元勇者提督   作:無し

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正しい選択

駆逐棲姫のアジト

戦艦 レ級

 

レ級(大和型はもう使えないな…!)

 

艤装を次々に使い潰す

 

加賀型の飛行甲板と弓を使い、艦載機を飛ばしながら金剛型の艤装で攻撃を防ぎ、隙を見て砲撃を撃ち込む

 

綾波(巧い事、やりたい様にやられてるな…!)

 

レ級「これでも、くらえ…!」

 

砲撃、そして艦載機の爆弾による一切の隙を見せない攻撃の嵐

 

綾波(素直に言えば弱った…まさかここまで一気に変わるとは、自暴自棄になるより落ち着いて戦う方が圧倒的に強い…)

 

綾波がこちらの砲撃を防ぎ、踏み込む

 

綾波(倉持司令官を先に殺せば或いは…いや、逆上するどころか……悪い未来しか見えないな、考えろ、どうする?)

 

綾波の横薙ぎの蹴りを艤装で受ける

 

綾波(……長引くほどに私はアケボノさんを研究し、把握し、圧倒できる…だが、アケボノさんの戦術は…驚くほどに多様だ)

 

距離を取り、長門型の艤装を纏い、足元を狙い砲撃する

 

綾波(本来なら圧倒的に私が有利になるこの状況(ケース)、追い詰められているのはむしろ私……いや、他に要因がある…そうか、気づけてなかったが…)

 

綾波の手の色が、少し消える

 

レ級(…駆逐水鬼に戻りかけてる?……弱り始めてるのか…!)

 

長門型の艤装を盾の様にし、龍驤型の巻物の飛行甲板を使い、艦載機を飛ばす

 

綾波(……私の力がどんどん抑え込まれている、アヤナミも中々やってくれますね…逃げるしかないか?いや、1人なら倒せる……たとえ相手が誰であれね)

 

レ級(……綾波が、消えた…?)

 

艦載機で周囲の視界を取っているのに、艦載機が綾波を見失った…どうして…

 

綾波(実に簡単な話だ、力が弱っているとわかってるなら別の何かに頼る他ない、それがこのカートリッジなのですが)

 

レ級(おかしい、艦載機が見失う理由が…わからな…)

 

レ級「い…?」

 

盾にしていた艤装をこじ開けられる

 

綾波「ハーイ、引きこもりは体に毒ですよ?科学者は別ですが」

 

艤装の中に何かを投げ込まれる

 

レ級(これは、手榴だ…!)

 

逃げ場のない閉所、ゼロ距離の爆発物…

 

レ級「ぁが…あ…ああ…!」

 

レ級(この体でも、こうまでダメージを受けるのか…!)

 

綾波「堅牢な守り…確かに硬いです、外から壊す分にはね、中に一つ爆弾を放り込むとなんで脆いのか…」

 

長門型の艤装の接続部が剥がれ落ちる

 

レ級(接続部が…弱いのか…)

 

綾波「さて、アハッ…アハハッ…」

 

綾波の艤装が崩れ落ちる

 

駆逐水鬼「とうとう、この姿に堕ちたか…アヤナミを止めるにも、ここを逃げ出さないと不味いですねぇ……」

 

レ級「…させるか…!」

 

駆逐水鬼「…決着といきましょうか、致し方ありません」

 

駆逐水鬼の大腕を振りかぶり、近づいてくる

 

レ級(最後の最後に、力勝負…か…!)

 

レ級「私も、限界だ……受けてたつ…!」

 

 

 

 

 

海上

駆逐水鬼

 

駆逐水鬼「ははっ……あはっははは…!」

 

ちぎれ飛んだ大腕を見つめる

 

駆逐水鬼「……痛み分け、か…うまく、やれば…」

 

春雨「そうはいきません」

 

駆逐水鬼「…!……春雨さん、確かに殺したつもりでしたが」

 

春雨「言ったはずです、私は死にません…ある特定の状況を除いて」

 

駆逐水鬼「そんな馬鹿げた話が…いや」

 

駆逐水鬼(応急修理要員か?……2度殺すべきだっただろうが…)

 

春雨「……綾波さん、私は貴方を取り戻したい、貴方に謝りたい…私のせいでこうなったのではないかとすら考えています」

 

