元勇者提督   作:無し

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離島鎮守府 執務室

提督代理 朧

 

朧「…空襲、止んだね」

 

漣「止みましたなー」

 

潮「狙いがバレちゃったとか…」

 

朧(極少数での作戦会議しかしなかったし、それは考えにくいけど…どうしよう、普通に攻め込む?)

 

曙「なーにビビってんのよ、どうせ何も変わらないんだし、普通に攻めればいいじゃない」

 

朧「いや、向こうが防御体制を固めてたなら…厳しいよ、絶対攻めきれなくて中途半端になる」

 

空襲は2週間以上続いたのに急に打ち切ったのには理由があるはず、その理由は?それを探るべきだ

 

春雨「失礼します、提督代理」

 

朧「春雨さん、どうかしましたか?」

 

春雨「ここから南にかなり離れていますが…船を目撃したと」

 

漣「船?」

 

潮「艦娘って事?」

 

朧「……いや、違う…補給船だ」

 

春雨「ええ、そうでしょうね…深海棲艦の補給船だと思われます、ただ…乗っていた者はロシアの軍服を着ていたそうです」

 

朧「…深海棲艦と繋がってるって事…?」

 

春雨「…だとしたら、ウラジオストクの件にも無理矢理ですが納得がいきます」

 

朧「……確かに、深海棲艦と敵対しない関係になれば海の資源も容易に手に入るけど…」

 

春雨「衛星や航空機からの観測を嫌ってか、黒に近い青の船でした、夜間も視認しづらいでしょうね」

 

曙「それで?」

 

春雨「私たちが観測している深海棲艦の基地はここから南西です、もしそこを目指しているのなら、韓国や中国で見られるのを嫌い、かなりの大回りをして、目的地をそことしているのなら…」  

 

朧「…よし、もしかしたら可能かもしれない…行こう」

 

曙「船が来るとわかってるなら周囲は固められてるでしょ」

 

朧「アタシ達で陽動する、ある程度戦ったら撤退、綾波に通じるとは思えないけど…」

 

春雨「確かに大和さんは無駄に図体がでかいですから陽動向きですね」

 

漣「言い方ぁ…」

 

朧「と、とにかく!曙、招集かけて!アタシ達は鎮守府正面、それ以外の曙達6人は鎮守府裏から先に出発!」

 

曙「はいはい、任せときなさい」

 

 

 

 

大和「え、ええと…あの…」

 

那珂「そんなに硬くならないで?別に大怪我するような事なんてないし」

 

朧(…よし、みんなアタシ達を見てる、この作戦は3人だけで行う潜入作戦だって伝えてあるし、あとは偶然を装って発見されれば良い)

 

朧「あ、これ」

 

大和「ワイヤー…ですか?」

 

朧「大和さんの艤装、浮力がすごく高くなるように作られてるそうなので、海に引き摺り込むには相当の力がいるらしいです…なのでアタシ達がやられそうになった時は」

 

大和「私が引き上げれば良い…と、でも、随分長いですね…」

 

朧「動き辛いですから、あとワイヤーの巻き取り機もついてるので…これで適切な距離を維持しやすいと思います」

 

那珂「よし、準備は良い!?」

 

朧「行きましょう」

 

 

 

20ノットを維持し、約2時間

それでようやく到着する位置に敵基地がある

 

朧(…航空機は飛んでない、曙達はおそらく北から大きく回るはず…南に行けば船と深海棲艦に見つかるリスクもある、安全な退路も考えて…)

 

大和「…本当に、私でよかったのですか?」

 

朧「え?」

 

大和「…長門さんや扶桑さんでも作戦に不足はないはずです、私なんかで良かったのでしょうか…」

 

那珂「えー?別に耐久は随一なんだし気にしなくて良いと思うけど」

 

朧(あと、ちゃんとした主砲を持てば火力も)

 

大和「…皆さんは私を信用しすぎだと思います、鎮守府にスパイがいるかもしれないとして…私だとは考えてないんですか?」

 

那珂「いやー、那珂ちゃん頭良くないし…」

 

朧「…鎮守府にはいろんな人がいます、戦うのが嫌な人、戦いたい人、戦いたいのに戦えない人、頭がいいのにそれを活かす機会に恵まれない人、本当はあんなところにいるべきじゃない人…やむを得ず敵に従ってる人」

 

大和「…従ってる?」

 

朧「多分、やむを得ず敵に従うしかない人がスパイをやってます、自主的に綾波に情報を流すなんて真似は誰もしてない」

 

那珂「…アタリはついてるんだ」

 

朧「ほとんど間違いないですけど…誰かは言えません」

 

那珂「なんで?」

 

朧「…何も解決しようがないからです、アタシの推測通りなら誰も解決ができない、アタシの推測通りなら…決断するのは本人ですから」

 

朧(それも最悪の決断を)

 

大和「……あ、電探に……感が…」

 

朧「水上機を、まっすぐ飛ばしてください!」

 

 

 

 

 

 

朧(まあ、戦闘はするつもりだったけど…)

 

那珂「ねぇ、あれ人間だよね…?深海棲艦に見える?」

 

大和「見えません…」

 

朧(人間を戦わせるのか…アタシ達が撃てないと思って…)

 

思わず頭を抱える

確かに深海棲艦を殺すことにもはや躊躇いはない

たとえ人の形をしていてもそれは人じゃない

なら本物の人が出てきたら?人間を撃つ覚悟はあるのか

 

朧(キタカミさんなら…撃てたんだろうな…曙なら躊躇いなく制圧して、涼しい顔して先に進めたんだろうな)

 

主砲を握る手に力が籠る 

 

