元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域
グリーマ・レーヴ大聖堂
双剣士 カイト
カイト「……っ…?」
敷波「…あ…起きた…!司令官…良かった…」
カイト「…敷波…ごめん、ちょっと疲れたのかな…」
どうやら聖堂の長椅子に寝かされていたらしい
全身が痛い、寝床が悪いだけじゃなく、筋肉痛もあるだろうか…
敷波「司令官…逃がしてくれてありがとう…でも司令官がこんなに傷つく必要なんてないよ…」
カイト「…傷つく?」
自分のPCボディを改めて見ると無傷とはいかなかったのか、薄汚れ、傷付いていた
だけど僕が受けた攻撃はあの眼帯のキャラの攻撃だけ…
カイト「……なんでこんなに傷だらけに…」
聖堂の床にかしゃりと音を立てて何かが落ちる
カイト「……」
駆逐棲姫「はぁ〜い!倉持司令官、敷波、元気にしてましたか?」
カイト「綾波…」
敷波「綾…姉ぇ…」
駆逐棲姫「倉持司令官、敷波をリアルに戻してあげましょうか?」
カイト「…できるの…?」
駆逐棲姫「ええ、私が敷波をここに送り込んだんですから…どうします?」
綾波は敷波をこのネットの世界に送り込んだ
理由はわからない、恨みなのかなんなのか、だとしたら何が原因なのか…
僕には、2人のことは何もわからない
カイト「…敷波、キミが選ぶんだ」
敷波「…今アタシがここを離れたら…司令官、1人になっちゃうよ…?」
カイト「……」
敷波「…アタシも、もう少しだけここに……あ、れ…?」
敷波が頭を抱えて跪く
敷波「う…あぁ…!ああぁぁぁぁッ!?」
カイト「敷波!どうしたの!?」
駆逐棲姫「認知外依存症…敷波は初期症状が始まったようですね」
カイト「…そんな」
駆逐棲姫「すぐにリアルに出してやれば、無傷で助かりますよ?……まあ、警戒する気持ちもわかりますし…ある条件を呑んでくれるなら丁重に扱いますが」
カイト「条件…」
駆逐棲姫「…ほら、これを見てください」
綾波の隣にレ級が現れ、斃れる
カイト「曙!?……いや、違う…ただのレ級…」
駆逐棲姫「ええ、よく見分けがつきましたねぇ!……でも、見分けがつくなら意味ないか…ええと…うん、まあ使えなくはないかな…」
カイト(使う…?)
駆逐棲姫「…とりあえず、敷波の命は保証します、此方で預かりましょう…ほら、お礼は?」
カイト「…ありがとう…」
駆逐棲姫「よく言えました、ねぇ、敷波?」
敷波「司令か…あああぁぁ…!」
カイト「早く敷波を…助けて」
駆逐棲姫「おっ!良いですねぇ♪…じゃあ条件をさっさと終わらせましょうか?」
カイト「……」
駆逐棲姫「レ級さんの力が必要なんです、呼んでもらえませんか?」
カイト「…どういう事?」
駆逐棲姫「ほらほら、早く呼んでくださいよ」
カイト「僕にはそんな事、できないよ…」
駆逐棲姫「じゃあ名前呼ぶだけ!それだけでいいですから…」
カイト「曙の…?」
駆逐棲姫「ほら、呼んでみてください」
カイト「…曙」
駆逐棲姫「もっと悲惨な感じに呼んで欲しいんですけど…?」
カイト「…悲惨って言われても…」
敷波「ぁが……」
綾波が敷波の頭を踏みつける
駆逐棲姫「呼べ」
カイト「…曙…!」
駆逐棲姫「ま、こんなところかな、良いですよ、それじゃ…」
敷波が光に包まれて消える
駆逐棲姫「good by!」
カイト「…どういう事だったんだろう…綾波の目的がわからない上に…敷波すらも渡してしまった、本当にこれで良かったのかな…」
リアル
