元勇者提督   作:無し

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暗闇の中

駆逐棲姫のアジト

駆逐艦 春雨

 

綾波「アッハ…!」

 

春雨(…すでに、力の差が圧倒的…しかも、あれは何か)

 

黒い、歪んだ球体が周囲を破壊する

 

綾波「どうですか?この力は」

 

春雨「魅入られたのか、はたまた扱いを間違えたのかは知りません、しかし、そんな力なんかに溺れて何になるんですか…!」

 

綾波「……ふむ、まあ、これを解析すればよりいろんな事に手を伸ばせますが……と」

 

綾波が球体を両手で包む

 

朧「…黒い、光…?」

 

黒いオーラが手の隙間から漏れ出し…

 

綾波「…放つ」

 

春雨「……え?」

 

敷波「……何、これ…海の、上…」

 

一瞬周囲を黒い光が包み、周囲の地形ごと、海の上に転移する

 

綾波「おお、できてしまいましたか……空間を歪められるならとは思いましたが…範囲転移」

 

朧「……おえっ…おええええ…」

 

敷波「気持ち、悪い…!」

 

春雨(脳がエラーを起こしてる、すごい不愉快な感覚…)

 

綾波「良いですね良いですね、使い方がわかってきましたよ…!」

 

綾波がこちらへと手を伸ばす

 

朧「!」

 

朧が綾波に近づき、蹴りを放つ

 

綾波「……痛いですね、手がちぎれそうだ」

 

朧「…綾波、もうこれ以上は…」

 

綾波「これ以上?ああ、潮さんのことですか?それとも、ついさっき遊んできた皆さんのことですか?」

 

朧「っ…!…綾波ぃぃッ!!」

 

朧が距離を詰め、インファイトに持ち込む

 

春雨(…あの動き、完全に那珂さんと同じ…)

 

朧「っりゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

朧が雷を纏った蹴りを綾波に叩き込む

 

春雨(カートリッジの挿入が見えなかった…2度目だな、タネは簡単、事前に仕込んでただけ…だが、カートリッジの起動……ああ、主砲の内側にスイッチがあるのか)

 

綾波「つまらないですね」

 

カウンターの回し蹴りを受け、朧が水面に体を打ち付ける

 

綾波「朧さんも消しちゃいますか」

 

朧「消されて、たまるか…!」

 

春雨(あの黒い球体…異常な現象……高密度の力の塊、か…)

 

春雨「その、貴方の力は…まさに暴力ですね」

 

綾波「…その通りです、まさに暴力と形容するが相応しい、私すらコントロールに四苦八苦するほどの恐ろしい力…」

 

春雨「……貴方はカートリッジの力と、その力を……いや、そうか、力が集まりすぎた結果か」

 

綾波「ええ、私はブラックホールと呼称していますが、重力関係の力は何もありませんよ、ただ、光も空間もこの力の前では何もかもが歪んでしまう…触れたもの全てを傷つける闇」

 

春雨「まさに貴方そのものです…」

 

綾波「おや、そう表現されるとは」

 

春雨「……私がお相手します」

 

両手を胸の前で交差させ、振り下ろす

籠手から刃が飛び出す

 

綾波(…仕込みの双剣、レンジは長く無いし、明らかに不利なのに…何とバカなことを)

 

春雨(……落ち着け、私はやれる、動きは?…問題ないはずだ、まず勝てるはずのない相手…私はままで逃げてきたのかもしれない)

 

手に、力を宿らせる

 

春雨(…私には、所詮ダミーが相応しいか……良いでしょう、私に力を貸してください、スケィス)

 

ダミー因子を取り込む

 

綾波(今、何か…ふむ?油断はありませんが、舐めてかかると痛い目を見ますね、これは)

 

春雨「多少は、いい戦いできると思ってますよ…はい」

 

綾波に詰め寄り、双剣を振るう

 

綾波(この感覚、いや、感情か…直接揺さぶる様な感覚…!)

