元勇者提督 作:無し
海上
綾波
綾波「おや、おやおやおや」
基地の周りは阿鼻叫喚の様相、艦娘も何名か死んだか、それよりもこちらの犠牲は…
綾波(ゼロか、死んではいないな……おや?)
朧「……」
綾波「どうやら本物みたいですね」
朧「綾波、この人達になんでこんな事をさせたの?」
綾波「素敵なアイデアでしょう?ハンドガンの代わりにショットガン、ペレットが一発でも当たれば笑い事で済まない負傷になりかねない、当たりどころによっては死にますよ、アハハッ」
朧「……だからアタシ達は全力で、この人達を…制圧した」
綾波「殺せばよかったのに」
背後から爆風が押し寄せる
朧「っ!」
綾波「…っと…曙さんの水蒸気爆発です、原理的には熱したフライパンに落とした水が弾けるのとなんら変わりません、あれの場合は蒸気になっても逃げ場はたくさんありますが、逃げ場を無くせば高圧の……いや、説明はいらないか」
朧「……威力も含めて、よくわかった…」
綾波「……おや?」
敷波「…綾姉ぇを、止めに来た」
綾波(…おや、潮さんとレ級さんも…いや、姿が人間の姿に…)
アケボノ「4対1…ってわけ」
潮「…戦います」
綾波「……はぁ、レ級でなくなった貴方も素敵ですねぇ…しかし、4人がかりでも…私には勝てない」
朧「…だとしても、敷波はこう言いたいみたいだよ」
綾波「なんですか?」
敷波「……綾波型、舐めんなぁ!!」
その一言を皮切りに砲撃戦が始まる
アケボノ「戦闘開始…行くわよ朧」
朧「遅れないでよ!アケボノ!」
綾波(前衛はアケボノさんと朧さん、中衛に潮さん、敷波は狙撃に徹するか…悪天候でもこの距離なら敷波にとっては関係ないでしょうが)
前の世界で敷波に狙撃を仕込んだのは何を隠そう、私だ
敷波にとってはこんなバットコンディション、なんて事ないだろう
水蒸気爆発による大荒れの海も、この大雨も
綾波(しかし、流石にこの姿でやるのは大人気ないか?……まあ、いいでしょう)
踏み込み、目の前の波を蹴る
アケボノ(コイツ海水で視界潰すつもりか、姑息な手ばかり…!)
朧「貰った!」
朧が高く上がった波を足場に飛び上がり、撃ち下ろす
綾波(いい的…いや、これは…)
自身も飛び上がる
先ほどまでいた地点が爆散する
綾波(やはり下はアケボノさんのカバー、横に行けば敷波のカバー、上なら朧さんと1対1…)
綾波「!」
さらに上から砲弾が降り、くらう
綾波(広角射撃!潮さん、なんで馬鹿げた精度を…!)
広角射撃を宙にいる相手に当てるなんて、普通できるわけがない…
綾波(ここまで予定通りの動き、か…!?)
綾波「!」
いつの間にか目の前に朧が迫る
朧「アタシは、空中で有効打が複数ある…!」
艤装のブーストを利用したサマーソルトを喰らい、弾き飛ばされる
綾波「く…!?」
そして弾き飛ばされた先には
アケボノ「…いらっしゃい」
艤装の砲口部を突きつけての連続射を受ける
綾波(ダメージにはならないが…動けな…)
下半身が狙撃でちぎれ飛ぶ
綾波「っ!」
綾波(思ってるより、ずっとしっかりした連携…)
右腕をアケボノの肩に乗せ、引き寄せる
綾波「…貴方が、そうすると言うことは…」
アケボノ「黙れ!!」
体が吹き飛ばされ、水面を転がる
朧「敷波!サイドに展開!アケボノはアタシと動いて!」
綾波「思ったより、よほど……っ?」
雷が降り注ぐ
綾波「ぁがっ…!?…な、ん…?」
綾波(雷を、この威力で落として…いや、これは…潮さんか…!)
カートリッジの威力ではない、自然発生の雨雲の中のプラズマを利用した…!
綾波(流石に、これは…いや、面白い…!)
パターンを見ろ、把握しろ…
相手の思考を理解しろ、実に簡単な話だ、私にとっては…
朧(大丈夫、アタシなら、やれる!!)