駆逐水鬼「…そうですか……正直、今の私にはなんの力もありません、もし私を許してくれるなら…」

 

春雨の方へと手を伸ばす

 

春雨「…ええ、貴方ならそう言ってくれると…信じていました」

 

春雨が目を伏せる

 

駆逐水鬼(罠…)

 

伸ばした手が砲撃を受けて千切れ飛ぶ

 

駆逐水鬼「っ……そうですか、敷波もですか…そうですか…」

 

春雨「みんな、戻ってきてるはずです…この戦いの犠牲者みんな…女神の加護を受けて」

 

駆逐水鬼「……究極AIアウラ…確か、名前の由来はアウローラでしたか」

 

光の女神…私には眩しすぎる名前だ、あまりにも

その女神の光を、今ここで…

 

駆逐水鬼「……潰す」

 

狙撃を大腕で防ぎながら春雨へと近づく

 

春雨「…お忘れじゃありませんか?後ろ」

 

横目で背後を確認する

 

朧「待たせた!?」

 

春雨「ええ、かなり」

 

背中を撃たれ、よろめく

 

駆逐水鬼(この体力で、3人相手は厳しいか…!)

 

駆逐水鬼「っ!」

 

艦載機の音…それも深海棲艦(こちら側の)…?

 

駆逐水鬼「……はは、ははは…そうでした…貴方がいましたね、護衛棲姫…」

 

護衛棲姫「……」

 

遠方の護衛棲姫を視認し、漸く落ち着く

 

駆逐水鬼(これで、逆転の目が…)

 

艦載機が急降下爆撃を行う

私に対して

 

駆逐水鬼「っ!?」

 

春雨「なっ…?」

 

敷波「……何が起きてんの、アレ」

 

駆逐水鬼「護衛棲姫!どういうつもりですか!?」

 

護衛棲姫「……私ハ、駆逐棲姫様、イエ、綾波様ヲ第イチニ考エテ行動シテオリマス…ソシテ、今、綾波様ハ…ココ(深海棲艦)ニ居ルヨリ…ソチラノ、人間ノ世界ニ居タ方ガ、幸セダト考エマシタ」

 

駆逐水鬼「この…!貴方が私の幸せを語るか…!貴方までそんなくだらない考えで私を…!」

 

護衛棲姫「綾波様……ドウカ、幸セニナッテクダサイ、私ハ貴方ガ大事ナノデス、私ニハ…貴方ヲ幸セニデキナイ、満タセナイ…!」

 

春雨(よくわからないが、共闘できそうですね…)

 

艦載機の攻撃を受け、どんどん力を失う

 

駆逐棲姫「ぐ…!とうとう、此処まで…いや、この姿でも戦える筈…!」

 

春雨「もうやめてください、諦めて、投降してください」

 

駆逐棲姫「……私を倒して何になる?その先にはより辛い未来しかないのに、貴方たちは自己満足で私を殺し、勝手に納得し、その先のことなんて何も考えてない!」

 

朧「綾波、もう充分だよ、確かに綾波は誰より賢いかもしれない、誰より凄いかもしれない、だけど人を傷つける力なんて振るうものじゃない、今ここでアタシ達は綾波を止めなきゃならない…!」

 

朧(漣のため、潮のため…曙達のため…)

 

春雨「貴方ほどの人なら、今まで犯した罪以上の…例えば未曾有の災害すらも犠牲を抑えられる筈です、貴方を悪い様にしないと約束します」

 

敷波「お願い、綾姉ぇ…」

 

駆逐棲姫「……巫山戯るな、今更善人になど成り下がるか…!」

 

両手の主砲を撃ち込む

 

護衛棲姫「ァ…!」

 

敷波「っ!?」

 

駆逐棲姫「こっちは腐っても姫級…!貴方達4人如き…!」

 

とにかく、主砲を撃ち込む

今、ここで全員殺す

 

朧「くっ…!」

 

春雨(…止める、私が…!)

