元勇者提督   作:無し

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崩壊

離島鎮守府

駆逐艦 天津風

 

天津風「ちょっ…連装砲くん!?どこ行くの…!」

 

連装砲くんを追いかけ、出るなと言われた部屋を出る

 

満潮「何やってんの!?外は…」

 

天津風「連装砲くんを連れてすぐ戻るから!」

 

非戦闘員、或いは戦力と呼ぶにはやや不足したものを護るための部屋…の、護衛の私が離れるのは良くないのに…

 

天津風「…あ、れ…?」

 

レ級「……ァァ…」

 

レ級が首を捻り、肩越しに此方を向く

 

天津風「…島風、なんで…」

 

連装砲くんが島風に飛びつく、しかし一瞬で尻尾に弾き飛ばされる

 

天津風「連装砲くん!大丈夫?怪我は…島風!なんでそんな格好に…いや、何があってここに…貴方は、本土で平和に暮らしたかったんじゃなかったの…?」

 

レ級「……」

 

それは叶わなかった、と言うことか

 

天津風「…私は、今は島風の代わりとしてここに居る…ねぇ、島風…今の貴方は…」

 

冷たい目が、私を見つめる

 

天津風「……そう…敵、なのね…それなら、私は…島風の代わりに貴方を倒す…連装砲くん、力を貸して…!」

 

レ級「……」

 

島風が姿を消す

 

天津風「消えっ…?…きゃあっ!?」

 

弾き飛ばされ、地面を転がる

 

天津風「島風…!」

 

連装砲くんが私の近くに近寄り、護るように砲口を島風に向ける

 

天津風「連装砲くん…!撃って!!」

 

どんなに撃っても簡単に避けられ、攻撃を喰らう

 

天津風(速すぎる…!島風の動きが見えない…)

 

目の前に迫る拳に思わず目を閉じる

 

天津風「っ!……?」

 

レ級「…!」

 

黒いモヤが、島風の拳を防いだ

 

天津風(な、何…これ…)

 

モヤが私へと近づき、入り込む

 

天津風「ぁ…ぁあ…?」

 

意識が呑まれる…何、この感触

 

天津風「……違う、ダメ!…やめて、お願い…島風…助け…て……」

 

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

朧「っ……?」

 

意識を失ってた…?そうだ、島風とやり合って…圧倒されて…

 

土を掴みながら、歯を食いしばりながら、なんとか立ち上がろうとする

全身から血が流れたせいで、やけに寒い

 

朧「…みんな、は…?」

 

ようやく周りの景色が見えて来た、音も聞こえて来た

 

朧(…戦闘音…?)

 

朧「ぁがっ…!?」

 

何かに乗られ、土が口に入る

 

綾波「起きましたか、どうも?」

 

朧「あや、なみ…?」

 

綾波「今島風さんと天津風さんがやり合ってます、私の作った暴走システム…まさかまだ取っておいたなんて、天津風さんが取り憑かれてますよ?」

 

朧「…そんな…」

 

綾波「しかし……天津風さん、保たないでしょうねぇ、あのシステムを島風さんが乗りこなしたのは生まれつき体の作りがしなやかで、あんな動きをしたとしてもびくともしない頑丈さも併せ持っていたからこそ…天津風さんでは耐えられない、あの速さでは自身を破壊することしか…」

 

朧「天津風…!」

 

必死に顔を動かして戦いを眺める

速すぎてしっかりとは見えない、だけど確かに戦ってる…

 

黒いモヤをまとった天津風が

 

綾波「しかし、傑作ですよ、アレは元々私か島風さん用の物、用途は私の強化と島風さんによる暴走で内部の同士討ち…のハズが…アハハ、まさかこんな風になるなんて」

 

島風が変化しレ級が弾き飛ばされ、目の前を転がる

 

レ級「ァア…!」

 

朧(天津風が優勢…!?)

