元勇者提督 作:無し
海上
戦艦 レ級
レ級「…これで全てだ」
装甲空母鬼「確カニ受ケ取ッタ、駆逐棲姫様モオ喜ビニナル」
レ級「……そうか、今後はもっと遠洋で受け渡しがしたい」
装甲空母鬼「断ル、駆逐棲姫様ニココデ受ケ取レト言ワレタ」
レ級「チッ…」
装甲空母鬼「次ヲ心待チニシテオク」
レ級(…私は、どうすれば…)
離島鎮守府へと、戻るしかない
私には…何も許されない
今の私には何もない
駆逐棲姫のアジト
駆逐棲姫「……へぇ?」
前回の簡素なメモとは違い、今度の報告書は指導役、行動時間などが事細かに記載されていた
駆逐棲姫「何が理由なのか、気になりますねぇ…媚を売る為?どう思いますか?敷波」
VRスキャナと口枷を外す
敷波「…ぁ…」
駆逐棲姫「…あれ?敷波?……ああ、もう2日も放置してましたっけ…アハッ、良かったですね、下着とスカートはちゃんと脱がせてあげてるし、その椅子は窪みがあるから垂れ流しでも汚れないですよ」
敷波「……あぅ…」
敷波の口に粥を流し込む
駆逐棲姫「ほら、もぐもぐしてー…はいごっくん、良くできました!うーん、このくらい素直ならもう少しの間飼っててもいいかなぁ…アハッ!」
怪物「グジャアァァァァァ!!」
駆逐棲姫「こらこら、騒がない騒がない、そんなに暴れたいですか?」
怪物「ギ、ギギ…!」
駆逐棲姫「仕方ないなぁ…予定を早めて離島鎮守府に顔見せに行きますか…」
怪物「…ガ…ギガ…」
駆逐棲姫「…佐世保に反応した?思い入れでもあるのか、はたまた何かアテでもあるのか…まあ、情報を取るには良さそうだ…よし、佐世保を攻めましょうか」
護衛棲姫「…駆逐棲姫様、態々駆逐棲姫様自ラガ出ルノハオヤメクダサイ、何ガアルカワカリマセン」
駆逐棲姫「んー…別に不死身の私は何されても良いんですけどね」
護衛棲姫「万ガ一トイウ事モアリマス、ドウカ」
駆逐棲姫(しまったなぁ…ちょっと真面目に作りすぎましたか…遊びづらいですね…)
護衛棲姫「…ゴ迷惑ナ考エダッタデショウカ?」
駆逐棲姫「いやぁ…何とも言い難いですが、私を想った発言である事は認めます、良いですよ、私を大事にする人はなかなか居ませんし、貴方のことも嫌いじゃ有りません、貴方に佐世保襲撃を任せます」
護衛棲姫「アリガトウゴザイマス」
駆逐棲姫(…気になるのも居ますからね、直接確認したかったけど護衛棲姫なら任せても悪いようにはしないでしょう…私は私で作戦を動かすとしますか…)
駆逐棲姫「ね?敷波」
敷波「……」
駆逐棲姫「ふふ、安心していいんですよ?敷波……貴方はもう誰にも求められない…でも、私は貴方を見捨てたりはしませんから…アハッ」
佐世保鎮守府
正規空母 瑞鶴
瑞鶴「…っ…!」
葛城「瑞鶴先輩?どうかしましたか?」
瑞鶴「……悲鳴…聞こえたの、悲鳴が…だけど、何処から…」
艤装を装備し、海の見える窓のそばに行く
瑞鶴「……お願い、もう一度声を…」
助けを求める声…微かに、はるか遠くからの声…
瑞鶴(こっちに、近づいてる…!)
