元勇者提督   作:無し

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前段階

駆逐棲姫のアジト

戦艦 レ級

 

レ級「…ここいらではっきりさせておきたい事がある、私はどこまでの手出しが許される」

 

綾波「んー、そうですねぇ?」

 

大袈裟に考える素振りを見せながら綾波が駆逐水鬼に戻る

 

レ級(戻れるのか…)

 

駆逐水鬼「ま、所詮私はあなたに何をされたところで困りません、倒せるなら倒してみろって感じですし…嘘の情報を流さなければなんでも良いですよ」

 

レ級(嘘はダメ…か)

 

駆逐水鬼「それより、貴方タバコ臭いですよ?」

 

レ級「…暫く吸ってないが」

 

駆逐水鬼「ふむ?じゃあ嗅覚が戻ったのかなぁ…あ、というか前は吸ってたんですね?健康的によろしく…まあ深海棲艦だしそこは良いか、私もタバコの香りは嫌いじゃありませんしね」

 

レ級(…吸うのやめよう…)

 

駆逐水鬼「それはさておき、そろそろ収穫期ですねぇ?」

 

レ級「…何?」

 

駆逐水鬼「曙さんです、あの人はもう十分強い、他の追随を許さないほどに…島風さんは私が砕いてしまってから自信を失い、成長をやめてしまいましたが」

 

レ級「…だったらどうした」

 

駆逐水鬼「深海棲艦にするってだけですよ、基地というのは守るのは実に容易い、しかし慢心して戦力も整えないのは話が違う、私の進化までの護衛が必要です…護衛棲姫だけでは心許ないですから」

 

レ級「…どうするつもりだ」

 

駆逐水鬼「装甲空母鬼に拐わせますよ、補給船への攻撃を繰り返し行わせる事でそろそろヘイトも高くなってるからでしょうから、あそこを攻める判断をするにも丁度良い頃合いでしょう」

 

駆逐水鬼がこちらを横目で見る

 

駆逐水鬼「止めても良いですよ?曙さん達を…貴方も攻勢に加わっていい…しかし、貴方の裏切りがバレてはいけません、そして始まったら最後、貴方は私達を阻止してはいけません」

 

 

レ級「…殺しても良いんだろう、お前達を」

 

駆逐水鬼「ああ、可能なのならですよ?今の貴方では無理ですけどね」

 

レ級「……だろうな」

 

レ級(…だとしたら、私が見据えるべき先は何処にあるのか、それを探せ、私が見るべきは今じゃない、未来だ)

 

 

 

2週間前

 

横須賀鎮守府

提督代理 朧

 

朧「…はぁ…毎回毎回補給船襲撃、その上中身は全部持っていかれる護衛役には興味すらないってどうなってんの?」

 

曙「徹底的に兵糧攻めね、流石に参るわ」

 

漣「ねぇ、ウッシーオは連れて来なくてよかったの?」

 

朧「まあ、全員こっちにきたら遊んでると思われかねないから…それに

二、三日の予定だし…代理は朝潮に任せてるし」

 

曙「なんで朝潮?」

 

朧「姉妹を纏め上げる手腕があるし、リーダーシップもある……っていう表向きの理由と、キタカミさんからの勧めと本人の希望もある」

 

曙「まあ、それなら良いか…」

 

漣「じゃあさっさと仕事終わらせて戻ろうか!」

 

朧「うん、とりあえず特務部の人とのアポは明日だから、必要なものを今日揃えておこう、帰るときまでに必要なもの全部、今のうちにね」

 

曙「つっても、殆ど食料や生活用品でしょ?」

 

漣「まあ、補給船2回潰されてるからねぇ…」

 

朧「置き場は用意してもらってるし、帰りは長門さん達も護衛に来てくれる、大丈夫だよ」

 

曙「ま、これで買い込むものとかも考えると…それで遊んでるなんて言われたらたまったもんじゃないわよ?」

 

朧「…買い物って遊んでる感じしない?」

 

漣「ボーロはそういうとこズレてるよね…」

 

曙「そんな事よりも…特務部のやつとなんか話になるの?」

 

朧「話にはなるよ、敷波から色々聞いたから」

 

漣「へー…シッキーとは仲良くないと思ってた…」

 

朧「……仲は良くないかな、ただ必要だったから関わった感じ…でも、いつかは仲良くなれると思う…」

 

曙「信用できるんだ?」

 

朧「…信じるって決めたから、綾波も、敷波も…みんな取り戻すために」

 

曙「……」

 

 

 

翌日

特務部 オフィス

 

数見「…歓迎しよう」

 

不満そうな顔の数見がアタシ達をオフィスに招き入れる

少し埃を被ったオフィス、表向きの機能はしていないことの証明だろうか

 

朧「わざわざ時間を作っていただきありがとうございます」

 

ソファに腰掛け、向かい合う

 

数見「手短にお願いする」

 