 

春雨が突っ込んでくるのを確認し、魚雷を掴み取る

 

駆逐棲姫「1人で突っ込んで、どうするつもりですか…!」

 

魚雷を流し、春雨に当てる

 

春雨「ぐ…!…ぁ…?」

 

春雨の艤装が煙を上げ、沈み始める

 

朧「春雨!」

 

敷波「ダメ!遠すぎる!」

 

駆逐棲姫(艤装が壊れたか…後3人)

 

 

 

 

駆逐艦 春雨

 

春雨「ぁ…!がぽっ!あっ!」

 

溺れない様に、必死にもがく

何かを掴む為に伸ばした手が何度も空を切る

 

どんどん、沈んでいく

 

いつの間にか、月は青く輝いて…

 

春雨(…青い月、か…)

 

もがく手も、もう動かす気にもならない…

 

春雨(月が…綺麗…か……)

 

一瞬のうちに、視界を海が覆い、月すらも滲む

 

深海に女神の光は届かない

 

春雨(……ここで、終わるのか…私は)

 

きっと、あの2人なら…なんとかしてくれる筈だ、あの世から眺めよう、のんびりと…

 

春雨「……?」

 

なんだろう、この感じ、この、暖かい何かは

 

春雨(…貴方、は…)

 

 

 

 

駆逐棲姫「1人落ちて、勢いが消えましたね…」

 

敷波「綾姉ぇ…もうやめてよ!人を殺してなんになるの!?」

 

駆逐棲姫「そんな事、気にしてないんですよ」

 

敷波「ぁ……が…」

 

朧「敷波!……うっ…」

 

駆逐棲姫「ゲームセット、ですかね……全く、手間を…いや」

 

春雨「…深海に嫌われている様で」

 

駆逐棲姫「……また、応急修理要員ですか」

 

春雨「いいえ……今の私は、なんとか浮かんでいるだけ、艤装は完全に壊れてるし、派手な動きをしたらもう二度と浮かぶこともできないでしょう」

 

駆逐棲姫「…じゃあ、大人しく沈んで………っあ…ああ!……ああぁ、アヤ、ナミ…!く…あ…!」

 

駆逐棲姫が頭を抱え、水面を睨む

 

春雨「…容赦無く、撃たせてもらいます」

 

アヤナミ(もう、終わりにしましょう……貴方は駆逐棲姫としての力もかなり失いました、もう終わりなんです)

 

駆逐棲姫「こ、の……終わって…たまる、か…!」

 

駆逐棲姫が砲撃を受け、よろめく

 

駆逐棲姫「あ……」

 

駆逐棲姫が沈む

海の底へと

 

護衛棲姫「綾波様!」

 

朧「春雨…!なんで…」

 

春雨「黙って見てなさい…」

 

きっと、彼女が背中を押してくれる筈、私の様に

 

駆逐棲姫「…ぷはっ…ぁ…けほっ…」

 

駆逐棲姫が仰向けに浮かび上がる

 

護衛棲姫「綾波様…!良カッタ…」

 

春雨「……生かす選択をしてくれてありがとうございます」

 

イムヤ「ま、親友を殺すわけにはいかない…でしょ?」

 

朧「イムヤさん!?」

 

イムヤ「お天道様が眩しくてさ、目が覚めちゃった!」

 

春雨「……女神のギフト、貴方を呼び起こしてくれた様ですね」

 

イムヤ「……私だけじゃない、漣も含めて…みーんな、だよ」

 

朧「…良かっ…た…」

 

春雨「……さて」

 

 

 

アヤナミ(…ごめんなさい、私は貴方じゃないのに、勝手な事をしてしまいました、貴方だってもっと生きたかったのに)

 

駆逐棲姫「……私は、貴方だ」

 

アヤナミ(…そうですね、私も、貴方も、何も変わらない…)

 

春雨「……」

 

駆逐棲姫「ねぇ、アヤナミ…」

 

アヤナミ(…はい)

 

春雨「…?」

 

駆逐棲姫「今度は…ちゃーんと、地獄に行けるでしょうか…」

 

アヤナミ(勿論、底の底まで、一緒です)

 

春雨「貴方…まさか、最初からそのつもりで?」

 

駆逐棲姫「……そんな訳、有りませんよ…馬鹿言わないでください…ただ、レールができていただけです」

 

アヤナミ(…駆逐棲姫として復活してしまったが故に、駆逐棲姫として生きることを余儀なくされた…)

 

駆逐棲姫「貴方も、馬鹿を言う……私は確かに倫理観が壊れていますが理性まで失った覚えはない…私を壊したのは私自身で…紛れもなく、全てを滅茶苦茶にして、みんな殺してやるつもりでしたよ」