弓を引き絞る
葛城「え!?あ、あの、ここ建物の中…」
瑞鶴「見て来なさい…彩雲」
放たれた矢が艦載機へと姿を変え、声の方へと進む
瑞鶴「……どこ?何がいるの…?」
葛城「瑞鶴先輩…さっきからどうしちゃったんですか?」
葛城が窓から身を乗り出し、彩雲の飛んだ先を眺める
瑞鶴(……何か、何かって何?…でも、何かいる…っ!彩雲を戻らせないと…)
葛城「え、何あれ…」
葛城が指した先に細い光の柱
それと同時に彩雲がロストする…
瑞鶴「……葛城!みんなに伝えて、今すぐ戦闘準備をして集合…!私は提督さん呼んでくるから!」
葛城「へ?え?」
瑞鶴「早く!!」
葛城「は、はい!」
瑞鶴「……まるで、モンスターだった…ゲームのモンスターみたいな…でも、この世界にそんなのは…」
作戦室
度会「未知の生命体に対する戦いとなるだろう、できる限り射程に入らず戦うように」
瑞鶴「それと…さっきの光の柱、見た?あれで彩雲を一機落とされた…かなり高度は取ってたのにね…えーと…何が言いたいのかって、あの攻撃の射程はかなり広いって事」
度会「…そうなると弱ったな」
日向「そうですね、上陸を防ぐ必要もありますが流れ弾で民間人に被害が出ることも考えると……私たちが海側に回る必要があるのでは」
龍田「つまり、通常の深海棲艦と私たちの立ち位置が逆になるのね〜…でも、怪我をしたら帰れないわよ〜?」
瑞鶴「その心配は無いわ、あの光の柱を食らったらどう足掻いても消し炭よ」
財宝「命懸けの作戦になる…いや、いつもの事か」
度会「参加したく無いものがいたら急いで憲兵隊に合流し、住民の避難誘導に従事してくれ」
瑞鶴(…磯風達もちゃんと戦ってくれるのね、でも、ちょっと力不足かな…)
葛城「とりあえず、ありったけの艦載機で先に攻撃しましょう…波状攻撃にすればそう易々と艦載機全滅はあり得ませんし…」
瑞鶴「うん、提督さん、先に仕掛けていい?」
度会「…致し方ないだろう」
強敵を相手に専守防衛は成立するのか、まあ彩雲を落とされた時点で成立だろう
瑞鶴「攻撃隊発艦!」
葛城「攻撃隊全機稼働してます!いつでも行けます!」
瑞鳳「3秒前………葛城!」
葛城「発艦!」
瑞鳳「………よし、私も…攻撃隊出すよ」
何十往復もして仕留める算段のため、寄り道は一切しないように最低限の燃料と爆弾、護衛機の編成で順番に発艦させる
瑞鶴(ホントはこうじゃないけど…大丈夫)
瑞鶴「……え…?て、敵機!」
葛城「航空戦…!私の護衛の機体を先行させます!」
瑞鶴「ありがと…うん、向こうも空母がいるんだ……だけど…」
瑞鳳「…航空戦、優勢…戦闘機の数は無効の方が多いのに…なんで?」
瑞鶴「単純明快に下手な感じがする、戦闘機の扱い」
瑞鳳「…下手、確かに下手…初めて使ってるみたいな、そんな下手さ…」
葛城「そんなことあり得るんですか…?」
瑞鶴「…さあ…でも、攻撃機は堕ちてない!」
第一陣の攻撃隊が対空射撃をかわしながら爆弾を落とす
葛城「当たった!瑞鶴さんの隊の攻撃当たりましたよ!」
瑞鳳「…血の、匂い…?」
瑞鶴「また悲鳴…?でも、この声、聞き覚えがある…ような」
葛城「え?2人揃ってどうしちゃったんですか…!?」
立て続けに爆弾が落ちる、そして悲鳴が響く
この悲鳴の主は、誰…?
瑞鳳「……今私たちが戦ってる相手は、本当に深海棲艦なの…?なんでこんなに…」
瑞鶴「少なくとも彩雲で見た姿は深海棲艦じゃない、まるでゲームのモンスターだった」
瑞鳳「…冗談でしょ…?」
瑞鶴「こんな時にいうわけない…」
額に手を当てる
脳が焼け切れそうに熱い、悪い想像が止まらない
瑞鶴「…戻って来た」
艦載機が矢に戻り、矢筒に収まる
次の準備をしなくてはならないのに、つい座り込んでしまう
本当にそうなら前の世界でやったこと全てが無駄だったという事
瑞鳳「…今は、あの敵を殺すことだけを考えて」
瑞鶴「……やってやる、もう全部…知らない!」
矢筒から矢を引き抜き、引き絞る
瑞鶴「葛城、瑞鳳、もうすぐ龍田たちが出撃する、今は注意を惹く為にも全部一気に叩き込むわよ!」
瑞鳳「わかってる」
葛城「わかりました!」
瑞鶴「全機発艦!」
葛城「稼働全艦載機!発艦始め!」
瑞鳳「攻撃隊発艦」
瑞鶴(数はある、だからせめて倒しきれなくても、取り巻きだけでも…)
瑞鳳「…火薬の匂い…回避行動!」
葛城「へ?」
瑞鶴「艦載機を逃して!早く!」
艦載機が散り散りに動く
頭上を光の柱が一瞬通過する
瑞鶴「っ…!この距離で、この熱…!」
瑞鳳「熱線…本当に消し炭になる…!」
葛城「あ、ああ、あの…私の艦載機が…半数…」
瑞鶴「そんなのわかってる!いいから今は敵本隊を狙わせて!」
海上
軽巡洋艦 龍田
龍田「居た、あれね〜」
日向「対象を確認、航空攻撃を受け続けています、私達が前に出ますので、皆さんは後方から」
磯風「要するに、いつものと言う事か」
龍田「そうね〜」
日向「気づかれましたよ」
戦艦の重たい砲音が辺りに響く
日向「龍田、行きますよ」
龍田「天龍ちゃん任せて〜」
怪物を視界に捉える
日向(4mほどの高さの巨人のような怪物…両腕の拳が変化したような黒い球体は…斬れないか)
龍田(…大丈夫、槍で貫けそうなところは見えた…)
砲撃をしながら距離を詰める
日向「行きますよ…!」
龍田「オーケーよ…!」
同時に斬りつける
怪物「ガアァァァァァァッ!!」
龍田「意外と柔らかいお肉なのね〜!」
日向「その腕、落としてみせます…!」
怪物が両手の球体を撃ち鳴らす
先端に光が集まる
龍田(まずそうね…)
日向「離脱します!」
砲撃をしながら距離を取る
怪物「ギガ…ギ…!」
怪物の前方に球体状の光の球が現れ、それが炸裂する
日向「っ!この熱気!」
龍田「近くにいたら全身大火傷…ね…!」
海が大きく揺れ、波が視界を覆う
日向「揺れが酷すぎて狙えない…!」
龍田「大丈夫、まだ…え?」
波を破り、怪物が距離を詰めてくる
片腕に黒い大きな槍を握って
日向(この巨体からの攻撃、まともに受けたら…)
龍田「逃げる余裕はない、やらなきゃ…!」
槍を構え、先に斬りかかる
日向「龍田…!」
怪物は槍の先端に近い部分を持ち、小刻みな攻撃を繰り返してくる
普通の槍の扱い方じゃない、レンジを捨てた戦い方…
龍田(大丈夫、受け切れる…!)
