元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
駆逐艦 朧
春日丸「話、ですか」
朧「そう、まあ…ちょっと、気になってさ」
敷波「このメンバーってことは…」
イムヤ「綾波関係よね?」
春雨「流石にそうでしょう」
朧「……まあ、正確には、綾波のことじゃなくて、綾波が言ったことが気になるんだ…」
春日丸「言った事?」
朧「…次戦争する相手は、同じ人間だって」
春雨「それは…そうなるでしょうね」
敷波「え?なんで…」
春雨「……私は、すでに…伺ってるのですが…」
イムヤ「…何?何があるの?」
春雨「……目の前に、例えば冷蔵庫があって、みんなの好物があったとします…そうですね、例えばプリンとか…」
敷波(例えが可愛い…)
春雨「このプリンは誰のものでもありません、となれば…取り合いになりますよね?もしくは最初に見つけた人が独り占めします…」
朧「……つまり?」
春雨「ここには、国家が喉から手が出る程欲しいものがあるんですよ」
春日丸「……綾波様は言っておられました、核のスイッチを押せるのは私だけではない、と」
イムヤ「核のスイッチ…!?」
春雨「…それは、使い方で国を守る事も、他国を滅ぼす事も…一瞬でできるほどの…」
朧「…アウラ…!」
春雨「そうです、究極AI、通称オリジン…あの女神は、私達を救ってくれました、しかし…世界中に狙われる理由にもなり得る」
朧「…みんなに言わなきゃ」
春雨「やめてください、これは貴方が気づいたから止むを得ず伝えたんです」
朧「みんな知っておくべきでしょ…!?」
春雨「誰も、オリジンを私達が匿っているなんて誰も思っていません、日本のサーバーで確認された、と言うのがサイバーコネクトサンディエゴ社に伝わったくらいです」
イムヤ「…ねぇ、ちょっと要領を得てないんだけど?」
春日丸「私も…」
敷波「あんまり知られたくないならアタシ達消えようか…?」
春雨「……どう言ったものか正直、悩んでいますが…
敷波「馬鹿にしないで、教科書にも載ってる、第一次ネットワーククライシス…核戦争一歩手前までいった最悪のネットワーク事件」
イムヤ「え、私知らない…」
春雨「…物凄く簡単に説明します、2005年の12月24日、世界中のコンピュータ、電子機器が全てウイルスに侵された事件です…ネットに接続する家電すら使えなくなったし、アメリカの大統領府は本来送り続ける信号を送れなくなった」
春日丸「信号?」
春雨「私たちは健在である、核攻撃は受けていないぞ…という信号です…防衛システムは信号途絶により攻撃を受けたと認識、報復攻撃の用意を始めました…が、結局信号は回復、後一歩のところで核戦争を避ける事に成功…」
イムヤ「…原因は?ウイルスだっけ…」
春雨「ええ、しかし、驚くべき事に…そのウイルスを作ったのは10歳の少年だったそうです」
敷波「それは習ってない…」
春雨「子供にできてしまう、というのは…夢のような悪夢ですから…そこは伝えられないのでしょう、子供にはできないという、当たり前を押しつけるために…やってはいけない事を犯さない為に」
春日丸「この話の意味は?」
春雨「あくまで比喩ですが…綾波さんはその10歳の少年です」
朧「…そっか、大体わかった…綾波はその少年と同じで、自分の力でそこまで行った」
春雨「ええ、その結果として…フランスでのミサイル自爆などが挙げられます、綾波さんはあらゆるネットワークのセキュリティを自在に突破してみせた……結果、世界中に駆逐棲姫はオリジンを取得したと言う説が上がった…表沙汰にはされませんでしたがね」
朧「…オリジンは…」
春雨「オリジンは、綾波さんとは違い…セキュリティそのものを無視できると考えて良い、ネットの中を自由自在に動ける、要するにワイルドカードやジョーカーみたいな所です」
イムヤ「それさえあれば、一方的な核攻撃が…」
春雨「できてしまう」
春日丸「それを求めている…?なんで…」
春雨「戦争に勝つ為です、今、世界中で見えない戦争が起きているとヘルバ様は言ってました」
朧「…意味、わかんないよ…」
春雨「表面上では何も変わっていません、しかし…水面下では常に何かが変化していく…誰もそれに気づかないまま…それは、本当に怖い事ですよ」
敷波「…水面下……深海棲艦って、もしかして減ってる?」