 

春雨「……何の為に」

 

駆逐棲姫「…さあ…1人で世界の終わりを眺める為?……何ででしょうね…」

 

護衛棲姫「綾波様…」

 

駆逐棲姫「おや…護衛棲姫。。やってくれましたね…」

 

護衛棲姫「貴方ハ、タダ、裏切ラレタクナカッタ…」

 

駆逐棲姫「……」

 

護衛棲姫「貴方ノ行動、オ話カラ推察スルニ…アノ2体ノレ級モ、私モ……裏切ラナイ存在トシテ側ニ置イテ下サッタノデハナイデスカ?」

 

駆逐棲姫「…私の、心を…勝手に語らないでください」

 

護衛棲姫「申シ訳アリマセン、シカシ、永遠ヲ生キルニハ……1人ハアマリニモ寂シイデショウ…永遠ニ満タサレナイノハ、苦シイデショウ」

 

駆逐棲姫「……かも、しれませんね」

 

護衛棲姫「……私ハ、永遠ニ、貴方ノオ側ニ」

 

駆逐棲姫「要りませんよ…そんなの…」

 

春雨「…帰りましょう、此処に居てはいつ沈むか、気が気じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

 

春雨「…と、言う事です、ヘルバ様?」

 

ヘルバ『つまり、綾波は生かすべきだ…と言いたいのね、でもそれを上申するには相手が違うと思うけど』

 

春雨「頭の硬い特務部も、アホみたいな上層部も頼れません、最後の頼みの綱は直属の上司だけですから」

 

ヘルバ『……だとしたら、期待には応えられない』

 

春雨「……お願いしますよ」

 

ヘルバ『私は軍関係者じゃない、もう既に決まってるのよ、春雨』

 

春雨「…何ですって?」

 

ヘルバ『駆逐棲姫、世界を恐怖に陥れた最大の敵は、排除され…大犯罪者である綾波は、銃殺し、即座に火葬……それがストーリーよ、これ以上の犠牲を出さない為のね』

 

春雨「そん、な…!じゃあ私のやった事は!?」

 

ヘルバ『世界を救った』

 

春雨「違う!私ただ、友達を助けたかっただけです!」

 

ヘルバ『……望まぬ英雄の称号が、貴方への褒賞、貴方のやらないといけない役割は別にあるのよ』

 

春雨「役割ですって…?冗談じゃない!この世界の私は人間だ!もうAIでも機械でもない!私は人間なのに…!」

 

ヘルバ『待ちなさ…』

 

通信を切る

 

春雨「……綾波さん…!」

 

ただ、走るしかできなかった

 

 

 

朧「春雨…」

 

春雨「朧!綾波さんは!」

 

朧「……さっき、大淀さん達が捕縛して、本土に…佐世保と大湊で周りを固められてるから、追いかけることもできなかったよ…」

 

春雨「…間に合わなかった…?」

 

朧「……ごめん」

 

春雨「…そんなのって……あんまりでしょう!!」

 

力一杯に壁を殴りつける

 

春雨「そんな事、許される訳…」

 

砲音

一度だけ、遠くから砲音が鳴る

 

春雨「あ……」

 

朧が目を伏せる

 

朧「…春雨、アタシも辛い、だけど……今1番辛いのは、敷波だよ」

 

春雨「……姉妹艦だから、姉妹だから……血が繋がってるから…知りませんよ、そんな事…例え血が繋がってなくても、姉妹艦ですら無くても…姉妹よりも、相手を想っている…そんな事だって、あるんです…」

 

朧「……うん、ごめん、軽率だった…」

 

春雨「……どうして、こんな事、に……」

 

 

 

 

 

執務室

重雷装巡洋艦 キタカミ

 

キタカミ「終わってみりゃ、呆気ない幕切れだねぇ…でも、何もかも元通りって訳だ」

 

アケボノ「その様です、しかし此処からはそうはいかない」

 

海斗「何はともあれ…2人とも今までお疲れ様」

 

キタカミ「んー、まあ、お互い様っていうか?」

 

アケボノ「そうですね、提督の向こうの世界での戦いを思うと胸が締め付けられる様です」

 

海斗「そんな大袈裟な…」

 

