元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
駆逐艦 敷波
潮「クマだ…」
漣「This is a bear…」
曙「子熊ってこんななのね、可愛いじゃない」
朧「…えー……っと…」
朧が大きくため息をつく
朧「何?敷波、飼うの?食べるの?」
敷波「食べ!?た、食べないよ!?この子が海で溺れてて…」
青葉「小さいヒグマの子供なんですけど…船の事故なにかの報告入ってたりしませんか?」
朧「うーん…アタシは知りません、というか船の事故だっとして…何でクマが…?」
漣「動物園用の輸送?」
潮「だとしても今の時代にそんなことするかなぁ…」
曙「食べ物とかならわかるけど…え?こいつ食料?」
朧「いや…流石にないでしょ…それで、敷波はここで飼いたいってこと?確かに島も狭くないし、奥の方は森みたいになってるけど…」
敷波「いや…その…アタシ、本土に行こうかなって…それでこの子も連れて行ければ…と」
朧「本土に?」
朧の顔が明るくなったような気がした
それがアタシの心により陰を作る
漣「…なして本土に?」
敷波「…いや…それは…」
漣「…もし、もし私が空気読めてないならごめんだけど…そういうの苦手だし…でも、別にシッキーの事をどうこうする人はいない…と思う」
曙「シッキー…?」
漣「あだ名…勝手に考えてたけど…」
漣から向けられる目線は…恐怖とは違う怯え、アタシに対する嫌悪感や恐怖心じゃなく、別の何かに対する怯え…
敷波「…いや、そういうのじゃなくて……ほら…その…」
漣「ここならそのクマちゃんもここに居やすいだろうしさ、ね?ボーロ…」
朧「えっ…あ……うん」
敷波(…やっぱり、朧は…)
漣がアタシの手を取る
漣「今、ここで仲直りしないと…二度とできないし、ここで逃げたら綾波とも二度と会えないかもしれないよ…」
敷波「え…?」
漣の振り絞る様な声には不安な色があった
アタシと関わる事、綾姉ぇと関わる事…
前の世界で直接殺されかけてる立場なのになんでそんなに気を遣った様な事…
曙「漣…」
朧「………来るもの拒まず、って言葉もあるし…離島鎮守府は敷波を受け入れるよ」
離島鎮守府は、アタシがここに留まる事を許してくれるのなら…
敷波「…じゃあ…お世話になります」
ここまで言われてはとても断れなかった
朧も覚悟した上でそう言ってる、朧に何があったのかなんてみんな知ってる、なのに…漣は朧の気持ちを無視してまでアタシをここにとどまらせて…
敷波(…とにかく、アタシはアタシにできる事をやるしかない…か)
漣「それで?この子のお名前は?」
敷波「それはもう決めてる、この子はプチグソって名前にするんだ」
潮「プチグソ…?」
青葉「…それは…」
敷波「この子は…代わりじゃない、あの子の分まで、できなかった事をこの子にしてあげたいと思って、そう思って…重い、かな…」
曙「プチグソって名前に何があるか知らないけど、理由があって、納得して決めたならそれでいいんじゃないの?」
青葉「…そうですね、敷波さんがそうしたいなら、きっとそうした方がいい…そうすればきっと1番の大事な存在になりますから」
敷波「うん…よろしく、プチグソ」
プチグソは小さく鳴き、アタシの方へと近寄った
漣「おお!気に入った!?」
潮「みたいだね、かわいい…」
朧「一階の窓際の部屋、空けるね」
敷波「ありがとう…!」
曙「試しに裏の林に連れて行ってみる?」
潮「明石さんに首輪作ってもらったほうがいいんじゃないかな…」
青葉「とりあえず、工廠に連れて行ってみましょうか」
曙「食わないように食堂に話通すのが先じゃない?」
敷波「それは急がなきゃ…みんなにも挨拶したいし、1番人集まりそうな食堂から…」
曙「決まりね、アンタらは?」
漣「あ、後から追いかけますぞ〜」
朧「アタシも」
漣「…ボーロ、ごめんね」
朧「…いや、ありがとう漣…アタシも敷波に関わり続けるか迷ってた…でも、まだ、関わることを決められた、漣のおかげだよ」
漣「…そう言ってくれてありがと…ほんとに怖かった、ボーロを傷つけたくないけど、ボーロだってこのまま終わりたくないはずだって…勝手な事してみんな傷つけるんじゃダメなのにって…」
朧「…大丈夫、アタシは心配ないよ」
駆逐棲姫のアジト
駆逐棲姫
駆逐棲姫「さて、そろそろ仲良くしてくれる気になりましたか?イムヤさん」
イムヤ「…綾波、こんな事もうやめよう?曙も…!」
レ級「…すみません」
駆逐棲姫「イムヤさん、私は貴方が屈服してくれるだけでいいんですよ、忠誠を誓いここで生きて死ぬ事を選ぶか…私の手で解剖されるか、ほら、選んでくださいよ」
イムヤ「綾波やみんなと生きるのは嫌じゃない、だけどこんなところで終わりたくはない…!」
駆逐棲姫「んー…まあ、腕一本くらいはやっときなさい」