駆逐棲姫のアジト
駆逐棲姫
駆逐棲姫「最高ですねぇ…私の計画は全て順調、敷波もまあ、約束は守ってあげましょう……駒としての使い道は幾らでもある、殺さずに…クク……ハハハ!」
敷波「…綾、姉ぇ…!」
敷波が此方を睨みつける
怒りをあらわにした目、自身の置かれている立場が分かったらしい
駆逐棲姫「さて、まずどうしようかな」
思案するふりをして指を鳴らす
深海棲艦達が現れ、敷波を拘束し、椅子に座らせる
敷波「え?や、やめて!やめてよ!離して!」
駆逐棲姫「敷波、別にあなたを殺しはしません、傷つけもしませんよ……外見はね」
敷波「…なんで、綾姉ぇが優しいのアタシ知ってるよ…?なんでそんな事…こんなの、間違ってる…」
駆逐棲姫「間違ってる?」
敷波の顔を掴む
駆逐棲姫「何をいうかと思えば、間違ってる?誰に向かって言ってるのか、わかってないようですね?ええ?敷波」
敷波「アタシは司令官やみんなを裏切ってこんなことするのが正しいなんて思わない!」
駆逐棲姫「まあ!自分の意見を持てるようになって偉いですねぇ!でもそれを他人に押し付けるのは褒められた事ではありませんが…そういうの私大嫌いなんですよねぇ…」
敷波(…怒ってる、綾姉ぇが…怒ってる…)
敷波は私に恐怖した表情を向ける
駆逐棲姫「ああ、そんなに震えて、かわいそうに…何が貴方を恐怖に陥れるというのか、私には全く理解できませんが…だって私は怒りに任せて貴方を殺すような愚かなことはしませんからね、あなたの命だけは本当に保証してあげましょう、そうしないとフェアじゃありませんから」
敷波「……」
一挙手一投足、僅かに指を動かすだけでも敷波は震え、恐怖する
前の世界では敷波の前で色々な事をやったが、その毒牙が今自分に向く事をそれほど恐れているのか
駆逐棲姫「やりなさい」
敷波に妙な形のメガネをかけさせる
敷波「え…?な、何これ…」
駆逐棲姫「VRスキャナ…とか言いましたかね、それを模して作ったものです、内部の構造とかもまるで一緒、さて、なんのためにこれを作ったでしょうか」
敷波「VR…仮想現実……い、いや!綾姉ぇやめて!」
駆逐棲姫「お、気づけましたか…貴方の精神をぐちゃぐちゃに壊す為ですよ、ええ、その通り、実に簡単な答えだ…敷波、さようなら?」
敷波「やだよ!綾姉ぇ!綾姉ぇ!」
駆逐棲姫「さて、来客をもてなす準備をしなくてはいけませんねぇ…ねぇ、青葉サン?」
怪物「…ぐ……ぎじゃ…」
駆逐棲姫「……おや、予定より随分と早いですね?」
レ級「…招いたのは、お前だ」
駆逐棲姫「ええ、そうですよ?どうぞこちらに、ゆっくりとお茶でもしましょう」
レ級さんにティーセットの置いてあるテーブルを見せる
レ級「…私はそんな事のために来たんじゃない」
駆逐棲姫「…うーん、青葉さんだけじゃ不足ですか」
レ級「何…?まさかこれ以上誰かに手を出すつもりか?…そんな事許すと思ってるのか…!」
駆逐棲姫「えーと…もう手遅れ、ですねぇ?」
レ級「貴様!」
飛びかかろうとしたレ級さんと私の間に怪物が立ちはだかる
レ級「ッ!……青葉さん…!」
駆逐棲姫「もう意識などありません、見た通りただの怪物です…昨日見せた時より20センチは伸びたのかな?いやぁ、成長期ですねぇ!」
レ級「ふざけるなよ…!」
駆逐棲姫「貴方の一番大切なもの、それが私の手中にあるとしたら」
レ級「……何を…」
駆逐棲姫「貴方は私の物になってくれますか?」
レ級さんが身震いする
恐怖か?それとも絶望か?
