元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
駆逐艦 春雨
春雨「…貴方が生き物を?何の冗談ですか?」
敷波「…まさか、春雨にそこまで避難されるとは…」
春雨「私からすれば気軽に人の命を奪う貴方が大なり小なり命を預かる、というのは…いかがなものかと」
敷波「そこまでボコボコに言われるなんて…というか、アタシは気軽に人の命を奪ったりなんか…」
春雨「気軽とか、そんなことはどうでもいい…貴方が人の命を奪ってきたことが許せない…朧さんにした事も勿論そうです、しかし何より私の前で、綾波さんが死んだ、それも貴方の手で…それが何より許せない…」
敷波(…春雨も綾姉ぇの事を大事に思っててくれたんだ…)
敷波「アタシはアタシのした事に対する責任を取りたい…けど、今のアタシは…あまりにも弱すぎるから…」
春雨「……吐き気がしますよ、貴方の言葉は」
敷波「…それは悪かったね、だけど…」
だけど、なんて言えばいいんだろう…わからない…
春雨「貴方は何故、あんなにも貴方を想ってくれていた姉を殺せたんですか…」
敷波「…それは、アタシが勘違いしてたから…綾姉ぇが前みたいな…悪いことばかりやってるんだと思ってた、間違った正義感とか、そんなんだと思うけど…止めなきゃって……ああ、そうだ、そっか…」
春雨「…どうかしましたか」
敷波「…ようやくわかった、綾姉ぇが怒ってた理由…アタシが綾姉ぇを決めつけてたからなんだ」
春雨「…決めつける?」
敷波「この人はいい人だ、とか…悪い人だって決めつける…それが綾姉ぇは嫌いで、アタシにされた…ただそれが気に食わなかった…」
春雨(そこまで小さい人だとは思いませんが)
敷波「…納得できないって顔してるけど、綾姉ぇは他人の価値観に当てはめられるのが嫌いなんだよ…それに、前の記憶も合わさって…やる事もえげつなくなってるけど…」
春雨「…なるほど、それがわかったから何かあるんですよね?」
敷波「…いや、何も…」
春雨「はぁ……」
敷波「…何とかして、優しい綾姉ぇに戻そうって考え方が間違ってたんだ…その考え方のうちは…和解なんかできない」
春雨「…まさか貴方あのままの綾波さんを受け入れると?」
敷波「綾姉ぇは優しかった時のことを忘れたんじゃない、ただ性格だけ前と同じになっちゃっただけ…でもさ、きっと…仲直りさえできれば…」
春雨「…私は深海棲艦と化した事によるAIDA暴走かと思ってますが…」
敷波「黒い感情の増幅…だっけ、それは理解できるよ、それもあると思う…でも、それだけじゃない、綾姉ぇは自分のやってる事理解して、楽しんでたよ」
春雨「……」
敷波「それでも、人間になったおかげで今の綾姉ぇは優しさを持ってる、元に戻すって言い方は違うけど、求めてる結果には近づけると思う…」
春雨「…納得して和解、か」
敷波「それが無理なら…ぶっ叩いてでも、何とかするよ」
春雨「……やれるものならやってみなさい」
敷波「言われなくても…」
春雨「…それと、貴方のペット、一度連れてきてください、健康状態位は診れますから」
敷波「…良いの?」
春雨「動物に罪はありません」
春雨(まあ、何を拾ったのかは聞いてませんけど…猫だと嬉しいのですが)
敷波「わかった!すぐ連れて…あれ?」
キタカミ[探したよ、敷波]
杖をついたキタカミさんが入ってくる
春雨「キタカミさん…杖ですか、脚がより悪く?」
キタカミさんは目を閉じ、首を横に振る
うんざりした表情から肯定とも否定とも取れるが…どうやら肯定らしい
キタカミ[それより、敷波もらっていい?訓練に参加させたいから]
春雨(また犠牲者が出るのか…)
春雨「どうぞ、ご自由に」
敷波「訓練…よし、頑張る」
キタカミ[長距離狙撃メインに組んでるから、頑張って行こうね]
駆逐棲姫のアジト
イムヤ
イムヤ「……ぁ?…寝てた?…だいぶん体力使っちゃったからなぁ……うげっ…!」
すぐ隣に置いてある食事が乗ったプレートに虫が湧いている
イムヤ(…虫、嫌いなんだけどなぁ…払い除けて食べなきゃダメ?虫の食べかけを…)
触らない様に虫を威嚇して追い払おうとする
イムヤ「あーもー!なんでどっか行ってくれないの!」
重い鉄の扉が何かにノックされる
イムヤ「…!」
綾波「失礼します、お加減はいかがですか?」
イムヤ「え…?あ、綾波!?駆逐棲姫の姿じゃなくて…?」
綾波「はい、私です…」
イムヤ(どうなって…まさか元に戻った…?)