 

綾波がバックステップで双剣をかわす

 

春雨(避けた、しかもかなり大きく、綾波さんの実力ならガードからのカウンターで私を仕留められてもおかしくはなかったのに…つまり、綾波さんに恐怖を与えた、死の恐怖を)

 

綾波「……アハッ、冷や汗なんていつぶりにかいたのか…」

 

春雨「…貴方は確かに強いです、私たちがいくら束になっても敵わないほどに……だけど、その強さはあくまで力として、貴方個人は臆病で、人と関わるのを避け続けた弱虫です…!」

 

綾波「…へぇ」

 

綾波(カチンと、きましたが……逆に良い、冷静になれた…感情は噛み殺せ、私の前に立ちはだかる全てを…壊す為に)

 

綾波「……アハッ」

 

綾波が手に黒い球体を取り出し、掲げる

 

春雨「……え?」

 

朧(く、暗い…!)

 

敷波(何も見えない…)

 

光すらも、飲み込む…ブラックホール

 

綾波「ついさっきまで昼だったのか、夜だったのかすらわかりませんねぇ…」

 

春雨「……安心しました、こんなに暗いなんて、これ以上はもうないんだ」

 

綾波「……」

 

春雨「夜明け前が最も暗い…さあ、今から朝日が昇る…!」

 

光が無いせいで、視界はない

何の問題がある?それを解決する策は…私達にはある

 

朧「春雨、混ざっても良い」

 

春雨「勿論」

 

敷波「アタシも、混ぜてよ」

 

お互いの位置を声で把握した…

さあ、もう間違えるな

 

春雨「この暗さです!万が一見えても約0.7秒ほど脳への伝達が遅れてる可能性があります!」

 

敷波「わかった!」

 

朧「春雨!」

 

春雨(そっちか)

 

こちらには、匂いで貴方の位置を見つけられる朧さんがいる

 

朧「はぁッ!!」

 

春雨「戦闘、始めます…!」

 

攻撃を艤装で受け止められる

 

綾波(位置を把握されてるのはわかってたけど、春雨さんはどうやって私の位置を把握してるのか…)

 

敷波(見えた、でもまだ撃つな、動きを把握しないと2人に当たる…)

 

春雨(こっちか!)

 

振るった腕が朧さんに止められ、方向を誘導される 

 

春雨「はぁッ!!」

 

綾波(…斬りかかる時もあれば、妙な角度からの刺突…うーん、まあ気にしても仕方ないか……もう仕込みは終わった…あとは罠を…!?)

 

春雨「っ!?」

 

目の前に赤熱したワイヤが現れる

 

敷波(外した…と思ったけど、何、あのワイヤー…)

 

朧「罠…!春雨!下がって砲撃戦に変更!」

 

春雨「ええ…!」

 

後方に下がり、カートリッジを差し込む

 

春雨「照明弾、撃ちます!」

 

照明弾が一瞬で何かに飲み込まれる

 

春雨「…!」

 

朧(本当に何でも…呑み込む)

 

綾波「あーあーあ、私すっごく気分悪くなりましたよ、偶然で私の用意が全て台無し……もういいや」

 

闇が晴れ、星と月があたりを照らす

 

春雨(な、なんで闇を解いて…)

 

朧「砲戦!」

 

敷波「っ?!」

 

朧「血の、匂い…?」

 

敷波「なん…あれ…?」

 

綾波「流石にウザいので、まずは一つです」

 

綾波の砲撃が敷波の背中を貫く

 

朧(…まさか、敷波の向いている方向を空間を歪めて変えた?)

 

春雨(どこまで化け物じみたことを…!)

 

綾波「さようなら、敷波」

 

敷波が沈んでいく

 

春雨(……振り返ったら、死ぬ…振り返ったら…)

 

今なら、助けられるかもしれないのに…敷波さんを見殺しに…

 

春雨(…できるわけがない)

 

振り返り、敷波の方に…

 

綾波「本当にバカしかいない」

 

春雨「かっ…」

 

身体に電撃が走る

 

朧「春雨!」

 

体が、痺れて動かない…

 

綾波「そこで見ててください、最後の1人が死ぬまで」

 

春雨(…こん、なの…)

 

 

 

駆逐艦 朧

 

綾波「さあ、貴方の力で私を倒せますか?朧さん」

 