顔色は明らかに悪い、元々白い顔がさらに白く、暗く
そして絶望の眼をこちらへとむける
レ級「…何を、した…?」
駆逐棲姫「ご案内しましょう」
敷波を監禁している部屋へと連れて行く
レ級「…アレは、誰だ…?」
駆逐棲姫「誰って…敷波ですよ?まさかわからないわけないでしょう?ほら、よーく見てください、服も同じだし、顔も同じ…メガネと口枷に首輪と手枷足枷がついてるだけじゃないですか」
と言っても、顔で判断するのは難しいだろうからと敷波に近づき、VRスキャナを外して見せる
敷波「…あ、あひゃへえ…?」
口枷のせいでまともに喋ることもできない滑稽な姿をレ級さんが凝視する
どんどんと顔色は悪くなる
駆逐棲姫「さ、敷波、まだお勉強の時間ですよ」
敷波「!…や、やひゃ!やめへ!」
VRスキャナを戻してレ級さんの背後に回り、両肩を掴み、耳元で囁く
駆逐棲姫「敷波の首についてるアレ…実は爆薬が仕込んでありまして、要らなくなったら簡単にポイできるんですよ、もちろんどこか一部でも握りつぶしたら即爆発する、精密な回路を仕込んであります♪」
レ級「……それを…」
駆逐棲姫「ああ、全部言わなくてもわかってますよ、会いたいですよね?良いですよ、来てください」
厳重な重い鉄の扉で遮られた部屋の前に行く
中を覗くには微かな覗き窓から覗き込むほかない
駆逐棲姫「ここです」
レ級「…見えない、扉を開けろ…」
駆逐棲姫「ダメですよ、連れ去ろうとしてるかもしれないじゃないですか…まあ無線式の爆弾なので、此処を離れた途端…」
口とジェスチャーで爆発音の真似をして、微笑む
駆逐棲姫「まさか、倉持司令官に死んで欲しいんですか?ならどうぞ無理矢理連れて行ってください」
レ級「…提督、なのか…本当に…お前は提督をリアルに…戻した…」
駆逐棲姫「でも、せっかく来てくれたのに会えないのは可哀想だし…声くらいは聞かせてあげますよ…倉持司令官?レ級さんが来てくれましたよ〜」
カイト『曙…』
扉のせいで声がいやに反響する
レ級「提督…本当に、そこに居られるのですね…なんで、こんな…」
駆逐棲姫「レ級さんに助けを求めてみたらどうですか?もしかしたら帰れるかも♪」
カイト『助けて…曙…』
駆逐棲姫(ん、しまった…抑揚がおかしかったな…でも、全く気付く様子がない)
レ級「…提督を、解放しろ…」
駆逐棲姫「えー?どうしよっかなぁ…」
レ級「…私は、お前のものになる…約束する、だから…」
駆逐棲姫「って言っても…一回裏切りましたよね?ダメですよ?嘘つきは信用されないんですから…それに、言葉遣い、ちゃんとしてる子の方が私は好きだなぁ?」
レ級「…お願いします、どんな事でもやりますから…」
駆逐棲姫「アハァ…♪待ってました、その言葉…じゃあ早速、貴方を壊すプランを始めましょうか♪」
レ級「…何をすれば…」
駆逐棲姫「取り敢えず、離島鎮守府に帰って常時情報を私に流し続けなさい」
レ級「…え…?」
駆逐棲姫「全員死ぬまで続けさせますよ、貴方は自分の手で味方を殺し続けるんですから」
レ級(…それは…私が…)
駆逐棲姫「返事は?」
レ級「……はい」
駆逐棲姫「よく言えました♪可愛い子にはハグしちゃいます!…うーん、思ったより華奢で柔らかいんですねぇ?」
私の腕の中で震えている
あんなに求めてやまなかった相手がこんなに簡単に手に入った
だけど上辺だけの服従は要らない
心の底までズタズタに引き裂いて、壊して、私以外の何も考えられなくする…
駆逐棲姫「…アハッ♪…名残惜しいですが、今日は帰ってスパイに勤しんでくださいね?」
レ級「……どう連絡すれば…」
駆逐棲姫「あなたなら哨戒と言って海に出るのは実に容易です、その隙にその辺の深海棲艦に紙に書いて渡しなさい、口頭での報告は齟齬が生じやすいですからね」
レ級「…わかりました」
駆逐棲姫「うんうん、よくわかりましたねぇ、物分かりが良くて良い子ですねぇ?」
頭を撫で、帰らせる
駆逐棲姫「うーん…ふふっ…あははっ……アハハハハハ!」
カイト『曙…』
部屋の中から響く声、録音された声を流す
駆逐棲姫「まさか、こうも上手くいくとは…やはり私は天才でしたねぇ?本人を連れてくるのも良いんですが…そうするとCubiaとの約束が壊れちゃいますからね…仕方ないですねぇ…アハハ!」
護衛棲姫「駆逐棲姫様」
駆逐棲姫「おや、護衛棲姫…どうしたんです?」
護衛棲姫「完成致シマシタ、認知ヲ阻害スル薬品デス」
駆逐棲姫「…じゃ、レ級さんが次来たら朧さんに一服盛らせましょう……あ、全滅してないですよね?」
護衛棲姫「恐ラク」
駆逐棲姫「さてさて、これは始まりに過ぎないんですよ、レ級さん」