元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
駆逐棲姫
駆逐棲姫「おや」
杖をついてこちらに歩いてくる見知った顔
キタカミ「……」
駆逐棲姫「いつ以来ですか?私が覚えてるのは…あなたの肉の味くらいな物ですが」
キタカミ「……」
口もきかず、目だけで私を殺そうという視線
駆逐棲姫(…ゾクゾクしますねぇ…でも、姉は求めてないんですよねぇ)
駆逐棲姫「そんなチャチな嘘は私には通じませんよ」
キタカミ「やっぱり?みんな騙せてたから期待したんだけど」
駆逐棲姫「徒労に終わりましたねぇ…私は人体を研究する期間が長かったので、そんな見え見えの嘘歩き、簡単にわかりましたよ」
キタカミ「……じゃあ、これは?」
駆逐棲姫「こふっ…?」
武器は持っていなかったのに、撃たれ…
駆逐棲姫「仕込み杖…なるほど、暗殺者気取りですか?」
キタカミ「……さ、ギッタンギッタンにしてあげましょうかねぇ?」
駆逐棲姫「
キタカミ「…なんで英語…?I'd love toとでも答えりゃいいのかね…アンタの英会話教室に付き合う暇なんてないんだけど」
駆逐棲姫「釣れませんねぇ…」
地面を蹴り、近寄ろうとした瞬間脚が弾け飛ぶ
駆逐棲姫「…アハッ」
キタカミ「近寄らせると思った?まあなんでもいいんだけどさ、早いとこ…やられてくれるも嬉しいんだけど」
駆逐棲姫「そうはいきません、貴方の最後の日です、楽しみましょう?」
悍ましい制度の砲撃をその身で受け止めながら詰め寄る
キタカミ(ま、当ててもお構いなしなのは想定内…)
駆逐棲姫「アハハ!」
蹴りをかわされ、殴りかかっては杖でいなされ
間合いを詰めさせない、絶妙な動き
駆逐棲姫(駆逐棲姫では厳しいか、いや、この姿では万に一つも勝てない…!なんて素晴らしい!)
駆逐水鬼「もっと楽しみましょう!!」
キタカミ「そんなつもりこっちにはないよ」
仕込み杖が文字通り火を吹く
駆逐水鬼「っ!…炎の散弾…!」
キタカミ「見えた?見えなかったっしょ、カートリッジを挿したの」
全く見えなかった、そんな動作はなかったのに
駆逐水鬼(素晴らしいな、さすがという他ない、私の想像を遥かに超える力量といい…そして、この一瞬の隙も与えない所作、弾切れしたのか、それともリロードしたのかすら全くわからない…どんなタネを隠してるのか)
キタカミ「もっと驚かしてあげる」
駆逐水鬼「へぇ…!」
さっきの砲撃よりも、早く、目で捉えられないほどの砲撃
キタカミ「雷のカートリッジ…狙撃用だけど、威力高いしさぁ…」
加速し、背後へと回り込む
キタカミ「あ、こんな使い方もできるよ」
駆逐水鬼(反応された…!?)
背後へと向けられた砲口を手で逸らす、しかし、拡散した電撃が逃してはくれない
駆逐水鬼「くッ…!…クッ…アハッ…アッハッハッハッハ!」
吹き飛ばされ、起き上がり、腹を抱えて笑い出す
キタカミ「……楽しい?」
駆逐水鬼「ええ!これ程まで強い人は知りませんよ」
キタカミ「なら、随分狭い世界で生きてきたね…いや、周りを見てないのか」
駆逐水鬼「ほう?」
キタカミ「そりゃ確かに個人技なら私はそこそこ上だろうけどさ、ある事をすれば私は…倍…いや、3倍は強くなれる」
駆逐水鬼「……まさか、くだらない仲間と協力…か言い出すんですか?」
キタカミ「その重要性はよく知ってるでしょ?前の世界でも敷波にカバーさせてたじゃん」
駆逐水鬼「……不要です、従順だから使ってただけで必要ではない」
キタカミ「あ、そう」
駆逐水鬼「そんな事より、私はなんで貴方が喋れない、そして歩けないふりをしていたのかが気になりますが」
キタカミ「…あんた程のやり手じゃ、誰かに知られた時点であんたまでに伝わっちゃうでしょうが…だから私は誰にも教えなかった、たった一度の不意打ちの為に」
駆逐水鬼「…それすらも防がれた、一瞬で看破されて、無駄、徒労、本当に残念ですね」