朧「残念ながらそれはできません、私は今日、ここで貴方と徹底的に話し合いたいと思ってきました」

 

数見「……それで?」

 

朧「まず、現在離島鎮守府は敷波を保護しています」

 

数見「何…?」

 

朧「敷波からはいろいろな話を聞きました、それこそ、かなり深いところまで」

 

数見「……何の話なのか、興味がある」

 

朧「深海棲艦の製造された理由…とか」

 

数見「なんだと…?」

 

朧「深海棲艦は不死身の存在、不老不死を目指したものの成れの果て…違いますか?」

 

数見「…その様な話、私は感知していない」

 

朧「否定しないんですね」

 

数見「感知していないと言った」

 

朧「だとしたら、奥の研究室…右手の棚の3段目にあるファイルを調べても良いですか?」

 

数見「……研究資料を部外者には見せるわけにはいかない」

 

朧「私も海軍に所属する艦娘、部外者じゃありません」

 

数見「…それで、だから何だというんだ」

 

朧「その中には深海棲艦の製作経緯に関するやりとりが記されてますよね、最後の手段として隠してる武器なんじゃないですか?表に出たら困る様な…」

 

数見「……」

 

朧「…話を変えます、この場にもう1人呼んでも良いでしょうか」

 

数見「…誰を呼ぶつもりだ」

 

朧「良いですか?ダメですか?」

 

数見「……構わない」

 

返事を聞いてからスマホを起動する

 

ヘルバ『どうも、管理人さん』

 

数見「…ヘルバだと?」

 

朧「…私がやりたいのは10年前の再現です」

 

数見「……要するに、私とヘルバに手を組め、と?」

 

ヘルバ『驚きよね、随分と変なことを言い出すのだもの』

 

朧「…ヘルバさんの管理下には深海棲艦に対する研究機関もありますよね?…特務部の持っている情報と合わせればその研究は飛躍的に進むと思います」

 

数見「私が協力する理由は」

 

朧「貴方の身の安全の保証です…綾波だけじゃない、いろんな方面から貴方は狙われてるんじゃないですか?深海棲艦を生み出してしまったから」

 

数見「……だとしたら、話は決裂だ」

 

朧「……違うんですか?」

 

数見「ここまで来ればどうしようもない、認めるべきところは認めよう、命を狙われているのは間違いない……だが、深海棲艦は…アレは生み出されたと言えるのか…」

 

ヘルバ『詳しく話を聞かせてもらえる?私も貴方の知っていることについて興味があるわ』

 

数見「ふん……深海棲艦は不老不死の実験の最中に偶発的に生まれた…と、聞いている」

 

朧「聞いている?…本当に貴方が生み出したんじゃ…」

 

数見「それは違う、私の前任者が当たっていた研究の最中、偶発的に生み出されたらしい、被験者が死亡したと思われた瞬間、起き上がり、研究員を殺しむさぼり食らった、と…さながらスプラッタ映画の様相だったらしい」

 

ヘルバ『それはいつ頃の話なのかしら』

 

数見「…10年ほど前らしい、丁度みなとみらいが燃えた頃だったはずだ」

 

朧「みなとみらいが…」

 

10年前の八相との戦いで横浜のみなとみらいは原因不明の大火災、電話すら通じず、当時は大量の犠牲者を出した…

 

ヘルバ『ちょうど八相と戦ってた頃?でも深海棲艦が活動を始めたのは…』

 

数見「そこから数年間、深海棲艦は協力的だった…知能が大きく低下し、会話すらできなくなったそうだ… 深海棲艦にとっても食事を用意してくれる人間は重要な存在だと認識したらしく、協力的姿勢を見せ続けた、当時の深海棲艦はわずか三体、素体は全て女性、うち2名は少女だった」

 

朧(大鳳は…多分サイズ的にその少女なのかな)

 

数見「実験は順調だった、収穫こそないが不足の事態は起きなかった…しかし…有る事件で話が大きく変わる」

 

朧「まさか…AIDA?」

 

数見「そう、AIDAだ…ある研究者がAIDAのサンプルを強引に取ろうとした、AIDAはその研究者のパソコンに入り込み、USBへと隠れた…そしてそのUSBは…第三次ネットワーククライシスを免れ、深海棲艦にAIDAを投与する機会を与えてしまった」

 

ヘルバ『納得がいったわ、貴方が"そこ"にいる理由』

 

数見「…そう、お察しの通り私はAIDA対策チームとしてここに居る…深海棲艦が活動する数ヶ月前、三体の深海棲艦にAIDAを取り込む実験が始まった…知能レベルは跳ね上がり、会話もできる様になった」

 

朧「…賢くなりすぎた」

 

数見「その通りだ、深海棲艦は賢くなりすぎだ、自身の力で"エサ"を取りに行ける様になってしまった…管理される必要がなくなった」

 

ヘルバ『深海棲艦が増えるメカニズムについては?』

 

