元勇者提督 作:無し
海上
駆逐艦 曙
曙「もっと広がりなさい!近くにいたら巻き添え食らうわよ!」
瑞鶴「ほ、本気でなんの合わせもせずにぶっつけ本番…!?」
アオバ「その様ですね…」
朧「……」
陽炎「大丈夫なの?このままで…」
曙「大丈夫か、じゃない…やるんでしょ?」
長門『こちら長門隊、作戦や定位置に到着、艦載機を発艦する』
加賀『艦載機発艦』
阿武隈『阿武隈隊到着、砲雷撃用意完了しています!』
北上『甲標的、出すよ』
イムヤ『イムヤより全隊に通達…ターゲットが基地から浮上!位置は本隊より南西5キロ!』
加賀『捉えました、位置を共有、座標をアップロード、長門さん、大和さん、包囲ヒトフタマル、距離は8キロです』
手元の端末に座標が送られてくる
曙「…座標確認、陣形維持で突っ込むわ」
朧「曙、あんまり近づきすぎないでね、一発でも貰ったら…」
曙「大丈夫、わかってるから」
速力を上げて距離を詰める
阿武隈『砲雷撃開始!撃ってます!』
曙「…派手にやってるわね、こちら曙、確認したわ」
両手に双剣を持ち、構える
朧「この距離で…ソレ?」
曙「まあ、見てなさいよ」
双剣にカートリッジを突き刺す
曙「明石の最新作…!」
双剣を前に向かって振るう
アオバ「…追い風?…いや、もはや突風レベルの…」
曙「体制崩すんじゃないわよ!速度上げて突っ込むから!」
朧「最新作ってこう言う事!?…まあ、多少早くなった気もするけど…」
双剣を鞘に収め、主砲を構える
サイトを覗き込み、引き金を引き絞る
曙「…さあ、青葉を助けるわよ!」
朧「朧隊、交戦開始!」
軽い砲音が響く
曙(反動も弱いし威力もそんなに無い…でも、これは別の強みがある)
曙「さあ、炎のカートリッジ…」
焼夷弾の散弾を怪物に撃ち込む
怪物「ギャアァァァァッ!!ガアァァァァァァッ!!」
怪物が両手についた黒い球体を振り回し、海に叩きつける
曙(波が高く…!)
朧「この高さの波なら…アレができる、任せて!」
波の頂点で朧が飛び上がり、艤装の推進力を使い空中で回転しながら蹴りを放つ
怪物「ガギャァッ!?」
アオバ「…青葉、今助けるからね…!」
陽炎「絶対秋雲を助けてもらうから…!」
怪物「グオォォオアアア!!」
怪物が両腕の球体を撃ち鳴らす
瑞鶴「不味い!離れて!近くにいると熱線で焼き殺される!」
曙「何よそれ!」
駆逐棲姫
駆逐棲姫「うーん、素敵ですねぇ」
戦闘を少し離れた位置で眺める、それだけでも得られるものは大いにある、既に朧さんの手の内を一つ明かしたし、カートリッジの分析も進んでいる
グラスを持ち上げ、乾杯のジェスチャーをする
駆逐棲姫「…うん、良いですね♪最高の肴です…」
空になったグラスに敷波がワインを注ぐ
駆逐棲姫「アハッ…いい気味♪」
敷波を近くに寄らせ、頭に手を置く
駆逐棲姫「…ちゃ〜んと、仕事はしてもらいます、朧さんを徹底的に傷つけるために…」
手元の端末を操作し続ける
駆逐棲姫「…使うまでに間に合うかなぁ…洗脳プログラム」
駆逐艦 朧
怪物、青葉さんが変質した姿とされるそれは攻撃を受け続け、すでに肉は焼け爛れ、千切れ落ち、みるも無惨な姿に成り果てていた
しかし、それでも攻撃の勢いは弱まることを知らず、応戦するこちらも手を緩められない
朧(…データドレインのタイミングがわからない…もう、良いの?それともまだ…)
アオバ「青葉…!」
朧(これだけ傷つけたんだ………もう、良いハズ、きっと…!)