執務室の扉が荒々しく開く

 

漣「ちょっ!ボーノ!!」

 

潮「アケボノちゃん艦娘やめるって本当!?」

 

阿武隈「き、キタカミさんも!」

 

球磨「どうなってクマ!!」

 

キタカミ「…何?どっから広まったの?」

 

アケボノ「さぁ?」

 

曙「あたしは止めたんだけどね、ほっとけって」

 

北上「同じく」

 

大井「…キタカミさんは平和な日常を求めてたんですか?」

 

キタカミ「いや、多分変な伝わり方してるよね」

 

アケボノ「同意です、私は艦娘としては解体しますが…」

 

漣「行かないでー!ボーノはずっと私達と居てよ!!」

 

アケボノ「いや、だから…」

 

阿武隈「キタカミさんも!お願いします!」

 

キタカミ「あーもう…」

 

ごつんとゲンコツを阿武隈に落とす

 

阿武隈「ぁう…」

 

アケボノ「黙らないとああなるけど」

 

漣「むぐ…」

 

キタカミ「私は解体っていうか…戦力になるのはやめるだけで此処は抜けないよ」

 

アケボノ「同じく」

 

曙「…どういう事?」

 

北上「説明求めるよ、そこで座ってんの」

 

海斗「えーと…アケボノは艦娘としてではなく、秘書として、キタカミは教導職としてここで働くことになったんだけど…」

 

曙「…なんか、色々騒いで損した気分」

 

アケボノ「ま、そういう訳だからよろしく?」

 

キタカミ「私ももう戦うのは疲れたから、任せたよ、阿武隈、球磨姉も、大井っちも…アンタもね」

 

北上「……ふん」

 

漣「…と、なると……ウチ最強のツートップが消えちゃうよ!?」

 

曙「この2人が最強?冗談でしょ」

 

アケボノ「…そうね、頑張れ」

 

曙「……任せときなさい」

 

 

 

 

駆逐艦 天津風

 

天津風「あ、こんな所にいた」

 

島風「天津風…」

 

天津風「大湊の人達、探してたわよ」

 

島風「……うん、でも…合わせる顔がないや…」

 

天津風「……島風はそんなこと考えなくていいの」

 

島風「え?」

 

天津風「みんな島風が大好きで、会いたくて、此処まできた…帰ってきてくれるだけでみんな満足なんだから…ほら、行きましょ?」

 

島風「……でも」

 

天津風「…貴方は私を助けてくれた、だから今度は私に助けさせて?」

 

島風「私、助けてなんか…」

 

天津風「この世に生まれてこの方、ご飯を食べたこともなければ呼吸も、身体を動かすことも、楽しいとか、嬉しいとか、そんな事も、全部教えてくれたのは島風だから…だから、私は今、生きてられる…笑える、だから、私は貴方に救われてるの」

 

島風「天津風…」

 

天津風「ほら、行きましょ?貴方が笑ってないと…私も悲しいし」

 

島風「……うん」

 

 

睦月「あ、島風ちゃん!」

 

白露「おーい!みんな!居たよ!」

 

わらわらと人が集まってくる

 

白露「あれ?そういえば今日もジャージだよね」

 

睦月「……うむむ、ジャージオンリーは良くない気がする…島風ちゃん、今度一緒に洋服買いに行こう!」

 

島風「え?いいよ…」

 

白露「勿体無いよ!島風ちゃんこんなに可愛いのに!」

 

天津風「…そういえば、島風って制服は着ないの?」

 

睦月「…あぁ…」

 

白露(だからジャージ…)

 

島風「…天津風が着てもいいよ、私要らないから…」

 

天津風「え?……どんなの…?」

 

白露「……まあ、後で確認して見て…ねぇ、島風ちゃん」

 

島風「なに…?」

 

白露「何か、迷ってる…よね?」

 

島風「……うん」

 

白露「…答えになるかはわからないけど…覚えてる?私がスタイリストになりたいって言ったの…」

 

島風「覚えてるよ…」

 

白露「この世界に来て、生きてみて、わかった… 夢は目標であって目的じゃない、到達点はそこには無いんだよ、戦争を終わらせるのが今の目的で…スタイリストになれたらそこからがまたスタートライン…」

 

島風「スタートライン…?」

 