キタカミ「…あーあ、馬ッ鹿でー…」
駆逐水鬼「…へぇ?」
キタカミ「誰がいつその不意打ちをしたって言ったよ、なんのためにこうしたと思ってるよ」
駆逐水鬼(ブラフか?それとも…)
キタカミ「さぁ、続きを始める前に…もう一つ見せてあげるよ」
駆逐水鬼「……おや、それは?」
キタカミさんの背後から近寄ってくる自立式の連装砲…
そしてそれが持っている装備
駆逐水鬼(見たい事ない、タイプだな)
キタカミ「私さ、工廠に入り浸って明石に内緒でこんな物作っちゃった」
従来通り魚雷発射管は両腕にある、しかし両の太腿についているはずの魚雷発射管が無く、代わりに装甲
主砲の砲身も切り詰められ、取り回し重視…手に握られたものとは別にそれが3つ腰に下げられている
キタカミ「言うなれば、私なりの改二…キタカミ改二」
駆逐水鬼「砲身を切り詰めているのは取り回し重視でしょうが、離れられたら流石の貴方も当てられないのでは?」
キタカミ「んー…2キロ離れられたとして…流石に50発に1回かな…外すのは」
駆逐水鬼「成る程、どうやらそれ程に自信があるらしい」
キタカミ「ブラフだと思う?」
駆逐水鬼「やるでしょうね、貴方なら……楽しめそうだ」
駆逐水鬼(しかし、騙し打ちは結局ブラフなのか?)
主砲を向けられる
キタカミ「よーい」
ドン、と主砲がこちらに放たれる
砲撃のレートは先程の倍以上、ドン、ドンと一本の主砲から砲撃が飛んでくる
駆逐水鬼(…この腕を盾にして耐えるのも限界だな、カートリッジがついてるのか、威力もさっきと比べ物にならない)
盾にしていた大腕の主砲を向けた瞬間、大腕が破裂する
キタカミ「人にそんなもん向けちゃダメだよ」
駆逐水鬼「よく言えた物ですね…!」
キタカミ「化け物には向けていいんだよ」
大腕が破裂し、盾が無くなった瞬間顔面に立て続けに砲撃をくらう
駆逐水鬼(あっさりとレベル2まで越えられたか、だが…)
残った一本の大腕が地面を砕き、土煙をたてる
綾波「……レベル3、始めましょうか?」
キタカミ「んなもん、ただの前座に過ぎないんよね、さっさと本気出しなよ」
綾波「これで充分なんですよ、貴方は」
キタカミ(…ま、そう言われると…)
重雷装巡洋艦 キタカミ
キタカミ(こっからは一気にきつくなる訳だ)
綾波の進路を潰す砲撃
それを受けながら近寄ってくる綾波
キタカミ(ったく、人間のカッコして駆逐艦の名前で戦艦みたいに突っ込んで来んなよなー…)
主砲を持ち上げ、中の薬莢を全て捨て、弾薬を新たに詰め込む
綾波(リロード?腰の主砲は…別のカートリッジ装填済みか!)
キタカミ(…さて、不意打ち…この隙だらけの私がエサ…)
綾波「ごふっ…」
綾波の胴体がちぎれ、上半身が吹き飛ぶ
キタカミ「ごふっじゃないよ、そんな態とらしい演技なんか要らないんだよ」
千切れとんだ綾波を別の主砲で撃ち、燃やす
綾波「…アハッ!」
瞬きの間に無傷な綾波が目の前に現れる
綾波「敷波と組んでたんですか?」
キタカミ「んや?敷波なら自分でやってくれるって信じてただけだよ」
綾波「……そうか、この違和感、敷波の狙撃も貴方が仕込みましたか、だからこうも合わせられる」
キタカミ「アタリ」
綾波「……素晴らしい…!決めました、やはり貴方だ!」
キタカミ「は?」
綾波「さあ、実験開始です♪」
綾波がカートリッジをこちらに向け、起動して挿し込む
キタカミ(…何をした?)
左手を背中に回し、綾波にわからないように敷波に狙撃を指示して砲撃する
綾波「アハッ!痛いですねぇ…!」
キタカミ(ダメだな、距離詰められ過ぎ、速すぎるし逃げられない)
狙撃も砲撃も、受けながら、体がちぎれ飛びながらもまだ綾波はこっちに迫り、腕を振りかぶる
キタカミ「…よし」
手の主砲を捨て、腰の主砲を二つ握って向ける
綾波(とうとう出してきたか!その中身は…!?)