軽く飛び上がり、右腕を向ける
機械が反応し、右腕に幾何学模様が展開される
陽炎「あれが…!」
朧(お願い、青葉さんを…返して)
朧「データドレイン…!」
眩い光が辺りを包む
曙「見えなっ…!」
アオバ「ッ!」
朧「…どう、なったの…」
怪物の肉体が崩れていく
崩れゆく怪物の中から、黒い棒状の何かが何本か海へと落ち、海面に突き刺さる
陽炎「…海に、刺さった…?」
アオバ「…青葉!」
怪物の胸が崩れ落ち、青葉さんの姿が露わになる
かつての、アタシ達の知ってる姿…
朧「やった!上手くいったんだ…!」
青葉さんが海に落ち、海面に立ち上がる
青葉「……」
曙「…青葉…?」
何か、違和感が…
アオバ「青葉!」
曙「待って」
曙がアオバさんを制止する
曙「……青葉、アンタ、あたし達のこと…わかるわよね?」
青葉さんは答えず、黒い棒を引き抜いた
曙「チッ…第二ラウンドってわけ?」
朧「そんな…なんで…!」
曙が青葉さんと打ち合う
槍の様に扱われる棒を双剣でいなす曙、それに対して小刻みな攻撃で有効打を放つタイミングを探る青葉さん
朧(データドレインで元に戻ったのは外見だけ…精神までは元に戻せなかった…?何にしても、今は青葉さんを止めないと…)
曙「あーもう鬱陶しい!その棒切れ叩っ斬ってやる!!」
曙が踏み込み、斬りかかるのに合わせ、青葉さんが一歩引きながら、横薙ぎに槍を振るう
曙(…何か、嫌な感じが…)
曙が防御姿勢を取り後方へ跳ぶ
青葉さんの手の中で棒が滑り、体を回転させながら射程を大幅に伸ばし、槍、腕、身体、全ての勢いを乗せた槍の斬撃…
曙「……な…」
瑞鶴「…剣ごと、斬り裂いた…?」
その攻撃を受けた曙が海面を転がり、斃れる
曙が防御の為に持っていた双剣は刃の部分で斬り裂かれ、もう使い物にはならない
朧「…曙…!」
すぐに助けに行きたい、だけど…それを許してくれない程の殺気
明確な殺意、それを向けられ、動くことすらままならない
朧(何で青葉さんがアタシ達を…いや、考えるだけ無駄なのかもしれないけど…)
アオバ「…陽炎さん」
陽炎「わかってる…朧、私が注意を惹く、援護してくれない?」
朧「…本気ですか、狙われたら…」
わかっていてもいきなり射程距離が倍以上に伸びる、徹底的な接近戦からのその射程距離の変化、対応できるわけがない
陽炎「…やる気出すなら、ここでしょ」
朧「……よし、じゃあアタシが前に出ます、瑞鶴さん、曙を…」
瑞鶴「…オッケー、バッチリ任せて…」
陽炎「チャンスは、全力で作りますから」
アオバ「…はい」
一瞬頭に浮かんだ最善策
青葉さんを撃破する…これは今、この瞬間頭から消えた
朧「こちら朧、長門班、阿武隈班は位置を変更、回収と支援に徹してください」
長門『長門了解』
阿武隈『阿武隈了解です!』
朧(…チャンスは一回きり…多分、綾波に見られてるんだろうけど……手札を隠して勝てる相手じゃ無い)
波が高く上がった瞬間を狙いすまし、波に隠れて接近する
そして接近し…
朧(あの棒をへし折る!)
艤装と黒い棒状の何かがぶつかり合う
朧(この感触…艤装じゃない…どちらかと言えば岩とか…いや、深海棲艦の装甲?)
青葉さんが棒を振り回し、距離を取る
朧(さっきと違う!曙を引きつけた動きとは真逆、距離を……何?この感じ…)
陽炎「貰った!」
陽炎が青葉さんの手を狙い撃つ
朧(手に何か持ってる…アレは、紙?……まさか、いや…そんな事ができたら…わからない、わからないけど…)
主砲を右手に持ち、詰め寄る
朧(今は青葉さんとの戦いを終わらせる!)
煙幕弾を撃ち、視界を奪い、近づく
朧「やあぁぁぁぁぁぁぁッ!」
煙の中へと放った回し蹴りが空を切る
青葉「……!」
背を向けながら此方を睨む青葉さんと目が合う
朧(やっぱり、それで来た、なら…!)
回し蹴りの勢いをそのままに、蹴りを放った脚を海面につけ、軸足にする
全身の勢いを乗せて裏蹴りを青葉さんに向けて放つ
青葉「!」
朧「ッ!!」
爆竹の様な音ともに黒い棒状の何かが弾け飛ぶ
朧「今……ぁが…?」
腹部に黒い槍が突き刺さる
朧(別の…!)