朧「……やるしかないんだよ、やるしか…!!」

 

相手がまともじゃないなら、まともな手段では勝てない

 

朧(…アタシ、しか…やれないんだ、ならアタシがやる)

 

綾波「……何ですか、その構え、見た事ないですね」

 

朧「だろうね…アタシも意味わかんなくなってるから」

 

綾波(仕掛けてこい、という事か?しかし、よくわからない構え…いや、構えにもなってない、変なポーズだな)

 

綾波がこちらへと近づいてくる

 

朧(…大丈夫、決められた動きしかしない、アタシの考えを入れなければ良い)

 

綾波がアタシの襟に手を伸ばしたのを見てのけぞり、綾波の後頭部に蹴りを叩き込む

 

綾波「っ!?」

 

朧「……shall we dance(踊ってみる)…!?」

 

綾波「Willingly(喜んで)…!」

 

朧(阿武隈さん達の、分を、今返す!!)

 

キタカミさんに受けた訓練の指示は…簡単に言えばダンス

綾波は相手の動きを呼んだ行動が得意だから、完全に的外れな行動をし続ける

 

綾波(出鱈目なところを蹴ったり、本当に踊ってる様な動作…隙だらけ!)

 

朧「ッ…!」

 

綾波の蹴りを紙一重で交わす  

 

綾波「!?」

 

朧(か、かわせた…?奇跡…?でも、勝てる!!)

 

踏み込んで、綾波に蹴りを放ち、主砲を撃つ

 

綾波(……チッ、そんなのが長く通用すると思うなら、大間違いだ…!)

 

綾波の攻撃をかわす

バク転で蹴りを交わし、逆立ち状態で砲撃する

跳んで砲撃を交わし、デタラメな体制で砲撃する

 

主力は砲撃、とにかくメチャクチャな動き…

 

綾波(対応、しづらい…!)

 

朧(大丈夫、やれる…!)

 

綾波(めんどくさいな、もう、いいや……)

 

砲撃を受けた綾波が倒れる

 

朧(倒し…いや、ダメだ、油断しちゃダメ…!)

 

綾波「ごほっ……かはっ…!……ぁ…お、朧、さ…」

 

朧「…雰囲気が違う…?」

 

綾波「は、早く、トドメ……私じゃ、抑えきれな…」

 

朧(もう1人の綾波が、綾波を抑えてる…?だとしたら、今なら、倒せる…今なら、綾波を……)

 

主砲を向けたまま、綾波に近づく

 

朧「……でも、そんな…」

 

今、撃てば…アタシが殺すのは、悪虐非道な綾波ではなく、この善良な綾波を…

 

綾波「……だからダメなんですよ、簡単に迷っちゃったら…ねぇ?」

 

蹴りを受け、膝をつく

 

朧「…え…」

 

綾波「私の演技にあっさり騙されちゃって……アハッ」

 

最悪だ、最悪なことをしてしまった、アタシは…

最大のチャンスをドブに捨てた…

 

綾波「…さて、貴方ともお別れです、本当にめんどくさい人でした」

 

肩に踵を乗せられる

綾波の脚がバチバチと雷を纏う

 

朧「……綾波…」

 

綾波「消えなさい」

 

 

 

 

駆逐艦 春雨

 

綾波「どうでした、期待しましたか?私が負けるって…」

 

春雨「……」

 

綾波「貴方も沈んでもらいます、さようなら」

 

春雨「……沈みませんよ」

 

綾波「…へぇ?」

 

春雨「私は、今、沈めない…私が死ぬのは、親友の手で殺される、青い月が輝く1月の夜だけです」

 

綾波「……なるほど?」

 

春雨「今日の月は、金色に輝く…季節も違う、合致するのは…親友が私を殺そうとしていることだけ、私が死ぬのは、今日じゃない」

 

綾波「親友ですか」

 

春雨「……私は、貴方をそうだと認識しています」

 

綾波「私はしていません、さようなら」

 

海の中から見る月は、滲んで、歪んで、暗くて…

私はどこまで堕ちていくのか

 

いや、すこし……眩しいな

光の、女神…か

 

 

 

綾波「さて、最後の仕上げといきましょう…」

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