朧が陣形を崩し突出する
綾波(…ああ、なるほど)
踏み込む素振りを見せ、体を引く
朧「!?」
進んでいたら居たであろう位置を狙撃がすり抜ける
綾波「アハッ…♪」
身体を捻り、広角射撃をかわす
潮「そ、そんな…」
姿を変え、駆逐水鬼の大腕でアケボノの砲撃を受け切る
アケボノ(対応され始めた…!)
駆逐水鬼「んー…」
大腕を振り上げ、海に振り下ろす
駆逐水鬼「もう、ダメージは受けないかな♪」
衝撃波が魚雷を全て破裂させる
朧(だ、ダメだ…全部読まれてる…!)
アケボノ(どうすればいい?ここで仕留め切らないと…!)
アケボノの表情を確認し、踵を返す
アケボノ「ま、待て!」
駆逐水鬼(そう、貴方は追ってくる、今私を倒せば倉持司令官に手を出されることは無いと考えているから……そして、自分たちの攻勢を圧倒的に崩された朧さんたちはチームワークを乱してしまう…)
朧(アケボノが1人で前に…止めないと!)
まともな判断力が残っていたとしても朧がアケボノを止め、残りの2人がカバーできるかどうか、突出したアケボノを倒し、朧にトドメさえ刺せば…あとは実に簡単だ
朧(…いや)
アケボノ(ここで、綾波を…!)
肩越しにアケボノを視認し、笑いながら回し蹴りを振り抜く
駆逐水鬼「アハッ!…っと…?」
振り抜くつもりで全力の蹴りを放ったのに、止められた…
朧の蹴りによって
朧「今だ!」
両肩に砲撃を受ける
駆逐棲姫(敷波と潮さんの…!この大時化で波が高いせいで見えてないはずなのに、正確に…!)
アケボノ「っらぁぁッ!!」
主砲で殴りつけられ、突きつけられた主砲が火を吹く
駆逐水鬼「かッ……!」
アケボノ(ダメージになっている…!?)
朧「このまま攻め続ければ…!」
逃げられない、挟み込まれ、逃げ場のないまま砲撃と打撃を受け続ける
駆逐水鬼(腕も引き剥がされたか…!打撃に集中してるなら…駆逐棲姫だ)
駆逐棲姫に姿を変える
脚がない分、身長があきらかに低い、そのせいで目の前にいたら急に視界から消えたように…
朧「消えた!?」
アケボノ「違う!小さくなっただけ!」
駆逐棲姫「当たりです」
両手の主砲を突きつけ、放つ
朧「ぁが…!」
アケボノ「ごはっ…ぁ…が…!」
綾波「よッ…と、まあ、身長低いと波に飲まれそうなんで、こんな感じでいきますかぁ……さて、いや、実に……貴方達みんな素晴らしいですよ!こんなに強くなるなんて!」
朧「っ…?」
綾波「川内さん達との戦いでも思いましたが、チームとしての完成度は最高クラスだ、信じられませんよ!何がすごいってチームになると個人の実力は明確に落ちる、例えば個人での実力が1ならチームになればその人は0.5くらいになるんですけど…アハッ」
カートリッジを両手に持ち、起動する
綾波「貴方達は0.9くらいは出せてるんじゃないですか?信じられない事ですよこれは!」
朧「…チームで戦って、弱くなるわけなんかない…!」
綾波「取捨選択ですよ、確かにチームを組むと1人で戦ってる時より多様な戦術、対応力などのメリットもありますが……キタカミさんを考えてください、なんで阿武隈さんや不知火さんと一緒に戦わなかったのかを」
アケボノ「…それは、貴方を騙すため…」
綾波「もちろん、それもありますが…あの人は1人で戦うメリットを選んだ」
朧「メリット…?」
綾波「それにはまずデメリットを理解しないとわかりにくいですか?チームで戦うと個人で戦う時と違って1人で戦う前提の戦術が全て使えません」
アケボノ(…そうか、キタカミさんは自由に、自分1人の最大の実力を出す方が勝機が高いと考えた…)
綾波「朧さん、貴方の気迫のある近接格闘は今回なりを潜めています、アケボノさん、貴方の冷酷なまでの闘い方はどこへいったのか……つまり、個人技はチームでは邪魔になる」
朧「…それは…」
綾波「チームになると個人が弱くなる、それはこれが理由です、たとえ艦隊のメンバーでも、孤立した後の神通さんも、那珂さんも、とても強かった…1人になって初めて輝く…不利を得意とする人が非常に多いですね?勿論潮さんと敷波は違いますが」