キタカミ「何期待してんのかは想像つくけど、ちょっと違うんだな…これが」
引き金を引く
主砲から砲弾が射出され綾波を捉える
綾波(通常の、砲弾…?)
キタカミ「これは零距離用だからさ、こんなに近づかれたときに使うヤツ…まあ、ショットガン的な?」
さっき以上の連射速度で砲弾が放たれる
綾波を砲撃される度に撃ち砕く
砕き、破壊し、壊す
綾波(当たった砲弾の中からペレットが射出されてるのか?この破壊力…とんでもないな)
綾波の体が崩れたところに狙撃で再び頭を吹き飛ばされる
キタカミ(さて、距離を取って…)
キタカミ「っ…!?」
背筋が凍る
咄嗟に身をかがめ、真上を通るナニカをやり過ごす
綾波「あれ?完全に捉えたと思ったのに……変ですねぇ?」
キタカミ「……この匂い…」
濃厚な血の匂いと一緒に…
キタカミ「朧と、島風の匂い……いや、島風だ」
綾波「ええ、貴方のすぐ後ろにいるのは島風さんを使って作ったレ級さんですよ」
キタカミ「……だけじゃないでしょ、もう1人来てる…曙だね」
綾波「アハッ♪大正解」
別のレ級が阿武隈と不知火を引きずってこちらへと近寄ってくる
綾波「2対1って卑怯だと思ってたんですよ、ほら…ね?」
キタカミ(2対3も充分卑怯だっての…)
綾波「貴方は実に強い、しかし……残念ですねぇ…結局私には勝てないんですよ」
キタカミ「数の力って話?それなら今からぶっ壊してあげるよ」
綾波「……いいえ、貴方はずっと感じているはずだ…死の香りを」
甘ったるい、そして鼻につく死臭
綾波「私と相対するものは死ぬ、それだけですが…たったそれだけが真実なんですよ…さて、なんでこの2人のレ級を見せたのか…」
綾波がこちらに背を向け、阿武隈と不知火に近づく
キタカミ「…やめなよ」
綾波「止めればいい、貴方が」
これは誘い、罠…
私を殺す為の罠だとわかっていても…
綾波を撃ち抜こうが、ミンチにしたとしても止まりはしない
どれだけ撃ち込んでも止まらない
故に、私から近づいて、止めなければならない
キタカミ「っ…」
そう、我が身を守るのは容易い…だけど、護る事はどれほど難しいか
綾波「言ったじゃないですか、貴方にするって」
綾波が振り返り、カートリッジを私に突き挿す
キタカミ「ぁ…がっ…」
綾波「ああ…義理人情?なんと馬鹿馬鹿しい…そんなくだらない物の為に死ぬ事なんてない、貴方は強かった、しかし…」
綾波に突き飛ばされ、倒れる
綾波「……ああ、なんて事だ、完成してしまった……私の改二が」
全身が冷え切る感覚
冷たい死の香りを鼻腔に感じながら、死にゆく冷たさを感じながら、立ち上がり、綾波を睨む
綾波「…おや、どうしました」
キタカミ「……いや、さ…ちょっと…調子が良いもんでね、身体動かしたくて」
綾波「へぇ…」
すこぶる、調子はいい…身体は言うことを聞くんだ、なら戦える、まだこの殺し合いは終わってない
綾波「そんなフラッフラで戦える訳…」
綾波の横っ面を思いっきり主砲で殴りつける
綾波の手からカートリッジが零れ落ち、地面を転がる
綾波「痛っ…!」
綾波の側頭部から血が流れ、此方を睨む
キタカミ「…なんだ、良い顔するじゃん……そんなに痛かった?」
綾波「……さっきまでと違う、なんですか、ソレ」
キタカミ「……なんだろね、応えてくれてんのかな…私に」
この艤装が、私の中のタルヴォスの因子が
綾波「……ああ…成る程、もしそうなら…本当にそうならなんて素敵なことなんでしょうか……ああ…」
綾波が涙を流し、狂おしそうに此方を見つめる
綾波「やめて…もう、やめ……アハッ…アハハッ!!」
キタカミ(…殴った場所、悪かったかな…)
綾波「敬意を表し…」
レ級が一体消える
キタカミ「あ…!」
もう一度現れたレ級が敷波を地面に組み伏せる
綾波「1対1……というのは、どうでしょうか?…もし私が負ければ、全て終わりにしてあげますよ」
死臭…
キタカミ「……上等」
中距離を維持しながら砲撃、それを綾波は受け、弾き、かわしながら…
綾波「このような戦い方、趣味ではありませんが…!」
綾波が視界から消えると同時に腹部に突き刺さるような感覚
キタカミ「…かはっ…」
弾き飛ばされ、地面を転がる
身体中が擦り傷で痛い
綾波「貴方相手に加減はしませんよ」
キタカミ(カートリッジは防いだのに、この強さ…!)