数見「一切が不明…深海棲艦に対するデータは第二次ネットワーククライシス、第三次ネットワーククライシスで完全に消失した…いや、正確には一部を除いて」

 

朧「その一部が深海棲艦を望んだ人達とのやり取りの写し」

 

数見「そう、不老不死を求めた者達のリストが安置されている」

 

朧「……わからないことがあるんです、前のネットワーククライシス…第四次ネットワーククライシスについて」

 

数見「アレは私も想定外だった、本当ならあの時アウラが降臨した時、私達は全てのデータをサルベージするつもりだった、ネットワーククライシスで破壊し尽くされたデータをサルベージするには女神の力が必要不可欠だった」

 

ヘルバ『成る程ね、貴方がそんなにお利口さんだったとは思わなかったけど』

 

数見「……もちろん、他に目的はあった、RA計画によりアウラが再臨することで2度とネットワーククライシスを起こさないという…目的が」

 

数見は悔しそうに視線を落とした

 

数見「結果は知っての通り、私がネットワーククライシスを引き起こした様なものだ…いや、私がやった、私が…!」

 

ヘルバ『貴方、Cubiaと協力していた様だけど?』

 

数見「…Cubiaは私の補助をしてくれると言った、Cubiaは…少なくとも、敵対的ではなかった、私達が知っているかつてのCubiaは…自我のないカウンタープログラムだった、しかし彼は…」

 

ヘルバ『…単純な坊や、ね』

 

数見「なんだと…!」

 

ヘルバ『AIがウソをつかない、そう思ったんでしょう?』

 

数見「AIに嘘などつけない、つけるわけがない」

 

朧「いいえ、つけます」

 

数見「…何?」

 

朧「AIはウソをつけます、AIは人の気持ちを理解できるし、感情だって有る、知る事ができるし、感じる事ができる、自分の身を守るためなら、目的のためなら…ウソだって着く、それこそ人と同じ様に」

 

数見「何故、そんな事が断言できる?それが正しい証拠は?」

 

朧「じゃあ、Cubiaが正しい証拠は?ウソをつかない証拠はどこに有るんですか?貴方が今まで見てきた常識の内側では確かにウソをつかないかもしれないけど…Cubiaが今何をしてるのか、知っていますか?」

 

数見「それは…」

 

朧「Cubiaは…倉持海斗をネットワークに幽閉し、人の意識を奪い、たくさんの人に害を与えています、秋雲の事、知らないわけないですよね?」

 

数見「……ネットワークに幽閉…?」

 

ヘルバ『リアルデジタライズ、知ってるかしら?』

 

数見「リアルデジタライズ…嘘だ、そんなもの存在するわけが…」

 

朧「実際、被害者もいる、敷波もそうです」

 

数見「……そうだ、ずっと引っかかっていた、敷波は殺されたんじゃ…」

 

朧「…リアルデジタライズさせられただけです」

 

数見「本当に、そんな事が…待ってほしい、私の理解を超えて…」

 

ヘルバ『Cubiaのやった事について、納得してくれるのかしら?』

 

朧「というか、元の目的は協力関係の形成です」

 

数見「……理解はした、Cubiaが私を利用していた事も理解した…だが……」

 

朧「…そう言えば、数見さん、貴方はダミー因子を持っていますよね…?」

 

数見「…第一相と第四相の二つを持っている」

 

朧「……ダミー因子は綾波が複製した事もあった…Cubiaに影響されていた可能性は?」

 

数見「無い……筈だ」

 

朧(…じゃあ本当に違うんだろうけど、今はとにかく抱きこんでしまおう)

 

朧「ダミー因子を手放すつもりはありませんか?」

 

数見「…どういう…」

 

朧「ダミー因子を使えば…システムの動作をブーストできます、深海棲艦との戦いに必要なんです」

 

数見「……それなら、渡そう…今の私には、持て余していた」

 

ヘルバ『随分素直なのね』

 

数見「元々、ネットワーククライシスを防ぎたくて…人のためにやっていた事なのに、全てが裏目に出た…更にはCubiaは私を利用していた…」

 

ヘルバ『それは貴方がCubiaを利用していたからよ、所詮利用するための関係は簡単に壊れてしまう…次からは信頼関係を築くことね』

 

数見「……AIと信頼関係、か…」

 

朧「まず、私たちと信頼関係を築いてみませんか?」

 

数見「……わかった」

 

数見が立ち上がり奥の研究室へと姿を消す

 

 

 

数見「第一相、第四相のダミー因子だ」

 

二つのマイクロチップを受け取る

 

朧「…あの、その眼帯は…」

 

数見「…視神経が少し傷ついたらしい…」

 

ヘルバ『良い医者を紹介してあげましょうか?』

 

数見「…ヘルバ相手に借りを作るのは、後が怖い……さて、これからは私達は協力関係、か…」

 

数見がこっちを見据える

 

数見「…改めて、よろしくお願いします」

 

朧「こちらこそ、よろしくお願いします」

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