春雨「…そうです、よく気づきましたね…横須賀はハワイへ進行中ですが…深海棲艦との戦闘はほとんどないそうです、戦争は深海棲艦とのものから、人と人との物に移り変わりつつある…の、かもしれない…」
朧「…横須賀の人たち、大丈夫なの…?」
春雨「……大丈夫な筈です、表立った事はまだできないはずですから…しかし、もしオリジンを手にして仕舞えば非核保有国であろうと関係ない、その気にならば相手の基地の核で自国を焼かせられる…」
朧「……春雨、そんなの誰も望んでない、アウラは…そんな事のための存在じゃないよ…!」
春雨「人間は可能性に恐怖し、それを防ぐ為になら何でもやりますよ」
春日丸「…可能性、ですか」
春雨「良くも悪くも、可能性を信じられるのが人間です…私達はこれから…どうすればいいのやら、正直わかりません」
敷波「……ただ、今を過ごすことしか出来ないよ」
春日丸「そう、ですね」
朧「……ところでさ、風の噂で聞いたんだけど……春日丸と敷波、2人とも特務部に誘われたんでしょ?」
春日丸「…ええ、お断りしましたが…」
敷波「アタシも、できるのは護衛くらいだし、それに…あそこの空気は好きじゃない」
朧「そっか…」
春雨「そうだ、特務部で思い出した…敷波さん、これを」
敷波「…マイクロチップ?」
春雨「ゴレのダミー因子です、貴方が持つにふさわしい」
敷波「……ありがとう」
春雨「これで、空席はフィドヘルだけになったか」
朧「え?フィドヘルのダミーは使い手が居ないの?」
春雨「大淀さんも電さんも、拒否しましたので」
敷波「なんでまた…」
春雨「断片的に本来のフィドヘルの力を持ってるからでしょう、他の適格者にはアテがあると言ってましたが」
敷波「アテ?」
春雨「特務部に新しいメンバーを迎え入れる用意があるそうで」
敷波「また脅してるんじゃないの?」
朧「多分、もう大丈夫」
ネット
The・World R:X
Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ
重槍士 青葉
青葉「過去のPC…か」
アカシャ盤へと走るPC達を見つめる
青葉「……司令官は確かにリアルに送り返した、そう、だから何も問題ない」
宙を舞い、そのPC達の前に立ち塞がる
青葉「……」
カイト「またシックザールか…!」
ブラックローズ「なんでも良いからさっさとやるわよ!カイト!」
青葉(…やっぱり、私を知らない…大丈夫、コレは司令官じゃない)
青葉「御相手します」
2人に向け、槍を振るう
青葉(一対多の心得はあまりありませんが、フリューゲルさんにチューニングしてもらったお陰であの動きができる)
シックザールである、と言うことはただ役職であるだけではない、シックザールPCという特別なPCを与えられる
PCとのリンクが強くなり、より正確で、細かな動きができる…
青葉(しかし、双剣士だけあって動きが早い…先に撃剣士を…)
槍の先端部を持ち、手数で迫る
ブラックローズ「カイト!」
カイト「わかってる!」
素早いカバー、熟練のチームのように…
青葉(……なんだろう、すごく…)
青葉「…不愉快です」
横薙ぎの一閃、全身を使い、回転しながら斬る
ガードに使った武器は、全てデリートされる…
ブラックローズ「なっ…!」
カイト「ブラックローズの剣が…不味い!」
迫るカイトの攻撃を、前腕の籠手で受け止める
青葉「…司令官なら、そうはしなかったでしょう…」
肩越しにカイトを睨み、槍を手の中で滑らせ石突を掴み、回転の勢いを全てのせた斬撃を放つ
ブラックローズ「カイト!!」
青葉「…庇いました、か…」
攻撃を受け、倒れた撃剣士、そして逃げた双剣士
青葉「こちらアカシャ盤前、1人仕留めました…"黄昏の騎士団、リーダーのカイト"はゲート方面へ逃走」
フリューゲル『カイトとやり合ったのか、ダメージは?』
青葉「ありません…っ?……いや、すみません、気づかないうちに受けてるみたいです、ちょっと退がります」
フリューゲル『敵を倒してくれるのは良いが、無理は禁物だ……ダメージをものともせず、敵に喰らい付くか…おっ、前言ってた通り名だが、"狼"ってのはどうよ』
青葉「団長…ちゃんと仕事してください…」
通信を切る
青葉「…狼、か…悪くないかも…」
斬り伏せたPCは、皆団長が石にする
石化させる事で二度と動けず、被害を出さぬように
コレが今の私の、もう一つの戦い