元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 執務室
提督代理 朝潮
朝潮「…荒潮が?」
春雨「申し訳ありません、私達がそばにいながら」
朝潮「……いえ、いつかはこうなると……わかっているべきでした…すいません、少し1人にしてください」
頭がボケっとする、まともに思考できない
失うことがこんなに辛いのは、この身が人のそれになったからか
止めどなく涙が溢れるのもそのせいか
朝潮(大潮…そうだ、大潮も一緒に出撃してた……いや、山雲達がついていてくれるはず…シャキッとしなきゃ…もっと、ちゃんとしなきゃ……)
執務室の扉がノックされる
朝潮「っ…ぅ……」
今入ってこないでください、その一言が言えない、何も喋れない
敷波「…失礼しま…ぁ……ご、ごめん」
朝潮「いえ…なんの用ですか…」
入ってきたものは仕方ない、さっさと用を済ませて追い出して…
敷波「……呼ばれた気がして」
朝潮「…誰も呼んでいません」
敷波「だ、だよね…うん、ごめん」
何を言っているのか、誰に呼ばれたのか…
全く、理解ができない……
朝潮「……あ、れ…?」
敷波「…え?」
何故か、私は敷波さんの手を掴み、引き止めていた
敷波「……あ、この感じ…覚えてる…」
朝潮「…まさか、居るのですか…?私の中に…」
前の世界、わずかな期間だけど、私の中に確かに居た
敷波「…ベッドに寝てた女の子…?いや、リンクしてる…?」
朝潮「アウラが…私の中に?」
お互いよくわかっていない、だけど確かめるように目を見合わせる
敷波「…間違いない?」
朝潮「恐らく…しかし、何故…」
敷波「……わかんないけど、わからないけど…」
共鳴
頭の中に響く音、ハ長調ラ音
朝潮「…アウラだけど…私の知ってるアウラじゃない…まだ、小さくて、弱くて……そして、どこか壊れている」
敷波「……この、流れ込んでくる感情……ようやくわかった、司た…アタシと司の感情……苦しんで、苦しみ続けたから…アウラも…」
何があったのかはわからない、だけど…そう、言うなれば、何処までも簡単な喩えだが…ただ、不幸だった…
助けてくれる人が居なくて、たとえ居たとしても、それ以上の苦しみに襲われて、逃げ場を失った人たちの感情、絶望を一身に受けて壊れたアウラ…
朝潮「……アウラ、私たちはどうすれば…」
敷波「…今、そのアウラは朝潮の中に…?」
朝潮「………あ」
敷波「どうかした?」
朝潮「…そう、か…そういう事…?」
もし、そうなら…
敷波「え?なに、どうしたの…」
朝潮「…アウラは全ての力を貸してくれた…私達はそのおかげで応えられるかもしれません、この戦争に勝つための力を…貸してください、アウラ」
横須賀鎮守府
軽巡洋艦 大淀
大淀「…これが紋章神砲?」
自立式の主砲を眺めながら問いかける
火野「そういう事らしい」
特務部から送られてきた、新たな武器
大淀「……私のフィドヘルと共鳴してくれるのでしょうか」
火野「最後の手段、と捉えるべきだろうか」
電「…そんなに深刻になる事はないのです…ただ、使い方さえ間違わなければ」
大淀「……作戦の日時は?」
火野「まだ決まっていない、向こうも手を出しあぐねているらしい」
大淀「…駆逐棲姫の実力はそれほどということでしょうか」
火野「離島鎮守府側は昨日の海戦で3名の死者を出したと連絡があった」
電「……死んだのですか」
火野「正確には沈められた、という報告だったが」
電「何一つ意味合いは変わらないのです…第七駆逐隊、漣、第八駆逐隊、荒潮、潜水艦伊168、以上3名の戦死を確認したそうなのです」
