元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
提督代理 朧
朧「…あれ?」
漣「……」
放心状態で立ち尽くす漣、そして血溜まりに倒れた潮…
朧「潮!…漣!何があったの!?」
漣「…え…?」
ハッとした表情の漣が信じられないものを見る様な目でこちらを見る
漣「なんで…こんな事、したの…?潮が何かした?ねぇ…!」
朧「え?」
漣が恨めしそうにこちらを睨みつける
朧「さ、漣?」
漣はこちらを睨みつけたまま、ナイフを拾い上げる
朧(…ナイフに血がついてない、つまりナイフは凶器じゃない…でも、漣の様子がおかしい…というか、なんで…)
漣は此方にナイフを向ける
漣「何もしないで…お願いだから…!」
朧「…待って、漣、落ち着いて…?」
漣「動かないで!」
一歩にじり寄ろうとしただけで叫ばれる
話を聞いてくれる雰囲気でもない
朧(…制圧するのは簡単だけど、最終手段…とにかく、急いで潮の安全を…)
漣「ねぇ…綾波…?」
朧「え…?」
漣「綾波はなんでこんな事するの…?今までいろんな悪い事して来たの知ってるよ、でも敷波も、ボーロも、春雨さんも…みんな綾波のこと心配してるんだよ…?」
朧「ま、待ってよ漣…アタシ…朧だよ?何言って…」
漣「いや…何言ってるのはこっちのセリフだよ…!ふざけないでよ、今ならみんな許してくれるよ…?お願いだから…!」
朧「漣…ホントにアタシが綾波に見えてるの…?」
漣「…他に誰だっていうの?!別の駆逐棲姫?それとも新しい敵?なんなのかわかんないよ!」
朧(…ふざけてるんじゃない、ホントにアタシだってわからないんだ…それなら…)
朧「漣、とりあえず潮を医務室に…!早くしないと死んじゃうよ…!」
漣「どの口で……あーもう!担ぐの手伝って!?」
朧「…わかってるって…」
海上
駆逐艦 曙
曙「なんでこの雨の中夜間哨戒なんかしなきゃいけないのよ…」
球磨「しかも妙ちくりんなメンツクマ」
多摩「軽巡2と駆逐艦1、低燃費ニャ」
曙(まあ、炎使用禁止が出てるから確かに燃費は低いけど…)
球磨「ま、心配ないクマ、球磨達もそこそこ強いし、その辺の敵なら問題ないクマ」
多摩「モチのロンニャ」
曙(呉組って言えば川内型のイメージだったけど、確かに球磨型も弱くはない筈だしね…)
球磨「……クマ?」
多摩「ニャ…」
曙「アンタら人間らしいコミュニケーション取れないの?」
球磨「クマじゃないクマ」
多摩「ネコじゃないニャ」
曙「いや、そうじゃなく…て…?」
ほぼ無音…いや、全くの無音だった
雨の音と機関の音だけが響く世界で、二つの音が消えたという異常
曙「…え?」
背後を確認しようと振り返る
横っ面に鈍い衝撃を受けて体が崩れ落ちる
そして背中に重量を感じる
駆逐棲姫「よッ…と…こんな体勢で失礼します、どうも〜…曙さん」
あたしの背中に綾波が腰掛けて楽しそうにこちらに話しかけてくる
曙「綾波…!」
駆逐棲姫「いやー、あんまりやると狡いかなとは思ったんですが…やっぱり暗殺って簡単ですよねぇ?」
曙「球磨と多摩は…!」
駆逐棲姫「死んでませんよ、気絶しただけです、優しい私の計らいでね?」
曙(…今、殺せたのに殺さなかった?なんで…)
駆逐棲姫「お答えしましょう、貴方にお伝えするためです」
曙「……まるで心でも読んだみたいな言い方ね」
駆逐棲姫「読んでますからねぇ!さて、それよりですが…潮さん、ヤっちゃいましたよ♪」
曙「なッ…!」
駆逐棲姫「まあ、死にはしません、臓器には手を出してませんし、出血死には至りません、メインディッシュは朧さんと漣さんの方ですから」
曙「…朧と漣に何したのよ…!」
駆逐棲姫「漣さんは今人を正しく認識できません、目の前の人間を私だと勘違いする様に操作しました…ま、旧式の艤装いつまでも使ってるのが悪いんですけどね、頭なんて簡単に弄れますから」
曙「…それで」
駆逐棲姫「漣さんは目の前で潮さんを殺されかけてる、そしてその仇が目の前に現れたら?朧さんは予測もしてないでしょう、まさか姉妹に惨たらしく殺されるとは…」
曙「…それ、もう確認したの?」
駆逐棲姫「はい?」
曙「漣が朧刺すところまで見て来たのかって聞いてんのよ」
駆逐棲姫「いえ、見つかったらめんどくさいですから、それに録画してますし〜」
曙「ハッ!だとしたらその作戦は失敗よ、漣の意識は残ってるんでしょ?ならアイツは朧を…いや、たとえアンタでも刺したりしないわ…アイツは一番のアマちゃんよ、そんなアイツが人を刺したりなんかできるわけがない…!」
駆逐棲姫「どうでしょうか、AIDAによって黒い感情…即ち…恨みだの、怒りだのが増幅するのに果たして手にかけないなんて事、あり得るんですかね?」
曙「ありえる、そして漣は絶対にやってない…断言できるわ」
駆逐棲姫「ま、そこの実験結果は後で確認するとして…」
綾波がつまらなさそうに立ち上がり、こちらを見下ろす
駆逐棲姫「これじゃ材料にならなかった、か…何なら良い?何が欲しいんですか、この2人を貴方の前でバラバラにしたら良いんですか?潮さんを引き裂いて見せましょうか、それとも他の誰かの方がいいですか?」
曙「…アンタ、あたしをどうしたいのよ…!」
駆逐棲姫「言いませんでしたっけ?ただ成長させたいだけですよ…だって今の貴方じゃ弱すぎる、貴方は私の求める存在にはならない…」
曙「…あたしはアンタの求める存在になんかならないわよ…!」
駆逐棲姫「…じゃ、仕方ないや…島風さんからやろっと」
曙「…島風?アンタまさか島風まで…いや、居場所は誰も知らない…」
駆逐棲姫「もう居場所なんか割れてますよ?ほら」
海面に何枚かの写真が落ちる
曙(島風の写真…?本当に…!)