レ級「っ…!……ごめん、なさい…」
レ級さんがイムヤさんの背後に回り、左腕を伸ばし、膝に足を乗せる
イムヤ「えっ…う、うそでしょ…?曙!やめて!」
レ級「……」
レ級さんが祈る様にこちらを見る
ああ、なんて愚かなのか、そんな目線を向けては私が興奮するだけだというのに…
駆逐棲姫「その人の腕と、あの人の命」
レ級「!……ああああああ!!」
イムヤ「ぃぎっ…!?あがぁぁっ!」
駆逐棲姫「わあ、骨見えてますよ!触っていいですか?いいですよね?ああ、ここの神経も引っ張りたいなぁ…!」
イムヤ「っ…ぐ…!」
駆逐棲姫「死ぬ程痛いのに…それでもそんなに歯を食いしばって声を上げずに耐える……私の最高に好きなタイプですよ…いいですねぇ…!」
イムヤ「曙…!綾波…!何でこんな事…!」
駆逐棲姫「私の要求に応えてくれれば済んだ話なんですよ、大人しく全部話してくれませんか?離島鎮守府の内情」
要するに、裏を取りたい
このレ級さんは嘘つきなのか、正直者なのか
イムヤ「……絶対嫌…もう、私がこれ以上…」
駆逐棲姫「はぁ…」
立ち上がり、イムヤさんから距離を取る
駆逐棲姫「別にいいんですよ、殺したはずの貴方がどうやって生き返ったのかも気になりますが…何より私は貴方にそこまで興味がない、答え合わせの為に生かしてただけなんです…」
レ級「…ま、待って…」
駆逐棲姫「殺しなさい、首を落とすんじゃなくて、殴り殺しなさい、全身を殴ってぐちゃぐちゃのミンチにして見せなさい」
イムヤ「…!」
レ級「そんな…事…」
駆逐棲姫「やらなければ…どうなるかわかってるんでしょう?」
レ級「……」
レ級さんが項垂れる
イムヤ「…曙」
レ級「イムヤ…さん…」
イムヤ「大丈夫、私は死なないから…!アンタにも、綾波にも…絶対に殺されたりなんかしてやらないから…!だから思いっきりやって、私の事なんか気にせずさ…」
レ級「…そんな」
駆逐棲姫(…本当に死なないのか、それとも自身の命と引き換えに曙さんを守るのか…どちらにしても私好みの展開ですね)
駆逐棲姫「私は今から二、三時間ほど席をはずしますが……ま、もし生きてたら殺しますからね?」
レ級「……は、い…」
視線を外す
レ級さんの振り上げた拳と、肉が潰れる音、水音が背後から小さく木霊した
駆逐棲姫「さあ、どうなるやら…楽しみです…私の次のターゲットは…彼女にしましょうか?」
護衛棲姫「失礼シマス、駆逐棲姫様…既ニ対象ハ一週間以上前ニアノ基地ヲ離レテイマシタ」
駆逐棲姫「でしょうね、何とも冷血な…自分だけ安全地帯にいるなんて許しませんよ、島風さん♪」
護衛棲姫「潜伏先ノ特定ハ完了シテイマス」
本土 青森
島風
島風「…ふー…」
この土地に来てまだ数日独り暮らしになったせいで何でもやらなきゃいけない
何でも自分でやって、何もかもを自分が…
寂しくもある、戦争の感覚が忘れられない時もある
だけど時間と共にそれらを忘れていくはず、いつか、この平和な時間を楽しめる様に…
大湊警備府には歩いてすぐに行ける距離だし、行ってみたいとは思っていただけど今の私が行っても良いのかという疑問はある
島風(…ちょっと寂しいな…)
辛く、冷たく、寂しく
孤独で、苦しく…
決して生きる事には困らない、だけど
満たされない、私は満たされていない
幸福ではない、平和とは等しく幸福であるとは限らない
私は惨敗した後、本土にいる人達が羨ましくて、戦いたく無くて、死ぬのが怖くてここに来た、だから私は幸せなんだ
戦わなくていいから、幸せなんだ
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
双剣士 カイト
カイト「…人がいない」
普段なら人で溢れかえるタウンがほとんど無人状態…そんな事、あり得るのだろうか
…とにかく今は目的を果たさなくてはならない
カイト「…あ、居た…昴、どうしたの?急に呼び出しなんて…」
昴「…司を見ていませんか?その…最近、タウンにいる人も減ってしまい…他に聞ける人も…」
…確かにおかしい、さっきも思ったけど他のPCがいない
タウンに僕と昴しかいないなんて事、普通はありえないのに…
昴「…連絡もつきませんでした、メンバーアドレス自体が失われていて…その…唯一残っていた連絡先は、貴方だけでした」
カイト「……罠」
昴「え?」
周囲の景色が切り替わり、水色のフィールドになる
フリューゲル「おー、さすが.hackersのリーダー…勘がいいねぇ」
黒いロングコートに長い白髪、そして片手の拳銃…
カイト(フリューゲル…!つまり、この人のプレイヤーは曽我部さん…不味い所と敵対しちゃってるな…)
フリューゲル「…なんだ?随分と身構えちゃって…やる気十分じゃない」
カイト(冷静になろう、今なら取り返しがつく、ここで戦う意味は僕にはない、何とかリアルに戻してもらわないと…!)