朧(…よく前を見て、人間が持ってるのは拳銃と刀、水上での戦闘訓練がどのくらいされてるのかわからないけどそこまで警戒する程じゃ…)

 

耳元に生暖かい風が吹く

 

綾波「本当にそうでしょうか?」

 

朧「…綾波…!?」

 

綾波「よく見てください、手に握ってるのはハンドガン、しかも装弾数の多いグロッグ系…刀だって刃渡り1メートルそこら、かなり長いですね?」

 

恐る恐る振り返ると綾波と目が合う

 

綾波「確かに素人が扱ってもあの長さでは刀の重さに振り回されて脅威にはならないが、間合いは広く、水上での戦闘に適しているのでは?下手な鉄砲も数打てば当たる…向こうの戦力は?見えてる限り30人はいます、それで全部だと思いますか?」

 

今まで見てきた表情とはまるで違う、真剣な面持ち

まさか本当に助言でもしようというのか

 

那珂「…朧ちゃん?」

 

朧「え…?」

 

那珂さんに呼びかけられ、ハッとする

綾波の姿はもうなかった

 

那珂「どうしたの、すごい汗だけど…」

 

朧(…今のは、幻覚?それとも綾波が本当にアタシに教えてくれた?)

 

那珂「…大丈夫?別に1人でも良いし…戻る?」

 

朧「……いいえ、大丈夫です」

 

朧(全員制圧すれば良い…全員)

 

目を瞑り、大きく呼吸する

 

朧「砲雷撃は一度禁止、殺さず制圧します!良いですか!?」

 

大和「は、はい!」

 

那珂「オッケー!」

 

朧「いきましょう!」

 

速力を上げて突っ込む

 

朧(よく考えて、アタシの間合いと向こうの間合いは違う、刀が使えなくても拳銃がある、でも拳銃なんて狙いもバラバラでほとんど当たらない)

 

1番に警戒すべきは刀…

 

朧(とりあえず、敵の注意を惹きつける、そしてそれを大和さんに移す…大丈夫!)

 

海面を蹴り、飛び上がる

空中でブーストをかけて敵部隊に接近して蹴りで1人仕留める

 

朧「…今、降伏するならウチの鎮守府まで連れて行くよ」

 

周囲の人間が銃をこちらに向ける

 

朧「交渉決裂」

 

雷のカートリッジを艤装に突き刺し、軽く跳びあがり、独楽の様に蹴る

辺りに電撃を撒き散らし、周囲の人間が痺れて倒れる

 

朧「…で、いいんだよね?」

 

起き上がってきた人間に拳を叩き込み、意識を奪う

 

那珂(さっすが、容赦ないなぁ…)

 

大和(…もし降伏してなかったらあんな事されてたんだ…もし降伏してなかったら…)

 

大和「あ、あの!本当に皆さん良い人なのでおとなしく投降して下さい!」

 

那珂「それを聞いてくれる相手ならこっちに向かって撃ってきてないって」

 

銃撃の精度は低い、殆ど当たらないし気にするほどの事じゃないかもしれない、だけどたった一発でも当たれば、場合によっては致命傷になりうるかも知れない

 

良く理解しないといけない、アタシ達の体は生身の人間だって

 

大和「ひぃぃぃっ!」

 

大和さんが艤装を盾にしてアタシ達の壁役

那珂さんとアタシで交代で少しずつ仕留める

 

朧(うまくいってる、全滅させなくて良い、アタシ達は戦闘を長引かせて曙達が忍び込むチャンスを作る)

 

那珂「あと少し…って、うわっ!?」

 

那珂さんと周囲の人間が爆発で吹き飛ぶ

 

大和「…あれ、他の人達ごと、深海棲艦が撃ってます…!」

 

朧(…やるかもしれないとは思ってたけど、本当にやった…使い捨て程度にしか思ってないんだ…!)

 

那珂「ちょっと下がらせて!」

 

朧「那珂さん、大丈夫ですか?」

 

那珂「うん、擦り傷できたくらい……待って、航空機もいる」

 

朧「…ここからが正念場です」

 

大和「わ、私が盾になりますから…!」

 

那珂さんが大和さんの肩に手を置く

 

那珂「気負わない焦らない頑張らない、そんなにしんどい事言ってると死んじゃうよ、もっと気楽にね」

 

大和「は、はい…」

 

那珂「…アレだよねー、でも落ち着くって大事だしー…お祈りでもしとこっか?」

 

大和「お祈り…?」

 

那珂「臨兵闘者皆陣列在前って奴、戦勝の意味もあるから、ほら、こうやって手の形を変えながらー」

 

朧(…アタシは前に出ておこう)

 

大和「臨、兵、闘、者、皆、陣、列…?在でいいんでしたっけ…?前…」

 

那珂「良くできました、落ち着いたでしょ?」

 

大和「…ま、まあ…多分」

 

那珂「さ、あとは簡単、戦うだけ!大和ちゃん!」

 

大和「ちゃ、ちゃん?」

 

那珂「艤装の上に乗せて?」

 

大和「あ、は、はい」

 

那珂さんが大和さんの艤装の上に乗り、主砲を置く

 

朧「え?な、何やってるんですか!?良い的ですよ!」

 

那珂「チッチッチッ…それが良いんじゃん」

 

那珂さんが主砲を蹴るとカラフルな煙を吹き出す

 

那珂「さあ!艦隊のアイドルニンジャな那珂ちゃんの耐久ライブ、楽しんでいってね!」

 

朧「マイペースな……いや、そのくらいじゃないとダメか…!」

 

大和「わ、私はどうすれば!?」

 

那珂「那珂ちゃんが落ちない様にバランスとって!」

 

大和「は、はい!」

 

朧「いや、自分の身を守って下さい!?」

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