綾波「…ああ、やっぱり…寝てる間に置いた物ですからこんな事に…」
綾波が虫を払い、プレートを片付ける
イムヤ「ね、ねぇ…綾波?…元に戻ったの…?」
綾波「……それはお答えしかねます…待っててください、お食事を用意しますから」
そう言って綾波は牢屋を後にして…
20分後
綾波「お待たせしました、と言っても簡単なものだけですけど…」
そう言って温かい食事の乗ったプレートを目の前に置かれる
イムヤ「この献立…」
綾波「ちょうど、作れたので…」
あのマンションで綾波が作ってくれたものと同じ…
イムヤ「……うん、同じ味…綾波…」
綾波「…今日はこれで失礼しますね、イムヤさん…それと、その食事については誰にも何も言わないでください、たとえ私相手でも」
イムヤ「え…?」
綾波「どうか、私を信じてくれるのなら…」
そう言って綾波は私の牢屋を後にした
イムヤ(どういう意味?…よくわからない…)
翌日
駆逐棲姫「どうも〜、イムヤさん」
イムヤ「…綾波…?」
駆逐棲姫「ええ、私ですとも」
イムヤ(…聞きたいけど、今は従うべき…)
駆逐棲姫「わざわざ私が出向いてくれた事に感動でもしましたか?さっさと離島鎮守府の内情、語ってくれれば満足なんですけど」
イムヤ「…司令官、本当にここに居るの?」
駆逐棲姫「…居ませんよ?居たら直接レ級さんの目の前でいたぶるに決まってるじゃないですか」
イムヤ「……やっぱり、居ないんだ…」
イムヤ(曙に伝えなきゃ…なんとかここを逃げ出して…)
駆逐棲姫「もしかして私を出し抜こうとか…考えちゃってます?…あー考えちゃってるかー…何を考えてるのかなぁ…多分レ級さんに伝えようとかかなぁ…図星ですね♪」
イムヤ「何1人で喋って…」
駆逐棲姫「表情筋…指先…肩…この3つで私は相手と嘘偽りのない会話ができます…例えばイムヤさん、貴方のクセですが…恐怖故に真実を指摘されると左肩が持ち上がる、指先が丸まるなど…要するに防御反応が見られます」
イムヤ「え…?」
駆逐棲姫「ああ、もちろんブラフを使おうとしてもダメですよ、私の前でそんなもの…通用するわけないですからね?」
イムヤ(…何、この感じ…心臓を掴まれてるみたいな…)
駆逐棲姫「そう、その目です…間違いのない怯えの目」
わからない、理由がわからないままに体が少し後退りする
駆逐棲姫「本能的恐怖には誰も抗えません、恥じる事はない…負けを認め、楽になれば良いんですよ、私は貴方を許しましょう」
イムヤ(…許す…?曙をあんな目に合わせて?ダメ、今ここで私までそうなれば…みんなが…!)
イムヤ「っ……そんなの…!」
駆逐棲姫(おや、何かがイムヤさんを奮い立たせましたか)
駆逐棲姫「お断り、というのですね」
綾波が目の前まで近づき、私の胸に手を当てる
駆逐棲姫「ああ…鼓動が早いですね…」
イムヤ「……何…っぁ……が…」
駆逐棲姫「比喩ではなく、心臓を鷲掴み…ですね?」
胸の肉を突き破り、胸骨を砕き、心臓を掴まれる
駆逐棲姫「…ほら、苦しくなってきた…心臓が動かなくて、酸素が行き届かなくて…」
イムヤ「か…ひゅ…」
イムヤ(なんで、酸素なんかなくても…ぁ…ダメ、意識が…)
綾波が耳元に口を近づけ、囁く
駆逐棲姫「…貴方の心は私のもの、貴方の全てに私が好きに命令をくだせるんですよ?…つまり、貴方にとどめを刺すことなんて実に容易なんです、あの拷問はあくまでも曙さんにやらせた前座ですから」
イムヤ「か……は…」
駆逐棲姫「おや、オチましたか…つまらない……さて、島風さんを迎えに行くか、それとも曙さんを手駒にするか…どちらも魅力的ですねぇ」
離島鎮守府
駆逐艦 朝潮
朝潮「お疲れ様でした」
キタカミ[おつかれ〜]
訓練の過程を終える
私の修得内容は戦場において周りの細かな動作から状況を把握する…つまりリーダーとしての立場で戦う事を求められている
荒潮「調子はどぉ?改二、良い感じなのかしら〜?」
朝潮「完璧です、メインの主砲の威力も申し分ない上にカートリッジも複数いただけました、おかげでバリアブルな戦い方ができそうです」
荒潮(…バリア?)
朝潮「全体の艤装を強化するにあたり、次は戦艦や空母を強化する予定だそうです」
荒潮「そうなのね〜…へー…?」
朝潮「荒潮?どうかしましたか?」
荒潮「何も〜?それより、あの子…敷波ちゃん、凄いわね〜」
朝潮「…そうですね、基礎体力は問題ありのようでしたが…体幹が非常に良い、艤装を装備してあの体幹、狙撃を中心としたスタイルになると聞いてはいましたし…なんと言えば良いのでしょうか…」
荒潮「…私はてっきりそういう装備を使えば誰でも狙撃手になれると思ってたけど…違うのね〜」
朝潮「ええ…そうですね、特に海上では…」
荒潮「揺れるものね〜」
朝潮「…私、もう少し試してから戻りますから、荒潮は先に」
荒潮「は〜い……バリア…バリアが貼れるのかしら…?」