大淀「…犠牲のない戦いはありません、戰をする以上は覚悟が求められる……離島の協力要請、受けるべきなのは理解していますが」
電「干渉しなければ攻めてこないという保証は無いのです」
佐世保鎮守府
正規空母 瑞鶴
瑞鶴「提督さん、行くんだよね?私達も」
度会「…希望者は明日募る…それから考えるつもりだ」
瑞鶴「私は往くよ、これ以上誰かが犠牲になる戦いなんてさせない」
度会「やれる限りやれ、日時が決まり次第通達する」
瑞鶴「OK!」
大湊警備府
駆逐艦 白露
白露「本当にアレともう一回戦うの…?」
睦月「島風ちゃんを助けるには、やるしかないよ」
夕立「やられた分の返しもしなきゃいけないっぽい」
徳岡「元気いいのはいいんだがよ、もっと落ち着いてくれねぇか?」
五月雨「…どうしましょうか、ここを丸々空けるわけにも…」
徳岡「北方海域に関しては気にしなくてもいい、向こうは攻めてきてる訳じゃないしな、それよりも駆逐棲姫を仕留める方が重要だってさ」
五月雨「…じゃあ、全員で?」
徳岡「いや、行きたいやつだけにする…それと、向こうは容赦なんかカケラも無いからな」
夕立「わかってるっぽい」
睦月「一回殺されてるからね…」
徳岡「……」
駆逐棲姫のアジト
綾波
綾波「…く……ぁあ…」
つい欠伸が出る
護衛棲姫「…眠ソウデスネ」
綾波「…寝てませんから」
護衛棲姫「…綾波様、貴方ノ身体ハ貴方ノ物デハアリマセン」
綾波「ええ、わかってます、だからこうやって苦しめてるんですよ…」
こうやってずっと機械に向かい合い、秘密兵器を作り続けているのはこの為だ、私を殺す最後の手段を…
護衛棲姫「…モウ、2日モ寝ズニ何ヲ…」
綾波「私が改二になってしまい、私がなにも出来なくなるなら…私は…」
護衛棲姫「…自殺、デキルノデスカ?」
綾波「いいえ、私は私であって私ではない、私の……あ…あぁ…ああぁぁ…!」
護衛棲姫「…!」
綾波「…はぁ、惜しげもなく力を使うのはやめて欲しいんですが……っと」
姿を切り替える
駆逐棲姫「おや、護衛棲姫、監視ご苦労様です…」
護衛棲姫「駆逐棲姫様…!」
駆逐棲姫「…おや?これは…ああ、私の目的がわかってしまいました」
護衛棲姫「…目的、デスカ?」
駆逐棲姫「どうやら、私に効くようにデータドレインをアップデートしようとしていたようですね、中々…危ない事をしてくれる……ふむ、これは……どうすれば対策できるのか、保存しておきましょう、使い道はいくらでもある」
護衛棲姫「……」
駆逐棲姫「さて、改二を完成させましょう、この改カートリッジを強化するにはエネルギーが必要です、深海棲艦の死のエネルギーは…まあ後から採取できます、生のエネルギーを求めて、攻め込みましょうか」
護衛棲姫「準備致シマス」
駆逐棲姫「貴方は留守番ですよ、護衛棲姫…島風さんと曙さんを起動しましょう、かつての仲間に殺される様は…滑稽でしょうから」
護衛棲姫「ワカリマシタ…」
軽巡棲姫「私も行きます」
駆逐棲姫「……まあ、構いませんが、今すぐ出発です、離島鎮守府を荒らしましょう」
離島鎮守府 近海
駆逐棲姫「さあ、始めま…っと」
飛んできた砲弾を弾く
阿武隈「…これ以上先には」
不知火「進めると思わないでいただきましょう…沈め」
駆逐棲姫「アハッ…
阿武隈「…わかりますか?」
不知火「興味ありません、降伏ではなさそうですから」
駆逐棲姫「おや、相手にしてくれませんか…私じゃダメなら…」
阿武隈「ッ!?」
背後から迫る軽巡棲姫の蹴りを主砲で受け止められる