白露「何回だって、何十回だって、スタートはあるんだよ、ずっと1番にはなれないけど、誰よりもたくさん1番を取る為に、ちゃんと一個一個のゴールを見るんだ…そうすれば、上手くいくって信じてるから」

 

島風「……上手く、いく…スタートライン……そっか」

 

天津風「…島風」

 

島風「私、ここで戦う…みんなとはまた離れ離れになるけど…戦争を終わらせる為に…!」

 

睦月「離れ離れなんかじゃないよ?」

 

睦月がディスクを島風に差し出す

 

島風「…これ……The・World R:X!?」

 

睦月「にゃはは!うちの司令官殿が全員分手に入れてくれたのだ!」

 

白露「離れてても、一緒だから」

 

島風「…うん…!」

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 神通

 

神通「此処に居ましたか」

 

春日丸「…ええ…」

 

神通「護衛棲姫さん…いや、今は春日丸さんでしたか」

 

春日丸「……なんとも、古式な名を頂いたものです…しかし」

 

神通「記憶がないから仕方がないと」

 

春日丸「………そんな事より…」

 

神通「綾波さんに関しては、残念でした」

 

春日丸「……そう、ですか……綾波様、私は間違えていたのでしょうか…いや、貴方の望む結末は、こうだったのですか…?私の呼吸一つ、私の一挙手一投足は……全て、貴方のものです…貴方の望む結果に…私は助力できたのですか?」

 

神通「少なくとも、貴方は善行を積みました、それに関しては綾波さんも…悪い感情を抱いていないのではないでしょうか」

 

春日丸「……あの人は、私にはただ寂しかっただけに見えます、あの人は、深海棲艦として永遠を生きる為に…永遠を埋めてくれるだけの大事な存在を求め続けた…御妹様にそれを課す事を過酷だと考え、代わりを求めたように、感じました…」

 

神通「……」

 

春日丸「……私が、そうなれれば良かったのに…私は、綾波様が居なくなる末路なんて、考えていなかったのに…」

 

神通「果たして、どこまでがあの人の想像通りなのか……それは分かりかねますが、しかし…綾波さんは心の底から人を愛する事ができる方でした、それについては保証します…しかし、彼女は最後には悪意に呑まれていた」

 

春日丸「ただ、レールが敷かれていただけです」

 

神通「レール?」

 

春日丸「……綾波様はこう仰られていました、「私が記憶を取り戻したときには、何もかも遅かった」…と、既に重ねた罪、そして今の状況を憂い、苦しみ続け、そしてついに決壊した…私は、綾波様は…ただ、不幸だったのだと思います」

 

神通「そうでしょうか」

 

春日丸「…他に例えようがあると?」

 

神通「…いいえ、幸せだったのではないか、と思いまして…」

 

春日丸「幸せ?」

 

神通「貴方のような、自身を常に想ってくれる人が側にいる、それは紛れもなく幸せですよ」

 

春日丸「……幸せか…綾波様、私は生きます、貴方の言うように、悔やむ事も、悼む事も、生者にのみ赦された特権、私は貴方を永劫想い続けます」

 

 

 

 

 

 

病院

青葉

 

青葉「…あ、ここか…」

 

病室の扉をノックして開ける

 

秋雲「あ、どうもー」

 

青葉「ど、どうも…」

 

秋雲「……何気に初対面でしたっけ」

 

青葉「あー…はい…あははは…」

 

秋雲「…その、ありがとうございます」

 

青葉「いえ、その…乗りかかった船ですから…艦娘だけに」

 

秋雲「……えっと、笑った方がいいですか?」

 

青葉「…いや、その…」

 

秋雲「冗談です、その…離島に戻るんですか?」

 

青葉「……目的は果たしましたし、多分もう追われることもないですから…そのつもりです」

 

秋雲「……そうですか…よかったら、陽炎に会ってから行ってやってください、陽炎も…想うところがあるはずだから」

 

青葉「…わかりました」

 

 

 

 

 

離島鎮守府 執務室

提督 倉持海斗

 

海斗「これで、みんなの問題は解決した…か」

 

残るは自分自身が抱える問題のみ、僕自身が…向き合わなければ和ならない

 

海斗「クビアと、みんなを…」

 

大丈夫、上手くやれる、心配はいらない…筈だから

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