陽炎「捕まえた…!」
陽炎が青葉さんの腕を拘束する
青葉「……ッ」
陽炎「…色々、悪かったと思ってます、だけど…秋雲の事は貴方に任せるって決めたから…!」
朧「ぐ…」
槍が引き抜かれ、柄で陽炎を打つ
陽炎「絶対にここで止める!」
重巡洋艦 アオバ
瑞鶴「…さて、突撃準備良い!?」
アオバ「勿論…!」
瑞鶴「コレ、握っといて」
鏃を渡される
アオバ「…これは…?」
瑞鶴「御守り、何がおきるかわからないから、気休めだけど…多分効くから」
アオバ「…わかりました」
鏃を懐に忍ばせ、速力を上げて突き進む
瑞鶴「…あとはこっちの曙か…気を失ってるだけだけど、胸が大きく切り裂かれてる…回収班が到着するまで2分はかかる上に離島鎮守府まで20分以上…でも、大丈夫、任せて」
アオバ「…お任せします」
とにかく、今は青葉を助ける事だけを考える
私は…絶対に…
青葉「……!」
アオバ(見られた、こっちを認識した…!)
陽炎「さっさと、正気に戻って…!」
アオバ「青葉!お願いだから…!もうやめて!もう自分の手で仲間を傷つけたりしないで!」
青葉が陽炎さんを振り払い、此方を睨みつける
忌々しい何かを見る様に
アオバ「ッ……青葉…!」
この残された手を、伸ばす
ただひたすらに伸ばし続ける事しか私にはできないから…
アオバ「あ……」
だけど、無常にもその腕は青葉の槍に斬り落とされ…
血が溢れて、苦しくて、訳が分からなくて
痛くて、辛いのに…でも、1番失いたく無いものが目の前にあるのに…それを掴む手がないとしても…だとしても、私はまだ生きてるんだから…
陽炎「アオバさん!」
トドメの一撃を振うために槍を構えた青葉に陽炎が飛びつく
陽炎「お願い…もうやめて…!」
青葉「ッ!」
青葉の槍の切っ先が陽炎を捉える
曙「やめろって言ってんのよ!」
曙が槍を持った青葉の腕を蹴り飛ばす
武器を失い、2人に拘束された青葉…最高の、最大のチャンス
アオバ「…青葉ぁぁぁぁッ!」
青葉に飛びつく
掴む手なんてなくても、抱き寄せる腕がなくても…
瑞鶴「リプパラム!!」
陽炎「…あれは…」
斬り落とされた腕が光る
いや、正確にはその手に握られた鏃が光る
その光がまるで私の腕の様に形作り、青葉を抱き寄せる
アオバ「捕まえた…もう、絶対離さない!」
青葉「…!」
光の腕が青葉に染み込む様に消える
陽炎「…何が、起きて…?」
瑞鶴「リプパラム、状態異常回復の魔法…リアルには決して存在しないズルい力…」
陽炎「瑞鶴さん…つまり…」
瑞鶴「そ、これはゲームの力…でも、そうしないと…そこの曙も、青葉も、助けられないと思ったから…例えコレが間違った力だったとしても…使わなきゃいけない時もある、そう思わない?」
曙「…高速修復剤ぶちまけられた気分だわ、急に傷口塞がって、意識回復したと思ったら突っ込まなきゃいけないなんて」
青葉「……」
アオバ「…青葉、大丈夫?」
青葉が虚ろな目で此方を見る
青葉「……おねえ…ちゃん…」
アオバ「…うん、そうだよ……もう、大丈夫…」
青葉「…あ…ぇ…あ…う、腕…」
アオバ「……あんまり見ちゃダメだよ、お願いだから」
青葉「わ、私の…私のせいだ…」
アオバ「違う、青葉は悪くない…操られてただけ」
青葉「…ごめんなさい、ごめんなさい…!」
アオバ「泣かないの…ね?お願いだから…泣かないで」
瑞鶴「少し、いい?」
アオバ「瑞鶴さん…青葉を助けてくれてありがとうございます」
瑞鶴「ちょっと痛いわよ」
アオバ「え?」
瑞鶴「リプス」
アオバ「っ〜!!?」
切断された部分に激痛が走る
アオバ「痛…!ぁえ?」
瑞鶴「落ちてた腕、拾ってきちゃった…ちゃんとくっついてるかわかんないけ…ど…」
瑞鶴さんがパタリと倒れる
アオバ「え、ちょっ…瑞鶴さん!」
瑞鶴「…ごめん、私燃料切れ…魔法使うと死ぬほどしんどくなるのよ…もう限界」
青葉「…あの」
瑞鶴「んぇ?」
青葉「…ありがとうございます、私の事、それと…お姉ちゃんの事」
アオバ「……青葉」