 

綾波「なんと面白いことか、まさかあの島風さんを押さえるとは…脳を最大限使い、思考し、最速で駆ける…それだけなのに」

 

島風を越えた天津風の…

 

天津風「………」

 

綾波「…おや?」

 

何かが違う…今までの島風の時とは雰囲気が違う…

 

綾波(まさか、制御している…?まさか…)

 

天津風が倒れた島風に近寄る

 

天津風「……」

 

綾波「そこまでです」

 

綾波が立ち上がり、天津風に近寄る

 

綾波「島風さんを手放すには惜しい…ねぇ?」

 

綾波が艤装を操作しながら此方を向き、微笑む

天津風は島風を見つめたまま動かない

 

朧「天津風…!」

 

綾波「アハッ……ドカン、なんてね」

 

天津風に綾波の砲撃が直撃する

 

天津風「っ…」

 

天津風が崩れ落ち、黒いモヤが消滅する

 

綾波「……ついでに殺しておきましょうか、面倒です」

 

朧「待っ…」

 

綾波「…待って欲しいですか?良いですよ、どうせ私の前には誰も立てない、もし立ったら死にますからね、キタカミさんのように」

 

朧「……え?」

 

綾波「健気にも私に挑んで来ましたが、今頃魚に食われてるでしょうね、貴方たちみんな騙して戦えないふりして、あわよくば私も騙して、一世一代の大勝負の筈が…私を改二にして負けた…不知火さんと阿武隈さんも死んでくれましたし、今残ってるまともな戦力はどれほどいるのか……貴方の心の中を虫を踏み潰すように踏み荒らしてあげますよ」

 

朧「…そん、な…」

 

綾波「もっと殺します、たくさん殺して貴方を苦しめます…さあ、貴方はどうしますか?」

 

朧「……そんなの…」

 

わかってる、折れちゃいけない…折れるな、折れるな…!

 

朧「そんな、の…」

 

折れるな、折れちゃダメなのに…

 

どうすれば良いかわからない、綾波を見たくない、綾波がいる限り、みんな殺され続けて…

 

綾波(折れた…♪)

 

綾波「…良いんですよ?諦めても、貴方を否定する人は居ません…だって誰も勝てないんだから、諦めて良いんですよ」

 

朧「…っ……」

 

どうすれば良いのかわからない、何一つ通じない相手に…何が通じるのか

 

綾波「……おや?次から次へと…」

 

ガソリンのような匂い…

艦載機が綾波に対する攻撃を始める

 

綾波「…おや、ソッチですか」

 

綾波に艦載機が突っ込む

 

朧(あの艦載機の動き…誰…?)

 

艦載機が近づいて攻撃する、基本的な戦術…

だけどそれ以上の、もはや特攻のような動き…

 

朧(…上!)

 

綾波「…あ、そこか」

 

瑞鳳「潰れろ…!」

 

空から降って来た瑞鳳さんが綾波に蹴り飛ばされる

 

瑞鳳「チッ…!」

 

綾波「良い可動域でしょう?やはり人の体はしなやかで…そう、機械より無茶が効く…アハッ」

 

瑞鳳「……この血の匂い…」

 

綾波「濃密で、素敵…ですよね?」

 

瑞鳳「…最低最悪、何人やったの?」

 

綾波「私が直接手を出したのは…ひーふー……4人ですか、この前の漣さんに荒潮さんに、ここで扶桑さんと、阿武隈さんと不知火さんも海に捨てて来たし、キタカミさん……ああ、島風さんと曙さんも私の手で下したんでしたっけ?いや、曙さんは違ったかぁ、何にせよ4人どころじゃなかったですね!」

 

朧「っ…!」

 

瑞鳳「……撃て!」

 

各方向から砲撃音、綾波が立っていた地点が爆散する

 

綾波「…これはこれは、いろんな面々が集まっておいでで…さながら最終決戦といったところか」

 

朧(…あれは、佐世保に、横須賀…舞鶴組も…)

 

瑞鳳「……涼しい顔してられるのは、あとどれくらいかな」

 

綾波「アハッ……おや?目的達成しましたか…とりあえず、撤退しますか…」

 

瑞鳳「何?許すと思ってんの?」

 

綾波「許さなければ負傷者は次々死にますよ、だって殺してないだけで半分死んでるようなものですからね、そこの天津風さんもそうでしょう…私は部下に殺さない程度にいたぶれと命令しましたが、怪我人は放置していれば死にますよ」

 

そういって綾波は悠々と踵を返して帰っていく

 

瑞鳳「…朧、立てる?」

 

朧「……無理、です」

 

瑞鳳(…使い物にならないな、何でこんな弱っちぃのばっか…)

 

敷波「朧…」

 

朧「…敷波?」

 

敷波は戦闘には駆り出される予定じゃなかった筈、避難してるはずの敷波がなんで…?