アケボノ「何が言いたい…」
綾波「通常、チームを組めば個人の戦力は半減すると考えていいでしょう、のびのびとした動きはできませんからね…それを嫌ってキタカミさんは私に1人で挑んできた、阿武隈さんも不知火さんも足手纏いでしかないから」
朧「そんな事ない!キタカミさんは…」
綾波「現実に、キタカミさんは自分の手で狙撃を仕込んで、個人で戦ってるとき限りなく近い、邪魔にならない敷波を選択し、私を追い詰め、1人になってからは私に勝利する直前までいった…本当にあの人は底がしれない」
両手のカートリッジを艤装に挿入する
綾波「キタカミさんはできるだけ貴方達に情報を落とさず、限りなく個人戦に近い状態で戦う為に敷波を選んだ……私も曙さんと島風さんを使わないと死んでいたかもしれない…認めますよ、あと人には本当に追い詰められました」
主砲を手に取り、向ける
綾波「しかし、あの人のおかげで私は改二に到達した…私は、完成した♪」
アケボノ(何、この、重苦しい…)
朧(…まるで、毒でも吸わされてるみたいな…)
綾波「ところで、私は明石さんから全てのカートリッジをいただきました……そして、カートリッジを複数同時に使う事は通常不可能である事を理解しました」
アケボノ「…複数?」
綾波「しかし、私は天才ですからね、出力をそれぞれ調整すれば同時に使用することも可能であると理解し、調整は既に済んでいます、さあ、実験です」
炎のカートリッジは砲弾を散弾のように
雷のカートリッジは主砲を狙撃銃のように
綾波「決して交わる事を想定されてないそれらを混ぜ合わせると?……1×1=1というのは正しい答えではありません…いや、正しいというかそう言う言い回しも違うか……1×1=xです、そのxは今から証明される」
主砲を放つ
4人全員が崩れ落ちる
アケボノ「ぁ…か…?」
敷波「何が…」
綾波「雷のカートリッジを使った場合、初速が確か5000m/sだったか、なかなか化け物じみてますよね、そして炎のカートリッジは融解した砲弾を散弾のように飛ばす…さて、その融解した弾を5000m/sで飛ばしたら?そう言う事です、安らかに……あれ?」
朧が立ち上がるのに続き、それぞれが立ち上がる
朧「…まだ、終わってない…」
綾波「確かに頭は外しましたが…なんで生きて…?いや、どうして死んでないんですか?」
着弾点の衣服は弾けている、確実に被弾してるのに…血は出ていない、傷口がない?
アケボノ「…貴方のおかげです、もう1人のね」
綾波「何…?」
朧(この服が護ってくれた、どうしてかはわからないけど…この服のおかげで死なずに済んだ…)
アケボノ(防御性能は高い、だけど、攻めの手に…私たちの力が足りない…どうすれば倒せる…)
綾波(……少し、確認するべきだな、私が何をしたのか…)
海へと沈む
朧「逃げた…?」
アケボノ「追撃戦、行くわよ」
潮「距離を近づけて!」
敷波「了解!」
離島鎮守府
駆逐艦 春雨
夕張「…これ、どうなってるの?」
春雨「理解できる代物ではありません、そっちはどうですか、特務部」
秋津洲「キーっ!なんか言い方ないのかも!?悪質ハッカーの癖に!」
春雨「私はハッキングはしたことありませんけどね」
夕張「今そういうのいいから…とりあえず、完成でいいのね?」
春雨「……恐らく」
秋津洲「早く二式大艇ちゃんに積み込むかも!何がどうなるかはわからない…」
春雨「待って、外は嵐ですよ…まともに航行できるんですか?」
秋津洲「……はー、わかってないかも、二式大艇ちゃんの使い手であり第六相のダミー因子を持ってるこのスペシャル優秀な秋津洲サマを前にして…」
夕張「つまりいけるの?!」
秋津洲「いけるかも、触覚が増大してるから雨風の微妙な感覚すらも感じ取って正確な操縦が可能だし、任せていいよ」
春雨「……なら、信じましょう」
秋津洲「なんなら片手で操作して2台同時に動かしてあげるかも!ラジコンとかある!?」
夕張「あーもう!信じてるからさっさと行こう!?」
春雨「……これがどんな力を秘めているかわからない、だけど…逆転の一手になると信じて、私達は…戦う」