槍を交わし、攻撃をいなしたまま…
私が斬る必要は無い…!
日向(……何故かはわからない、だけど隙がわかる…この怪物の隙が)
龍田「天龍ちゃん!」
日向「その腕、もらった」
怪物の片腕を肘の部分で切断する
怪物「ギャアアァァァァァッ!!」
怪物がよろめき、苦し紛れに槍を横長に振りながら一歩下がる
日向「…え…?」
日向(既視感がある…何?これは…何に重なった…?)
龍田「体制は立て直させない…!」
怪物が横薙ぎの勢いのままに背を見せる
それを好機と槍を向けて突撃…
日向「…これは…だ、ダメ!龍田!」
怪物はその動作のままに、槍を手で滑らせる
持つ位置がスライドし、槍の石突に限りなく近い部分まで滑らせる
龍田「…あ…」
漸く気づいた、ここまでが全て誘いの罠だった事に
巨体の回転の勢いに槍を滑らせることで槍自体に勢いを乗せ、大腕の筋力を乗せて放つその槍の斬撃は海すらも斬り裂いた
龍田「…っ…?私、生きて…」
日向「無事ですか、龍田…よかった…」
龍田「え…?て、天龍ちゃん…?」
私を伏せさせてくれたおかげで私は助かった…でも、天龍ちゃんは艤装の接続部を斬られて深刻なダメージを負った…
日向「…く……こんな事で…!私は気づけたのに…貴方が…青葉さんだって…」
龍田「…青葉…」
そうだ、あの技…以前は連撃として使っていたけど、同じ技…
つまり、この怪物は元は同じ艦娘だった…
龍田「…た、戦って…いいの…?ねぇ、天龍ちゃん…!」
日向「……」
龍田(意識を失って…!も、戻らないと…でも、戻るには大きく迂回するかこの怪物を越えなきゃ……わ、私にそれができるの…?)
ただここに立っていても波に呑まれそうな感覚
恐怖に支配されたら動くことはできない…
脚に何かの手が張り付く
龍田「い、嫌…!」
すぐに理解できた、深海の暗闇に引き込む手…
なのに、払い除けることすらできない…
海へと強く引き摺り込まれ、顔に何かをつけられる
龍田(こ、これ…酸素ボンベ…?)
イムヤ「日向さんにもつけてあげて、動かないでよ、速力落ちるから!」
龍田(…この子、確か…潜水艦の…)
イムヤ「魚雷一番から四番まで装填…さぁ、戦果を上げてらっしゃい…!」
怪物の方に魚雷を流し、海中を通って逃げる
イムヤ「他の駆逐艦や重巡の子には先に戻るように伝えてる、安心して」
佐世保鎮守府
イムヤ「到着っと…医官は?早く連れて来て!」
龍田「わ、わかったわ…」
イムヤ「怪物は私が足止めしておくから…!」
龍田「…あの怪物は…!」
イムヤ「わかってる……私たちの仲間のことは、私たちがやらなきゃ…曙も来てるしね…!」
海上
戦艦 レ級
レ級「…ああ、なんて…事…なんで私は…」
護衛棲姫「予定通リ、来マシタカ」
レ級「…どうすればいいの…!私はどうすれば…!」
護衛棲姫「大人シク、無様ニ負ケロ、ソウスレバ駆逐棲姫様モオ喜ビニナル」
レ級「……」
青葉さんの槍が私を貫く
何かの怒りをぶつけるように、私を斬り裂き、壊す
レ級「…ああ……ここで死ねたらどんなに楽か」
跪けばどんなに楽か、起き上がらなければどんなに楽なのか
だけど私への罰はそれを許さない
怪物「ギィぃッ!ギャアアァァァァァッ!!」
槍で頭から真っ二つにされ、高出力の熱線で焼かれ、チリにされても私は死ねない…はずなのに
レ級「…再生が、遅い…」
全身が痛い、痛みが消えない…
護衛棲姫「種族ヲ捨テタ末路、良ク味ワエ」
レ級「…こんな、事が…?」
意識を投げ出してはいけないのに、私は意識を投げ捨て、海面に倒れこんだ臥す