フリューゲル「……」
拳銃がこちらを向く
カイト「待ってください、僕に戦う意思はありません」
フリューゲル「だったら大人しくしてな、元の時代に戻してやるから」
カイト「時代…?そうか、まさかここは過去の世界…?パラレルワールドじゃなかったのか……いや、だとしたらアウラが…!」
過去のアウラが消えた…それは最悪の事態…
フリューゲル「そ、アウラは消えた…お前さん達のせいでな、仕方ないからアカシャ盤はリセットだ…ったく、もっとちゃんとしたセキュリティならこうもならねえのに…」
カイト「リセット…?」
カイト(リセットされたら…どうなる?この世界は?それだけじゃない、僕は消えるのか、それとも…)
フリューゲル「っと、その前に…青葉ってキャラについて知ってる事全部吐いてもらわないとな」
フリューゲルの視線が昴の方を向く
カイト(まさか…!)
フリューゲルの撃った拳銃の弾を双剣で弾く
カイト「っ!…これは…」
剣を一つ投げ棄てる
床に落ちた剣が岩のような質感に切り替わる
フリューゲル「……反応が早い…まるで知ってるみたいだな…」
カイト「石化…そんなものをプレイヤーに…?何でそんな危険な事を…!」
フリューゲル「ま、こっちもお仕事なんでね」
残された片方の双剣を鞘に収め、別の双剣を取り出す
カイト(対応スキルは…これだ!)
カイト「ムミンレィ!」
フリューゲル「チッ…睡眠デバフか?面倒な物を…」
カイト(あの拳銃を取り上げないと、昴が危険だ…!)
カイト「双邪鬼斬!!」
徹底的に拳銃を狙った攻撃
フリューゲル(コイツ、武器だけを狙って…!)
フリューゲル「魔槍!ナハトマート!」
フリューゲルの周囲に光の槍が現れ、こちらへとゆっくり飛んでくる
カイト(これは確か…爆発効果がある…!)
昴の方に走り、昴を連れて槍をかわす
昴「え?こ、これは!?」
フリューゲル(まるでこっちの手を全部読んでる様な…)
カイト「絶対に、やらせない…青葉も、昴も…!」
カイト(リアルの青葉の意識が戻ったとしても、居場所はヘルバが隠してくれるはず…!)
フリューゲル(…ちと、分が悪いか?…出直すべきか、流石に…)
カイト「…フリューゲルさん」
フリューゲル「…何で、俺のネームを知ってる?」
カイト「お願いします、青葉には手を出さないでください」
フリューゲル(…なんでその青葉のプレイヤーを庇う?そこから洗う必要がありそうだな)
フリューゲルがエフェクトに包まれて消える
カイト「あ……リアルへ戻る方法…訊けなかったな…」
カイト(…仕方ない、今は装備を集めて…戦わずに済む手札を作ろう…)
石化した双剣を鞘に収める
昴「…カイトさん、守っていただき申し訳ありません」
カイト「いや…それより僕も司たちの事が気になるし、何があったか教えてくれない?」
昴「…司は、自身のガーディアンにミミルやベア、BT達をキルされ、心を病んでしまいました…それ以降は何も…」
カイト「…探してみよう、何かは見つかるはずだ」