背後へと主砲で殴りつけ、綾波の攻撃を防ぐ
綾波(視界から消えたら背後の防御、徹底していますね、タイミングもズラしたのに…戦闘経験からくるものか)
キタカミ(あと何回防げる?有効打は?何が使える…!)
主砲を綾波に投げ、腰の主砲を掴む
綾波「っと…?」
綾波(投げられた主砲のせいでどれを取ったのか…見えなかった……いや、両手に主砲を持っている、あの近距離タイプか…)
綾波が主砲を構え、距離を取ろうとしたところを右手の主砲で撃ち抜く
綾波「かッ…!?」
綾波(なん…?)
右手の主砲、まだ見せてない、もう一つの不意打ち…!
キタカミ(こっちが最後の…たっぷり火薬詰め込んだ、火力重視の奥の手…)
綾波(切り札を切ってきたか…!しかもこの感じ、何かされた!)
綾波「……解析できてないか…まあ、今は後回しでも良い…」
綾波が一瞬で間合いを殺し、距離を詰めてくる
膝と胸がくっつくほど脚を引き…
キタカミ(これ…那珂のステップと神通の…)
キタカミ「……はは…ちと、キツいね…」
砕かれた、海まで弾き飛ばされ、立ち上がれば立ち技で圧倒され…
キタカミ「…っ…」
綾波「まだ、立てますか」
キタカミ「そりゃあ……ここで終わらせられるならね…」
ああ、これだけ痛いなら……これだけ苦しんだなら…
キタカミ「……もう、流石に良いかな?」
綾波「ああ、貴方が倒れても…死んだとしても、誰も文句なんか…」
綾波(いや、今の顔つき、違う……まだ何かある…!)
両の手がピンク色の紋様に包まれる
キタカミ(…これでダメならお手上げだ…よ……)
海に手を突っ込み、何かを掴んで引き上げる
両手に握られた釘と、人形…
受けたダメージ分、そのままそっくり返す…
綾波(本物の、奥の手…!?止めなければ…!)
キタカミ(これで…終われ…!)
釘を人形に突き刺す
綾波「なッ…!?何を…や、やめ…ぁが…あ…ああぁぁぁぁぁッ!?……」
綾波が膝を突き、静止する
キタカミ「……足りた…か…」
海面に倒れ込む
キタカミ(もう、立つ力もない…でも、タルヴォスの最大の力を使った復讐で…終わった…)
綾波「……アハッ…!アハハ…」
キタカミ「……嘘…」
綾波「アハハハハハ!あーおかしい!なんでこんなバカな!アハハハハハ!」
綾波がケロリとした様子で立ち上がり、近づいてくる
綾波「…何があったか教えてあげましょう、全くもって傑作ですよ?なんたってもう1人の私がわざわざ犠牲になってくれたんですから!」
キタカミ「…もう、1人の…?」
綾波「ゴレの影響でできたもう一つの人格ですよ、全く何をトチ狂ったのか知りませんが、あなたの攻撃を一身に受けてくれました…ええ、貴方の先程の攻撃、物理的な攻撃でなく、精神を破壊するような物らしいですね?……おかげで私は無事だった、最高の結果です♪」
キタカミ「……冗談でしょ…」
綾波「何一つ、間違いようもなく真実です」
綾波がカートリッジを見せつけるように取り出す
綾波「……このままでは辛いでしょう、介錯して差し上げます」
綾波がカートリッジを挿し込む
艤装が変化する
綾波「この、綾波改二で」
キタカミ「……ごめん、みんな」
綾波が背中に足を置き、艤装を操作する
足がバチバチと電気の弾けるような音を鳴らす
綾波「それでは、
強い衝撃、海の中に堕ちながら削られる体
冷たい海の底に体を打ちつけ、私は終わった