

「珍しいですね、今日の日替わりは朧さん達でも雷さん達でもないですよ?」

 

「…流石に気分が高揚します」

 

「高まってるのは心拍数より気分だったみたいですね」

 

「……いえ、本当に嫌な予感がします」

 

「あら」

 

「具体的には…建造で思った艦がでなくて気づいたら資源を溶かしたような…」

 

「……?どういうことですか?」

 

「泥沼に片足を突っ込んでいる気がします」

 

「扶桑さんがギャンブルでも始めたのかしら…?」

 

「この前夕張さんがカジノを作りたがってましたから、それかもしれません」

 

「…むしり取られるわね」

 

「…チャンスですね

 

「あら、案外腹黒い」

 

「照れます」

 

「うふふ」

 

「………でも、本当に何かを忘れているような」

 

それがいいことなのか、悪いことなのかすらも忘れているような

 

 

 

 

 

潜水艦 伊168

 

「…………ぷはっ…よーし、ついた、ここに今日からお世話になるのね…ん?」

 

私が浮上して最初に見た光景は、たくさんの砲塔が自分に向かっていると言うなんとも恐ろしいものでした

 

「……あの、私、本部から派遣されてきたんだけど…」

 

「……敵じゃないんですか?」

 

「はい!敵じゃありません!」

 

戦艦に睨まれたらもう何も言えないわ…

 

 

 

「あ、ついさっき電文が来ました、イムヤさん、歓迎します、提督代理の明石です」

 

「新たな艦種としてのテストですか、ここは最前線でもありますので、万が一の無いよう、気をつけてくださいね、秘書艦の鳳翔です」

 

「はい!」

 

「潜水艦運用かー、前例ないからどうしたらいいのかなぁ…」

 

「あの、ひとつ伺いたいんですけど…」

 

「あ、はい」

 

「提督はどちらに?」

 

「あー、その…今は倒れられて、私が提督代理を務めてます」

 

「え"…ここ大丈夫なんですか…?」

 

「まあ…なんとか成り立ってますので…」

 

「うふふ…」

 

やばいとこに来ちゃったかなぁ…

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