駆逐棲姫(あ、ようやく良い反応ですね…そのまま…)
駆逐棲姫「島風さんをバラして深海棲艦にしちゃいましょうか?」
曙「絶対そんな事させない!」
剣を構える
駆逐棲姫(…チッ…まだ力の差を理解できてないのか、どれだけバカなのか…)
曙「今度こそ…今度こそアンタを!」
駆逐棲姫「……はぁ…話にすらならないな」
剣戟を軽く避けて顔面を軽く殴る
駆逐棲姫「私が駆逐水鬼の力すら使う必要がない相手であるという事、早く理解してくれませんか?体力的にではなく、精神的に疲れるんですよ、この無能」
曙「この…!」
駆逐棲姫「はぁ…」
駆逐棲姫
同じことを何度も何度も繰り返させられる
何度も何度も殴りつけ、かわし、また殴る
駆逐棲姫「あーあ、貴方、自分の顔面にしか価値がないこと気づいてます?」
曙「…ぁ…が…」
同じことを5分ほど続けたあたりでようやく曙が膝をつく
駆逐棲姫「ホントに貴方は価値がない、そろそろ殺そうか…本当に脳みそのないやつは見ててイラつきますね」
曙「…く……そ…」
駆逐棲姫「…まだやります?もう飽きたんですけど…」
アクビをする
本当に退屈でついアクビが出てしまう
曙「なんで…なんでこんなに弱いのよ!!あたしは…」
駆逐棲姫「知りませんよ、阿呆らしい…」
曙「あああぁぁぁぁぁッッ!!」
駆逐棲姫「…おや」
あたりの気温が一気に上昇する
駆逐棲姫(自身への怒りで一気に融合率が上がった様ですね、まあ、本当ようやく…)
駆逐棲姫「ようやく覚醒したみたいですねぇ…」
曙「ああああぁぁぁぁぁッ!」
曙さんの体を炎が包む
曙「絶対に…!絶対にあたしは!!」
駆逐棲姫「…まだ温度が上がりますか」
海面がボコボコと沸騰する
駆逐棲姫(これは想像以上か、なかなかに素敵な…)
曙「綾波…!」
駆逐棲姫「はいはい、実験を始めましょうか…」
曙さんが纏う炎がまるで衣装の様に形作られる
駆逐棲姫(…炎の鎧か、無形のモノに防御力があるとは到底思えませんが…)
様子見に砲撃をするものの、到達する前に砲弾が炸裂する
駆逐棲姫(高温で融解、膨張…)
曙「今なら…負ける気がしない…!」
駆逐水鬼「駆逐棲姫じゃ少し厳しいかもしれませんねぇ…多少レベルアップしてあげますよ」
曙「くらえ…!」
炎を纏った斬撃
先ほどとは違う、段違いの鋭さ、速さ
駆逐水鬼(ようやくまともに遊べるぐらいの動きになりましたか…)
曙「炎…舞…!!」
炎を纏い、こちらへと回転しながら斬りかかって来る
駆逐水鬼(炎で軌跡が見えない…!)
腰の大腕でガードの体制を取るも、双剣に両断される
曙「もう、止められない!」
駆逐水鬼「成る程、まさか此処までとは…!良いですよ!曙さん!」
曙「炎舞紅蓮!!」
先程よりも増した剣の勢いを身体で受け止める
駆逐水鬼「アハハハ!もう少し!その調子です!」
この威力、後一歩で求める領域に届く…!
曙「燃え尽きろぉぉぉッ!」
激しく炎が弾け、火球が降り注ぐ
駆逐水鬼「よっと」
曙さんの背後へとワープする
曙「消えっ…」
駆逐水鬼「今回は満足しましたし、こんな物で良いでしょう、次会う時は貴方を連れて帰りますからね」
背後から先端を切断された大腕を叩きつける
曙「ぁが…ぁ…!」
駆逐水鬼「やはり防御性能はないに等しい…か、しかしそれを差し置いても実に有意義でした、それじゃあ…」
曙さんの後頭部に着地し…
駆逐水鬼「オチときましょうか」
曙「がぼっ!?…ごぼぼっ…がっ…」
駆逐水鬼「アハッ…!気持ちいいでしょう?…ふー…満足しましたし、帰ろっと」