元勇者提督   作:無し

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離島鎮守府

駆逐艦 朧

 

朧「よし、だいぶ形になってきた…」

 

前回の戦いからかなり時間は流れた

綾波達は全く動きがないまま…時間だけが流れてしまった、曙も見つからないままだ

日中の過ごしやすい温度は少し肌寒くなり始め、日没も早くなった

 

朧「…10月か、時間がいたずらに過ぎてる…このまま時間を使いたくない…綾波と戦って、決着をつけたいけど」

 

春雨「朧さん」

 

朧「…春雨さん?」

 

春雨「深海棲艦…それも、大物が出たようです」

 

朧「大物って…?」

 

春雨「潜水艦タイプの深海棲艦…火力も馬鹿げてるようで、紹介に出ていた翔鶴さんの隊は大打撃です」

 

朧「…朝潮には?」

 

春雨「…ああ、いけない、あなたが提督代理の期間が長かったもので」

 

朧「……出撃命令が出たら出ないと、ありったけの爆雷を用意しよう」

 

春雨「賛成です、叩き潰してやりましょう…ところで、さっきの動きは?」

 

朧「…見なかったことにしてくれませんか?」

 

春雨「構いませんが、遊びは程々に…と言うか、さっきの…那珂さ…」

 

朧「朝潮に連絡!急いだ方が良いと思いますよ!」

 

春雨「…はいはい」

 

朧「……遊んでると思われたかぁ…」

 

 

 

 

 

工廠

戦艦 レ級

 

明石「…曙ちゃんの改二艤装?」

 

レ級「ええ、複製してください、なるだけ早く」

 

明石「…予備ならありますけど」

 

レ級「ください、今すぐに」

 

予備の艤装を受け取る

 

レ級「……なるほど軽い…」

 

明石「いや、結構な重量ありますよ…?」

 

レ級「…火力の話です、しかし……ふむ、わかりました、これ、いただきます」

 

明石「えっ…まあ、良いですけど…」

 

レ級「……それと、これとそれとあれを」

 

明石「…あー…あの?」

 

レ級「何も言わず、お願いします」

 

明石「……わかりましたけど…」

 

コツンと杖で床を叩く音がする

 

レ級「…キタカミさん」

 

キタカミ[その前に、通すべき義理、あるんじゃない?]

 

レ級「……お互い様でしょう」

 

キタカミ[それでも、通していきなよ]

 

レ級「…私は役目を果たすつもりです、皆さんにとって…できる限り、最高の形で」

 

キタカミ[できるわけないでしょ、1人でやり合ってうまくいわけないじゃん]

 

レ級「いいえ、決戦は総力戦で臨みたいと思っています」

 

キタカミ[なら、ちゃんとしなね]

 

レ級「……わかりました」

 

いつ、そうすれば良いのか

私の全てを打ち明けるのは、実行の直前にするべきなのか?それとも今すぐに打ち明けるべきか?

士気への影響は計り知れないし、何より信頼を失う行動だ、私への協力は誰もしてくれないかもしれない

 

何もかも投げ出したい気持ちもある、やるせない気分だ、私の言葉は、行動は、全て、批判され…

いや、それ自体は当然のことなのだ、受け入れる…

問題は戦いにどんな支障をきたすかだ

 

 

 

演習場

 

川内「…私と?」

 

レ級「1.2分で良いんです、軽くだけ演習してください」

 

川内(1.2分で何がわかるんだか…)

 

川内「いいけど」

 

レ級「ありがとうございます、早速」

 

曙改二の艤装を背負う

 

川内「…え?」

 

レ級「事情があるんです」

 

川内「…まあ、良いけど…」

 

 

 

軽く水面を蹴り、跳ね回りながらの砲撃

弾薬は全て砲弾としては小口径、カートリッジによる火力増加を前提とした艤装だけあって、無しでは厳しい…

 

レ級(だけど、川内さんを寄せ付けない事はできる)

 