軽巡棲姫「私ならいかがでしょうか」
不知火「貴方は…!」
軽巡棲姫「おや…」
軽巡棲姫が上空を見上げたと同時にクナイの雨に降られる
軽巡棲姫「…早いですね、もう少し後に来ると思ってましたが」
川内「神通、覚悟はできてるんだよね」
軽巡棲姫「覚悟…?覚悟ですか……フフ…ええ、できていますよ」
駆逐棲姫「軽巡棲姫、その人はお任せします」
軽巡棲姫「喜んで」
阿武隈「…私達が貴方を通しません」
不知火「……待ってください、阿武隈さん…離れて!」
2人の足元の水が沸騰し、その煮えたった海水の中からレ級が現れる
レ級「……」
阿武隈「曙さ…いや…曙ちゃん…?」
不知火「…この、熱気……近づかれたら…」
駆逐棲姫「アハッ…じゃ、お任せします♪」
軽巡洋艦 川内
神通の槍と短刀をぶつけ合う
川内「神通!なんでこんな事…!」
軽巡棲姫「作り物なんて要らないんですよ、前の世界の作られた姉妹なんか必要ありません」
川内「本気でそんなこと言って…!」
軽巡棲姫「覚悟はあるか、そう言いましたね…!ならお見せしましょう、私の覚悟を…!」
神通の攻撃がより苛烈になる
川内(違う、そんな訳ない、神通がそんな簡単に那珂を…)
軽巡棲姫「来なさい、私の……メイガス!!」
神通の腕に緑色の紋様が現れる
川内「なッ…!?」
失われた碑文の力を…リアルで…
軽巡棲姫「これが私がネットの中で視てきたもの…!これが私の覚悟!」
川内(……まさか、そういう、事…?)
離島鎮守府
駆逐棲姫
駆逐棲姫「上陸……と?」
身体に大穴が開き、崩れ落ちる
再生し、立ち上がったところをまた撃たれる
駆逐棲姫(狙撃、しかもこの精度、敷波…だけど、威力が並外れて…)
姿を変え、岩陰に転がり込む
駆逐水鬼「うーん…取り戻してる、あの両脚のない、主砲すら撃てない敷波とは全く違う……いい狙撃の腕で……ぁが…」
岩ごと貫かれる
駆逐水鬼「成る程…さっさと目的を果たすか」
岩陰を出て、建物へと歩く
飛んできた弾丸を受け止め、敷波の方へ微笑む
駆逐水鬼「おいたが過ぎましたね、敷波」
加速して一瞬で殺せば…
駆逐水鬼「っ!」
横っ面を弾き飛ばされる
朧「これ以上は行かせない!」
駆逐水鬼「おや、もう戦えるんですね…立ち直らないと思ってましたが」
朧「……」
何かおかしい、何が原因で立ち直れた?そしてその目は…
駆逐水鬼「…まあ、貴方とやりあうつもりはありませんよ」
朧「……え?」
朧さんが全身から血を流して膝をつく
レ級「……」
朧(別の、レ級……いや、この感じ…)
朧「島、風…?」
駆逐水鬼「よく気づけましたねぇ!お見事お見事…じゃ、殺さない程度に遊んでてください、私の目的は貴方じゃない」
工廠を目指し、歩く
駆逐水鬼(さっさと明石さんを貰いましょうか)
戦艦 レ級
レ級(来た、綾波が……綾波がここに来てしまった…まだなんの準備も整っていないのに、まだ戦う用意すらできていないのに)
だけど無視できるはずがない
漣をやられているのだから、曙を奪われているのだから…
レ級「…ここで、終わらせ…」
肩を掴まれ、静止される
レ級「…何故止めるんですか、キタカミさん」
まだ、行くなという事か?
キタカミ[総力戦にはまだ早いよ、ここで下手に動けばより犠牲が出る、大人しくしてな]
レ級「……そんなの…」
キタカミ[後、任せたよ]
レ級「…私に、ですか」
ここで、指を加えて見ていることが私の贖罪か?
ここで仲間の死を眺める事が…
キタカミさんは振り向いて笑って…
キタカミ「さあ、ギッタギタにしてあげましょうかね」