 

敷波「……お願い、朧…一回だけ、他に何も要らないんだ、アタシに…一回だけ力を貸して…」

 

敷波が膝をつき、懇願する

 

敷波「アタシ、綾姉ぇを止めたいんだ…どうしても…!あと一回、もう他に何も要らない、どんな結果でも良い…お願い…!」

 

朧「なんで…アタシに…」

 

敷波「……どう思われるか、わかってるけど……綾波型として、戦って欲しいんだ…」

 

綾波型として…

 

朧「…イヤだ、絶対に、そんなの…!」

 

敷波「……わかった、ごめん」

 

春雨「良いじゃないですか、そのくらい…一緒にやってあげれば」

 

朧「…春雨?」

 

春雨「綾波さんは…明石さんを連れ去りました、高速修復剤の生産は完全にストップです」

 

つまり、現在どれほどあるかはわからないが…継戦能力は一気に落ちた

 

春雨「今からみんな揃って逃げ出したところで、綾波さんはどこまでも追いかけ、いたぶり、破壊し尽くすでしょう…それなら悔いの残らないように、最終決戦といきましょう」

 

要するに、玉砕しろと言うのか

 

朧「……そんなの…」

 

レ級「朧」

 

朧「…曙…?」

 

春雨「…貴方…またただ黙って観て……その手は何ですか?」

 

レ級「立ちなさい、朧…アンタがやらないなら、私だけでも敷波に付き合って死んでくる」

 

肌色の手が視界に映る

 

朧「…その手、どうしたの…?」

 

レ級「……限界なのよ、この身体が………今まで戦って来た憶測だけど、深海棲艦の力は所詮死人に与えられたもの、深海棲艦の力を使いすぎた私は死人ですらない…というか、いや、これはドロップに近いのか」

 

春雨「…ドロップって、ああ、深海棲艦が人の姿になる…」

 

レ級「そう、私は人間に戻りかけてる……ほら」

 

曙の身体から白い皮膚が崩れ落ちる

 

アケボノ「……決戦前に戻られても、困るんだけど」

 

瑞鳳「…一応聞くけど、レ級の時より強いの?」

 

アケボノ「いいえ、全くもって弱い」

 

春雨「勝算は時とともに小さくなり続けていますね」

 

アケボノ「いいえ、まだありますよ、勝つ算段は…」

 

朧「…何?本当にあるの…?」

 

アケボノ「アンタが立てるなら、私達全員が、まだ立ち上がるなら、その限り可能性は0じゃない……何人死んでも…いや、何百人死んででも、綾波を打ち倒すために戦えるなら」

 

まだ、死ぬ…より、多くの人間が死ぬ…

 

朧「…そんなの……」

 

アケボノ「綾波はこう言っている、攻めて来い、と……綾波のお得意の罠だらけの基地に、攻めてこいと…私たちを完膚なきまでに叩きのめすために、殺し尽くすために…!だけど、取り返したい物がある、やらなきゃならない事がある…違う?」

 

春雨「果たして、うまく行くのでしょうか」

 

アケボノ「うまく行く筈がない……だけど、諦めるな、諦めなければ何とでもなる…ここで負けを認めて、終わるのが正解な訳がない…!私は自分が良いと思った事をやる」

 

朧「……そんな事、言われても…」

 

アケボノ「……立て!朧!…アンタは漣の仇をとって、曙を取り戻すんでしょ!?私の考えてる事全部わかるでしょ!?私がどんな想いかも…!」

 

朧「……」

 

アケボノ「勝つなら、アンタも必要なのよ…数じゃない、アンタが…代わりになりなさい」

 

 

 

 

 

作戦室

 

朧「被害は?」

 

朝潮「…阿武隈さんと不知火さん、キタカミさん、明石さん、扶桑さん、山雲に霰…負傷者は龍驤さん、川内さん他10余名です」

 

朧「残ってる修復剤を使ってできる限り全員を万全な状態に、それから作戦を立てよう……こうなったら、許される限りの時間を使って確実にやれる作戦を立てるしかない」

 

 

 

 

 

 

駆逐棲姫のアジト

駆逐棲姫

 

駆逐棲姫「んー……この姿が1番気楽でリラックスできますね…さて、お加減はどうですか?明石さん」

 

明石「…何で、私をこんなところに…」

 

駆逐棲姫「これですよ」

 

高速修復剤、一瞬で傷口を塞ぐ治癒剤…

 

明石「な、何でそれを…」

 

駆逐棲姫「私、前の世界ではこれに関わることがなかった物で…だから回復薬なんか作ってましたけど、これも流用できるのかなぁって思って♪」

 

ニッコリと笑う

 

駆逐棲姫「実験台になってください、これを複製する為に」

 

明石「っ…!」

 

駆逐棲姫「どこまで壊したら治らなくなるのか、私、気になってしまいまして♪」

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