川内(何かの戦い方……いや、そうだ、この前の試験でやってた球磨型連中の連携?1人でそれをやってのけてる?それぞれの位置を1人で……マジのバケモンだね…)

 

レ級(……戦術は浮かんだ、後は…私次第、か)

 

主砲を下ろす

 

川内「っ……もう、良いんだ?せっかくあったまってきたところなのに」

 

レ級「…すいません、私はもう限界です」

 

川内「…そう」

 

川内(良いように弄ばれた…なんか、崩されたなぁ…)

 

レ級「……失礼ですが、川内さん」

 

川内「ん?」

 

レ級「神通さんの動きを取り入れ過ぎかと、蹴りを狙い過ぎて私に読まれ、接近のチャンスを失っています」

 

川内「……気づかなかった、ほんとに?」

 

レ級「ええ、間違いないかと」

 

川内「…ありがとう」

 

レ級(…私が全てを話すのは、ただ義理を通す為のことだ、本当に勝ちを目指すなら…必要なのか?)

 

渦巻く感情は、どうしたものか

騙して、最後まで騙して…それで…

 

レ級「……え?」

 

主砲を握っていた指先に目を落とす

 

レ級「…そう、ですか…」

 

まだ悩め、そう言われてる気がした

今すぐに真実が降りてくるわけじゃない

 

 

 

海上

駆逐艦 朧

 

朧「潜水艦タイプの深海棲艦、それも超強力なタイプか…」

 

那珂「那珂ちゃんと朧ちゃんで索敵要員はわかるんだけど…なんで春雨ちゃん?」

 

春雨「捕獲して即座にデータドレインをします、前回のように情報の隠匿はさせません」

 

那珂「あー、敵基地攻め込んだ時みたいな?」

 

春雨「ええ、そう言うことです」

 

漣「えー…漣達は必要なのでしょうか…」

 

荒潮「微妙なところよね〜?」

 

大潮「ソナーと爆雷はたくさん持ってます!」

 

朧「…とりあえず、翔鶴さんの襲撃された海域に…」

 

荒潮「どのくらい先かしら…」

 

朧「……あれ?」

 

この匂い、イムヤさんの…

 

那珂「……居る」

 

春雨「戦闘用意!」

 

じっとりと、汗が染み出す

脳裏に浮かんだ憶測…

 

朧「待って…春雨さん!イムヤさんは攫われてるんですよね?!」

 

春雨「……だとしたら、尚更やるしか無い!」

 

意図は伝わった

この深海棲艦はイムヤさんではないか?

…絶対にそうだ、とは言えない

 

朧(でも、可能性がある以上…!)

 

大潮「ら、雷跡!6時の方向!」

 

那珂「任せて!」

 

朧「せーの!!」

 

水面を叩きつけ、衝撃波で魚雷を炸裂させる

 

漣「12時の方向!…えっ、真下くぐり抜けられてる!?」

 

どうする、どう戦う?

爆雷を掴み、放り投げる

 

朧(…大丈夫、やってやる)

 

朧「全員退避!距離をとってください!」

 

全員が離れたのを確認し、カートリッジを艤装に挿入、右足を振り上げる

脚部の艤装が空気を吸い込み、その空気が刃の様に脚を斬り刻む

 

朧(…大丈夫、大丈夫だから…!)

 

那珂「血の味…お、朧ちゃん!その艤装大丈夫!?」

 

朧「大丈夫です!多分!」

 

脚を思いっきり振り下ろす

 

朧「これで、どう!?」

 

海の中で圧縮された空気が破裂する

波を割るほどの、海を破壊するほどの威力

 

朧(…っ…この為に作ってもらってよかった…修復剤のカートリッジ…)

 

この攻撃自体は艤装の性能、綾波が使う為に作った悍ましい威力の…

 

朧「今!爆雷投げ込んで!」

 

割れた海に爆雷を投げ込み続ける

背丈よりもずっと高い波が何度もアタシ達を呑み込もうとする

 

朧(一回この海域を抜けた方が良いかな…)

 

春雨「……見えた、1時の方向!那珂さんと私の間!」

 

漣「とりゃぁーーっ!!」

 

漣の投げた爆雷のダメージがあったのか、深海棲艦が浮き上がってくる

 

春雨「……倒した様ですね…」

 

朧「…よかった…」

 

被害が出る前に終わった…これでイムヤさんも帰ってくる…

 

綾波「自体はそんなに単純ですか?もっと神経を研ぎ澄ますべきではありませんか?本当に終わったんですか?」

 

朧「っ!?」

 

あの時と同じ様に背後から声をかけられる

 

綾波「確認してください、本当に終わったのか…」

 

朧「……違う、匂いがしない…イムヤさんの匂いじゃない……!」

 

那珂「…春雨ちゃん離れて!」

 

浮き上がってきた深海棲艦が破裂し、血肉が周囲に飛び散る

 

春雨「ッ!?鼻を塞いで!」

 

荒潮「…うっ…」

 

漣「おげっ…」

 

濃厚な血と、汚物の腐った様な匂いが充満する

近くにいた漣と荒潮は俯き吐きだす

 

朧「…まさか、アレで位置を!」

 

那珂「え!?」

 

朧「下です!ずっと下から…キタカミさんの浮き上がる魚雷みたいに…真上を狙った雷撃を…!」

 

那珂「春雨ちゃんは漣ちゃん!」

 

春雨「わかってます!!」

 

那珂さんと春雨さんが2人に飛びつき、抱き抱える様に場所を移動する

ほぼ同時に水中から魚雷が飛び出して炸裂する

 

那珂「あぅ…!」

 

春雨「那珂さん!無事ですか!」

 

那珂「…ちょっと背中が…いや、大丈夫!」

 

朧(鼻なんてもう関係ない、どうすればいい?深海にいる…下手したら数百メートル下の相手を狙うには…)

 

朧「…いや、今だ!今使うしか無い、たとえ綾波がこれを見ていたとしても!」

 

もう一度脚を振り上げ、空気を取り込む

そして雷のカートリッジを突き挿す

 

朧「ッ…!」

 

さっきとは比べ物にならない負荷を脚に受け続ける

 

朧「ああぁぁぁァァアッ!!」

 

振り下ろした脚が海に穴を開ける

そしてその穴を通った電撃が深海で放たれる

 

朧「爆雷も…!」

 

穴が閉じる前に爆雷を投げ込み、水面に膝をつく

 

朧「…脚、グチャグチャになってるかな…もう痛み感じないよ…」

 

春雨「…後で診てあげます、しかし…何と無茶な装置を…」

 

朧「っ!」

 

反転した大量の魚と一緒に何かが、浮上してくる

 

大潮「…深海棲艦?」

 

朧「……匂いで判別できないけど…見たことないタイプだ」

 

春雨「……間違いない、イムヤさんです」

 

春雨さんが深海棲艦の頭を掴んで持ち上げる

 

那珂「…扱い雑じゃない?」

 

春雨「データドレイン」

 

那珂(無視!?)

 

深海棲艦の体が崩れ落ち、中からイムヤさんの肌が露出する

 

春雨「…ほら、ちゃんと……え?」

 

ボタボタと、血が流れ落ちる

 

綾波「良くやってくれました…なかなか手を焼いたものでね、そっちで始末をつけてくれて助かりましたよ」

 

イムヤさんの胸部に空いた穴、間違いなく致命傷のサイズの

 

春雨「…綾波、さん…?」

 

綾波「ああ、この姿ですか、戻せますよ?」

 

駆逐水鬼「ほら」

 

姿を入れ替え、ケタケタと綾波が笑う

 

綾波「いやぁ、全くもって…頂上だ」

 

春雨「……なんで、イムヤさんを…!」

 

綾波「口封じ、と言ったところですか…まあ、もう少し…遊んでみますか?」

 

綾波が漣を見て笑う

 

漣「っ…ぁ……ああ…!」

 

朧「漣!」

 

綾波「そう言えば、あなたは結局…毎回遊ぶ前に……まあ、もう要らないし」

 

綾波の手の砲が漣に直撃する

 

漣「ぁが……」

 

朧「漣!…綾波ぃッ!!」

 

綾波「……おや、即死かと思ったら…死んで無い?何か特殊なものでもお持ちですか?」

 

朧(応急修理要員…!漣はまだ生きてる、今綾波を退ければ助けられる!)

 

ボロボロの脚を庇い、立ち上がる

 

朧(使えないのは右脚だけ…いや、ここまできたら…右脚は使い潰す!!)

 

綾波「来ますか?良いでしょう、あなたを殺したくて仕方なかった!」

 

朧「っ…」

 

両手に主砲を持ち、向け、撃ち続ける

 

綾波(全く、物足りないな)

 

朧(綾波の注意が逸れ始めてる、それなら…今しかない)

 

主砲のハンドガードの内側のスイッチを操作し、艤装を作動させる

 

朧(肩脚なんか、無くなって良い…アタシは、漣を守る為なら!)

 

綾波「おやっ」

 

ブーストをかけて接近し、ボクシングの構えを取る

 

綾波(立技で打撃か、しかし、先ほどから庇ってる右脚…負傷してるらしいですが…)

 

朧(右脚を見られた、バレた?いや、賭けるしか…)

 

左足で水面を蹴り、空中で身体を捻る

 

綾波(…そう来たか、その蹴りが私を砕く蹴りですか?しかしそれは届きはしません)

 

朧「っりゃああぁぁぁぁぁッ!!」

 

思いっきり振り下ろした右脚が何かにぶつかって止まる

 

朧「…え」

 

目まで覆う黒い額当て、右肩から生えたAIDAの腕、変質した右手

 

那珂「…!」

 

軽巡棲姫「…重いですね、朧さん、貴方の蹴りは…そして、覚悟は」

 

払い除けられ、海を転がる

 

朧「っ…!……この、声、匂い…神通さん…!?」

 

那珂「神通姉さん…!」

 

軽巡棲姫「…ふぅ…」

 

綾波「…うーん、朧さん、今の蹴りで右脚が完全に潰れましたねぇ…?」

 

朧「……!」

 

綾波の考えがわかった、止めなくちゃいけないのに…

 

綾波「もう、貴方に私は止められない」

 

朧「やめて…やめて…!」

 

綾波が漣の方に歩くのを止められない

アタシは…もう、何も…

 

朧「やめて!綾波!」

 

綾波「さようなら」

 

綾波が漣を踏み、沈める

 

綾波「…他の人も、いっときましょうか?」

 

大潮「ひっ…」

 

荒潮「…ぅ…」

 

朧「……漣…」

 

顎を掴まれ、視線を無理やり持ち上げられる

 

綾波「…そうです、その顔です…もっと苦しんでください、もっと…!」

 

朧「…綾波…っ…!」

 

綾波「ほら!このままじゃみんな死んでしまいますよ!?」

 

綾波が荒潮を指す

 

荒潮「っ!嫌ッ!やめっ…」

 

海中から無数の深海棲艦が現れ、荒潮を海の中へと引き摺り込む

 

朧「…そん、な…事…!」

 

息ができない、目の前で、2人も…

 

綾波「…全部、貴方のせいですよ…貴方が私を怒らせたから…貴方以外のみんなを苦しめることになるんです」

 

朧「…アタシの、せい…?」

 

頭がぼうっとする、視界がグチャグチャになる

 

綾波「もっと、もっと苦しんで、償いましょう?」

 

朧「……アタシが苦しめば、みんなは助かるの…?」

 

アタシさえ死ねば、みんなが助かるのなら…

 

綾波「ええ勿論…救われますよ、きっとね」

 

朧「…アタシが、苦しめば…」

 

綾波「次を、楽しみにしててくださいね?ちゃーんと苦しめてあげますから…じゃあ、朧さんバイバーイ」

 

呼吸が速くなって、心臓が痛いほど脈打って、頭が真っ白になって…

視界が暗転し、アタシは意識を失った

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